ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画
【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
「無名」のトニー・レオン最新作&アンディ・ラウの2大共演で、80年代香港バブルを描く香港版「ウルフ・オブ・ウォールストリート」。1983年は「プロジェクトA」の公開年…つまり黄金時代の香港アナザーサイドを描いた映画。
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【スタッフ & キャスト】
2023年 香港 126分
監督:莊文強(フェリックス・チョン)
出演:梁朝偉(トニー・レオン)、劉德華(アンディ・ラウ)、蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)、任達華(サイモン・ヤム)、方中信(アレックス・フォン)、陳家樂(カルロス・チャン)
【あらすじ】
香港史上最大額の企業事件を描く。程一言【梁朝偉(トニー・レオン)】と彼の会社・嘉文集団が引き起こした巨額の詐欺、汚職、殺人事件を、1980年代の狂乱の香港経済、彼を追い詰める廉政公署(ICAC)の調査主任・劉啟源【劉德華(アンディ・ラウ)】と共に描く、実話を元に作られたストーリー。
【感想】
香港の黄金時代、1980年代バブル経済を豪華絢爛に再現してみせた、"あの頃"を追体験させてくれる映画だった。
80年代後半の日本のバブル期より少し早い、80年代前半の香港。どちらもリアルタイムで経験していない立場からは、いかにあの一瞬だけが特別で"狂っていた"かを見せつけてくれて、すごく面白い。
梁朝偉(トニー・レオン)と劉德華(アンディ・ラウ)の「インファナル・アフェアIII 終極無間(2003)」以来18年ぶりの共演が売りだが、本作はもう梁朝偉(トニー・レオン)が主人公の映画だ。程一言という大人物と、彼を取り巻く様々なクセのある人間たちの、欲望と欲望のぶつかり合いが観る者をグイグイと惹きつける。
香港経済と彼の絶頂期が描かれる場面はどれも本当に豪華で最高。ゴールド、札束、酒とパーティ…とにかくシンプルに露骨に金がある事を誇る、あの光景が繰り出される。
懐かしのクラシックでアナログな株式市場の光景も登場し、誰もが「ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013)」を思い起こすが、主人公はディカプリオほど狂ってはいない。「ウルフ〜」はドラッグと共に生きているような、もはや正気かわからない歪んだ世界観に至っていたが、香港はそうではなかったと言いたいが如く、冷静さの一線は保たれている。ドラッグはもとより、黒社会の人間もほとんど登場しない。
そこで、ああ香港の黄金時代とはまさにこの時代の事であったと思い出すのだ。劇中のターニングポイントは1983年。成龍(ジャッキー・チェン)の「プロジェクトA」が公開された年だ。「ウルフ〜」を見てあの時代に行きたいと思う人はいないだろうが、本作はあの素晴らしき時代のアナザーサイドを描いた映画として作られている。
主役の2人はもとより、脇を固める豪華メンバーが素晴らしい。今までより数段存在感を増し、遂にトップ女優に相応しい貫禄を備えた蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)。イケイケでヤンチャなやり手感が最高な陳家樂(カルロス・チャン)。冒頭から長袍姿で怪しげに登場する太保(タイポー/タイ・バオ)。そして、個人的に最も印象的なのは証券マンを演じた白只(バイ・ジー)だ。ギラついた仕事の顔、一方で憧れの張嘉文に寄せる一途だが落ち着かない眼差し、様々な表情を見せてくれて魅了された。
主人公の自伝的ストーリーにしつつ、本当の狙いはあの時代の再現で、そこを目一杯楽しめる映画になっている。
【トピック】
◯ 新年を控えた2023年12月30日に香港・中国本土を含むアジア各国で公開。香港での興収ランキングは5週連続で1位を獲得。中国本土でも大ヒット作「年会不能停! (2023) 」 に次いで2週連続2位を獲得した。
興行収入は4300万香港ドル(8.5億円)、中国本土では5.7億元(122億円)を達成した。
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◯ 本作は香港金像奬で作品賞を含む12部門ノミネート、梁朝偉(トニー・レオン)の主演男優賞受賞をはじめ撮影賞など6部門を受賞した。
