【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
検察院による広報映画の企画「正当防衛について描いた映画」を、张艺谋(チャン・イーモウ)がめっぽう面白く料理した、中国でしか生まれないような生い立ちの映画。
- 【スタッフ & キャスト】
- 【あらすじ】
- 【感想】
- 【トピック】
- 张艺谋(チャン・イーモウ)
- 雷佳音(レイ・ジャーイン)
- 马丽(マー・リー)
- 刘耀文(リウ・ヤオウェン)
- 高叶(ガオ・イェ)
- 王骁(ワン・シャオ)
- 陈明昊(チェン・ミンハオ)
- 赵丽颖(チャオ・リーイン)
- 潘斌龙(パン・ビンロン)
- 张译(チャン・イー)
- 史彭元(シー・ポンユァン)
- 李乃文(リー・ナイウェン)
- 蒋奇明(チミー・ジャン)
- 杨皓宇(ヤン・ハオユー)
- 许静雅(シュー・ジンヤー)
- 范伟(ファン・ウェイ)
- 王沛禄(ワン・ペイルー)
- 李晓川(リー・シャオチュアン)
- 阿如那(アラン・アルナ)
- 于和伟(ユー・ハーウェイ)
- 许亚军(シュー・ヤージュン)
- 丁勇岱(ディン・ヨンダイ)
- 刘奕铁(リウ・イーティエ)
- 乔杉(チャオ・シャン)
- 蒋诗萌(ジャン・シーメン)
- 【題材となった実話の事件】
www.youtube.com 张艺谋新片《第二十条》定档大年初一 实力阵容首亮相
【スタッフ & キャスト】
2024年 中国 141分
監督: 张艺谋(チャン・イーモウ)
出演: 雷佳音(レイ・ジャーイン)、马丽(マー・リー)、赵丽颖(チャオ・リーイン)、高叶(ガオ・イェ)、刘耀文(リウ・ヤオウェン)、王骁(ワン・シャオ)
【あらすじ】
出世を狙って穏便に生きてきた検察官、韩明【雷佳音(レイ・ジャーイン)】。ある日息子・韩雨辰【刘耀文(リウ・ヤオウェン)】が学校で傷害事件を起こした。一方で仕事では、王永强【潘斌龙(パン・ビンロン)】という男の傷害事件を補佐する事になる。さらに別のバス車内での傷害事件でも新たな問題が発生。実は、それぞれの事件にはある共通点があったのだった。
【感想】
検察院による広報映画の企画「正当防衛について描いた映画」を张艺谋(チャン・イーモウ)がめっぽう面白く料理した、中国でしか生まれないような生い立ちの映画だ。
この肩書きを見てどう解釈するかで受け取り方が変わるだろうが、特にエンディングはそこら辺のクセをたっぷり味わう流れなので、見る前にそこは了解しておいた方が良いだろう。
とはいえ、そういうクセを消してある前半を中心に、映画はしっかり面白い。今作は特に会話の量がめちゃくちゃ多く、会話劇みたいなシーンが数多く登場する。会話の応酬がいろんな所で繰り出され、うわーっと話している間にあれよあれよと話の流れが右往左往していくのが最高だ。
例えば雷佳音(レイ・ジャーイン)と马丽(マー・リー)の夫婦の会話とか、そこに更に陈明昊(チェン・ミンハオ)が増えた場面とか、実際よりさらにテンポアップさせたかのように編集して、ポンポンポンポン!と会話のラリーがヒートアップしていって、自然に笑いを誘われる。
監督の前々作「満江紅(マンジャンホン、2023)」を更にパワーアップさせているようでもあり、三谷幸喜作品的でもあり、個人的には「あした晴れるか(1960)」みたいな1960年代日活映画の、クラシックなコメディの活発さも感じた。
そして、なんといってもオールスター映画さながらに大量の有名スターが続々と登場するのが最高だ。なにせポスターだけで21人もいる。毎シーンごとと言っていいほど、次から次へと知っている顔が登場するので眼福でしかないし、むしろ忙しくて見逃す可能性も高いので、これから見る方はこのポスターの俳優だけでも覚えてから見始めた方が良いだろう。
特に乔杉(チャオ・シャン)演じる売店のオッサンの、飄々と寄付と称して金をせびる様子(テレビに「アレ」が映っていたりする小ネタも)、そして张译(チャン・イー)演じる教育主任の、プライドだけで生きているようなキャラが最高だ。それ以外のどのキャラも、一流ゆえのさすがな演技の上に、きっちりキャラ造形されていて自然と人となりがにじみ出てくるのが素晴らしい。彼らを見ているだけで最高に贅沢な時間を楽しめる。
