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【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
香港映画には珍しい女子高生同士の恋愛とその後を描いた2021年の作品。王道の恋愛映画っぽく描かれた美しい作品だが、あえてクィア映画として描かれていない事で公開当時議論を呼んだ。観る側の文化や価値観によって受け取り方が大きく変わる。

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【スタッフ & キャスト】
2021年 香港 95分 IMDb評価:6.1/10
監督:吳詠珊(キャンディ・ン)、楊潮凱(ヨン・チウホイ)
出演:談善言(ヘドウィグ・タム)、楊偲泳(レンシ・ヨン)、歐錦棠(スティーブン / ステファン・アウ)、麥方喬(テレサ・マック)、韋家雄(ウィリー・ワイ)、童愛玲(アイリーン・トン)
【あらすじ】
29歳の李詠藍【談善言(ヘドウィグ・タム)】に見知らぬ番号から電話がかかる。それは初恋の相手、李芯悦【楊偲泳(レンシ・ヨン)】からのものだった。
2001年、二人はともに香港の伝統ある名門女子校に通っていたが、いつしか友情なのか愛情なのか分からない関係が生まれる。初めて胸がときめき、手をつなぎ、初めてキスをした。
ブライズメイドを頼まれた詠藍は芯悦の背中を見つめながら、あの中学時代の想いが蘇る。
【感想】
香港映画には珍しい女子高生同士の恋愛とその後を描いた2021年の作品。王道の恋愛映画っぽく描かれた美しい作品だが、あえてクィア映画として描かれていない事で公開当時議論を呼んだ。観る側の文化や価値観によって受け取り方が大きく変わる。
4年前に公開された作品だが、まだ時代遅れ感もなく一気に見れて、とても熱意を感じた。時代設定は20年前の2001年。ミレニアムの時期になっていて、あの頃アイドルだった鄭伊健(イーキン・チェン)や張國榮(レスリー・チャン)、謝霆鋒(ニコラス・ツェー)らの話題から語り始めて、初っ端から香港映画ファンの心を掴んでくる。
そこから香港の名門女子校での賑やかな日々の中、2人が知り合い、近づいていく様子を大量のエピソードでテンポ良く、細かく重ねて見せていく。映画全体でも95分と短くまとめているのでまったくダレない。

*恋愛映画かクィア映画か
最近は香港でも現在日本公開中の「これからの私たち - All Shall Be Well(2024)」といったクィア映画が作られたが、筆者はこの映画を違和感なく恋愛映画として見て、クィア映画とは見ていなかった。日本では女子校でのこういった話を聞くこともあるし、「櫻の園(1990)」などの映画もある。珍しい事ではないし、香港でもあるんだなという感覚だったが、意外というか、香港や批評サイトIMDbなどではクィア映画として認識され、クィア的な描写が弱いという批評もあるようだ。
エンドロールでは実際の当事者たちが思い出を語っている。確かに、劇中でもここでも、自身の事をクィアとする言動は出てこない。2人の共同監督、吳詠珊(キャンディ・ン)と楊潮凱(ヨン・チウホイ)自身も恋愛映画として作ったと語っている。そして日本でも多分、同性愛的なニュアンスでは捉えない事が多いと感じている。
だが、確かにあの2人がどちらであったとしても、変でもなければおかしくもないし、翻ってむしろ日本の捉え方の方が少数派なのかもしれない。
もちろんこれは2人の監督による創作だし、真相はあったとしても明示しなかったのは意図的なのだろう。一方で大量のエピソードを通じて2人の関係性を説明してもいる。だからそれぞれの解釈は、どちらが正解という話でもないのだろう。そんな映画の評価よりも、香港での実際の捉えられ方について、観客それぞれの感想だとか社会の捉え方とか、もっといろんな話を聞きたいと感じた。映画以上に映画の受け止められ方により興味深く感じた。日本でも今後もこんな映画は作られるだろうか。その時にはどんな受け止められ方をするのだろうか。

*新人時代の2人の主演
主人公たちが通っているような名門女子校の厳しさは、ちょうど「寄了一整個春天(2024)」でも出てきたように抜き打ちの持ち物検査などが描かれていて、今も変わらないようだ。そうした厳しい環境で少しずつ進展していく2人の仲は、クライマックスまでスリリングですらあって目が離せない。
主人公の2人、楊偲泳(レンシ・ヨン)は本作で映画俳優として本格的に知られるようになり、今大ヒット中の「夜王(2026)」にも出演している。ボーイッシュな談善言(ヘドウィグ・タム)も昨年には、これもハードな主演作「母性のモンタージュ(2025)」で俳優としての気合いを見せた。2人とも今や香港映画の常連だけど、この当時の2人、特に談善言(ヘドウィグ・タム)は初々しい固さも感じられる。
筆者は恋愛映画として良作だと感じたが、観終わって色々と考えると、さてこの見方が正しいのかよくわからなくなる。ぜひこの映画を見てどう感じるか、教えて欲しい。今の日本にとってもリトマス試験紙になるような、そんな見る価値のある映画だった。
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香港でのクィア映画として評した評論には、例えばこの記事のようなものがある。
要約すると、登場人物は明らかに同性愛者だが、にも関わらずたとえば父親達からの、彼女達に対する誤解や偏見を批判的な目線もなく描写している、結婚の捉え方がとても保守的で、結果として実際の同性愛者に旧来の価値観を再度押しつける事になっている、としている。

