ガールズ・オン・ワイヤー - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画
【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
地獄の環境から抜け出そうとする「姉妹」の物語。より自覚的で強くなりたいと願い、家族から逃げ出した姉によるヒーロー譚のようで、それを佇まいから納得させる方笛(ファン・ディー)役・文淇(ウェン・チー)が素晴らしい。


www.youtube.com Girls on Wire (2025) 想飞的女孩 - Movie Trailer - Far East Films
【スタッフ & キャスト】
2025年 中国 114分
監督: 文晏(ヴィヴィアン・チュウ)
出演: 刘浩存(リウ・ハオツン)、文淇(ウェン・チー)、张宥浩(チャン・ヨウハオ)、刘奕铁(リウ・イーティエ)、彭静(ジン・ポン)、建康(ジアン・カン)
【あらすじ】
家族の負債を返済するため、映画のスタントウーマンとして働いている方笛(ファン・ディー)【文淇(ウェン・チー)】のもとに、絶縁状態だったいとこの田恬(ティエン・ティエン)【刘浩存(リウ・ハオツン)】が訪ねてくる。麻薬中毒者で暴力を振るう父親を密告したことから麻薬組織に捕らえられた田恬(ティエン・ティエン)は、自己防衛のために組織の一員を殺してしまい、組織から追われていた…。
東京国際映画祭より
【感想】
地獄の環境から抜け出そうとする「姉妹」の物語。より自覚的で強くなりたいと願い、家族から逃げ出した姉によるヒーロー譚のようで、それを佇まいから納得させる方笛(ファン・ディー)役・文淇(ウェン・チー)が素晴らしい。
最後の最後に一気にドライブしていって、爽快感すら味わわせてくれる作り。だが、そこまでは相当陰鬱で泥臭い、見ているのも辛いような展開が続く。
妹のような従姉妹・田恬(ティエン・ティエン)を演じる刘浩存(リウ・ハオツン)は、元々儚げな存在感が魅力だが、そんなキャラクターが過酷な環境に取り残され、ボロボロの状態で助けを求めて方笛(ファン・ディー)の元へとやって来るという、魅力を逆手に利用したようなえげつないキャスティングで、その過酷さが一層際立つ。

