燃野少年的天空 The Day We Lit Up The Sky
【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
www.youtube.com 《燃野少年的天空》/ The Day We Lit Up the Sky 发布终极预告（ 彭昱畅 / 孙芮 ）【预告片先知 | Official Movie Trailer】
【スタッフ & キャスト】
中国 2021年 108分
导演: 张一白（チャン・イーバイ）、韩琰（ハン・イェン）
主演: 彭昱畅（ポン・ユーチャン）、许恩怡（シュー・エンイー）、张宥浩（チャン・ヨウハオ）、尹正（イン・ジェン）、孙芮（ソン・ルイ）、斯外戈（ス・ワイガ）
【ストーリー】
受験に失敗し、予備校に通うために海南島へとやってきた老狗（ポン・ユーチャン）は香ばしい臭いのする「干物好き男子」と、性格が真逆の「雑草系女子」と出会う。
それぞれは事情を抱えながらも共にダンス大会に参加し奇跡を起こす。偏見を取り払い、わだかまりを解消し、自らの劣等感や臆病さに打ち勝ち、全力でダンスに臨む。
ひと夏の全力青春ダンスムービー！
2021東京・中国映画週間 映画紹介より
【感想】
ミュージカル映画と言っていい、歌と踊りがたっぷりで爽やかな青春コメディ映画。中国での低評価がちょっと理解できないほど素敵な映画だった。
とにかくダンスの作りがすごく良いし、すごくテンポも良く、展開も自然にダンスが入ってきて心躍る場面がいくつもある。カメラワークや編集もダンスを見せる為に工夫が凝らされていて、とっても楽しい。
彭昱畅（ポン・ユーチャン）と许恩怡（シュー・エンイー）の2人が街中で踊るシーンでは、ワンカットで撮っていてとても印象的だ。
様々なサプライズキャラが登場して楽しい。尹正（イン・ジェン）の強烈な野暮ったさ、びっくりするタイミングで出てくる张译（チャン・イー）、そして鄭秀文（サミー・チェン）。
個人的には彼らの登場も嬉しいが、主役である5人の男子生徒のキャラがもう少し魅力的に見えるようになっていれば更に良かったかと思う。
ただ、中国での評価はかなり悪い。全体に低評価だが、特に豆瓣では3.8という驚きの数字を叩き出し、コメントでも批判ばかりが並んでいる。評価の中心は現実味のなさ、踊りについての低評価、中でも「青春映画と銘打っているのに古臭い感覚の青春演出」というような、演出についての低評価がほとんどのようだ。おそらく大ヒットドラマ「风犬少年的天空 (2020) 」ファンが非常に多いため、そこからの違和感じゃないかと想像する。ダンス自体のクオリティも否定されていたが、個人的にはかなりの大人数でもあるし、相当練度も高くて良い出来だったと感じた。
全体的にもドラマを見ていないためか違和感は無かったし、演出そのものもややファンタジックよりに狙ってバランス良く仕上がっていて、佳作と言っていい素晴らしい出来だ。
本作の脚本家は、この映画の後に大ヒット・アニメ映画「雄獅少年／ライオン少年（2021）」を手掛けた里则林であり、大の周星馳（チャウ・シンチー）ファンでもある。
そうして見てみると、確かに周星馳（チャウ・シンチー）ネタも入っているが、実はそもそも基本プロットが「少林サッカー（2001）」と同じ、「負け犬たちの再起」＝「咸鱼翻生(干物が生き返る→起死回生)」という基本構造で作られていて、「雄獅少年」の習作とも言える。ここでの試行錯誤があったからこそあのヒット作が生まれたのかもしれないな、などと考えていた。
ファンタジックなストーリー展開、コミカルな演技だが、それとミュージカル演出がぴったり合っていて、テンポよく最後まで飽きずに見られる楽しい映画だった。
【トピック】
◯ 2021年7月17日に全国公開。初週は興収ランキング2位を獲得。興行収入は1.6億元（33億円）を記録した。
◯ 2021年10月の東京・中国映画週間で日本でも公開された。
◯ 共同監督の张一白（チャン・イーバイ）は、当初ミュージックビデオや広告制作でキャリアを開始。1998年頃から監督作品を発表し始める。「开往春天的地铁 (2002) 」や伊東美咲主演の「about love アバウト・ラブ／関於愛（2004）」、「将爱情进行到底 (2011) 」、そして「君といた日々（2014）」、「君のいる世界から僕は歩き出す（2016）」などの監督作がある。最近では「愛しの母国（2019）」《相遇》編を監督している。
