中国映画レビュー&解説「扬名立万 Be Somebody」

扬名立万 Be Somebody: 豆瓣

 

 

扬名立万


www.youtube.com 《扬名立万》be somebody trailer

 

 

 

【スタッフ & キャスト】

2021年 中国
監督: 刘循子墨(リウ・シュンズーモオ)
出演: 尹正(イン・ジョン)邓家佳(ダン・ジャージャー)喻恩泰(ユー・エンタイ)杨皓宇(ヤン・ハオユー)陈明昊(チェン・ミンハオ)秦霄贤张本煜(チャン・ベンユー)柯达

 

 

 

【あらすじ】

第二次大戦後中華民国時代の中国。問題行動で不遇にある元ジャーナリストで脚本家の李家辉は、ある日呼び出された洋館に赴くと、そこに監督や女優、アクション俳優などが集められ、ある事件を下敷きに犯罪サスペンス映画を作るという話になっていた。
なんと、その為に実際の犯人も呼んであるという。訝しむ李家辉たちも話を聞き始めるのだが、そこには驚くべき事実が隠されていた。

 

 

【感想】

映画冒頭の印象から大きく変貌するエンディングまで、会話劇、ミステリー的謎解き、アクションと色んな形式で展開していくエンタメ風味なサスペンス映画。

前半と後半でガラリと印象が変わる。大部屋に集まり、推理チームとなる面々が互いの思惑を探りつつ会話を繰り広げていく前半。チームの面々はどれもクセの強いキャラで、演技も少々デフォルメが強く、下に掲載した告知ビジュアルのように、漫画キャラ的な濃いテイスト同士のやり取りが交錯する。ただ、ちょっとその濃さのせいで話がなかなか入ってこない部分もある。

 

扬名立万

 

ところが後半は一気にテイストが変わり、シリアスでハードボイルド、ロマンティックな盛り上がりへと駆け上がっていく。前半ではバラバラに投げられ、推理チームそれぞれの会話の中に散らばっていたピースが、事件の真相へと一気に集まっていく。後半で一気にカタルシスへとたどり着けるのだ。

ファッションやセットも美しい。戦後すぐの設定だが戦前ぽさを強く感じさせる。特に娘が歌う夜のナイトクラブのシーンや町中の風景、モガっぽいパーマのかけ具合も素晴らしいし、エンディングのとある外国の街角のシーンなど、しっかりとお金をかけて作られているのがわかる。

もし前半で挫けそうになっても、もう少しだけ我慢してみてほしい。きっと「見てよかった」と思える映画だ。

 

扬名立万

 

 

 

【トピック】

○ 2021年11月11日に公開され、初週から3週連続興収ランキングトップを維持。1ヶ月後の12月24日に興収9億元(176億円)を達成しヒット作となった。2022年の中国百花奨では最優秀脚本賞を受賞している。

 

韩寒(ハン・ハン)がプロデューサーとして携わっている。元々80后世代の作家として、忖度せずに発言する点などから若者に大人気となる。その後レース活動などと並行して映画の制作も開始。「いつか、また(2014)」を始めとして、「乗風破浪〜あの頃のあなたを今想う(2017)」、「ペガサス/飛馳人生(2019)」とヒット作を監督し続け、今年2月に4作目となる「四海(2022)」を公開。本作は初のプロデュース作品となる。

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○ 監督・脚本の刘循子墨(リウ・シュンズーモオ)は、本作が長編映画の監督デビュー作。俳優でもあり、2015年に黄建新(ホアン・ジェンシン)監督「ストームブレイカーズ 妖魔大戦」に主演格で出演し、この作品の美術指導が本作プロデュースの韩寒(ハン・ハン)だったという関わりだ。
その後同じ黄建新(ホアン・ジェンシン)監督作「建軍大業(2017)」にも出演している。

 

 

 

尹正(イン・ジョン)

○ 主人公の元ジャーナリストで脚本家、李家辉を演じたのは尹正(イン・ジョン)。本作のプロデューサーである韩寒(ハン・ハン)監督作の常連で、彼の最新作「四海 (2022)」でも主人公の兄貴分役で出演、「ペガサス/飛馳人生(2019)」でもコ・ドライバー役で出演していた。歌手でもある。喜劇集団「開心麻花」関連作にもよく出演しており、「夏洛特烦恼(2015)」「恥知らずの鉄拳(2017)」にも出演。ドラマでは「麻雀(2016)」「君、花海棠の紅にあらず(2020)」など。

扬名立万

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邓家佳(ダン・ジャージャー)

