香港映画レビュー「毒舌弁護人~正義への戦い~ 毒舌大狀 A Guilty Conscience」

毒舌弁護人~正義への戦い~ 毒舌大狀 A Guilty Conscience

毒舌弁護人〜正義への戦い〜 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

 

 

【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】

 

 

 

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www.youtube.com 香港映画「毒舌弁護人~正義への戦い~」60秒予告

 

 

 

【スタッフ & キャスト】

2023年 香港 134分
監督: 吳煒倫(ジャック・ン)
出演: 黃子華(ダヨ・ウォン)謝君豪(ツェー・クワンホウ)王丹妮(ルイーズ・ウォン)廖子妤(フィッシュ・リュウ)王敏德(マイケル・ウォン)何啟華(ホ・カイ・ワ)楊偲泳(レンシ・ヨン)栢天男(アダム・パック)林保怡(ボウイ・ラム)

 

 

 

【ストーリー】

林涼水(ラム・リョンソイ)【黃子華(ダヨ・ウォン)】は弁護士として、曾潔兒(ツァン・キッイ)【王丹妮(ルイーズ・ウォン)】の娘の虐待死事件を弁護するが、疑わしい夫【栢天男(アダム・パック)】の一族で富豪である鍾家の策略により無実の曾潔兒(ツァン・キッイ)は敗訴し、彼女は禁固刑を受けてしまう。
今までの漫然とした仕事からの自責の念から、林は深く反省し、彼女の再審と無罪獲得に奮闘するのだが…

 

 

 

【感想】

すっきりと気持ち良く見終われる、後味の良い法廷ものミステリー映画。

これも香港は女人街にある旺角百老匯戯院で鑑賞。公開から2ヶ月以上も経過していたが、清明節の祝日という事もあってか、なんとほぼ満席の大盛況であった。記録的ヒット作でもあるし、主演の黃子華(ダヨ・ウォン)への揺るぎない信頼感の高さも実感できる。折しも前週に「ジョン・ウィック:コンセクエンス」が公開されており、当日は「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の公開初日で、多くの人々はそちらを目当てに劇場に来ている様子だったのにも関わらず本作も未だこの人気なので、いかにヒットしたのかもよく分かるというものだ。

 

毒舌大狀

 

映画自体も良い意味で軽めのノリで、伝えたい事はとても大事だけどそれを無闇に仰々しくしないのがセンスよく、劇場でも全員が一体になって楽しめた。映画中もみんなが喋り、笑い、いろんな音を鳴らしながら楽しく見れたし、他の映画以上に騒々しかったくらいで、改めて香港映画を香港で見る楽しさを実感できた。

ストーリーはシンプルで、謎解きのトリックは別として結果も想像できるし、その意味で新鮮さを期待する種類の映画ではない。一度は挫折した黃子華(ダヨ・ウォン)演じる林涼水(ラム・リョンソイ)がどうやって立ち上がり、女性の無実をどうやって証明するのか。そのロッキー的な物語を裁判を舞台として見せる。だから今作で黃子華(ダヨ・ウォン)は笑いの部分はほとんど見せない。まさかの有罪によって無実の曾潔兒(ツァン・キッイ)を収監させてしまったどん底の地点から、じわりじわりと地道に、以前の調子に乗っていた自分から変わった事を示しながら、悪の権化のような富豪の鍾家と対決する。

 

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やっぱり黃子華(ダヨ・ウォン)のキャラが一番の魅力だ。特にクライマックスの法廷での長くて圧倒的な弁論!本当に熱い!思わず心を揺さぶられるまさに熱演だ。一方で映画全体では彼の飄々とした、柔らかい印象がなおさら内に秘めた強い決意を引き立てていて、こういう人が実際にいて欲しいと思わせる、自然で素敵なキャラだった。

そんな彼を個性の強めな俳優陣ががっちりサポートしている。王丹妮(ルイーズ・ウォン)は実質2作目にも関わらず、素晴らしく安定していて主役の存在感だったが、なにより廖子妤(フィッシュ・リュウ)が最高だ。ビシッときめてとてつもなく不穏な空気を漂わせ、王丹妮(ルイーズ・ウォン)と対峙すると、「アニタ 梅艷芳(2021)」での姉妹役の組み合わせの時とのあまりの違いを見せつけて最高に盛り上がる。

