2026-01-01から1年間の記事一覧

『長江』映画レビュー&完全ガイド | 35億も納得。さだまさしによる奇跡の記録映画(1981)

『長江』映画レビュー 「歌手・さだまさしが35億円の借金を作った映画」だけで終わらせるには、あまりにも惜しい。1980年、改革開放が始まったばかりの中国を35mmフィルムで大規模に撮影した奇蹟の贅沢さ。45年後の今こそ、その驚くべき映像の価値を再発見す…

『太陽の少年』中国映画レビュー&解説 | 甘美な青春時代を歪めていく記憶『阳光灿烂的日子 In the Heat of the Sun(1994)』

中国映画『太陽の少年』レビュー。 懐かしさを刺激する美しい光が煌めく映像、理想的なまでに美しいミューズ・米蘭(ミーラン)。そこには記憶が美化される大人だからこそ見えてくる歪み。緻密さとロマンチシズムが同居する姜文(チアン・ウェン)監督の人と…

『鬼が来た!』中国映画レビュー&解説 | 抗日映画の概念を変えようとしたカンヌ受賞作『鬼子来了 Devils on the Doorstep(2000)』

中国映画『鬼が来た!』レビュー。 センシティブな題材という先入観を脱臼させるようなブラックコメディ。香川照之の凄まじい迫力と入念に作り込まれた日本軍描写。抗日映画を変革しようとする監督の志の高さがカンヌ受賞と中国不許可を呼び込んだ力作。 200…

『罪の手ざわり』中国映画レビュー&解説 | 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)⑥映画俳優の競演、SNS構造を組み込む先駆的試み『天注定 A Touch of Sin(2013)』

中国映画『罪の手ざわり』レビュー。 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)の長編7作目は4つの死亡事件をオムニバス的に描く。 映画俳優たちによるケレン味ある映像は、SNSによる受け手の変化を反映した先駆的な試みでカンヌ映画祭・脚本賞を受賞。 2013年 中国・フラ…

『イン・パブリック』中国映画レビュー&解説 | 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)⑤『青の稲妻』直前に撮影の短編ドキュメンタリー『公共場所 In Public(2001)』

中国映画『イン・パブリック』レビュー。 山西省の駅の待合所やバス停、ビリヤード場など、人が集まる「公共場所」に集う人々を記録した短編ドキュメンタリー。翌年の『青の稲妻(2002)』へと繋がるロケ地、観察者として後年のスタイルへと繋がっていく考え…

『世界』中国映画レビュー&解説 | 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)④フォーマットの発明と革新性溢れる転換点『世界 The World(2004)』

中国映画『世界』レビュー インディペンデント映画から中国も公認するメジャー監督となってからの第一作は、ついに北京を舞台に世界を見据える。そして監督のフォーマットが世に出た転換点となる作品 2004年 中国・フランス・日本 133分 豆瓣評価:7.6/10 監…

『青の稲妻』中国映画レビュー&解説 | 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)③無気力な若者たちの空気感『任逍遥 Unknown Pleasures(2002)』

中国映画『青の稲妻』レビュー。 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)3作目、故郷三部作のラストは汾陽(フェンヤン)ではなく大同(ダートン)が舞台。あまりにも気だるく無気力な若者たちは、時代に裏切られた人々そのものの時間。 2002年 中国・フランス・日本・…

『プラットホーム』【後編】中国映画レビュー&解説 | 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)②文化的コラージュを選択した意味『站台 Platform(2000)』

中国映画『プラットホーム』レビュー【後編】 音楽、テレビ、カルチャーと、大量の文化をコラージュすることで当時の空気を立ち昇らせる。なぜ賈樟柯(ジャ・ジャンクー)はこの手法を使ったのか探る。 2000年 中国・香港・日本・フランス 154/193分 豆瓣評…

『プラットホーム』【前編】中国映画レビュー&解説 | 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)②情報量で構築した群像劇『站台 Platform(2000)』

中国映画『プラットホーム』レビュー。 改革開放からの10年を劇団俳優たちの目線から描く、監督の若き時期を反映した作品。若者たちが時代の変化に向き合い、対応しながら生きていく群像劇。穏やかな青春映画にも見え、美しい記憶となる。 2000年 中国・香港…

『一瞬の夢』中国映画レビュー&解説 | 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)①デビュー作『小武 Xiao Wu / The Pickpocket(1998)』

中国映画『一瞬の夢』レビュー。 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)の長編デビュー作は、荒削りだが既に強い個性を放っている。改革開放期の価値観の急変に対応できない男。少し哀愁を持った目線で彼を見つめていく、世界の注目も納得の良作。 1998年 中国 108分 …