そんな風にテンポよく進行していき、笑って楽しめる前半だが、事態は徐々に深刻な方へと進んでいく。後半はそれらが表面化し始め、聾者を演じる赵丽颖(チャオ・リーイン)の素晴らしい演技と共に、シリアスで不合理な構造が徐々にはっきりしてくる。
話はかなり詰め込まれている。3つの理不尽な事件は実話をベースにしていて (ページ末尾に記載) 、2時間では到底収まりそうにない話だが綺麗に交通整理されていて、気がつくとクライマックスへと収斂していく。今作は前作「坚如磐石(2023)」みたいに张艺谋(チャン・イーモウ)の作風はあまり強く出ておらず、むしろ職人的な映画作りの上手さの部分での手腕を感じた。
結末へのまとめ方はある種、水戸黄門なんかと同じ構図でもあるし、プロパガンダ的な作りなのは間違いない。ただ、過去の似たような映画よりうまく作られているし、主題自体も共産主義というよりは「弱きを助け強きを挫く」というシンプルに「正しき事」なので気にはならない。また今作はそこら辺を見越して前半でかなり楽しめる要素を盛り込んであるので、筆者は十分楽しめた。
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【トピック】
◯ 春節に合わせて2024年2月10日に中国で一般公開。公開初週は興収ランキングで贾玲(ジア・リン)主演の「百円の恋」リメイク「YOLO 百元の恋」、韩寒(ハン・ハン)監督によるラリー映画「飞驰人生2」、そして大人気アニメシリーズ10作目「熊出没·逆转时空」に次ぐ4位につける。
その後じわじわと上昇し、3週目から2週間連続で興収ランキング1位を獲得した。興行収入は24.5億元(530億円)の大ヒット作となった。
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◯ 本作は中国金鶏奨で最優秀作品賞、主演男優賞の2冠受賞、7部門ノミネートされた。
◯ 本作は中国最高人民検察院影視センターが制作を主導しており、中国刑法第二十条をコンセプトと決めたのも検察院である。検察院側で一旦仮のプロットが作成され、その後张艺谋(チャン・イーモウ)監督側で脚色・修正が施されていった。
人民検察院影視センターは1996年に設立され、主に捜査官が主人公のドラマやドキュメンタリーを制作しているが、大ヒットとなったドラマ「人民的名义 (2017) 」が知られている。
今作のプロデューサー・张婷婷も影視センター側の人物だが、過去に「酔麗花(2017)」や「花の都に虎(とら)われて(2020)」などの古装劇も制作している。
◯ 脚本の李萌(リ・メン)は段奕宏(ドアン・イーホン)主演の映画「引爆者 (2017) 」や大鹏(ダーポン)主演の「铤而走险 (2019) 」などで脚本を担当した事がある程度だが、今作では人民検察院の依頼により4年をかけて脚本を執筆。その後张艺谋(チャン・イーモウ)が制作を引き継いだ。
◯ 撮影は2023年7月1日より、北京の郊外といえるエリアの河北省廊坊市の高校を皮切りに始められた。
张艺谋(チャン・イーモウ)
◯ いわゆる中国の第5世代の代名詞といえるほどの映画監督。民衆の視点を描いたリアリズムや色彩表現で高く評価されていて、代表作は、
初監督作「紅いコーリャン(1987)」、リアリズムの「秋菊の物語(1992)」、章子怡(チャン・ツィイー)デビュー作「初恋のきた道(1999)」、ワイヤーアクションの豪華武侠映画「HERO(2002)」、ハリウッド制作のマット・デイモン主演「グレートウォール(2016)」などがある。
2008年と2022年の2つの北京オリンピックの両方で開会式/閉会式の総監督を務め、なおかつ「SHADOW/影武者(2018)」、「愛しの故郷(2020)」、「ワン・セカンド(2020)」、「崖上のスパイ(2021)」、「狙击手(狙撃手、2022)」、「満江紅(マンジャンホン、2023)」、「坚如磐石(2023)」、そして本作と、今もなお毎年のように監督/総監督作品を制作するというバイタリティある監督である。
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◯ 昨年放送された2つの大ヒットドラマの出演者が数多く出演している。
①ミステリードラマ「ロング・シーズン (2023) 」から
蒋奇明(チミー・ジャン)、范伟(ファン・ウェイ)、陈明昊(チェン・ミンハオ)、刘奕铁(リウ・イーティエ)※、史彭元(シー・ポンユァン)、杨一威(ヤン・イーウェイ)
