中国映画レビュー「四海 Only Fools Rush In」

四海 Only Fools Rush In

 

 

 

四海四海


www.youtube.com

 

【スタッフ & キャスト】

2022年 中国
監督: 韩寒(ハン・ハン)
出演: 刘昊然(リウ・ハオラン)刘浩存(リウ・ハオツン)沈腾(シェン・トン)尹正(イン・ジェン)乔杉(チャオ・シャン)周奇(ジョウ・チ)

 

 

【ストーリー】

吴仁耀(刘昊然)は南部の小島に住む若者だ。友人もおらずバイクだけを相棒として過ごしていた。認知症の祖母と暮らし、都会で働くいい加減な父親が久しぶりに帰ってくるだけという日々のはずだった。だがある日、想いを寄せる周欢颂(刘浩存)とその兄(尹正)と知り合うことで彼の人生に変化が訪れる。

 

【感想】

あの瞬間にしか味わえない若者たちの空気がグッと詰まった青春映画だった。ストーリー自体はシンプルだが、韩寒(ハン・ハン)監督らしい独特な演出が多いので最後まで楽しめた。

韩寒(ハン・ハン)監督は、過去作でも常に本作のような空気感を描いており、今回もある程度予想するくらいには、監督のカラーとなっている。その空気感とは、男のロマンと言えるかもしれないし、若者の熱い気持ちとも言えるかもしれない。情熱だけはあり余るほどあるが、だからこそ後先考えずに行動する男が主人公だ。でも今回は、そういった情熱的なシーンは前半で終わる。後半では一気にトーンが変わっていく。

 

四海

 

そもそも刘昊然(リウ・ハオラン)が演じる主人公が、過去作とは違う。言葉数も少なく心優しいが情熱的な部分も隠し持っている。「唐人街探偵」シリーズなどでのキャラとは大きく違う、男臭く目つきも鋭い、深みを増した雰囲気が渋くて、たいへん好ましかった。バイクに跨ったときや父親を見る時の目つきなど、年齢は若いのに達観したような、こちらがドキっとするような鋭さがあった。沈腾(シェン・トン)演じるいい加減で、どうやって町で生計を立てているのかも怪しい父親は、果たしてストーリーに必要なのか疑問だったが、主人公の個性をより際立たせる効果は十分に発していたと思う。ともあれ、主人公の深みのあるキャラクターは、後半のストーリーでより際立ってくる。

 

四海

 

前半の舞台である島の港町は広東省の南澳島でロケされている。台湾の西側あたりに位置する島の風景が素晴らしい。都市のシーンは広州で撮影されているが、こちらはあえてモノトーンの味気ない風景を選んだり夜や雨のシーンが多く、故郷への郷愁を誘う。

後半は二人の話になっていくが、この二人は最初から最後まで本当の気持ちを言葉にする事はないまま物語が進んでいく。でもそれが良い。それでも映像だけで二人の気持ちが動いていく様子がしっかりと伝わって、だからこそ切なさがより一層際立つのだ。

展開にいろいろ唐突な部分があったり、いつも通りの力が入りすぎなレースシーンなど、クセが強いのはいつも通りだなと苦笑しつつも、前々作「乗風破浪(2017)」を超えるくらいの良作だったと思う。

 

中国映画レビュー「乗風破浪〜あの頃のあなたを今想う 乘风破浪 Duckweed」 - daily diary

 

四海



 

 

 

【トピック】

○ 2022年春節映画として2月1日に公開された。初週は興収ランキングで5位につけた。公開10日後には興収5億元(約102億円)を突破。

 

 

四海

○ 監督の韩寒(ハン・ハン)は、元々80后世代の作家として、忖度せずに発言する点などから若者に大人気となる。その後レース活動などと並行して映画の制作も開始。「いつか、また(2014)」を始めとして、「乗風破浪〜あの頃のあなたを今想う(2017)」「ペガサス/飛馳人生(2019)」とヒット作を作り続け、本作が4作目となる。昨年公開の「扬名立万(2021)」ではプロデューサーとして主演の尹正(イン・ジェン)と共に関わっている。

