香港映画レビュー&解説「ママの出来事 阿媽有咗第二個 Mama’s affair」

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【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】

2022年のMIRRORのメンバー、姜濤(ギョン・トウ)&柳應廷(ジャー・ラウ)の映画デビュー作。アイドル映画というより母と若者、2つの世代の青春映画として、毛舜筠(テレサ・モウ)の演技力に唸る、軽やかな味わいの素敵な映画。

 

 

 

 

ママの出来事 阿媽有咗第二個


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【スタッフ & キャスト】

2022年 香港 126分
監督:彭秀慧(キーレン・パン)
出演:毛舜筠(テレサ・モウ)姜濤(ギョン・トウ)柳應廷(ジャー・ラウ)岑珈其(カーキ・サム/シャム)鄧麗英(タン・ライイン)

 

 

 

【あらすじ】

かつては音楽業界で敏腕マネージャーとして名を馳せていたメイフォン【毛舜筠(テレサ・モウ)】。結婚を機に仕事を辞めたが、息子のヒン【柳應廷(ジャー・ラウ)】も今では高校3年生。再び働きに出ようと、昔の仲間に再就職先を紹介してもらうが、そこは子供たちが通う音楽教室だった。
ある時、同僚の友人で、飲食店で働くフォン・チェン【姜濤(ギョン・トウ)】の歌声を聞いたメイフォンは、彼を歌手デビューさせようと考える。彼自身の実力や努力はもちろん、メイフォンの手腕もあり、フォン・チェンは順調に売れていく。しかし、その一方でメイフォンは家庭の問題に頭を悩ませていた。

OAFF2022より

 

 

 

【感想】

子育てを終えつつあるママの復職日記的でもあり、若者二人がぎこちなく社会へと羽ばたいていくストーリーでもあり。トータルでは2つの世代の青春映画として描かれた、軽やかな味わいの気持ち良く楽しめる映画だった。

多くの人にとって、まずは登場人物である若者二人を演じた大人気アイドルグループMIRRORの二人、姜濤(ギョン・トウ)と柳應廷(ジャー・ラウ)が映画デビューした作品として理解されるだろう。今作から2年を経て、呂爵安(イーダン・ルイ)らを含めて更に多くの出演作が公開された彼らの初期の作品という事になるが、にも関わらずアイドル映画感はまったく無く、演技もこなれているので彼ら二人の事をまったく知らずに見ても何の問題もなく満足できる仕上がりだ。

 

阿媽有咗第二個

 

特に毛舜筠(テレサ・モウ)が全体を引き締めていて、しっかり映画の質を担保している。前半のストーリーは特に彼女が演じるメイフォンのストーリーなので、彼女の溌剌とした魅力、一方で人生に対する疲れも見せて、そのまま役の説得力、元敏腕マネージャーというキャラの説得力に繋がって自然に引き込まれる。同年公開の同じく毛舜筠(テレサ・モウ)主演作「香港ファミリー(2022)」の方が、映画としてはより重厚だが、役としては今作が更に魅力があるとすら思える。

若者が二人も登場するので、ストーリーに捻りがあってそれが面白い。どちらも親目線でも見れるし、一方で悩みの方向性も違うし、二人がお互いに思うところを持ち始めるのもいい。それも前半がとても上手くいく事がむしろ伏線になっていく絡み合い方で、自然にギクシャクとしていき、テンポよく気がついたら深刻な悩みにまでたどり着いてしまう。
そして、前半のメイフォンの部分でも、姜濤(ギョン・トウ)演じるフォン・チェンのデビューからの姿も、MIRRORの姿を重ね合わせて、彼らの軌跡を芸能界の裏側から再び見ていくような楽しさもある。柳應廷(ジャー・ラウ)演じるヒンの同級生たちとのギリギリの接触しそうでしないスリリングさも、単なる学園ドラマ以上の面白さが最高に楽しい。

