今年見た中華系映画は21本（中国映画16本、香港映画5本）となった。5本に絞ってこの1年で良かった作品をベストテン的に選んでみたい。
幾つかの作品で中国映画の新しい潮流を感じた。エンタメ映画でも作り手の思いをしっかり入れ込むという、今の世界的な流れを中国映画でも反映し始めている事が、作品からもよりはっきりと感じる事ができたと思う。
今年前半はコロナ禍に大きく影響を受けて、大作映画があまり公開されなかった事もあり、結果的に皆で楽しめる純粋なエンタメ作品が減った事もあるのだろう。来月の春節映画では「流浪地球2」が公開される予定だが、同じような大作が他にも公開されるかどうか、ポイントかと思う。
また「少年の君」の公開以降、日本公開作品も以前より遥かに増え、公開時期もグッと早くなってきているのも嬉しい限りである。
中国映画レビュー「流転の地球 -太陽系脱出計画- 流浪地球2 The Wandering Earth 2」 - daily diary
中国映画レビュー「少年の君 少年的你 Better Days」 - daily diary
- 5. レイジング・ファイア 怒火 Raging Fire
- 4. アニタ 梅艷芳 Anita
- 3. 白さんは取り込み中 爱情神话 B for Busy / Myth of Love
- 2. 星明かりを見上げれば 人生大事 Lighting Up the Stars
- 1. 妈妈！ Song of Spring
5. レイジング・ファイア 怒火 Raging Fire
2021年香港
監督：陳木勝（ベニー・チャン）
出演：甄子丹（ドニー・イェン）、謝霆鋒（ニコラス・ツェー）、秦嵐（チン・ラン）、呂良偉（レイ・ロイ）、任達華（サイモン・ヤム）、譚耀文（パトリック・タム）、黃德斌（ケニー・ウォン）
何よりもニコラス・ツェーの格好良さに尽きる。まるでPVのような印象的なカットの数々、深みのあるキャラ造形、練りに練った躍動的なアクション。見終わった後も、残像のようにンゴウの存在感が余韻となって頭の中を支配する。続編を見たいのに、それももう叶わなくなってしまった。
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4. アニタ 梅艷芳 Anita
2021年 香港
監督: 梁樂民（リョン・ロクマン）
出演: 王丹妮（ルイーズ・ウォン）、劉俊謙（テレンス・ラウ）、廖子妤（フィッシュ・リウ）、林家棟（ラム・カートン）、古天樂（ルイス・クー）、楊千嬅（ミリアム・ヨン）、楊祐寧（トニー・ヤン）、中島 歩、岩城滉一
見終わって心に残るのは、香港の芸能界が如何に面白かったかだ。日本の芸能界に似ているようでまた違う、あの世界ならではの面白さが凝縮されていた。それと共に、如何にあの頃の香港が、他のどこの国とも違うあそこにしかない世界だったかを実感する。だからこそ香港が失われつつある今見る価値がある映画だ。見るならば間違いなく劇場版を勧める。
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3. 白さんは取り込み中 爱情神话 B for Busy / Myth of Love
2021年 中国
監督: 邵艺辉（シャオ・イーホイ）
出演: 徐铮（徐崢、シュー・ジェン）、马伊琍（マー・イーリー）、吴越（ウー・ユエ）、倪虹洁（ニー・ホンジエ）、周野芒（ジョウ・イエワン）、黄明昊（ジャスティン、ホアン・ミンハオ）
本当にこの映画が良いのか、実ははっきりわかっていない。虚実も入り混じった「上海」の姿も、これが正解なのかもはっきりしない。でも、色々な大人がこの独特の空気を漂わせる街に住んでいるのは間違いないし、そういう上海に住んでみたいなと思わせてくれるのも間違いない。きっと住んでみたら違うと思う事だってあるし、この映画だって歴史を積み重ねた街のひとつの面を切り取っただけの事だろう。そんな風に色々と考えさせてくれる余韻はこの映画の美点のひとつだ。新しい中国映画のひとつだと思う。
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2. 星明かりを見上げれば 人生大事 Lighting Up the Stars
2022年 中国
監督: 刘江江（リウ・ジアンジアン）
出演: 朱一龙（チュー・イーロン）、杨恩又（ヤン・エンヨウ）、王戈（ワン・ゴー）、刘陆（リウ・ルー）、罗京民（ルオ・ジンミン）、吴倩（ウー・チェン）、李春嫒（リー・チュンアイ）
これぞ中国映画らしさが全開の素敵な映画。猥雑で、情に厚くて、皆で頑張って作り上げる熱意。とにかく頑張っているのがすごい伝わる。それがちゃんと映画の魅力に繋がっている。莫三妹も頑張っていたが、朱一龙も頑張った。杨恩又も頑張って、今年一番良い子役と思える演技を見せてくれた。
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1. 妈妈！ Song of Spring
2022年 中国
監督: 杨荔钠（ヤン・リーナー）
出演: 吴彦姝（ウー・イェンシュー）、奚美娟（シー・メイジュエン）、文淇（ウェンチー）、朱时茂（ジュー・シーマオ）
今年最後に最高の驚きをもらった映画だ。とにかく鑑賞中何度も驚かされた。力技というか、熱意というか、携わった女性たちの強い意志が作り上げた事がビンビンに伝わる。でも、素晴らしく柔らかいタッチで、大変に美しい画面に溢れている。何もできずに映画を見るしかない私たちは、ただ彼らを尊敬するしかない。この映画、金鶏奨で受賞しなければまず見ることはなかっただろう。この驚きをくれた、きちんと評価してくれた金鶏奨の選考委員にも感謝したい。
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