中国映画レビュー「乗風破浪〜あの頃のあなたを今想う 乘风破浪 Duckweed」 - daily diary

中国映画レビュー「ペガサス/飛馳人生 飞驰人生 Pegasus」 - daily diary

 

 

 

刘昊然(リウ・ハオラン)

四海

○ 主人公の吴仁耀を演じる刘昊然(リウ・ハオラン)は、大ヒット作「唐人街探偵」シリーズで知られる。ドラマでは「琅琊榜<弐>」など。最近では映画「1921(2021)」にも出演していた。

時代の境目(中国映画5本レビュー) - daily diary(唐人街探偵 THE BEGINNINGレビュー)

中国映画レビュー「唐人街探偵 NEW YORK MISSION 唐人街探案2 Detective Chinatown 2」 - daily diary

中国映画レビュー「唐人街探偵 東京MISSION 唐人街探案3 Detective Chinatown 3」 - daily diary

中国映画レビュー「1921」 - daily diary

 

 

刘浩存(リウ・ハオツン)

四海

○ 吴仁耀が想いを寄せる、飲食店で働く周欢颂役の刘浩存(リウ・ハオツン)。巨匠张艺谋(チャン・イーモウ)監督の映画「ワン・セカンド 永遠の24フレーム(2020)」で大抜擢され一気に知られるようになった。幾つかのスキャンダルがあるが、张艺谋(チャン・イーモウ)監督作の「崖上のスパイ(2021)」の他、佳作だった易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)主演の映画「送你一朵小红花(2020)」などに出演している。

中国映画レビュー「送你一朵小红花 A Little Red Flower」 - daily diary

 

 

 

尹正(イン・ジェン)

四海

○ 周欢颂の兄、周欢歌役の尹正(イン・ジェン)は、韩寒(ハン・ハン)監督の前作「ペガサス/飛馳人生(2019)」でもコ・ドライバー役で出演していた。歌手でもある。「開心麻花」関連作にもよく出演しており、「夏洛特烦恼(2015)」「恥知らずの鉄拳(2017)」にも出演。ドラマでは「麻雀(2016)」「君、花海棠の紅にあらず(2020)」、最近の映画では昨年「扬名立万」が主演で公開され評判が高かった。

中国映画レビュー「恥知らずの鉄拳(羞羞的铁拳/羞羞的鉄拳)Never Say Die」 - daily diary

中国映画レビュー「扬名立万 Be Somebody」 - daily diary

 

 

 

沈腾(シェン・トン)

四海

○ 吴仁耀の父親役を演じた沈腾(シェン・トン)も、監督の前作「ペガサス/飛馳人生(2019)」での主演からの続投だ。説明の必要もない大スター/喜劇俳優。

 

 

 

乔杉(チャオ・シャン)

四海

○ 上海でのサーカス団を率いる梓良叔役の乔杉(チャオ・シャン)も超有名芸人。「こんにちは、私のお母さん(2021)」にも出演していた。

中国映画レビュー「こんにちは、私のお母さん 你好,李焕英 Hi, Mom」 - daily diary

 

 

その他

四海

○ 周欢歌の弟分のひとり、动兔を演じたのは周奇(ジョウ・チ)。ドラマ「リトルハピネス~小歡喜(2019)」で知られるようになった。

 

 

四海

○ 周欢歌の弟分のもうひとり红尘は张宥浩(チャン・ヨウハオ)が演じた。杨幂(ヤン・ミー)主演のドラマ「永遠の桃花~三生三世~」などに出演している。

 

 

 

○ パーティで出会う大物っぽい人物を黄晓明(ホアン・シャオミン)

四海

 

 

○ 二人を追いかける警官を冯绍峰(ウィリアム・フォン)が演じている

四海

 

 

 

音楽

○ 主題歌は尤长靖と房东的猫による「爱与喜欢的区别」というMONGOL800の「小さな恋のうた」のカバー。訳詞はまたもや韩寒監督自身による。彼は前々作「乗風破浪(2017)」でもさだまさし「関白宣言」を自身訳詞で主題歌にしていた。


www.youtube.com

 

○ こちらの曲「故乡的云」の方が映画の雰囲気により近い。このMVでは出演者達の歌唱も見れる。


www.youtube.com

 

 

 

www.teppayalfa.com

 

www.teppayalfa.com