※刘奕铁(リウ・イーティエ)は、そもそもドラマより先に张艺谋(チャン・イーモウ)監督の「狙击手(2022)」に映画デビュー作として出演している。
②犯罪ドラマ「狂飆<きょうひょう>-End of the Beginning- (2023) 」から
张译(チャン・イー)※、阿如那(アラン・アルナ)、高叶(ガオ・イェ)、王骁(ワン・シャオ)、王沛禄(ワン・ペイルー)、宋家腾(ソン・ジアトン)
※张译(チャン・イー)はドラマ以前から张艺谋(チャン・イーモウ)監督作では常連。
雷佳音(レイ・ジャーイン)
◯ 検察官、韩明。昇進を願い、トラブルに関わらないよう穏便で保守的に生きてきた。
◯ 色んな作品にひっぱりだこの売れっ子の雷佳音(レイ・ジャーイン)。映画では、個人的にも大好きなラブコメ「ルームシェア(2018)」&张小斐(チャン・シャオフェイ)とW主演のコメディ「交换人生(2023)」、そして「ゴッドスレイヤー 神殺しの剣(2021)」で主演。ドラマでは「長安二十四時(2019)」や「和平饭店(2018)」、「我的前半生(2017)」などが知られているが、チョイ役なども含めると膨大な作品数に出演している。
张艺谋(チャン・イーモウ)監督の前々作「満江紅(マンジャンホン、2023)」に出演、前作「坚如磐石(2023)」から主役を演じる事となった。そして、今作と同時に公開された贾玲(ジア・リン)監督・主演の大ヒット作「热辣滚烫(2024)」でも主演という、まさに俳優キャリアのピークともいえる状況になっている。
今年は陳可辛(ピーター・チャン)監督のカンヌ出品作「酱园弄 (2024) 」が控えている。
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马丽(マー・リー)
◯ 韩明の妻、李茂娟。ひたすらに息子・韩雨辰の無実を信じているが、夫・韩明の仕事ぶりはあまり信用していない。
◯ 大人気喜劇集団で今や映画製作でも毎期ごとに大ヒット作を手掛ける「開心麻花」。沈腾(シェン・トン)と並んでそこからの出世頭となった一人であり、大忙しの人気俳優だ。膨大な出演作があるが、とにかくコメディが抜群に上手く安定の演技を誇る。
主な作品は「恥知らずの鉄拳(2017)」、「完璧な他人(2018)」、「トゥ・クール・トゥ・キル(2022)」、「月で始まるソロライフ(2022)」など。
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刘耀文(リウ・ヤオウェン)
◯ 息子、韩雨辰。正義感が強く、いじめられていた同級生を助けて喧嘩となり、怪我をさせてしまう。
◯ アイドルグループ・時代少年団のメンバー。易烊千璽(イー・ヤンチェンシー)らの伝説的グループ・TFBOYSの後輩グループで、刘耀文(リウ・ヤオウェン)はラップとダンスを担当している。本作が映画デビュー作となる。
◯ ちなみに同じ時代少年団のメンバー・丁程鑫(ディン・チャンシン)は内モンゴルが舞台の映画「海的尽头是草原(2022)」に出演している。
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高叶(ガオ・イェ)
◯ 韩明の同僚である検察官、吕玲玲。韩明とは大学時代からの同級生でもある。
◯ 2010年デビュー。その年に张艺谋(チャン・イーモウ)監督作「サンザシの樹の下で(2010)」に出演している。映画「無名(2023)」の程耳(チェン・アル)監督の前々作「边境风云 (2012) 」や「提着心吊着胆 (2016) 」などに出演。
ドラマでは雷佳音(レイ・ジャーイン)主演「我爱男保姆 (2015) 」や「海上牧雲記(2015)」、「モダン・マリッジ(2022)」、そして再度雷佳音(レイ・ジャーイン)主演作「長安二十四時(2019)」や「猟罪図鑑(2022)」などと、長らくバイプレイヤーとして活動してきたが、大ヒットドラマ「狂飆 (2023) 」への出演で人気を確かなものとした。
王骁(ワン・シャオ)
◯ 韩明の上司、田副检。吕玲玲を気にかけている。
◯ 王骁(ワン・シャオ)は2002年デビュー。当初はドラマ「重案六组2 (2003) 」や映画「我的长征 (2006) 」などの警察や軍隊ものに多く出演。その後「永遠の桃花(2017)」や「夢幻の桃花(2020)」、「風はロンシーから吹く(2022)」などの古装劇でも知られるようになった。