【トピック】
◯ 2021年11月25日に香港で公開。公開初週は興収ランキングで大ヒット作「アニタ 梅艷芳(2021)」や中国で大ヒットの「1950 鋼の第7中隊(2021)」などに次ぐ9位。興行収入は251万香港ドル(5050万円)。
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◯ 日本では2022年3月3日からの大阪アジアン映画祭で上映され、ABCテレビ賞を受賞。受賞作品として2023年2月18日に大阪ABCテレビで放映された。
◯ 監督は吳詠珊(キャンディ・ン)、楊潮凱(ヨン・チウホイ)のコンビ。
楊潮凱(ヨン・チウホイ)は1984年生まれの俳優で、2009年から無綫電視(TVB)の訓練生として芸能界入り。「72家租客(2010)」、「源生罪(2024)」など数多くのドラマに出演している。映画出演歴もあるが、声優として「ズートピア(2016)」や「ペット(2016)」などの香港版吹き替えを担当している。
本作が初の監督作品となる。
吳詠珊(キャンディ・ン)は、楊潮凱(ヨン・チウホイ)と香港城市大学の同級生で今作が初監督作となる。「借金取りとマネージャー(2013)」で脚本を担当、「七人樂隊(2021)」ではプロデュースを担当している。

◯ 本作は香港電影発展局によって行われる、首部劇情電影計画という映画製作援助によって106万香港ドル(2100万円)の援助を受けて制作された。この制作費支援はたとえば「毒舌弁護人(2023)」、「流水落花(2022)」、「年少日記(2023)」など、最近の良質な新世代による作品を多数世に送り出していて、信頼度の高いプロジェクトになっている。
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談善言(ヘドウィグ・タム)
◯ 李詠藍(画像右)
◯ 1990年生まれ。方力申(アレックス・フォン)や余文楽(ショーン・ユー)、蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)などを輩出した人気ドラマ、Y2Kシリーズのひとつ「DIY2K(2012)」で人気になる。香港野球チームを描いた「最初の半歩(2016)」で香港金像奨新人賞にノミネート。「小男人週記3之吾家有喜(2017)」や「告別之前(2017)」などに出演。
本作の後、陳茂賢(アンセルム・チャン)監督のラブコメディ「不日成婚(2021)」とその続編「不日成婚2(2023)」、鄭秀文(サミー・チェン)主演の「流水落花(2022)」やMIRROR呂爵安(イーダン・ルイ)らが出演した家族崩壊の物語「香港ファミリー(2022)」、出産の苦労を描いた主演作「母性のモンタージュ(2025)」、今年4月公開の主演作「搗破法蘭克(2025)」などに出演している。

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楊偲泳(レンシ・ヨン)
◯ 李芯悅(画像右)
◯ ドラマやバラエティ番組で活躍してきたが、本作で映画デビュー。黃子華(ダヨ・ウォン / ウォン・ジーワー)主演の大ヒット作「毒舌弁護人(2023)」での弁護士役や「祥賭必贏(2025)」、古天樂(ルイス・クー)主演作「私立探偵(2025)」などに出演。今年の黃子華(ダヨ・ウォン / ウォン・ジーワー)主演による大ヒット春節映画に「夜王(2026)」もホステス役で出演している。

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歐錦棠(スティーブン / ステファン・アウ)
◯ 詠藍の父親(画像右)
◯ 1963年生まれで、当初は武術雜誌「新武俠雜誌」の記者として活動し、その後フリーランスを経て日本航空香港支社に勤務した。1989年に亞洲電視(ATV)に加入し、同局の番組MCを長く務める。その後、中国やシンガポールのテレビやラジオでMCとして活動した。一方で舞台、ドラマ、映画にもバイプレイヤーとして数多く出演している。
主な出演映画は「Zの嵐(2014)」、「大樹は風を招く(2016)」、「霊幻道士 こちらキョンシー退治局(2017)」など。
ブルース・リーの大ファンで自ら2000年に「小龍舘」というブルース・リーの展示会を1年間開催するほか、中国武術にも造詣が深い。
麥方喬(テレサ・マック / マク)
◯ 詠藍の母(画像左)
◯ 1975年生まれ。17歳でミスコンテストで優勝寸前まで行くも落選し、それにまつわるトラブルに巻き込まれる。その後俳優として三級片(R指定)まで含む数多くの映画に出演した。主な出演作は「欲望の街・純愛篇/紅い疾風(1996)」や「ラブ・イズ・マネー(2001)」など。

韋家雄(ウィリー・ワイ)
◯ 李芯悦の父親
◯ 1965年生まれ。シングルマザー家庭で育ち、中学生の頃から様々な仕事と共にエキストラとして撮影に参加、1990年代に亞洲電視(ATV)を経て無綫電視(TVB)の所属俳優となる。10年ほど俳優活動し「紫禁城 華の嵐(2004)」などのドラマに出演後、照明設備の会社を立ち上げ日本でも営業していたが2011年の東日本大震災で多額の負債を計上。負債の返済が終わった頃に友人の勧めから俳優活動を再開した。
近作では映画「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義(2012)」や「追龍II:賊王(2019)」などに出演している。

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