中国映画レビュー&解説『盲井 Blind Shaft(2003)』社会派&王宝强の魅力全開の良作

中国映画『盲井』レビュー。 『盲山』と同じく社会の不条理を突き詰めた硬派な社会派作品。だが同時にあの王宝强(ワン・バオチャン)の初々しい少年ぽさが凄まじい魅力を放つ、不思議な組み合わせの良作。 2003年 中国 92分 豆瓣評価:9.0/10 監督:李杨(…

『盲山』中国映画レビュー&解説 | 村ぐるみでの人身売買という恐怖『盲山 Blind Mountain(2007)』

中国映画『盲山』レビュー。 騙され拉致されて農村の嫁になる事を強要されたという、壮絶な実話を映画化。人身売買の実態そのものがホラー以上に恐ろしい。だがその先に見える法律をも無視する村の価値観と、無表情に従う村人たちが更に背筋を凍らせる。 200…

中国映画レビュー&解説『我,许可 It's OK(2026)』コミカルで暖かい女性映画

中国映画『我,许可 It's OK(2026)』レビュー。 母娘を通して女性たちの生き方を描く、コミカルで温かな中国映画。少しずつ自分らしさを取り戻す姿を描きながら、今の中国映画で広がる女性映画の新たな潮流を感じさせる秀作。 2026年 中国 118分 豆瓣評価…

『ラッキー・ルー』カナダ・アメリカ映画レビュー&解説『Lucky Lu 幸福之路(2025)』ニューヨークの移民の現実

カナダ・アメリカ映画『ラッキー・ルー』レビュー。 ニューヨークへ渡ってきた中華系移民の現実が重く響く映画。困窮する家族の再会は、冬のストリートをより厳しく映しだし、移民たちのヒリついた切迫感に息が詰まる。 2025年 カナダ・アメリカ 103分 IMDb…

香港映画レビュー&解説『火遮眼 The Furious(2025)』

香港映画『火遮眼 The Furious(2025)』レビュー。 アジア最新型アクションをドカ盛りで仕上げたシンプルでストレートな大満足作。わかりやすい作り、見やすい画面でしっかりを期待を上回る、素晴らしい快作。 2025年 香港 113分 IMDb評価:7.9/10 監督:谷…

『おばあちゃんへのラブレター』中国映画レビュー&解説 | 潮汕文化に没入していく感動作「给阿嬷的情书 Dear You(2026)」

中国映画『おばあちゃんへのラブレター』レビュー。 その昔タイへと移り住んだ華人たちを、2人の女性の絆として描き出す美しいドラマ。まるで彼ら彼女らの側に寄り添い、その価値観の中で暮らすような、不思議に新しい体験。 2026年 中国 118分 豆瓣評価:9.…

『私の愛のかたち』香港映画レビュー&解説 | 障害者の性の更にその先を掘り下げる「像我這樣的愛情 Someone Like Me(2025)」

香港映画『私の愛のかたち』レビュー。 女性障害者の性について描いた挑戦的なテーマだが、廖子妤(フィッシュ・リュウ)の演技力もあって素敵なラブストーリーにもなっている。だがその裏に愛とは何かという、答えのない問いかけを配置する、香港映画らしい…

香港映画では見えなかった香港を描くフィリピン映画『Hello, Love, Goodbye(2019)』レビュー&解説

フィリピン映画『Hello, Love, Goodbye』レビュー 香港で働くフィリピン人家政婦たちを主人公にした、香港映画の盲点をついたようなフィリピン映画の大ヒット作。香港映画ではなかなか描かれない正反対の視点がとても衝撃的な一方で、とても素敵で良質な若者…

中国映画レビュー&解説『菜肉馄饨 Shanghai Wonton(2025)』上海映画②:高齢者を軽やかに描く革新性

中国映画『菜肉馄饨』レビュー。 上海を舞台に上海語で描かれる「上海映画」という新しく革新的な潮流。一方で高齢者が前向きに生きる姿を軽やかに描くもう一つの革新的潮流を、さりげなく体現した先駆的な都市型ドラマ。 2025年 中国 108分 豆瓣評価:7.1/1…

中国映画レビュー&解説『拼桌 A Table For Two(2026)』上海映画①:素敵な料理に癒される若者たち

中国映画『拼桌』レビュー。 上海を舞台に、料理が若者たちの孤独を繋いでいく都市の物語。上海だからこそ成立するローカルな画作りと、グローバルな現代の若者たちの姿が交錯する新世代な映画。 2026年 中国 98分 豆瓣評価:6.2/10 監督:吴靖(ウー・ジン…