昨年は大ヒットドラマ「狂飆 (2023) 」や映画「三大队 (2023) 」、陈凯歌(チェン・カイコー)監督作「志愿军:雄兵出击(2023)」などに出演している。
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陈明昊(チェン・ミンハオ)
◯ 韩明の妻・李茂娟の兄で警察官の李茂全。王永强の事件捜査も担当している。
◯ 陈明昊(チェン・ミンハオ)はここ数年でヒット作に恵まれ、一気に知られるようになってきた。
朱一龙(チュー・イーロン)主演の冒険ドラマ「重启之极海听雷(2020)」、尹正(イン・ジョン)主演「扬名立万(2021)」、そして三谷幸喜「ザ・マジックアワー(2008)」の中国版リメイク「トゥ・クール・トゥ・キル(2022)」など。
さらに昨年は大ヒットドラマ「ロング・シーズン (2023) 」と映画「三大队 (2023) 」に出演した。
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赵丽颖(チャオ・リーイン)
◯ 王永强の妻、郝秀萍。娘ともども耳が聞こえない聾(ろう)者である。手術費用の為に借金をした事から事件が始まってしまう。
◯ 2006年に中国Yahooが主催したオーディションで選ばれ芸能界入り。ドラマ「新还珠格格 (2011) 」での役が人気となり、「後宮の涙(2012)」の主演で更に人気となった。「お昼12時のシンデレラ(2014)」に主演の後、「花千骨(2015)」、「楚喬伝(2017)」、そして「明蘭(2017)」と大ヒット古装ドラマに立て続けに主演し、その人気を不動のものとした。
最近は「有翡(2020)」、「ワイルド・ブルーム(2022)」、「輝け!シンフー(2022)」、「与凤行 (2024) 」などのドラマに出演。
映画では良作青春映画「乗風破浪〜あの頃のあなたを今想う(2017)」に出演。陳可辛(ピーター・チャン)監督のカンヌ出品作「酱园弄 (2024) 」の公開が控えている。
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潘斌龙(パン・ビンロン)
◯ 26回も相手を刺した傷害事件の被告、王永强。
◯ 潘斌龙(パン・ビンロン)は中国漫才である相声の有名芸人。
映画出演も数多く、大鹏(ダーポン)監督とはデビュー作「煎饼侠(2015)」と「いいひと 保你平安(2023)」に出演。韩三平(ハン・サンピン)プロデュース作では「无名之辈(2018)」と「无价之宝(2023)」。
そして昨年から春節No.1ヒット作「満江紅(マンジャンホン)(2023)」と今作で、张艺谋(チャン・イーモウ)監督作品に2作目の出演となった。
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张译(チャン・イー)
◯ 张主任。子供たちの通う高校の教育主任で、非常な厳格な性格である。
◯ 今や最も売れている俳優のひとり、张译(チャン・イー)。
张艺谋(チャン・イーモウ)監督常連で、今作をはじめ「満江紅(マンジャンホン)(2023)」、「狙击手(2022)」、「崖上のスパイ(2021)」、「ワン・セカンド(2020)」等、最近の彼の作品には全て出演している。
さらに贾樟柯(ジャ・ジャンクー)、陈凯歌(チェン・カイコー)、冯小刚(フォン・シャオガン)、林超賢(ダンテ・ラム)などなど、あらゆる著名監督の作品でも活躍している。ドラマでは名作「士兵突击(2006)」や「我的团长我的团(2009)」など。
昨年は大ヒット映画「万里归途(2022)」に続くように、ドラマ「狂飆 (2023) 」から「他是谁 (2023) 」出演、映画では年末にかけて「无价之宝(2023)」、「刀尖 (2023) 」、「三大队 (2023) 」と3作連続の主演作公開で超多忙ぶりを見せつけた。
今年のカンヌ映画祭"ある視点"部門受賞作「狗阵 (2024) 」にも出演している。
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史彭元(シー・ポンユァン)
◯ 张主任の息子で、韩雨辰に暴力を振るわれたと主張する同級生、张科。