一方の方笛(ファン・ディー)も、こんな家なんかと逃げ出し、1人映画界に入ってスタントウーマンとして一応自活しているのだが、それとても決して楽な稼業ではない。この、スタントとして参加する武侠作品でのワイヤーアクションシーンが、とても印象的だ。極寒の池からの飛び上がるシーンの、無限に繰り返されるリテイク。たぶんネット配信ものだろうか、あまり士気が上がらない現場の、監督の罵声飛び交うやるせない状況。「スタントマン 武替道(2024)」でのハードな状況をよりリアルに、より下っ端の立場から見せつけられる。
演じる文淇(ウェン・チー)は、台湾金馬奨・主演女優賞ノミネートとなった監督の前作「天使は白をまとう(2017)」こそ見れていないものの、「血観音(2017)」や「妈妈!(2022)」などで何度か見ていて個性的なルックスから忘れられない存在感があったが、ここでも「妈妈!」での役に近い孤高の雰囲気を纏っていて、強い女によるヒーロー譚なのかと思いかけるが、こちらも重苦しくリアルで生々しく、もがき苦しみながら理想にたどり着こうと努力している。
原題の「想飞的女儿」は「飛びたいと願う少女」みたいな意味で、それは上記のスタントシーンのジャンプからも連想されるが、それとても大変に難しい事として描かれる。素晴らしいエンディングを見終わるとこのタイトルが深く染み入ってくる。
シンプルなシスターフッドというより、社会的な保障から見放された底辺の物語として、特にろう者だが女性が主人公の「向阳·花(2025)」と似た構造だし、浮浪孤児の物語「野孩子(2024)」なんかを思い起こす。女性が状況を打破するといえば「家出の決意(2024)」も同じく重苦しくも、希望が見える着地となっている。
だが、本作はそれら以上に深い傷を観た者に残す、深い余韻が漂う作品だった。
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【トピック】
◯ 2025年2月17日にベルリン映画祭コンペティションでワールドプレミア。翌月3月8日から中国で全国公開された。公開初週の興収ランキングでは大ヒットロングラン中だったアニメ映画「ナタ:魔童の大暴れ(2025)」などに次ぐ8位。興行収入は1698万元(3.6億円)。
◯ 日本では2025年10月27日からの東京国際映画祭で上映された。
◯ 監督の文晏(ヴィヴィアン・チュウ)は、刁亦男(ディアオ・イーナン)監督「夜行列車(夜车、2007)」や「薄氷の殺人(2014)」、尹麗川(イン・リーチュエン)監督「牛郎织女(2008)」、杨荔钠(ヤン・リーナー)監督「春夢(2012)」といった、後にビッグネームとなっていく監督たちを扱う独立系プロデューサーとして活動していた。
「水印街(Trap street、2013)」を初監督し、ヴェネチア映画祭批評家週間でプレミア上映される。監督2作目の「天使は白をまとう(2017)」は東京フィルメックスで特別招待作品として上映、ヴェネツィア映画祭コンペティション部門出品、台湾金馬奨・監督賞を受賞。本作が第3作目の監督作となる。
刘浩存(リウ・ハオツン)
◯ 田恬(ティエン・ティエン)
◯ 巨匠张艺谋(チャン・イーモウ)監督の映画「ワン・セカンド(2020)」で大抜擢され一気に知られるようになった、巩俐(コン・リー)や章子怡(チャン・ツイイー)らと並ぶ、いわゆる「谋女郎(イーモウガールズ)」の最も新しい女優。その後の監督作「崖上のスパイ(2021)」にも出演している。
デビュー当時に幾つかのスキャンダルがあったが、佳作だった易烊千玺(イー・ヤンチェンシー / ジャクソン・イー)主演「送你一朵小红花(2020)」、韩寒(ハン・ハン)監督・刘昊然(リウ・ハオラン)主演の「四海(2022)」、ジャッキー・チェン主演作「ライド・オン(2023)」、韓国映画リメイク作「スケッチ(2024)」、ドラマ「脱轨 (2023) 」などなど、順調に出演を重ねている。

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文淇(ウェン・チー)
◯ 方笛(ファン・ディー)
◯ 2003年台湾生まれ。北京の中央戯劇学院を卒業している。本作の文晏(ヴィヴィアン・チュウ)監督の前作「天使は白をまとう(2017)」で台湾金馬奨・主演女優賞ノミネート、翌年の「血観音(2017)」で台湾金馬奨 助演女優賞を受賞。杨荔钠(ヤン・リーナー)監督「妈妈!(2022)」にも特別出演していて、これも文晏(ヴィヴィアン・チュウ)監督つながりであろうか。
その他、「心理罪之城市之光 (2017) 」や「被光抓走的人(2019)」などに出演している。

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张宥浩(ジャン・ヨウハオ)
◯ スーパーで働いている阿明。田恬(ティエン・ティエン)を気にかける。
◯ 张一白(チャン・イーバイ)がプロデューサーを務めた古装劇「永遠の桃花(2017)」で知られるようになる。その流れで彼によるドラマ「风犬少年的天空(2020)」とその映画版「僕らが空を照らしたあの日(2021)」に出演。
その他、映画「1921(2020)」や「了不起的老爸(2021)」、「再见,少年(2021)」などに出演している。最近では刘昊然(リウ・ハオラン)主演「四海(2022)」や、BLEACHのコスプレや日本ロケで話題の「涉过愤怒的海(2023)」、陈凯歌(チェン・カイコー)監督の「志願軍 ~雄兵出撃~(2023)」 からの三部作に出演と、特に映画で活躍を始めている期待の若手だ。

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刘奕铁(リウ・イーティエ)
◯ 撮影所の友人・铁哥。
◯ 张艺谋(チャン・イーモウ)監督の「狙击手(2022)」で映画デビュー。その後ドラマ「人生之路 (2023) 」を経て大ヒット作「ロング・シーズン(2023)」に出演を果たした。昨年は再び张艺谋(チャン・イーモウ)監督作品「第二十条(2024)」に出演した。刘浩存(リウ・ハオツン)とは彼女が主演の「スケッチ~彼女と描いた光~(2024)」でも共演している。