香港映画レビュー&解説「衝鋒:火拼 Ultimate Revenge(2026)」正統派香港アクションを現代に再現

香港映画「衝鋒:火拼」レビュー。 まるで私たちが熱狂した「あの頃の香港警察アクション」を2026年に再現したようなハードボイルドアクション。オールド香港映画ファンはきっと歓喜の一方、「生き残りを未だ模索する」香港アクションの現状も色濃く反映して…

香港映画レビュー&解説『不日成婚』&『不日成婚2』名作への助走が既に始まっていた「Ready O/R Knot(2021)」&「Ready O/R Rot(2023)」

香港映画『不日成婚1』&『不日成婚2』レビュー。 『旅立ちのラストダンス(2025)』の陳茂賢(アンセルム・チャン)監督による2021/2023年公開の前作(日本未公開)。意外なほど軽いタッチの都会派ラブコメの連作だが、グッと深みを増す2作目は正に「旅立ち…

中国映画レビュー&解説『得闲谨制 Gezhi Town(2025)』一流制作陣による深い余韻の戦争映画

中国映画『得闲谨制』レビュー。 肖战(シャオ・ジャン)が主演、あの兰晓龙(蘭暁龍、ラン・シャオロン)と正午陽光がタッグを組んだという期待に相応しい出来。他とは一線を画す濃密な戦争映画表現を繰り広げる、負け犬たちの泥臭い戦争映画。俳優たちの強…

中国映画レビュー&解説『夏洛特烦恼 Goodbye Mr.Loser(2015)』中国コメディの新世代を築いた歴史的名作

中国映画『夏洛特烦恼』レビュー。 コメディ劇団から、今やヒット映画メーカーとしても大御所となった開心麻花。その彼らが2015年に放った記念すべき第1作は、口コミから歴史的ヒットになった伝説を差し置いても今なお充分に面白く、ホロリとさせる。計算し…

中国映画レビュー&解説『飞驰人生3 Pegasus 3(2026)』中年青春映画として完成したシリーズ最高峰

中国映画『飞驰人生3』レビュー。 あの3人が再びラリーに情熱を燃やすシリーズ3作目。再び春節映画第一位となったヒット作はこれまで以上に少年マンガ的情熱によって駆動する中年の青春映画にシフトした熱血作品。 2026年 中国 126分 評価:7.3/10 監督: 韩…

開心麻花(开心麻花)とは?よく見る中国コメディ俳優たちの“震源地”を知る映画ガイド

開心麻花(开心麻花)とは?よく見る中国コメディ俳優たちの“震源地”を知る映画ガイド 中国映画で最近よく見る俳優たち。 たとえば沈腾(シェン・トン)、马丽(マー・リー)、魏翔(ウェイ・シャン)、尹正(イン・ジョン)、常远(チャン・ユエン)… この1…

中国映画レビュー&解説『用武之地 Escape From The Outland(2025)』世界レベル映像のゲリラテロもの

中国映画『用武之地』レビュー。 極めてリアリティある描写でテロに巻き込まれた民間人を描き、残酷な現実をIMAXの美しい映像で見せつける圧倒的クオリティ。だが結末の表現で立ちはだかる商業大作の壁。世界レベルが目の前という臨界点なのを感じさせる、傑…

沈騰(シェン・トン)出演映画おすすめ3選+作品群の完全ガイド|初心者向け解説

沈騰(シェン・トン)出演映画おすすめ3選+作品群の完全ガイド|初心者向け解説 沈騰(シェン・トン)は、現代の中国映画界を代表する名実ともにトップの喜劇俳優だ。出演作の累計興行収入は400億元を超え、「彼がいればヒットは間違いなし」と言われる絶対…

中国映画レビュー&解説『毕正明的证明 The Return of The Lame Hero(2025)』90年代列車スリのノワール

中国映画『毕正明的证明』レビュー。 2025年の国慶節映画の中でも高い評価を得た犯罪映画。1990年代を舞台にした懐かしさと怪しさが混ざりあうカオスな空気を、スタイリッシュな映像とテンポで現代的に再構築したノワール。 2025年 中国 124分 豆瓣評価:7.2…

『グッド・ゲーム』香港映画レビュー&解説 | 斬新な演出のeスポーツアクション「觸電 Good Game(2025)」

香港映画「グッド・ゲーム」レビュー。 ゲーム大会での勝利を目指す凸凹チームのセカンドチャンスもの。大作ではないが良質なアクション、ゲームキャラも使った一段深いキャラクター描写で、ノリよく見れて満足度も高い佳作。 2025年 香港 95分 IMDb評価:6.…