◯ 史彭元(シー・ポンユァン)は、人気サスペンスドラマ「バッド・キッズ 隠秘之罪(2020)」で知られる。
昨年はドラマ「ロング・シーズン 長く遠い殺人」や「去有风的地方」に出演。映画では王宝强(ワン・バオチャン)監督の「ネバーギブアップ(2023)」で「バッド・キッズ」と同じ孤児の役を演じた。
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李乃文(リー・ナイウェン)
◯ 子供たちの高校の学年主任、班主任。
◯ 李乃文(リー・ナイウェン)はドラマ「爱在苍茫大地(2010)」や「爷们儿(2014)」などで知られる。映画では名作「薬の神じゃない!(2018)」やコロナ禍を描いた「你是我的春天(2022)」、陈凯歌(チェン・カイコー)監督作「志愿军:雄兵出击(2023)」、「年会不能停! (2023) 」 など。ドラマ「平凡之路(2023)」にも出演。
张艺谋(チャン・イーモウ)監督作「崖上のスパイ(2021)」、「坚如磐石(2023)」にも出演している。
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蒋奇明(チミー・ジャン)
◯ 弁護士、陈律师。韩雨辰による学校での暴行事件で弁護を依頼されると同時に、王永强の傷害事件の被害者側弁護士でもある。
◯ 蒋奇明(チミー・ジャン)はミュージカルなどで活動していたが、舞台「杂拌、折罗或沙拉(2021)」で高評価を得る。昨年公開され高評価となった良SF映画「宇宙探索編集部(2021)」に出演後、大人気サスペンスドラマ「ロング・シーズン 長く遠い殺人(漫长的季节、2023)」に出演した。
今年は少数民族を描いた高評価のドラマ「我的阿勒泰 (2024) 」に出演している。
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杨皓宇(ヤン・ハオユー)
◯ 元バス運転手、张贵生。車内で発生した暴力事件の結果、仕事を失う。
◯ 杨皓宇(ヤン・ハオユー)は1974年生まれで芸歴も長いが、日本に入っている出演作は王兵監督の映画「無言歌(2010)」、 沈腾(シェン・トン)主演の「月で始まるソロライフ(2022)」、尹正(イン・ジョン)主演のミステリー「扬名立万(2021)」、ドラマでは张若昀(チャン・ルオユン)主演の「雪中悍刀行(2021)」、昨年末の王家衛(ウォン・カーウァイ)が監督した「繁花 (2023) 」などがある。
映画「流転の地球(流浪地球、2019)」への出演から昨年のヒットSF映画「宇宙探索編集部(2023)」の主演へと繋がった。
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许静雅(シュー・ジンヤー)
◯ 张贵生の娘、丫丫。
◯ 许静雅(シュー・ジンヤー)はまだ新人といえる俳優で、张艺谋(チャン・イーモウ)監督の「満江紅(マンジャンホン、2023)」で、雷佳音(レイ・ジャーイン)演じる秦檜の側に仕える二人の聾唖の女官の一人として出演している。
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范伟(ファン・ウェイ)
◯ 王永强の傷害事件の被害者の父親である建設会社社長、刘炳仁。息子の無罪を証明しようと、子分たちを使って集団で検察に押しかけたりと強硬な手段に出ようとする。
◯ 范伟(ファン・ウェイ)は小品というコント的な喜劇で活躍してきた俳優。特に1996~2003年は"春晩"という春節前夜の特番での小品に毎年出演していた。
俳優としては「胡同(フートン)愛歌(2003)」でモントリオール映画祭・主演男優賞を受賞。ドラマ「老大的幸福 (2010) 」での演技でも数多くの賞を受賞、映画「ミスター・ノー・プロブレム(2016)」で台湾金馬奨・主演男優賞を受賞した。映画「愛しの故郷(2020)」の後、大ヒットドラマ「ロング・シーズン (2023) 」に出演。
俳優でもある张国立(チャン・グオリー) が監督、周冬雨(チョウ・ドンユィ)と共演した年の差婚&障害者の映画「朝云暮雨 (2024) 」が先月に公開。さらに陳可辛(ピーター・チャン)監督のカンヌ出品作「酱园弄 (2024) 」が控えている。
张艺谋(チャン・イーモウ)監督とは「ワン・セカンド(2020)」で出演経験あり。
