1950 鋼の第7中隊 长津湖(長津湖) The Battle at Lake Changjin: 豆瓣
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【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
www.youtube.com 《长津湖之水门桥》终极预告,揭秘最难一战
【スタッフ & キャスト】
2021年 中国
監督: 陈凯歌(チェン・カイコー)、徐克(ツイ・ハーク)、林超贤(ダンテ・ラム)
出演: 吴京(ウー・ジン)、易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)、段奕宏(ドアン・イーホン)、朱亚文(チュー・ヤーウェン)、李晨(リー・チェン)、韩东君(エルビス・ハン)、胡军(フー・ジュン)、张涵予(チャン・ハンユー)
【あらすじ】
【感想】
2時間56分と上映時間も長いオーソドックスな作りの戦争映画だが、戦闘シーンはしっかり作られていた。
なにせ長く感じた。3時間弱をかけて事実上一回の戦闘について描いていることもあり、ポイントは観客の興味をそのシーンまでいかに惹きつけ続けていくかだと思う。その点では、易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)演じる新人兵士の成長や、チームとしての部隊が徐々にまとまっていく様子、マイナス30℃を越える極寒の環境描写、アメリカを中心とした国連軍のクリスマス〜帰還を待ち侘びる様子などなど、色々描かれてはいる。とはいえ、それぞれがありきたりというか、"標準的な戦争映画"でよく出てくる情景を見せていくという感覚に終始していて、正直新鮮味に欠ける。
史実の上での長津湖の戦いでは、中国は北朝鮮からの参戦要請を延々と断り続けたあげく、国連軍の更なる侵攻でついに自国領土の危機感を覚えた事で、ようやく参戦に舵をきっていく。この経緯自体、バックグラウンドとしての戦闘シーンまでに描くネタとして大変に面白いのだが、その種の国際情勢はほとんど描かれていない。一方で戦闘までの行軍の過程は、厳しくもあり楽しくもありという、ベタなホモソーシャル的ワイワイキャッキャ描写が続く。
戦場の非情な現実もたしかに時折入ってくるのだが、その描き方も、死を客観視するような敵味方平等な目線というより、”意気あがる我らを、残虐なアメリカ軍人達が襲ってくる”という風な描写で、ざっくり言うと単純な英雄物語的なストーリー展開となっていく。こういった、ある意味どこかで見たような場面がクライマックスの戦闘シーンまで、実に2時間以上も延々と続くので、正直かなり退屈してしまった。
ただいざ戦闘が始まると、さすが徐克(ツイ・ハーク)&林超贤(ダンテ・ラム)というメリハリの効いた大迫力のシーンの乱れ打ちとなる。絨毯爆撃のような壮絶な爆破の量、30分も続く見せ場の連続も見ものだし、緩急のつけ方やそれぞれの役者ごとのシーンもきちっと見せてくる。なにより、集団戦なのに状況の推移を整理して見せるので、何がどうなっているのか把握しやすく、わかりやすく熱中できた。余談だが、個人的には偵察のシーンなどで朝鮮戦争といえばの定番ヘリ、シコルスキーH-5の独特のいびつな形が大写しに映るのが最高であった。
そういった戦闘アクションシーンも含めた映画全体のカタルシスは、結局は"米軍に勝つ"という太くて強い意志その一点でドライブしていく。まるで、古典的なヒーロー映画が、存在としての"悪"をやっつける勧善懲悪ものと同じような昔ながらの作りになっている。まるで70年代ニューシネマ以降の映画の歴史が存在すら無かった事になったような、別の世界線の映画を見ているようだった。今までのいわゆる主旋律映画も、ここまで完全な"悪の枢軸"的な存在を出さなかったし、それよりは、自分たちは誇らしい存在だという着地こそあれども、こんなにはっきりと敵を倒す形は無かったと思う。どうしてこんな映画を作り、それがヒットしたのか…
