中国映画レビュー「長津湖の戦い 长津湖 The Battle at Lake Changjin」

「長津湖の戦い 长津湖 The Battle at Lake Changjin」

 

 

长津湖


www.youtube.com 《长津湖》/ The Battle at Lake Changjin 战火洗礼 新兵伍万里的成长之路( 吴京 / 易烊千玺 / 胡军)【预告片先知 | Official Movie Trailer】

 

【スタッフ & キャスト】

2021年 中国
監督: 陈凯歌(チェン・カイコー)徐克(ツイ・ハーク)林超贤(ダンテ・ラム)
出演: 吴京(ウー・ジン)易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)段奕宏(ドアン・イーホン)朱亚文(ジュー・ヤーウェン)李晨(リー・チェン)韩东君(エルビス・ハン)胡军(フー・ジュン)张涵予(チャン・ハンユー)

 

 

【ストーリー】

1950年(昭和25年)11月27日から12月11日にかけて発生した、朝鮮戦争下の北朝鮮エリアでの国連軍vs中国人民解放軍との戦闘、国連軍を撃破する中国軍の勇姿、長津湖の戦いを描く。

 

【感想】

2時間56分と上映時間も長いオーソドックスな作りの戦争映画だが、戦闘シーンはしっかり作られていた。

なにせ長く感じた。3時間弱をかけて事実上一回の戦闘について描いていることもあり、観客の興味をそのシーンまでいかに惹きつけ続けていくかがポイントかと思う。そしてそこでは、易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)演じる新人兵士の成長や、チームとしての部隊が徐々にまとまっていく様子、マイナス30℃を越える極寒の環境描写、アメリカを中心とした国連軍のクリスマス〜帰還を待ち侘びる様子などなど、色々描かれてはいる。とはいえ、それぞれがありきたりというか、"標準的な戦争映画"でよく出てくる情景を見せていくという感覚に終始していて、正直新鮮味に欠ける。史実の上での長津湖の戦いでは、中国は北朝鮮からの参戦要請を再三無碍にした後、国連軍の更なる侵攻に自国領土の危機感を覚えた事でついに参戦に舵をきるという経緯で、そのような部分もとても面白いのだが、その種の国際情勢などはほとんど描かれていない。一方で戦闘までの行軍の過程でも、厳しくもあり楽しくもありという、ベタなホモソーシャル的ワイワイキャッキャ描写が続く。戦場の非情な現実も時折入るのだが、それについても死を客観視するような敵味方平等な目線では無く、”意気あがる我らを残虐なアメリカ軍人達が襲ってくる”的な描写で、単純な英雄物語風の展開となる。こういったある意味どこかで見たような場面が、クライマックスである戦闘シーンまで実に2時間以上も延々と続くので、正直かなり退屈してしまった。

ただいざ戦闘が始まると、さすが徐克(ツイ・ハーク)&林超贤(ダンテ・ラム)というメリハリの効いた大迫力のシーンが続く。絨毯爆撃のような壮絶な爆破の量、30分も続く見せ場の連続も見ものだし、緩急のつけ方やそれぞれの役者ごとのシーンもきちっと見せてくる。なにより集団戦なのに状況の推移を整理して見せるのでどうなっているのかが把握しやすくてわかりやすく熱中できた。余談だが、個人的には偵察のシーンなどで朝鮮戦争といえばの定番ヘリ、シコルスキーH-5の独特のいびつな形が大写しに映るのが最高であった。