 

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そして法廷で対決する検事役の謝君豪(ツェー・クワンホウ)と鍾家の顧問弁護士の王敏德(マイケル・ウォン)が、また良い。王敏德(マイケル・ウォン)のギラギラの出で立ちと、上から目線の物言いを英語でまくし立てる圧倒的な悪役感。同じく謝君豪(ツェー・クワンホウ)も不穏でずる賢い雰囲気をプンプンさせて登場する。彼ら二人の予想を裏切る展開もまた面白かった。

個人的には黃子華(ダヨ・ウォン)をサポートする若手の二人、何啟華(ホ・カイ・ワ)と楊偲泳(レンシ・ヨン)が一番印象的だった。二人とも初めて見たからか、適度な絡み方で爽やかに頑張っていて気持ちいい。何啟華(ホ・カイ・ワ)は星野源的な雰囲気が漂う。

 

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本作が大ヒットした要因に、今の香港の言論への厳しい状況への鬱憤が挙げられることもある。最後に法廷で林涼水(ラム・リョンソイ)が熱く主張する内容は、確かに香港が失ってしまった特色でもある。でも筆者が会った香港人達は、意外にも皆あまりその状況について絶望的でもなかった。だからこの映画についても、そこに過剰に思い入れて見るのも一面的すぎだし、そんなに単純な話ではないかもしれない。
何より、そんな事を考えなくてもシンプルに大変楽しく面白い映画だった。

 

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【トピック】

○ 春節映画として2023年1月21日に公開。香港映画史上初めて香港興行収入で1億香港ドルを突破した大ヒット作となった。
1ヶ月後の2月24日に「毒舌律师」というタイトルで公開された中国本土でも、初週に興収ランキング1位を獲得。

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◯ 10月20日より日本公開決定。

dokuzetsubengonin.com

 

◯ 筆者は本作を2023年中国/香港映画の個人的ベストの10位に選出した。

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○ タイトルの「大狀」は香港での訴訟弁護士の意味で、中国本土ではこの呼び名は使われないため弁護士一般という意味で「律师」に差し替えられている。

 

○ 監督の吳煒倫(ジャック・ン)は「コールド・ウォー 香港警察 堕ちた正義(2016)
「アニタ 梅艷芳(2021)」などの脚本を担当し、今作が初監督作となる。制作チームも「アニタ 梅艷芳(2021)」との関連が多い。

香港映画レビュー「アニタ 梅艷芳 Anita」 - daily diary

 

毒舌大狀

 

 

 

黃子華(ダヨ・ウォン)

○ 林涼水(ラム・リョンソイ)。裁判官だったが毒舌で自分勝手に仕事していて罷免され、弁護士として再出発する。曾潔兒(ツァン・キッイ)の事件を弁護するも敗訴し、彼女を禁固刑に追い込んでしまう。

○ 大人気コメディアンとして1990年代から大活躍し、ドラマや映画にも多数出演しているが、2018年でコメディのステージは引退した。代表作は「6人の食卓 飯戲攻心(2022)」「乜代宗師(2020)」「棟篤特工(2018)」、ドラマでは「復讐のプレリュード(1995)」など。

香港映画レビュー「6人の食卓 飯戲攻心 Table For Six」 - daily diary

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王丹妮(ルイーズ・ウォン)

○ 曾潔兒(ツァン・キッイ)。酔って眠ってしまった隙に娘が血を流して亡くなっていた事件の被告にされている。無実を勝ち取るために林涼水(ラム・リョンソイ)に弁護を依頼するも、逆に有罪となり収監されてしまう。

○ モデルとして活躍していたが「アニタ 梅艷芳(2021)」で主人公の梅艷芳(アニタ・ムイ)を演じて俳優デビューし、香港金像獎で新人賞を受賞した。その後本作と同じ黃子華(ダヨ・ウォン)主演の「6人の食卓(2022)」にゲスト出演した後、本作が3作目の映画出演となる。