プロデュース仕事も多く、古装劇「永遠の桃花（2017）」や映画「僕らの先にある道（2018）」、「中国女子バレー 奪冠 （2020）」など。
中国映画レビュー「愛しの母国 / 私と私の祖国 我和我的祖国 My People, My Country」 - daily diary
中国映画レビュー「中国女子バレー 奪冠 夺冠 Leap」 - daily diary
◯ 共同監督の韩琰（ハン・イェン）は、「冷たい熱帯魚（2010）」などの園子温監督がプロデューサーを務めた「破梦游戏 (破夢遊戯、2018) 」で監督を務めた。この映画には张宥浩（チャン・ヨウハオ）も出演している。
◯ 本作と同じ制作陣の青春ドラマ「风犬少年的天空 (2020) 」が高評価で大ヒットし、本作の制作へと繋がった。このドラマには彭昱畅（ポン・ユーチャン）、张宥浩（チャン・ヨウハオ）も出演しているが、彭昱畅（ポン・ユーチャン）の役名のみ同じで、ストーリーは違うものになっている。
◯ ダンスシーンの監修には元大阪府立登美丘高等学校ダンス部コーチのAkaneが務めている。
◯ 撮影は海南島海口市で行われた。
华彩杰鹏游艇会、海口龙华路龙华天桥、小黄の家のあるエリアとして海口騎楼老街、ダンスシーンでは海口世贸商圈など海口の各地で撮影された。
◯ 劇中で「咸鱼（魚の干物）」が主人公たちをバカにするネタにされている。これは周星馳（チャウ・シンチー）の名作「少林サッカー（2001）」が元ネタで、劇中での「做人如果没有梦想，和咸鱼有什么区别呢？（夢も持たずに生きるなんて、死体と変わらないじゃないか）」というセリフが広まったもの。咸鱼（干物）=死体という扱いで、後にネットミームとなった。
周星馳（チャウ・シンチー）ファンの本作脚本家・里则林は、本作の後に脚本を担当した映画「雄獅少年／ライオン少年（2021）」でも、彼へのオマージュをより一層入れ込んだ上「咸鱼」が再び師匠の仕事になっていて、本作と似た構図を作り出している。
本作のプロットも「雄獅少年」のプロットも、どちらも「負け犬たちの再起」＝「咸鱼翻生(干物が生き返る→起死回生)」という「少林サッカー」と同じ基本構図で作られていて、「雄獅少年」の習作という見方もできる。
No.017 キーワードチャイナ 【咸鱼】＆【出来混迟早要还的】_中国国際放送局
彭昱畅（ポン・ユーチャン）
◯ 勉強は苦手だがダンスに興味を持つ老狗（李泽林）。
◯ 彭昱畅（ポン・ユーチャン）は、日本では胡波（フー・ボー）監督「象は静かに座っている（2018）」での主演が知られている。
それ以外には、兄弟あるあるが面白い映画「ヤンチャな兄 どっか行け（2018）」や伝統音楽&青春映画の「閃光少女（2017）」、バスケがネタの青春映画「小小的愿望（2019）」、女子バレー中国代表を描いた「中国女子バレー 奪冠（2020）」、張学良を演じた「革命者（2021）」など。
ドラマでは中国版「テニスの王子様（2019）」や「都挺好（2019）」、「一点就到家（2020）」、上記の「风犬少年的天空（2020）」などに出演している。
中国映画レビュー「ヤンチャな兄 どっか行け 快把我哥带走 Go Brother! 兄に付ける薬はない!」 - daily diary
中国映画レビュー「小小的愿望 The Last Wish 小小的願望」 - daily diary
中国映画レビュー「中国女子バレー 奪冠 夺冠 Leap」 - daily diary
中国映画レビュー「革命者 The Pioneer」 - daily diary
许恩怡（シュー・エンイー）
◯ 老狗の向かいの学校の生徒で、ダンスが大好きな小黄。
◯ 2004年香港生まれ。母親は「チャウ・シンチー マイヒーロー（1990）」や「超アブない激辛刑事 カリー&ペッパー（1990）」に出演した俳優で歌手の柏安妮（アン・ブリッジウォーター）。
本作がデビュー作。映画2作めは昨年秋公開の「二手杰作（2023）」。昨年12月から出演3作めとなる林超贤（ダンテ・ラム）監督によるニック・チョン、陳偉霆主演のアクション映画「爆裂點」が公開されている。
中国映画レビュー「二手杰作 World's Greatest Dad」 - daily diary
张宥浩（チャン・ヨウハオ）