そういった戦闘アクションシーンも含めた映画全体のカタルシスは、結局は"米軍に勝つ"という強い意志その一点でドライブしていく。まるで古典的なヒーロー映画が、存在としての"悪"をやっつける勧善懲悪ものと同じような作りになっていて、70年代ニューシネマ以降の映画の歴史が無かった事になったような、別の世界線の映画を見ているようだった。今までのいわゆる主旋律映画も、ここまで"悪の枢軸"的な存在を出さなかったし、それよりは自分たちは誇らしい存在だという着地こそあれ、こんなにはっきりと敵を倒す形は無かったと思う。どうしてこんな映画を作り、それがヒットしたのか…想像するに、彼らも一度はこういう純粋で堂々たる、本格的な歴史大作を"決定版"的な規模で作りたかったのではないか。ここ数年たくさん作られてきた主旋律映画のピークは、もしかしたら昨年の共産党100年がひとつの区切りで、このタイミングでドカンと二度と作れないくらいの大作をモノにしたかったんじゃなかろうか。観客も、このわかりやすい勧善懲悪の自国礼賛映画の狙いに応える形でヒットへと結びついた。作る側も観る側も一ミリたりとも国外への視線が存在しないピュアな国内向け映画。そんな事を思って観ていた。

 

 

【トピック】

○ 2021年9月30日に公開され大ヒット。本年は「スパイダーマン・ノーウェイホーム」に次ぐ世界第2位の興行収入(57億元=約1000億円)となった。「こんにちは、私のお母さん」「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー(2018)」を超え、中国映画史上最高の興収を記録した。

○ 陈凯歌(チェン・カイコー)、徐克(ツイ・ハーク)、林超贤(ダンテ・ラム)の三人で共同で監督している。本来は刘伟强(劉偉強 アンドリュー・ラウ)も監督を務める予定であったが「アウトブレイク(中国医生)」の撮影のために離脱し3人となった。

○ プロデューサーには「建国大業(2009)」「愛しの母国(我和我的祖国、2019)」「1921(2021)」など主旋律映画を多く手掛ける黄建新(ホアン・ジェンシン)が携わっている。

○ 撮影は、主に浙江省にある寒山湖や北朝鮮に接する遼寧省丹東など。

○ 最後のシーンで軍勢の中ではためくのが中国国旗でなく無地の赤旗だったのは、中国人民志願軍の軍旗だからだ。当時西側との全面戦争化を避け、朝鮮戦争に参戦していないという体を維持するために、人民解放軍本体ではなく”人民志願軍”という名の義勇兵部隊が参戦したという形をとった為、あのような旗を使用した。

○ 続編の「长津湖之水门桥(長津湖の水門橋)」が早くも今年2月に公開予定。


www.youtube.com 《长津湖之水门桥》发布终极预告 《赢者无畏》全网上线【中国电影报道 | China Movie News】

 

 

吴京(ウー・ジン):伍千里役

第七連隊隊長 米軍31連隊”北極熊団”の団旗を奪取した隊の隊長である李昌言という人物がモデルとなっている。

吴京



易烊千玺(イー・ヤンチェンシー):伍万里役

第七連隊砲兵小隊,伍千里の弟    

易烊千玺



段奕宏(ドアン・イーホン):谈子为役

第三大隊隊長

段奕宏



朱亚文(ジュー・ヤーウェン):梅生役

第七連隊指導員 国連軍北極熊団の団旗を最初に奪取した庄元东という人物がモデルになっている。

朱亚文



李晨(リー・チェン):余从戎役

第七連隊歩兵隊長

李晨



胡军(フー・ジュン):雷睢生役

第七連隊砲兵小隊隊長 勇敢さから“雷公”と呼ばれた孔庆三がモデル。

胡军



韩东君(エルビス・ハン):平河役

第七連隊狙撃兵

韩东君



张涵予(チャン・ハンユー):宋时轮役

中国人民志願軍副司令官兼第九兵団司令官

张涵予



黄轩(ホァン・シュエン):毛岸英役

毛沢東の長男であり、劉秘書という仮名で秘書兼ロシア語通訳に就いていた。史実では、卵チャーハンを作っていたらその煙を見つけられて爆撃死したとか、焼きリンゴを作っていたとか言われているが、作中では地図を取りに引き返して爆撃される。

黄轩