想像するに、彼らも一度はこういう純粋で堂々たる、本格的な歴史大作を"決定版"的な規模で作りたかったのではないか。ここ数年たくさん作られてきた主旋律映画のピークは、もしかしたら昨年の共産党100年がひとつの区切りで、このタイミングでドカンと二度と作れないくらいの大作をモノにしたかったんじゃなかろうか。観客も、このわかりやすい勧善懲悪の自国礼賛映画の狙いに応える形でヒットへと結びついた。作る側も観る側も一ミリたりとも国外への視線が存在しないピュアな国内向け映画。そんな事を思って観ていた。
【トピック】
○ 2021年9月30日に公開され大ヒット。本年は「スパイダーマン・ノーウェイホーム」に次ぐ世界第2位の興行収入(57億元=約1000億円)となった。「こんにちは、私のお母さん(2021)」や「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー(2018)」を超え、中国映画史上最高の興収を記録した。
○ 「中国勝利三部作」の一作と言われることもあるが、これは中国の映画配給・製作大手、博納影業集団(ボナ・フィルム・グループ)によって制作された、いわゆる主旋律映画(中国&共産党の歴史を称える映画)の事で、本作と、刘伟强(劉偉強 アンドリュー・ラウ)監督の「アウトブレイク(中国医生、2021)」、それにもうすぐ公開予定の王一博主演によるスパイ映画「無名(无名)」の3作を指す。公開時は上記「アウトブレイク」や「1921」など、多数の主旋律映画が公開された共産党結党100周年のタイミングから3ヶ月ほどずれた、国慶節休暇の時期だったため、特に(献映)などと冠される事はなかった。
○ 2022年11月の第35回中国金鶏奨で作品賞、監督賞の2冠受賞、8部門でノミネートされた。
○ 陈凯歌(チェン・カイコー)、徐克(ツイ・ハーク)、林超贤(ダンテ・ラム)の三人で共同で監督している。本来は刘伟强(劉偉強 アンドリュー・ラウ)も監督を務める予定であったが「アウトブレイク(中国医生)」の撮影のために離脱し3人となった。
○ プロデューサーには「建国大業(2009)」や「愛しの母国(我和我的祖国、2019)」、「1921(2021)」など主旋律映画を多く手掛ける黄建新(ホアン・ジェンシン)が携わっている。
○ 撮影は、主に浙江省にある寒山湖や北朝鮮に接する遼寧省丹東など。
○ 最後のシーンで軍勢の中ではためくのが中国国旗でなく無地の赤旗だったのは、中国人民志願軍の軍旗だからだ。当時西側との全面戦争化を避け、朝鮮戦争に参戦していないという体を維持するために、人民解放軍本体ではなく”人民志願軍”という名の義勇兵部隊が参戦したという形をとった為、あのような旗を使用した。
○ 続編の「长津湖之水门桥(1950 水門橋決戦)」が早くも2022年2月に公開された。
吴京(ウー・ジン):伍千里役
第七中隊隊長 米軍31連隊”北極熊団”の団旗を奪取した隊の隊長である李昌言という人物がモデルとなっている。
易烊千玺(イー・ヤンチェンシー):伍万里役
第七中隊砲兵小隊,伍千里の弟
もはや「TFBOYSの」という説明も不要の、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの大人気俳優に成長した。
彼の出演作レビューはこちら。
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段奕宏(ドアン・イーホン):谈子为役
第三大隊隊長
朱亚文(チュー・ヤーウェン):梅生役
第七中隊指導員 国連軍北極熊団の団旗を最初に奪取した庄元东という人物がモデルになっている。
李晨(リー・チェン):余从戎役
第七中隊歩兵隊長
胡军(フー・ジュン):雷睢生役
第七中隊砲兵小隊隊長 勇敢さから“雷公”と呼ばれた孔庆三がモデル。
韩东君(エルビス・ハン):平河役
第七中隊狙撃兵
张涵予(チャン・ハンユー):宋时轮役
中国人民志願軍副司令官兼第九兵団司令官
黄轩(ホァン・シュエン):毛岸英役
毛沢東の長男であり、劉秘書という仮名で秘書兼ロシア語通訳に就いていた。史実では、卵チャーハンを作っていたらその煙を見つけられて爆撃死したとか、焼きリンゴを作っていたとか言われているが、作中では地図を取りに引き返して爆撃される。
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