 

阿媽有咗第二個

 

若者の父親はどちらも類型的というか表情に乏しく、記号的な存在としてしか描かれないので、まるで3人だけが生活しているようでもあり、3人の世界で成立するおとぎ話的な印象もある。そして、コロナ禍の時期に撮影されたからか、舞台があまり広がっていかず、全体に少しこじんまりとした印象もあって、それも含めて2021年という時代を思い出させる。

だが、とてもテンポよく母・メイフォンと若者・フォン・チェンの二人のサクセスストーリーが描かれていて楽しく、後半にはヒンの存在感がグッと増した展開がとても上手くて、そうした青春映画らしい心地よさでハッピーエンドにたどり着ける。才能ある監督にこんな良質なデビュー作を作ってもらえる事自体が、MIRRORの評価を裏付けているような、とても楽しい映画だった。

 

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【トピック】

◯ 新型コロナの渦中にあった2022年、香港より状況が改善していた日本の大阪アジアン映画祭で先行してワールドプレミアされ、遅れて改善された同年8月11日に香港で一般公開。公開初週から2週連続で興収ランキング1位を記録し「未来戦記(2022)」に王座を譲る形となった。興行収入は4400万香港ドル(8.2億円)。

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◯ 本作は香港金像奨で主演女優(毛舜筠(テレサ・モウ))、助演男優賞(羅永昌(ロー・ウィンチョン))、新人賞(柳應廷(ジャー・ラウ))、歌曲賞の4部門にノミネートされた。

 

◯ 余美鳳(メイフォン)が以前マネージャーをしていた歌手として、古巨基(レオ・クー)が出演している。1994年のデビュー以来中華圏で絶大な人気を誇る歌手で、ただ一人6個もの著名歌唱賞を受賞した歌手である。周星馳(チャウ・シンチー)監督の映画「最強の出前人(1994)」などにも出演している。

 

 

◯ 監督の彭秀慧(キーレン・パン、画像右)は、1975年生まれで監督だけでなく脚本や自身が出演する事も含めてマルチで主に舞台演劇に関わってきた。2008年には自作の一人舞台で演劇賞を受賞。2014年には「香港十大傑出青年」に選出されている才人だ。
映画作品は「29歳問題(2017)」に次いで本作が2作目となるが、デビュー作の「29歳問題(2017)」も、そもそも一人舞台として作ったものをロングラン上演の末に映画化した作品となる。
また俳優もしており、ドラマ「IT狗(2022)」では凌文龍(リン・マンロン)、陳漢娜(ハンナ・チャン)、岑珈其(カーキ・サム/シャム) ら今作にも登場するような人気俳優たちと共に主要メンバーとして出演している。

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姜濤(ギョン・トウ)

◯ 方晴(フォン・チェン)。茶餐廳で働いていたが、ふと歌が上手いことが知られる事になり、歌手デビューすることになる。

◯ 本作の主題歌・劇中歌も歌っている。
大人気のアイドルグループMIRRORのメンバーとして2018年にデビュー。映画出演は本作がデビューとなり、その後MIRRORとして「盗月者(2024)」「12怪盜(2024)」と立て続けにグループ主演作が公開された。

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柳應廷(ジャー・ラウ、阿Jer)

◯ 余美鳳(メイフォン)の高校生の息子・盧子軒(ヒン)。母には言わないが演劇に熱中している。

◯ 大人気のアイドルグループMIRRORのメンバーとして2018年にデビュー。映画出演は本作がデビューだが、その後メンバーの呂爵安(イーダン・ルイ)と共にブラックコメディ「四十四にして死屍死す(2023)」に出演した。この映画には毛舜筠(テレサ・モウ)も出演している。もちろんグループの出演作「12怪盜(2024)」にも出演。

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毛舜筠(テレサ・モウ)

