中国映画レビュー「你好,李焕英 Hi, Mom」

「你好,李焕英 Hi, Mom」

 

 

你好,李煥英


www.youtube.com 《你好,李焕英》/ Hi, Mom 发布《依兰爱情故事》MV ( 贾玲 / 沈腾 / 陈赫 / 张小斐 )【电影预告 | Movie Trailer】

 

【スタッフ & キャスト】

2021年 中国
監督: 贾玲(ジャー・リン)
出演: 贾玲(ジャー・リン)、张小斐(チャン・シャオフェイ)沈腾(シェン・トン)陈赫(チェン・ハー)刘佳(リウ・ジャ)

 

【ストーリー】

贾晓玲(ジャー・シャオリン)は、小さい頃からパッとせず母親を失望させてばかりいた。さらに自らの不注意による交通事故で母が瀕死の重傷を負う。自分を責め、母のベッド際で泣いていると、気づけば1981年の中国へとタイムスリップしていた… まだ自分を産む以前の頃の母親に出会い、彼女は母により良い人生を歩んでもらおうと手助けをする決意をするが…

 

【感想】

シンプルなストーリー、でも最後に泣かせてくれるド直球な母娘の物語。ノスタルジックとコメディ要素がたっぷりで、この2つがハマれば大満足なのは間違いない。個人的には初回見た時はノリきれなかったが、それでも最後はしっかり泣いた。2回見るとコメディ部分や母親のキャラを理解でき、より楽しめた。
大ヒット映画という事で見たのだが、監督・主演の贾玲(ジャー・リン)はこれが初監督とは思えない手堅い作りで、最後まで安心して見ていられる。彼女はそもそも漫才師 (相声) として不動の人気を持つ一流芸人であり、本作も元々新喜劇のような舞台喜劇として演じられたものなので、企画そのものも手堅い作りだったが、それにしても出来がいい。
ほぼ全編が1981年が舞台で、文化大革命が終わった頃の、まだ共産主義色の強かった時代が美しい映像で再現されていて、それを見ているだけでも楽しい。貧しくも明るい生活があった事がわかるし、特に、今資料で見てもあんまり伝わってこない男女交際の雰囲気がわかるのがとても楽しい。言ってみれば「愛の不時着」の北朝鮮シーンを見ているような感覚だ。BGMもディスコ調のものが多く、時代感があって楽しい。
この時代は文化大革命後、改革開放政策は始まったがまだ生活にまで浸透しきらず、僕らが一昔前に中国としてイメージしていた「大量の自転車が走っている」あの感覚の時代。テレビ購入がチケット制のように、配給制の名残りがまだまだ残っている時代だが、その空気感がとても理解しやすい。この時代には自転車、テレビ、ラジカセ、扇風機が三種の神器的な憧れだったそうだが、テレビのシーンはそれがすごく体感できる場面だった。自転車も随所でキラキラと晴れがましく映り込んでいたり、物の少ない百貨店の雰囲気もまた面白い。なによりデートが湖畔でのボートだったり、映画だったり、日本なら50〜60年代にあったような文化風俗を楽しんでいるのを見ていると、80年代の中国に行ってみたくなるものだ。
こういう時代を生きてきた母親たちが、激変する価値観をくぐり抜けて自分たちを育ててくれたと知っているからこそ、中国の観客はより本作に感動したのかもしれない。今ではチャイニーズドリームのような一攫千金の夢が持てるほどになったが、80年代までの中国は、まるで「北の国から」の黒板吾郎のような、ただひたすら地道な努力と節約しか蓄財の方法が無く、多くはこの母親のような価値観で頑張ってきたのだろう。多くの観客は、あの贾玲(ジャー・リン)本人も貧しい環境の中で育った事も、その母親を若くして失った事もよく知っていて、まるで親しい知人の母娘の話としてより深く共感しながら見たんではないだろうか。

 

【トピック】

○ 元々は2016年に発表した舞台の喜劇だった。映画の主なキャストはこの時の喜劇と同じである。


www.youtube.com FULL《你好李焕英》 陈赫/贾玲 【小品】《喜剧总动员》第1期 20160910【浙江卫视官方超清1080P】

○ 今年の春節映画として2月12日に公開されたが、「唐人街探偵 東京MISSION」を抜き最高の動員を記録し、その後も4週連続で興収ランクトップを維持した。5月末で興収54億元(910億円)を突破し、「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー 战狼2 (2017)」の持つ中国歴代興収記録(56.8億元=1000億円)を超え歴代中国映画最高を記録するのはほぼ間違いない。現時点で既に女性監督として世界で最多興収の監督となっている。ちなみに制作費はわずか1億元(16億円)以下である。
○ 監督・主演の贾玲(ジャー・リン)は中国なら誰もが知る超人気芸人である。15年以上、主に中国漫才(相声)や舞台喜劇で活躍している。自分の周囲の中国人にも聞いてみたが、20代の若者も含めて全員が彼女をよく知っていた。春節の大晦日の晩、中国中央電視台では「春晩」という紅白歌合戦的な超大型お笑い番組をやるのが恒例だが、ここでの「小品」という新喜劇的コントの毎年の常連だ。フォーブス中国有名人ランキングでも、易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)王一博(ワン・イーボー)に続き今年も堂々3位にランクされた。
○ 撮影は贾玲(ジャー・リン)の出身地である湖北省の工場や跡地で行った。今も当時の建物やバレーコートなどが残っており、映画公開後多くの人が訪れている。

○ 現代の父親役は、贾玲(ジャー・リン)の実父である。
○ 工場長の息子でコーラス部の指導をしている沈光林役は沈腾(シェン・トン)。喜劇集団「开心麻花」出身の超人気喜劇役者で、「ペガサス/飛馳人生 飞驰人生(2019)」「恥知らずの鉄拳(羞羞的铁拳/羞羞的鉄拳)(2017)」「西虹市首富(2018)」「疯狂的外星人(2019)」など、多数の映画に主演している。
○ ヤンキーだが贾晓玲(ジャー・シャオリン)を好きになる冷特役は陈赫(チェン・ハー)。元々コメディ映画が得意な役者だったが、近年は演劇を主に活動している。映画が主だった頃の「微爱之渐入佳境(2014)」「僕はチャイナタウンの名探偵 唐人街·探案(2015)」に出演している。
 

「微爱之渐入佳境」のレビュー

www.teppayalfa.com

○過去の父親役を演じたのは乔杉(チャオ・シャン)。彼も大人気の喜劇役者だ。映画にもよく出ていて「完璧な他人 ~スマホが暴く秘密たち~ 来电狂响(2018)」「沐浴之王 Bath Buddy(2020)」などにも主演している。