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王沛禄(ワン・ペイルー)
◯ 刘炳仁社長の手下、堂兄。
◯ 王沛禄(ワン・ペイルー)はドラマ「狂飆 (2023) 」で知られるようになったが、その他には歴史劇の映画「白鹿原 (2017) 」や「山海情(2021)」、人気ドラマ「開端-RESET-(2022)」などにも出演している。
李晓川(リー・シャオチュアン)
◯ 刘炳仁の会社で働く大勇。王永强とは家族ともども仲良くしていた。
◯ かまいたち山内氏にも似ている風貌の李晓川(リー・シャオチュアン)は、曹保平(ツァオ・バオピン)監督のノワール的な良作「烈日灼心(2015)」に出演した頃はまだ役名がつくのも少なかった。
だが最近では易烊千玺(イー・ヤンチェンシー) 主演のドラマ「長安二十四時(2019)」と映画「送你一朵小红花(2020)」、马思纯(マー・スーチュン)&王俊凯 (ワン・ジュンカイ)主演のディザスター映画「断·桥(2022)」、難病ものの良作「⼈⽣って、素晴らしい(2024)」などに出演し、徐々に知名度を上昇させている。
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阿如那(アラン・アルナ)
◯ 王永强の事件で刺された被害者である刘文经。刘炳仁の息子。
◯ 阿如那(アラン・アルナ)は内モンゴル自治区出身のモンゴル族俳優。
大ヒットドラマ「狂飆 (2023) 」に出演。映画では「古董局中局(2021)」、王一博主演の「熱烈(2023)」、邱禮潯(ハーマン・ヤウ)監督の「绝地追击(2023)」&「93國際列車大劫案:莫斯科行動(2023)」、そして「中国卓球~窮地からの反撃~(2023)」など、今年急速に知られるようになってきた。
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于和伟(ユー・ハーウェイ)
◯ 検察の支部長、王检。
◯ 于和伟(ユー・ハーウェイ)は古装劇「三国(2010)」で知られ、映画では冯小刚(フォン・シャオガン)監督作「わたしは潘金蓮じゃない(2016)」、ペット映画「モフれる愛(2019)」、「ゴッドスレイヤー 神殺しの剣(2021)」、郭麒麟(グオ・チーリン)と共演の「二手杰作(2023)」などに出演。ドラマでは「三体(2023、Netflix版ではなく中国版)」にも出演している。
2021年には、张艺谋(チャン・イーモウ)監督作「崖上のスパイ(2021)」で张译(チャン・イー)と同時に中国金鶏奨・主演男優賞にノミネート。さらに昨年の監督作「坚如磐石(2023)」、そして本作出演と常連となりつつある。
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许亚军(シュー・ヤージュン)
◯ 検察の曹書記。
◯ 许亚军(シュー・ヤージュン)は1980年代から活躍しており、ドラマ「寻找回来的世界 (1985) 」、「空镜子 (2001) 」、「李春天的春天 (2011) 」、「人民的名义 (2017) 」などなど数々の名作ドラマに出演してきた。ドラマ「风雨丽人 (1992) 」では数多くの演技賞を受賞している。
张艺谋(チャン・イーモウ)監督の前作「坚如磐石(2023)」に警察の上官として出演している。
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丁勇岱(ディン・ヨンダイ)
◯ 検察の高官、赵厅。
◯ 丁勇岱(ディン・ヨンダイ)は1958年内モンゴル出身の現在65歳。映画「白山黑水(1997)」などに出演していたが、初の全国公開作品「倾城(2013)」で中国金鶏奨・助演男優賞にノミネートされる。昨年の「封神~嵐のキングダム~(2023)」では四大諸侯のひとり、南伯侯鄂崇禹を演じている。
胡歌(フー・ゴー)主演の大ヒット古装劇「琅琊榜(2015)」に出演。「花様衛士(2019)」や「跨过鸭绿江(2020)」、「人世间(2022)」などにも出演している。
中国映画レビュー&解説「封神~嵐のキングダム~ 封神第一部:朝歌风云 Creation of the Gods I」 - daily diary