◯ 出産以来主婦として盧子軒(ヒン)を育てていたが、ひさびさに音楽業界に復帰した元敏腕マネージャー・余美鳳(メイフォン)。夫との仲は冷え切っている。

◯ 1970年代後半の10代の頃から映画やバラエティで活躍。「早熟 〜青い蕾(つぼみ)〜(2005)」で金像獎助演女優賞、「黃金花(2018)」で金像獎主演女優賞を受賞。
今作と同じ年に、こちらも主演作である良作「香港ファミリー(2022)」が公開、翌年の「四十四にして死屍死す(2023)」 では今作同様に呂爵安(イーダン・ルイ)と共演している。他にも「夜の珍客(2015)」「燃えよデブゴン/TOKYO MISSION(2020)」などにも出演している。

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鄧麗英(エミー・タン、タン・ライイン)&岑珈其(カーキ・サム/シャム) 

◯ 余美鳳(メイフォン)の同僚たち、小Annと家麒。

◯ 鄧麗英(エミー・タン、タン・ライイン、画像中左)は人気YouTubeチャンネル「小薯茄」のメンバー。日本の歌手・YUIが好きだと公言し、自身のチャンネルでも数多くの邦楽カバーをアップしている。
ViuTVのドラマ「教束(2019)」に出演し、以来様々なドラマに出演している。映画でも甄子丹(ドニー・イェン)主演作「スーパーティーチャー 熱血格闘(2018)」「四十四にして死屍死す(2023)」 「全世界どこでも電話(2023)」「作詞家志望(2023)」などに出演している。

《Hello》~Paradise Kiss~ Cover|麗英 LaiYing- YouTube

《直到世界的盡頭...》 世界が終わるまでは… Cover|麗英 LaiYing- YouTube

 

◯ 岑珈其(カーキ・サム/シャム、画像右)は俳優で歌手。子供の頃に見た劉德華(アンディ・ラウ)の「フル・スロットル/烈火戦車(1995)」を見て俳優になる事を決意。17歳で映画出演を果たし、その後も香港電台を中心に数多くのドラマに出演した。
香港野球チームを描いた「最初の半歩(2016)」や、陳詠燊(サニー・チャン)監督のヒット作「逆流大叔(2018)」、ViuTVのヒットドラマ「IT狗(2022)」に出演。日本では同時公開した「縁路はるばる(2022)」では主演し、「私のプリンスエドワード(2019)」には出演の他、梁朝偉(トニー・レオン)&劉德華(アンディ・ラウ)主演の「金手指(2023)」 と、多くの人気作に出演している。

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盧子軒の同級生たち

◯ Angela役の張蔓姿(ジジ・チェウン、画像右)。モデル・歌手として活躍している。2014年ころからドラマなどに多数出演していて、映画では本作以外にも梁朝偉(トニー・レオン)&劉德華(アンディ・ラウ)主演作「金手指(2023)」などにも出演している。

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阿媽有咗第二個

 

 

◯ Samantha役の曾樂彤(ツァン・ロク・トゥン、画像右)。歌手でもあり、作詞家としても活動している。ドラマやバラエティ番組にも出演しているが、映画出演はこれが2作目となる。

阿媽有咗第二個

 

 

◯ Tim役の陳宗澤(CY、チェイス・チャン、画像右)。2020年のオーディション番組で上位入賞し芸能界入りした歌手である。映画・ドラマ出演は今作でデビューとなる。

阿媽有咗第二個

 

 

 

ロケ地

◯ 盧子軒(ヒン)や同級生たちが通う高校は湾仔(ワンチャイ)にある香港華仁書院(Wah Yan College Hong Kong)という歴史ある有名男子校で撮影された。




◯ 姜濤(ギョン・トウ)演じる方晴(フォン・チェン)が働いていたのは油麻地にある永發茶餐廳だ。

◯ 店の外のシーンも同じく永發茶餐廳の前。登打士街との交差点付近だ。

 

 

 

 

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