香港映画レビュー「アニタ 梅艷芳 Anita」 - daily diary

香港映画レビュー「6人の食卓 飯戲攻心 Table For Six」 - daily diary

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廖子妤(フィッシュ・リュウ)

○ 鍾念華(チュン・ニンワー)。曾潔兒(ツァン・キッイ)の夫、鍾京頤の姉だが、著名な富豪である鍾家の名誉を守るために弁護士の董衛國を通じて、曾潔兒(ツァン・キッイ)を有罪とさせるように工作する。

○ マレーシア、ジョホール州ムアル出身のモデル、俳優で、「レイジー・ヘイジー・クレイジー(2015)」「姉妹関係(2016)」に出演していたが、「アニタ 梅艷芳(2021)」で王丹妮(ルイーズ・ウォン)演じる梅艷芳(アニタ・ムイ)の姉、梅愛芳(アン・ムイ)を演じた。今作で早くも再共演し、下のような「アニタ」を思い出させるようなシーンもあった。

毒舌大狀

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栢天男(アダム・パック)

○ "御曹司" 鍾京頤。娘を死なせてしまった疑いがあるが、妻が有罪になるように姉とともに裁判工作を行う。

○ オーストラリア生まれのモデル・俳優で、まるで金城武二世と言われている。「イップ・マン外伝 マスターZ(2018)」「L風暴(2018)」「P風暴(2019)」などの風暴シリーズなどに出演し、「L風暴(2018)」で香港金像奨 最優秀新人賞にノミネートされた。2020年からの「逃獄兄弟」シリーズの出演で知られている。

香港映画「逃獄兄弟 Breakout Brothers」 - daily diary

 

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楊偲泳(レンシ・ヨン)

○ 方家軍(フォン・カークワン)。最初の裁判の頃、林涼水(ラム・リョンソイ)と同じ事務所で働くことになった弁護士。林の仕事ぶりを注意していたが、結局止めることができないままに曾潔兒(ツァン・キッイ)に有罪判決を受けさせてしまう。

○ ドラマやバラエティ番組で活躍してきたが、女友達との微妙な関係を描いた映画「はじめて好きになった人(2021)」で話題になった。

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何啟華(ホ・カイ・ワ)

○ 太子という名の林涼水(ラム・リョンソイ)の部下で、裁判事務を担当する。

○ 阿Deeというニックネームで、オーディション番組から結成されたグループ「ERROR」のメンバーでもある。「香港ウェスト・サイド・ストーリー(2018)」「ファストフード店の住人たち(2019)」「散った後(2020)」などに出演している。

毒舌大狀

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謝君豪(ツェー・クワンホウ)

○ 再審裁判を担当する検察官、金遠山(カム・ユンサン)。

○ 多くのドラマ、映画に出演している。映画では「バーニング・ダウン 爆発都市(2020)」での犯人役や大ヒット作「未来戦記(2022)」、ドラマでは古装劇「月に咲く花の如く(2017)」「三国志 Secret of Three Kingdoms(2018)」など。

香港映画レビュー「バーニング・ダウン 爆発都市 拆彈專家2」 - daily diary

 

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王敏德(マイケル・ウォン)

○ 鍾家の顧問弁護士、董衛國(トン・ワイクオ)。夫の鍾京頤を無罪にするために曾潔兒(ツァン・キッイ)を有罪にするための工作を行う。

○ アメリカ出身で、広東語より英語が流暢な香港映画俳優。1990年代から数多くの映画に出演しており、竹野内豊主演の「冷静と情熱のあいだ(2001)」にも出演している。主な出演作はミシェル・ヨー主演「皇家戦士(1986)」や、香港金像獎や台湾金馬奨にノミネートされた「ファイナル・オプション/香港最終指令(1994)」「BEAST COPS 野獣刑警(1998)」など。最近では「コールド・ウォー
香港警察 二つの正義(2012)」
「ファイヤー・ストーム(2013)」「Zの嵐(2014)」などにも出演している。

毒舌大狀

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