少年の君 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画
【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
www.youtube.com 《少年的你》终极预告
www.youtube.com 7.16(金)公開『少年の君』本予告
【スタッフ & キャスト】
2019年 中国
監督:曾国祥(デレク・ツァン)
出演:周冬雨(チョウ・ドンユィ)、易烊千玺(イー・ヤンチェンシー、ジャクソン・イー)、尹昉(イン・ファン)、周也(ジョウ・イエ)、吴越(ウー・ユエ)、黄覚(ホァン・ジュエ)
【あらすじ】
内向的で平凡な少女陳念[周冬雨(チョウ・ドンユィ)]は、全国統一入学試験(通称「高考」)を控えている高校3年生。母親[吴越(ウー・ユエ)]が陳念の学費を稼ぐためインチキ化粧品の違法な販売に従事してしまったため、借金を抱えており、借金取りが時々怒鳴りながら玄関のドアを叩く。陳念は嵐が過ぎ去るのを待ちながら、受験を迎える退屈な毎日を過ごしていた。
そんな中、クラスメイトの胡暁蝶は暴力的ないじめを苦に学校で校舎から飛び降り自殺した。胡暁蝶が死んでいなくなってから、陳念が彼女の代わりにいじめの対象になってしまった。魏莱[周也(ジョウ・イエ)]をはじめ、三人組の女子生徒が、陳念に肉体的な攻撃の上、侮辱や脅しをさせ、毎日嫌がらせをし続ける。
ある日、陳念が学校帰りに途中に、リンチされていた少年小北[易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)]に出会った。片や優等生、片や母に捨てられた不良少年、同じく孤独な魂を抱える二人は、心を通わせはじめる。魏莱らからのいじめはエスカレートし、危険を感じた陳念は、小北にボディーガードになってくれるよう頼んだ。
【感想】
いつも中国映画は英文字幕つきで見ているが、今回は中文字幕版でしか見れなかったので言葉のやり取りは拾えていないかもしれない。
最初はストーリーも知らずに見たので、こんなにハードな話なのかと驚いた。直接映す事はないにせよ残酷な場面も多い。だがストーリーの純愛要素とバランスされて、ぐいぐい話に引き込まれていく。ストーリーの進行と共に絶望感が増せば増すほど二人の想いがシンクロし純粋化していく。本当に素敵な青春映画だ。
ハードボイルドでもあり、思考実験のようでもある。それぞれのディテールのリアリティはとても高いが、ストーリーはファンタジー的で、主演の二人も超有名で、だからこそ劇場作品としてちょうど良い距離感の作品に仕上がったのではないだろうか。
なにはなくとも周冬雨(チョウ・ドンユィ)の演技は絶賛しなくてはならない。冒頭の彼女にしか出せない少年のような雰囲気(なんというかちびまる子ちゃんのまる子を連想していた)、驚愕のばっさりと刈るシーン、その後の崇高といえるような存在感。誰もが認める演技力だろう。TFBOYSの易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)は、最近のTFBOYSを見てなかったので後から気づいたが、まだ映画出演も数本だとは信じられない堂に入った雰囲気だった。あの初々しい幼さがウリだったTFBOYSのイメージからは隔世の感がある。
いじめの話では下にも書いたが「悲傷逆流成河 悲しみは逆流して河になる (2018)」を思い出した。あれよりも更に酷く、周囲に理解者もいない追い詰められた状況だ。高考こと中国の入試の雰囲気はとてもよくわかる。夜まで大量のテキストを山積みした机で勉強する様子はもとより、教師がハッパをかけたり、ランタン(天燈)を飛ばしながら皆で受験成功を祈願する様子など。
【トピック】
○ 数多くの映画賞を既に受賞している。主なものだけでも、第69回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門、第39回香港電影金像奨で作品賞ほか8部門受賞など。
○ 2020年末の第33回中国金鶏奨で、本作は主演女優賞と編集賞の2冠受賞、合計11部門ノミネートという快挙を達成した。
○ 当初2019年6月末公開予定だったが延期となり、何度か延期後の突然の公開となって事前プロモーションがあまり無かったにも関わらず、口コミで評判が広がっていき、興収ランキングは公開以来3週連続1位を獲得した。
○ 公開後、東野東吾作品の盗作疑惑が出た。個人的には対象とされる白夜行などを読んだのも相当昔なので思いつきもしなかったが。
○ 玖月晞の2016年発表の小説を原作としている。
○ 監督の曾国祥(デレク・ツァン)は俳優・曾志偉(エリック・ツァン)を父に持つ1979年生まれの香港人。俳優として活動後に監督した「恋人絮语 恋人のディスクール(2010)」が評価され、「ソウルメイト/七月と安生 七月与安生 (2016)」で多くの賞を受賞した。本作は「七月と安生」と同じ周冬雨の主演、同じ制作陣によるものである。
◯ 筆者の2020-21年中国映画ベスト5で本作を第2位に選んだ。
周冬雨(チョウ・ドンユィ)
○ 主演の周冬雨(チョウ・ドンユィ)は今や言わずとしれた名女優となったが、主な作品では「僕らの先にある道 后来的我们 (2018)」、「恋するシェフの最強レシピ 喜欢你 (2017)」だが、なんといっても「七月と安生」が大変印象に残る映画であった。
易烊千玺(イー・ヤンチェンシー、ジャクソン・イー)
○ 相手役の易烊千玺(イー・ヤンチェンシー、ジャクソン・イー)も知らぬ者のないトップアイドル、TFBOYSのメンバーだ。まだ19歳で本作が映画初出演だが、中国で初めての本格的なアイドルグループとして、まだ13歳の幼い頃から道を切り開いてきたパイオニアである。次作は2020年12月公開の「送你一朵小红花 A Little Red Flower」。これまた良作で大ヒットも記録した。
尹昉(イン・ファン)
○ 同情的な刑事役の尹昉(イン・ファン)は、深圳の若者のダークサイドを描いた良作「路過未来 (路过未来) (2018)」での演技が印象的だった。その映画で上海国際映画祭での受賞もしている。1986年湖南省出身。「オペレーション:レッドシー 红海行动(2018)」や「ペガサス/飛馳人生(2019)」にも出演している。
周也(ジョウ・イエ)
○ いじめる女子高生役の周也(ジョウ・イエ)は、1998年生まれで北京映画学院を卒業後2019年から映画出演を始めたばかり。本作が初の大作出演になった。
○ 本作は学校でのいじめがテーマだが「悲しみは逆流して河になる 悲傷逆流成河 (2018)」も、いじめがテーマの良い作品だった。
こちらは周冬雨(チョウ・ドンユィ)が主演だけでなく出資もして制作した映画だ。
筆者の2020-21年の中国映画ベスト5で本作を2位に選んだ。