◯ 日本では2025年1月24日から「ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件」という邦題で公開予定。
◯ 制作費は3.5億香港ドル(70億円)。ロケ地は中環にある大館、尖沙咀の1881ヘリテージ、鰂魚涌公園、アイランド・シャングリ・ラ 香港ホテル、カオルーン シャングリラホテル、上環のウェスタンマーケット(西港城)、ザ・ペニンシュラ香港ホテルなど。
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◯ 監督の莊文強(フェリックス・チョン)は、脚本家として「インファナル・アフェア(2002)」シリーズ全作、「頭文字D THE MOVIE(2005)」、「潜入捜査/ミッション:アンダーカバー(2017)」、「別叫我"賭神"(2023)」などのヒット作に携わる。
監督としては、麥兆輝(アラン・マック)とタッグを組んだ劉青雲(ラウ・チンワン)主演「盗聴犯 死のインサイダー取引(2009)」からの盗聴犯シリーズと梁朝偉(トニー・レオン)主演の「サイレント・ウォー(2012)」、周潤發(チョウ・ユンファ)の「プロジェクト・グーテンベルク(2018)」などがある。
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梁朝偉(トニー・レオン)
◯ 嘉文集團の創業者・程一言。佳寧集団の陳松青がモデルである。
◯ 本作で香港金像奬・主演男優賞を受賞した。
言わずとしれた名優。「恋する惑星(1994)」、「ブエノスアイレス(1997)」などのウォン・カーウァイ作品群や、侯孝賢監督「悲情城市(1989)」、香港ノワールの代名詞「インファナル・アフェア(2002)」、汪兆銘政権の工作員を演じたヴェネツィア金獅子賞&金馬奨「ラスト、コーション(2007)」と、挙げるべき作品には枚挙にいとまがない。
昨年は郭富城(アーロン・クォック)と共に今作より少し前の時代の汚職警官を演じた「風再起時(2022)」に出演。そして、日本でももうすぐ公開予定の「無名(2023)」で中国金鶏奨・主演男優賞を受賞し、これによって香港金像奨、台湾金馬奨と併せて3つの中華圏の大賞をすべて受賞した俳優となった。
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劉德華(アンディ・ラウ)
◯ 廉政公署(ICAC)の調査主任・劉啟源。朱敏健という事件初期の10年間に上級捜査官であった実在のモデルを参考にしている。
◯ 言わずとしれたアジア映画のスーパースター。
不朽の名作「インファナル・アフェア(2002)」シリーズをはじめ、「天若有情/アンディ・ラウの逃避行(1990)」、「暗戦 デッドエンド(1999)」、「桃さんのしあわせ(2011)」などの名作のほか無数の映画に出演し、通算5回の主演男優賞の受賞を誇る。
最近は「ショック ウェイブ(2017)」と続編「バーニングダウン(2020)」、「追龍(2017)」、日本映画「鍵泥棒のメソッド(2012)」のリメイク「人潮汹涌(2021)」などに出演。
2023年は、大ヒットSF「流転の地球 -太陽系脱出計画-(2023)」、台湾映画「速命道(2023)」、张涵予(チャン・ハンユー)との「93國際列車大劫案:莫斯科行動(2023)」、昨秋東京国際映画祭で公開された「ムービー・エンペラー(2023)」、そして本作と同時期に公開した主演作「潛行(2024)」と、今もなお忙しく映画出演を続けている。
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蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)
◯ 程一言の秘書であり、嘉文集團の名義上の執行役員でもあった張嘉文。実際の秘書・鄔開莉がモデルだが、鄔開莉自身は本作とは違い1980年に会社を辞し、その後の消息は不明となっている。
◯ 蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)こと阿Saは、雑誌モデルとしてデビューしたが出演した香港電台ドラマ「青春@Y2K(2000)」でブレイク。翌2001年から鍾欣潼(ジリアン・チョン)との人気アイドルユニット、ツインズを結成。
映画出演はツインズとして「ツインズ・エフェクト(2003)」を始めとする主演シリーズ、さらに単独では「香港国際警察/NEW POLICE STORY(2004)」や「プロジェクトBB(2006)」、「77回、彼氏をゆるす(2017)」と続編の「感動她77次(2021)」など多数ある。