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刘奕铁(リウ・イーティエ)
◯ 若手検察官、小王。
◯ 刘奕铁(リウ・イーティエ)は、张艺谋(チャン・イーモウ)監督の「狙击手(2022)」で映画デビュー。その後ドラマ「人生之路 (2023) 」を経てヒット作「ロング・シーズン(2023)」に出演を果たした。昨年末の映画「三大队(2023)」 にも出演している。
中国映画レビュー&解説「狙击手(狙撃手)Sniper」 - daily diary
乔杉(チャオ・シャン)
◯ 王永强の自宅の近所の雑貨屋の主人、小卖部老板。
◯ 今や有名喜劇役者の乔杉(チャオ・シャン)は、大鹏(ダーポン)の監督デビュー作「煎饼侠 (2015) 」に主演した頃から知られるようになった。贾玲(ジア・リン)の前作「こんにちは、私のお母さん(2021)」と今作と同時期に公開された大ヒット「YOLO 百元の恋(2024)」にも出演。「沐浴之王 (2020) 」や「人生路不熟(2023)」では主演もしている。大鹏(ダーポン)の監督作品には「缝纫机乐队(2017)」と「いいひと 保你平安(2023)」にも出演と、常連となっている。
中国映画レビュー&解説「こんにちは、私のお母さん 你好,李焕英 Hi, Mom」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「YOLO 百元の恋 热辣滚烫 YOLO」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「いいひと 保你平安 Post Truth」 - daily diary
蒋诗萌(ジャン・シーメン)
◯ 雑貨店主人の妻、小卖部老板娘。
◯ 蒋诗萌(ジャン・シーメン)は中国系イギリス人の俳優で、北京電影学院在学時から漫才・喜劇を専攻していた。卒業後も相声(漫才)や小品で活躍。
俳優としてもドラマ「画江湖之不良人 (2016) 」や映画「绝望主夫 (2022) 」、ドラマ「装腔启示录 (2023) 」などに出演している。
【題材となった実話の事件】
◯ 本作は、正当防衛(中国刑法第二十条)との関わりで議論となった幾つかの過去の事件をモデルにしている。特に①の8・27昆山ナイフ所持殺人事件での騒動が、映画製作の直接のきっかけとなっている。映画では直接的に再現せず、ポイントを拾ったような形にアレンジしてあるが、多くの中国人はこれらの事件を記憶しているだろう。
正当防衛:自分の身体や生命等が危険に晒されている時、守る目的でやむを得ずに行った行為は処罰されない事。
① 8・27昆山ナイフ所持殺人事件(于海明正当防卫案)
2018年8月27日夜、江蘇省昆山市で自転車に乗っていた於海明という男は、横から強引に入ってきたBMWに惹かれそうになった。BMWの運転手は降りてきて罵声を浴びせた上に暴行、挙げ句に運転席からナイフを取り出し振り回してきた。もみ合う中、於海明は咄嗟にナイフを奪い、逆にドライバーを刺殺してしまったという事件。
刺殺されたドライバーは飲酒運転の上、日本で言う"右翼の構成員"で素行の悪い人物だったが、当初は過剰防衛という事で立件されそうになった事で大問題になった。
② 赵宇过傷害事件(赵宇过失致人重伤案)
2018年12月26日の夜、福州にある自宅で女性の叫び声を聞いた赵宇がその部屋に駆けつけると、泥酔した50歳の男が女性を強姦しようとしているところを発見。その男を殴打したが、男は結腸破裂の重症を負った。
傷害の容疑で13日間勾留され立件されそうになったが、赵宇はSNSで状況を公開。大きな話題となり、最終的に不起訴の決定が出た。
③ 7·11河北反撃事件(河北涞源反杀案)
2018年7月11日夜11時頃、河北省の山村にある王さんという名の若い女性と家族の自宅に、以前からストーカー行為や脅迫を繰り返していた男・王磊がナイフ等を持って侵入。
対抗した家族と揉み合いになり、逆に頭や首を切られた男が死亡した。
当初両親は逮捕され、殺人容疑で起訴されそうになっていたが、最終的に正当防衛が認められた。
◯ さらに王永强の事件のエピソードには、2022年に発覚して大ニュースとなった、江蘇省徐州での、首を鎖に繋がれて粗末な小屋に閉じ込められていた8人もの子供の母親の事件を想起させるという指摘もある。この件は不透明な結末を迎えており、未だ真相が明らかとは言い難い状況にある。