中国映画レビュー&解説「守岛人 守島人 Island Keeper」

守岛人 守島人 Island Keeper

 

 

守岛人


www.youtube.com “守护一生版” 预告《守岛人》/ Island Keeper( 刘烨 / 宫哲 / 侯勇 / 孙维民 )【预告片先知 | Official Movie Trailer】

 

 

 

【スタッフ & キャスト】

2021年 中国 125分
監督: 陈力(チェン・リー)
出演: 刘烨(リウ・イェ)宫哲(ゴン・ジャー)侯勇(ホウ・ヨン)孙维民(スン・ウェイミン)宋春丽张一山(チャン・イーシャン)

 

 

 

【あらすじ】

江蘇省の沖合にある小さな小さな無人島、開山島の灯台を守るため、家族で30年以上住み続けて国旗・五星紅旗を掲揚し続けた王継才とその家族を描く。

 

 

 

【感想】

いかにも中国で好まれそうなメンタリティ、気合いだけで素手の裸一貫で国へ奉仕する姿こそ至高という、これぞ愛国映画の典型、ただし予想の更に5割増しみたいな映画だった。

2021年の中国金鶏奨・作品賞受賞作という事で、中国映画好きならば見とかんといかんなという流れだったが、正直言うと少しビジュアルやあらすじを見て、薄々予感をしていた通りではあった。

 

守岛人

 

島の灯台守夫婦の人生を30年に渡って描いたという、聞くだけだと木下恵介監督「喜びも悲しみも幾歳月 (1957) 」のようなストーリーで、これに中国的センスを掛け合わせれば、まあこういう感じになるわなという感じだ。しかもこのストーリーは実在の人物で、2018年に彼が急死して以降は、習近平直々に取り上げるなど愛国のヒーローとして持て囃されてきたので、他の作り方は選択肢になかったのであろう。なお出てくるエピソードは、驚くことに実話ベースのようだ。

ただし、事前の予想はある意味裏切られた。主人公は想像以上に本宮ひろ志や宮下あきら的な、劇画調ゴリゴリの強烈な男臭さを備えていたのだ。
ある無人島の灯台を守るために、男ひとり汚く粗末で電気ガス水道はおろか、草木すら満足に生えていない過酷な環境で、驚くほど強烈な台風の襲来など、すべてを裸一貫でやり通し、(来たくて来たとはいえ)嫁も子どももそのまま無人島に住まわせて、かといって己は意地でも弱音を吐かず、愛情は溢れるほどあるが粗暴で言動に示さないという、漫画「俺の空」や「男塾」にそのまんま出てきそうなキャラだ。これをそのまま描いては、2021年の現代ではさすがにリアリティが無い。無さすぎて笑ってしまう位だったので、そういうつもりで楽しむのも悪くないだろう。

 

守岛人

 

もちろん刘烨(リウ・イェ)の演技は本当に素晴らしい。尋常じゃない目つきでたった一人で島を守り抜く気概に溢れた、ものすごい熱意のある演技であった。映像もかなりコントラスト強め、ビンテージ感のある色調でノスタルジックな雰囲気を強調していたのが好印象だった。

 

守岛人

 

灯台守という職業そのものも過去のものとなってしまったが、「喜びも〜」が65年前の昭和32年公開なのと同様、本作の環境も日本の昭和30年代かむしろそれ以前だ。設定も1986年頃とそれなりに昔なのだが、当時を推し量っても信じ難いほど厳しい環境だし、そもそも彼らがあそこに住みついたのも代替要員が全然来ないという理由がきっかけなので、現代の目線では国の労務管理がお粗末すぎるように見えてしまい、そこで己の責任を全うしようと大声で叫んでいる主人公は、頑張れば頑張るほど現実から離れていき、かえって可哀想に見えてきてしまう。そんな事より嫁さん子供の為に何かしてやれよ。