劉青雲(ラウ・チンワン)と共演した、妊娠中の刑事によるアクションというムチャクチャ設定だが面白い「神探大戦(2022)」が最近作。
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◯ 今作での蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)は数多くの80年代前半のファッションを見せている。
任達華(サイモン・ヤム)
◯ 程一言のビジネスパートナーで、初期から資金面で支援し続けていた曾劍橋。モデルは鍾正文。
◯ 任達華(サイモン・ヤム)は1970年代から数多くのドラマ・映画で活躍している。
初期にはTVBドラマ「千王之王(1980)」や「新紮師兄續集(1985)」への出演で知られるようになり、徐々に映画にフォーカスしていくようになる。
アニタ・ムイ&純名里沙主演の「夜間飛行(2001)」、「PTU(2003)」、「エレクション 黒社会(2005)」、「天使の眼、野獣の街(2007)」、「スリ(2008)」などで香港金像奨にノミネートされ、「歲月神偷(2010)」で遂に主演男優賞を受賞する。
ハリウッドにも進出し、「トゥームレイダー2(2003)」などに出演。「SPL/狼よ静かに死ね(2005)」、「イップ・マン 序章(2008)」&「イップ・マン 葉問(2010)」、「ドラゴン×マッハ!(2015)」などなど、数多くの名作&良作に出演している。
最近では陳木勝(ベニー・チャン)監督の遺作にして良作「レイジング・ファイア(2021)」や陈思诚(チェン・スーチェン)による無国籍犯罪ドラマな中国映画「误杀2(2021)」などに出演。劉德華(アンディ・ラウ)の最新作「潛行(2024)」にも特別出演している。
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方中信(アレックス・フォン)
◯ 顧問弁護士のKelvin。
◯ 1987年のデビュー作の役名から芸名を決めた方中信(アレックス・フォン)。「君を見つけた25時(1998)」、「ぼくの最後の恋人(2005)」、「盗聴犯 死のインサイダー取引(2009)」、「インターセプション 盗聴戦(2014)」の4作で香港金像奬・助演男優賞を受賞。「ワンナイト イン モンコック(2004)」では主演男優賞にノミネートされた。周潤發(チョウ・ユンファ)の最新作「別叫我"賭神"(2023)」にも出演している。
数多くのドラマにも出演しているが、近年は中国ドラマへの出演も多く、特に「ミーユエ 王朝を照らす月(2015)」はよく知られている。
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陳家樂(カルロス・チャン)
◯ 華業銀行創業者の二代目・何浩雲。モデルは恆生(ハンセン)銀行の林秀峰である。
◯ 陳家樂(カルロス・チャン)は2003年デビュー。
恵英紅(カラ・ワイ、クララ・ワイ)と共演した映画「幸福な私(2016)」で知られるようになり、ドラマ「逆緣(2017)」、1970年代香港のバンド温拿樂隊(Wynners)についての映画「兄弟班(2018)」、「ハード・ナイト(2019)」、「我的筍盤男友(2020)」、「アニタ 梅艷芳(2021)」でのアダム・チェン役、「神探大戦(2022)」など多くのヒット作に出演している。
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白只(マイケル・ニン / バイ・ジー)
◯ 証券会社の"場立ち"と言われる立会人の任沖。当初はライバル・新松集團の吳任松に協力していたが、後に程一言に協力して株価操縦を手掛けるようになる。
◯ 白只(マイケル・ニン / バイ・ジー)は「九龍猟奇殺人事件(2015)」の犯人役で知られるようになったが、元々はギタリストであり舞台劇での俳優・演出として活躍していた。
「九龍猟奇~」で香港金像奨・助演男優賞を受賞。以来、「大樂師 為愛配樂(2017)」、「アニタ 梅艷芳(2021)」、「風再起時(2022)」、「別叫我"賭神"(2023)」、さらに今年の春節ヒット作「盜月者(2024)」などなど、年々重要作への出演が増している。
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岑珈其(カーキ・サム/シャム)
◯ 曾劍橋の息子で程一言と共に働いていた曾永年/Johnny。
◯ 岑珈其(カーキ・サム/シャム)は俳優で歌手。子供の頃に見た劉德華(アンディ・ラウ)の「フル・スロットル/烈火戦車(1995)」を見て俳優になる事を決意。17歳で映画出演を果たし、その後も香港電台を中心に数多くのドラマに出演した。