○ 女優・苏梦蝶を演じたのは邓家佳(ダン・ジャージャー)。本作で中国華鼎奨 最優秀主演女優賞を獲得している。ドラマ「爱情公寓」シーズン2(2010)以降の出演で知られるようになり、郭富城(アーロン・クォック)主演のサスペンスドラマ「全民目击(2013)」で中国百花奨 最優秀助演女優賞を受賞した。犯罪ドラマ「バーニング・アイス -無証之罪-(2017)」にも主演。今年は東野圭吾「回廊亭の殺人」が原作のドラマにも主演している。

扬名立万

 

 

 

 

喻恩泰(ユー・エンタイ)

○ 調子のいい監督・郑千里の役は喻恩泰(ユー・エンタイ)。ドラマ「武林外传(2006)」で知られるようになり、「大秦帝国 縦横 =強国への道=(2012)」「孤城閉 ~仁宗、その愛と大義~(2020)」などに出演。映画「火锅英雄(2016)」にも出演している。
監督はこのキャラに、映画版「シティハンター(1993)」などを監督した、80年代以降に活躍した尊敬する香港人映画監督:王晶(ウォン・ジン)をイメージしたとの事だ。

扬名立万

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杨皓宇(ヤン・ハオユー)

○ サイレント映画時代のスターで、トーキー登場により不遇をかこつ俳優、关静年の役は杨皓宇(ヤン・ハオユー)。
1974年生まれで芸歴も長いが、日本に入っている出演作は王兵監督の映画「無言歌(2010)」、ドラマでは张若昀(チャン・ルオユン)主演の「雪中悍刀行(2021)」など。

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陈明昊(チェン・ミンハオ)

○ 映画制作の主導者、陈明昊(チェン・ミンハオ)はここ数年でヒット作に恵まれてきた。朱一龙(チュー・イーロン)主演の冒険ドラマ「重启之极海听雷(2020)」、三谷幸喜「ザ・マジックアワー(2008)」の中国版リメイク映画「トゥ・クール・トゥ・キル(2022)」などで知られている。

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秦霄贤

○ 警察官海兆丰を特別出演で演じたのは、漫才師である秦霄贤。
德云社(徳雲社)という超有名漫才師郭德纲(グオ・ダーガン)が率いる大人気相声(漫才)団体の看板メンバー。同じく德云社所属で、易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)主演「送你一朵小红花(2020)」にも出演した先輩の人気漫才師、岳云鹏(ユエ・ユンポン)と同じく活動のメインは相声(漫才)だ。

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张本煜(チャン・ベンユー)

○ 凶悪犯、齐乐山を演じたのは张本煜。
2013年からのドラマ「报告老板!」シリーズや「万万没想到(2013)」など、今作の監督、刘循子墨(リウ・シュンズーモオ)が監督したドラマによく出演しており、その人脈からのキャスティングだろう。「乗風破浪〜あの頃のあなたを今想う(2017)」、「ペガサス/飛馳人生(2019)」と、今作のプロデューサー韩寒(ハン・ハン)監督作2作にも出演している。

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柯达

○ ハリウッドで(日本人役ばかりの)カンフー映画俳優をやっていた陈小达を演じたのは柯达。
上記犯人役の张本煜と同じく、今作の刘循子墨(リウ・シュンズーモオ)監督作品に関わっているが、ドラマ「报告老板!(2013)」シリーズや「万万没想到(2013)」のどちらでも脚本も書いている。

○ 

 

 

 

 

余皑磊(ユー・アイレイ)

○ 現場を捜査する警察の上官を演じたのは、余皑磊(ユー・アイレイ)。
昔から数多くの映画に出演している。「薄氷の殺人(2014)」「最愛の子(2014)」、古装劇「武則天 -The Empress-(2015)」「誘拐捜査(2015)」「ピースブレーカー 破・局(2017)」などなど。最近では劉偉強(アンドリュー・ラウ)監督作2作「フライト・キャプテン(2019)」「アウトブレイク ~武漢奇跡の物語~(2021)」にも出演していた。来年2月から日本公開のチャン・イーモウ監督作「崖上のスパイ(2021)」にも出演している。

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邓恩熙

○ 犯人齐乐山の娘である歌手、夜莺を演じたのは邓恩熙。2005年生まれのまだ10代の俳優だが、中国版「容疑者Xの献身(2016)」で協力する女性の娘の役で出演。岩井俊二監督作「チイファの手紙(2018)」にも出演しており、芸歴は長い。ドラマでは易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)を擁するTF BOYS主演のドラマ「我們的少年時代(2017)」や、ウェブドラマ版「唐人街探案(唐人街探偵、2020)」などに出演している。

扬名立万

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