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彭静(ジン・ポン)
◯ 田恬(ティエン・ティエン)の母・田利华役の彭静(ジン・ポン)。
◯ 2009年にデビュー。本作の文晏(ヴィヴィアン・チュウ)監督の前作「天使は白をまとう(2017)」にも出演していた。

建康(ジアン・カン)
◯ 画像左。薬物の売人たちのひとり・哑巴役の建康(ジアン・カン)はモデルでもある俳優。映画「クラウディ・マウンテン(2021)」や「妻消えて(消失的她、2023)」、「来福大酒店(2024)」、香港映画「ホワイト・ストーム 世界の涯て(2024)」などに出演している。
耿乐(ゴン・ロー)
◯ 画像中。老胡役の耿乐(ゴン・ロー)。今年映画「ブラックドッグ(2024)」を公開した管虎(グェン・フー / グァン・フー/クワン・フー)監督による主演映画「头发乱了 (1994) 」でデビュー。だが、同年に出演した名作の誉れ高い中港合作「太陽の少年(1994)」での、主人公の兄貴分・イクー役で一気に知られることとなった。
映画「开往春天的地铁 (2002) 」、「天使は白をまとう(2017)」などで映画賞を受賞。その他「面引子 (2011) 」、「疯狂72小时 (2014) 」、「1950 鋼の第7中隊(2021)」と続編の「1950 水門橋決戦(2022)」、「1921(2022)」、ドラマでは「長歌行(2021)」、「天才基本法(2022)」などに出演。
昨年は日本翻訳大賞受賞の小説を映画化した「刺猬(2024)」やクライム・サスペンス映画「扫黑·决不放弃(2024)」、今春に公開されたノワール「大风杀(2025)」にも出演している。
杨皓宇(ヤン・ハオユー)
◯ 画像右。大斌役の杨皓宇(ヤン・ハオユー)は、1974年生まれで芸歴も長いが、日本に入っている出演作は王兵監督の映画「無言歌(2010)」ほどであった。
その後、映画「流転の地球(流浪地球、2019)」への出演からヒットSF映画「宇宙探索編集部(2023)」の主演へと繋がる。
以来、沈腾(シェン・トン)主演の「月で始まるソロライフ(2022)」、尹正(イン・ジョン)主演のミステリー「扬名立万(2021)」、ドラマでは张若昀(チャン・ルオユン)主演の「雪中悍刀行(2021)」、王家衛(ウォン・カーウァイ)が監督した「繁花 (2023) 」などがあり、昨年は张艺谋(チャン・イーモウ)監督の最新映画「第二十条(2024)」、SF大作「エリア749(2024)」、南京大虐殺を描いた「南京照相馆(南京写真館、2025)」、京劇についての「シータイ・戯台(2025)」にも出演と、いまや人気俳優の一人となった。
12月に日本でも上映の金鶏奨ノミネートのアニメ映画「ランビーワ 炎の物語(燃比娃、2025)」でも声優を務めている。

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周游(ジョウ・ユー / チョウ・ヨウ)
◯ 田恬(ティエン・ティエン)の父親・田军を演じたのは周游(ジョウ・ユー / チョウ・ヨウ)。モデルでもある俳優で、2015年頃から俳優活動を開始。映画「镜像人·明日青春 (2018) 」で映画賞を受賞した他、主演作「野马分鬃 (2020) 」などがある。その他「ビッグ・ショット(2019)」や、朱一龙(チュー・イーロン)主演作「川辺の過ち(2023)」に出演。
昨年は贾樟柯(ジャ・ジャンクー)監督の新作「新世紀ロマンティクス(2024)」のほか、管虎(グェン・フー)監督「ブラックドッグ(2024)」、刘昊然(リウ・ハオラン)主演「デクリプト(2024)」、そして今年は南京大虐殺を描いた「南京照相馆(南京写真館、2025)」に出演している。

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