หลานม่า(LAHN MAH, How to Make Millions Before Grandma Dies、姥姥的外孙、The Chinese Family): Wikipedia
【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
シンガポールの映画館でも最も数多くかかっていた大ヒット作。
バンコクの若い孫が祖母と最後の日々を過ごす、とっても沁みる良作。良い意味でヒット作に感じない作風で、最後には多くの人が涙を誘われる。
www.youtube.com HOW TO MAKE MILLIONS BEFORE GRANDMA DIES | Official International Trailer
【スタッフ & キャスト】
2024年 タイ 125分
監督:พัฒน์ บุญนิธิพัฒน์(Pat Boonnitipat)
出演:พุฒิพงศ์ อัสสรัตนกุล(プッティポン・アッサラッタナクン, Billkin、ビウキン)、อุษา เสมคำ(Usha Seamkhum)、สฤญรัตน์ โทมัส(サンヤ・クナコーン)、สัญญา คุณากร(Sarinrat Thomas)、พงศธร จงวิลาส(Pongsatorn Jongwilas)、ต้นตะวัน ตันติเวชกุล(トンタワン・タンティウェーチャクン)
【あらすじ】
大学を中退して怠惰に生活していたMは、バンコク市内で一人暮らしをしている祖母、Amah(メンジュ)にガンが見つかった事を知る。両親や叔父たちは祖母の死後を考え始め、M自身も、祖父を介護して遺産を相続した従兄弟のMui(ムイ)の様な事を期待して、祖母の世話をしようと一緒に住む事にしたのだが…
【感想】
かけがえのない祖母との別れの時間を描いたストーリーであり、子供から大人へと、家族から独り立ちする過程だった若者が、改めて家族へと向かい合う、成長の物語でもある。深刻すぎず穏やかに涙を誘うとても素敵な映画だった。
筆者はシンガポールの映画館、ブギスにあるGolden Village(懐かしの香港映画でお馴染みの、あのゴールデン・ハーベスト傘下の映画館チェーンで、チケットには今でもあのマークが印字される)で本作を観た。存在も知らず、タイでの公開当時の売り上げや話題になった事も知らなかった。だがシンガポールでも、本作が大多数の映画館で上映されていて、その規模はあの大ヒット香港映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦(九龍城寨之圍城)」を凌ぐほどで、ちょっと驚くほどであった。それでは、と観てみる事にしたのだった。
見終わってからバンコクに住むタイ人に聞くと、やはり相当話題だったそうで多くの人が観に行ったようだ。
だが、ここまで説明しておいて何だが、本作のテイストはそんな大規模映画然としたものでは全くない。むしろ好ましいくらいに慎ましく、バンコクの街の片隅でのたったひとつの家族の物語として描かれている。
祖母・Amah(メンジュ)の家も、立て込んだ家並の奥にひっそりと隠れるように建っている。家の前には植木や鉢植えが並べられ、中も雑然としていて、テーブルの上にも色んなものが置かれたまま、全く片付いているようには見えない。筆者も自分の実家に帰る度にため息をつくような、まさにあの実家の雑然とした物の多い感じが、匂い立つようにそのまんま再現されているのだ。
でも決してそれは片付いていない訳ではない。そして祖母には、これまた主人公の若者・Mには理解できない色々妙な生活習慣があって、Mは彼なりの小ズルい目論見から押しかけて住み始めたものの、それを色々と口を出しては怒られたりする。
筆者も最近になって年老いた母の面倒を見る立場になり、今さらながらMと同じような違和感を持っていた。ついつい片付けたくなるし、合理的に生活する事を押し付けようとしたりした。でも、劇中の祖母・Amah(メンジュ)と同様に、私の母にとってもこの部屋は歴史の積み重ねであり、物の多いのはそれらが自分の人生の欠片たちだからであり、周りからどう見えようとそれらに囲まれて生活する事こそが幸せなのだ。
Mは、決して衝突する事なく穏やかに祖母の習慣(であり、彼女の歴史)を受け入れ理解していく。この映画の真のクライマックスは、ひょっとするとエンディングよりも、この穏やかな生活の場面であるように思える。それらは決して長くは続かない幸せな場面で、今もまだ思い出しては涙ぐんでしまう。
他の家族たちもまたとても良い。特に適当に生きているような、ちょっとアルコ&ピース平子に似た叔父、それと口は出すけど何もしない、60年代の俳優&コメディアン藤村有弘に似ている伯父という2人の大人が、リアルだがクスっとさせる役どころでとても味がある。この2人と違って「やらない善よりやる偽善」を選んだMの、後半での見違えるような姿もまた、とても若者らしくて切なくなる。
また、祖母の言葉に潮州語(中国語)が自然に入ってくる部分も、さり気なくタイ華人文化に触れさせてくれる印象的な演出だ。
強く何かを訴えてくる映画ではない。だからこそ、じわりじわりと琴線を刺激されてしまうのを止められない。とてもタイらしく、中華系らしい、そして我々を含むアジア人皆に馴染みのある雰囲気に溢れていて、見終わってからもMやAmah(メンジュ)をはじめ、登場した人々をまた思い出してしまう、とっても素敵な映画であった。
香港映画レビュー&解説「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦 九龍城寨之圍城 Twilight of the Warriors: Walled In」 - daily diary
【トピック】
◯ 当初は2023年末公開予定だったが、2024年4月1日にバンコク、サイアム・パラゴンでプレミア公開、4月4日に一般公開された。初週より興収ランキング1位を4週連続で維持、「キングナレスワン(2007)」シリーズやトニー・ジャー主演「トム・ヤム・クン!(2005)」に次ぐ、タイでの興行収入でタイ映画歴代11位という大ヒット作となった。
その後、インドネシア、フィリピン、シンガポールなどとアジア各国でも公開されていくが、軒並み好成績を記録する話題作となった。
キャスト
พุฒิพงศ์ อัสสรัตนกุล(プッティポン・アッサラッタナクン, Billkin、ビウキン)
◯ 大学を中退して怠惰に生活していたM
อุษา เสมคำ(Usha Seamkhum)
◯ 祖母Amah(メンジュ)
สฤญรัตน์ โทมัส(サンヤ・クナコーン、画像中左)
◯ Amah(メンジュ)にとっての長男
สัญญา คุณากร(Sarinrat Thomas、画像左)
◯ Amah(メンジュ)にとっての長女、Mの母親。
พงศธร จงวิลาส(Pongsatorn Jongwilas、画像中左)
◯ 祖母Amah(メンジュ)の次男
ต้นตะวัน ตันติเวชกุล(トンタワン・タンティウェーチャクン)
◯ Mのいとこ、Mui(ムイ)。祖父を世話をして看取り、遺産を受け取った。
※画像はこれらの記事からお借りしている。