この手の王道的な愛国映画では「大路朝天(2018)」という、四川省の山奥での高速道路建設にまつわる、なぜか興収ランクインしていた為に見た映画を思い出したが、あれですら一言で言えば"色々大変だけどみんなで頑張ろう"的な穏当なものだった。コロナ禍を描いた「穿过寒冬拥抱你(2021)」や、陈凯歌(チェン・カイコー)が製作総指揮を努めたオールスター映画「愛しの母国(2019)」なども、演出こそ大げさだが穏当な方だ。
同じくプロパガンダ的な描き方で、かつ本作の翌年に同じ金鶏奨作品賞を受賞した吴京(ウー・ジン)、易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)他スター多数出演の「1950 鋼の第7中隊 长津湖(2021)」での、戦争という極限状態の方が、本作とは感覚が近いかもしれない。
要するに「国は貧しくてまだ十分に報えないが、俺らは自発的に国のために奉仕しよう」という着地点になる映画だ。そしてどれも私達から見ると、本作のように"頑張れば頑張るほど可哀想に見えてしまう"ジレンマが共通してしまう。2年連続でこういう作品が受賞するだけに、金鷄奨作品賞には思想性を感じざるをえないだろう。

 

 

ちなみに、劇中に島で飼われている犬3匹が登場するのだが、彼らの描かれ方がいかにも人間の求める姿そのもので、まるでリアリティが無い。それもまあ中国映画あるあるなのだが、その意味でもひと昔前の中国映画を煮詰めたような作品であった。
昭和に作られた映画であればこれもまた良しといえるが、2021年に堂々と公開するのであれば価値観の差異に何らかの目配せは欲しいし、ましてそれが無いまま国の最優秀映画として選ばれてしまうのは、何かしら言われても仕方ない。中国内の需要だけで作られた作品なのだろうが、それならばむしろ一般的な中国の方々に、本作をどう思われているのか突っ込んで聞いてみたいところだ。

 

 

 

【トピック】

○ 中国人民解放軍や华夏電影などにより制作され、2021年6月18日に公開。公開週に興収ランキングで6位を獲得した。

 

○ 2021年第34回中国金鶏奨(金鸡奖)で作品賞を受賞。脚本賞、主演男優賞がノミネートされた。

2021年第34回中国金鶏奨(金鸡奖)の作品一覧 - daily diary

 

 

○ 今作監督の陈力(チェン・リー)は1990年代から監督として活躍している女性で、八一映画製作所こと人民解放軍映画ドラマ制作部所属の国家一級監督である。奚美娟が主演した「月圆今宵(2001)」などで知られているが、基本的には歴史もの、抗日ものが多い。本作の記者会見では基本的に軍服を着て登場していた。

守岛人

右は妻の王仕花役の宫哲(ゴン・ジャー)

 

 

○ モデルとなった王継才さんのエピソードは映画にそのまま反映されている。映画同様に相当なキャラだったようなので、彼の生きざまだけ見ても十分面白い。

gendai.media 中国の孤島に32年間駐留し続けたエキセントリックな民兵、死す(安田 峰俊) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)

 

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刘烨(リウ・イェ)

○ 民兵として無人島に赴任する王继才。当初は誰も定着しないために渋々赴任し、その後も期間を延長され続けていたが、徐々に責任感を自覚し、家族を呼び寄せ、32年にわたり島と国を守り続ける事になる。

「山の郵便配達(1998)」の主演でデビュー。同性愛を描いた「藍宇 〜情熱の嵐〜(2001)」で台湾金馬奨・最優秀男優賞を受賞。
最近では「ポリスストーリー・レジェンド(2013)」「誘拐捜査(2015)」、そして「追凶者也(2015)」などにも出演。昨年秋「钢铁意志(2022)」にも出演した。本作で中国金鶏奨主演男優賞にノミネートされた。

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宫哲(ゴン・ジャー)

○ 王继才の妻、王仕花。小学校の教師をしていたが、夫と共に島に移り住み、子供も島で産み育てる。

「我们俩(2005)」「大地(2009)」、ドラマ「天涯咫尺(2008)」など、2000年代の作品出演で知られている。

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侯勇(ホウ・ヨン)

○ 王继才の上司で、王と家族を支援する。

○ 映画「ブレイブ 大都市焼失 / 烈火英雄(2019)」、ドラマ「都是一家人(2019)」「巡回检察组(2020)」「人民的名义(2017)」など。

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