4人の演劇ユニット・Playtimeを作るなどの活動をしていたが、香港野球チームを描いた「最初の半歩(2016)」や、陳詠燊(サニー・チャン)監督のヒット作「逆流大叔(2018)」に出演。
ヒットした主演作「縁路はるばる(2022)」と、「私のプリンス・エドワード(2019)」、そして「ママの出来事(2022)」にそれぞれ出演し、香港新世代映画では重要な役割を占める俳優となった。
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太保(タイポー、タイ・バオ)
◯ 嘉文集團のライバルになる不動産ビジネス新松集團の社長・吳任松(松哥)。
◯ 太保(タイポー、タイ・バオ)こと張嘉年は数多くの香港・台湾映画に出演する名バイプレイヤー。幼少期を台湾で過ごしたため"臺保"と呼ばれ、そこから今の芸名となった。
1980年代以降の香港・台湾映画、特に成龍(ジャッキー・チェン)や洪金寶(サモ・ハン・キンポー)の作品に数多く出演した。
「公僕(1984)」で台湾金馬奨ノミネート、宮沢りえ主演の台湾映画「運転手の恋(2000)」で金馬奨・助演男優賞受賞、高齢者LGBTを描いた映画「ソク・ソク(2019)」で香港金像奨・主演男優賞を受賞した。
主な出演作は「ヤング・マスター/師弟出馬(1980)」、「プロジェクトA(1983)」、「五福星(1984)」、「ポリス・ストーリー 香港国際警察(1985)」、「新Mr.Boo!香港チョココップ(1986)」、「サイクロンZ(1988)」、「悲情城市(1989)」などという、錚々たるフィルモグラフィだ。
周家怡(キャサリン・チョウ)
◯ 劉啟源の妻・孫慧。
◯ 周家怡(キャサリン・チョウ)はTVBドラマ「火舞黃沙(2006)」や「飛女正傳(2010)」などで人気になる。映画では杜琪峯(ジョニー・トー)による豪華ミュージカル映画「香港、華麗なるオフィス・ライフ(2015)」、張學友(ジャッキー・チュン)主演「暗色天堂(2016)」、「29歳問題(2017)」、「8人の女と1つの舞台(2018)」、そして今作の莊文強(フェリックス・チョン)監督の前作「プロジェクト・グーテンベルク(2018)」などに出演している。
実話の事件:「佳寧案」
◯ 本作は1983年に発覚した香港史上最大額の企業事件である「佳寧案」を元にしている。
マレーシア華僑・陳松青(George Tan)と、彼の会社・佳寧集団(Carrian Group)によって引き起こされた巨額の詐欺、汚職、殺人事件などが明るみに出た。
様々な事業で成長した後の1980年1月、金門大廈(Golden Gate Building、現美國銀行中心)を10億香港ドルという空前の巨額で買収。直後に6億ドルの利益を挙げる。これによって一般投資家が一気に佳寧集団に注目。人々の資金が佳寧集団株に殺到し、株価の急騰を呼んだ。陳松青の資産も更に増加、一時は "華人一の富豪" 李嘉誠や "アジアの海運王" 包玉剛と並び称されるほどの富豪となった。
だがわずか2年後の1982年9月、英サッチャー首相の中国訪問による香港返還交渉開始に端を発した株価の下落、不動産市況の悪化により、資金繰りが急速に悪化。1983年1月には株式上場停止を発表し、事実上の破綻に至った。香港経済が更に悪化し1983年9月の大暴落(ブラック・サタデー)を迎える8ヶ月前の事であった。
その後の告発から詐欺、違法利益供与の罪による懲役3年の刑を受ける。出所後、陳松青は劇中では陳家樂(カルロス・チャン)が演じた恆生(ハンセン)銀行の林秀峰から、骨董品の取引で裁判を起こされ敗訴。だが支払いを拒否した事で破産宣告を受ける事となった。
この巨大事件において謎とされたのは資金の出どころで、当時マレーシア国営の裕民銀行(現CIMB銀行)傘下の金融会社より、巨額の資金が融資されていた事がわかっている。この融資額は当時のマレーシア外貨準備高の30~50%という巨額にのぼるが、一方でマレーシア側ではこの事件により巨額の損失を発生させたにも関わらず、一切の捜査や処分が行われておらず、マレーシア政府上層部による関与があった可能性が疑われている。
「一代富豪」陳松青頒破產 hk.news.yahoo.com
《金手指》票房大收 梁朝偉劉德華等角色現況如何?有人隱居及破產 也有人仍任公職 星島頭條
※なお、資本関係の遠かったグループ企業のひとつ、佳寧娜集團は現在も潮州料理の店として、香港・中国に店舗を有している。ロゴマークはあの佳寧集団と全く同じで、当時の名残を感じさせる。