◯ 周囲からからかわれていた老狗の同級生、繁体龙。
◯ 本作の監督・张一白（チャン・イーバイ）がプロデューサーを務めた古装劇「永遠の桃花（2017）」で知られるようになる。その流れでドラマ「风犬少年的天空（2020）」と本作に出演。
その他映画「1921（2020）」や「了不起的老爸（2021）」、「再见，少年（2021）」などに出演している。最近では刘昊然（リウ・ハオラン）主演「四海（2022）」や、雷佳音（レイ・ジャーイン）主演「交换人生（2023）」、昨年末にはBLEACHのコスプレや日本ロケで話題の「涉过愤怒的海（2023）」に出演と、特に映画で活躍を始めている期待の若手だ。
中国映画レビュー「四海 Only Fools Rush In」 - daily diary
中国映画レビュー「交换人生（交換人生） Five Hundred Miles」 - daily diary
中国映画レビュー「涉过愤怒的海 Across the Furious Sea」 - daily diary
尹正（イン・ジョン）
◯ 家庭の事情から28歳で中学校に通っている大华。
◯ 韩寒（ハン・ハン）監督作の常連で、彼の最新作「四海 （2022）」でも主人公の兄貴分役で出演、監督がプロデュースしたミステリー「扬名立万（2021）」では主演、「ペガサス／飛馳人生（2019）」でも出演していた。歌手でもある。
喜劇集団「開心麻花」関連作にもよく出演しており、「夏洛特烦恼（2015）」や「恥知らずの鉄拳（2017）」にも出演。
ドラマではヒット作「麻雀（2016）」、「君、花海棠の紅にあらず（2020）」など。
中国映画レビュー「四海 Only Fools Rush In」 - daily diary
中国映画レビュー「扬名立万 Be Somebody」 - daily diary
中国映画レビュー「ペガサス／飛馳人生 飞驰人生 Pegasus」 - daily diary
中国映画レビュー「保你平安 Post Truth」 - daily diary
孙芮（ソン・ルイ）
◯ 潘潘。小黄の同級生だが、当初は彼女を嘲笑していた。
◯ 孙芮（ソン・ルイ）は上海アイドルグループSNH48のメンバー。SNH48は当初は秋元康率いるAKBグループのひとつだったが、2016年からは独立したグループとして活動している。
孙芮（ソン・ルイ）自身は2013年に二期生として加入。2017年に総選挙でトップメンバーに入り、2020年には総選挙でトップ投票を獲得した。本作出演はその直後にあたる。その他、盛英豪（ションインハオ）主演のドラマ「雪鹰领主 (2022) 」に出演している。
斯外戈（ス・ワイガ）
◯ 老狗の同級生、阿泽。
◯ 斯外戈（ス・ワイガ）は、歌手としてオーディション番組「明日之子シーズン2（2018）」で準優勝となりデビュー。映画「再见吧！少年 (2020) 」やドラマ「拜托了班长 (2021) 」に出演している。
胡宇轩（フー・ユースァン）
◯ 老狗の同級生、阿力。
◯ 胡宇轩（フー・ユースァン）は2016年デビュー。2018年に戦国ドラマ「将夜 戦乱の帝国（2018）」に出演。本作出演後、ドラマ「夢華録（2022）」や「偷偷藏不住 (2023) 」などに出演している。
黄觉（ホァン・ジュエ）
◯ 小黄の父、咸鱼王。魚の干物屋を営みながら、ひとりで小黄を育てている。
◯ 黄觉（ホァン・ジュエ）は1990年代半ばにモデルとしてデビュー。後に俳優業も開始し、映画「恋愛中のパオペイ（2004）」、本作の张一白（チャン・イーバイ）監督の「君といた日々（2014）」、「三城記（2015）」、「少年の君（2019）」、「兎たちの暴走（2020）」、「ロングデイズ・ジャーニー（2018）」など数多くの作品に出演している。
ドラマでは「风吹云动星不动 (2004) 」、「倾城之恋 (2009) 」、「白色月光（2020）」、「山海情（2021）」、「開端 -RESET-（2022）」などに出演。昨年末から始まった王家衛（ウォン・カーウァイ）監督のドラマ「繁花 (2023) 」にも出演している。
中国映画レビュー「少年の君 少年的你 Better Days」 - daily diary
◯ 香港の大スター・鄭秀文（サミー・チェン）が特別出演している。
◯ 张译（チャン・イー）もトラックドライバーの役で特別出演している。
