【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
2023年作。金像奨アクション監督賞を受賞した、林超賢(ダンテ・ラム)による香港伝統のアンダーカバー(潜入捜査)もの最近作。安定の張家輝(ニック・チョン)を完全に食っている陳偉霆(ウィリアム・チャン)の存在感が素晴らしい。千変万化のバリエーションで魅せてくるアクションでR指定も納得の濃密さ。

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【スタッフ & キャスト】
2023年 香港 139分
監督:林超賢(ダンテ・ラム)、唐唯瀚(トン・ワイホン)
出演:張家輝(ニック・チョン)、陳偉霆(ウィリアム・チャン)、梁洛施(イザベラ・リョン)、譚俊彥(ショウン・タム)、姜皓文(フィリップ・キョン)
【あらすじ】
潜入捜査官の江銘【陳偉霆(ウィリアム・チャン)】は、麻薬捜査課の警視・李振邦【張家輝(ニック・チョン)】の命令を受け、麻薬王・韓洋【譚俊彥(ショウン・タム)】の組織に潜入する。しかし江銘は次第に複雑化した状況に追い込まれ、闇へと堕ちていく。李振邦は必死に救おうとするが叶わず、師弟の関係は次第に修復不可能な敵対関係へと変貌していく...
【感想】
金像奨アクション監督賞を受賞した、林超賢(ダンテ・ラム)による香港伝統のアンダーカバー(潜入捜査)もの最近作。安定の張家輝(ニック・チョン)を完全に食っている陳偉霆(ウィリアム・チャン)の存在感が素晴らしい。千変万化のバリエーションで魅せてくるアクションでR指定も納得の濃密さ。
林超賢(ダンテ・ラム)による張家輝(ニック・チョン)出演作、香港映画で数多描かれてきた定番中の定番・潜入捜査ものという事で、概要を見ただけでも昔ながらの香港アクションの匂いが立ち昇ってくる。
実際のところその印象も間違いなく、新味を期待するより伝統芸を堪能する方が楽しめるタイプの作品だ。
そしてストーリー上でも「インファナル・アフェア」シリーズ等と同じく潜入捜査官が次第に自己のアイデンティティに苦悩していくのだが、そんな江銘を演じる陳偉霆(ウィリアム・チャン)のキャラクターが素晴らしかった。

陳偉霆(ウィリアム・チャン)は本作で初めて見たのだが、今までの彼を知っている方ほど本作での風貌に驚くんじゃないだろうか。そう思うほど、シルバーのベリーショート、ムッキムキにパンプアップした肉体に派手なタトゥーを隠さず、カラフルなシャツを羽織った姿は、それまでのイメージからガラッと変わったイカツくハードな仕上がりで、主人公に相応しい緊張感を湛えている。
それでいながら師である張家輝(ニック・チョン)と会うシーンでは人懐っこい柔らかな笑顔も見せて、物語が進むにつれてあの笑顔が懐かしくなっていくのだ。
もう陳偉霆(ウィリアム・チャン)の存在感が本作の価値を高めているのは間違いない。
だがストーリー自体はかなり容赦ない。日本でのR指定となる18歳以上閲覧可能な三級片指定を受けただけあって描写も手加減なく、ひたすらアクションシーンが続く。
アクション監督は「スタントマン 武替道(2024)」でオールドスタイルを貫こうとする主人公を演じた董瑋(トン・ワイ / スティーブン・トン)その人だ。「スタント~」でのイメージを彷彿とさせる攻めたアクション、そして様々な見せ方やバリエーションを絡めて見せてくれる。

もうひとつ日本人に嬉しいのは「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦(2024)」 で知られる事となった張文傑(ジャーマン・チョン / キット・チャン)の登場で、出演していたとはいえ顔も見えなかった「風林火山(2025)」とは違い、マフィアでの切れ者として見せ場もばっちり用意されていて最高だ。一応「トワイライト~」で共演の胡子彤(トニー・ウー)も組織の一員としてクレジットされているのだが、見ている限りでは判別できなかった。
ラオスの麻薬地帯が出てきたり、香港人が演じているとはいえ日本人ヤクザまで出てきて、話は少々広がりすぎな気もするが、濃密にアクションを楽しめる作品なのは間違いない。
奇しくも先月まで香港で、映画での「臥底」=潜入捜査官だけを特に取り上げた展覧会「光影邊緣—香港電影的臥底世界」まで開催されていたタイミング、そんな連綿と続く香港伝統のジャンルの最新作でもある。さらに来月には「インファナル・アフェア」シリーズの麥兆輝(アラン・マック)監督による最新作「内幕(2025)」が公開予定だが、どうやらそれも潜入捜査ものの様で、ぜひそれを見る前に一見するだけの価値がある、そう思えた作品だった。
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◯ 香港映画での「臥底」=潜入捜査官の系譜をまとめた良記事である。
【トピック】
◯ 本作は2023年12月8日から香港・マカオ、中国本土で公開。公開初週の興収ランキングでは「ウォンカとチョコレート工場のはじまり(2023)」、「年少日記(2023)」、「白日の下(2023)」に次ぐ4位に入った。
興行収入は香港で506万香港ドル(1億円)、中国本土で1億元(21.8億円)でヒット作と言える基準を超える成績となった。
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◯ 香港金像奨で董瑋(トン・ワイ / スティーブン・トン)がアクション監督賞を受賞。音響効果、視覚効果の2部門ノミネートとなった。
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◯ 本作は香港で、日本で言うR指定となる第III級電影(三級片)の指定を受け、18歳以上のみ鑑賞可能となった。
◯ 本作は総監督を林超賢(ダンテ・ラム、画像左)が務めている。
吳宇森(ジョン・ウー)監督に師事、数々のアクション映画での激しいアクション描写によって杜琪峰(ジョニー・トー)、徐克(ツイ・ハーク)、陳木勝(ベニー・チャン)らと並ぶ香港アクションの代表的な監督。主な作品は香港金像奨5冠を獲得した「BEAST COPS 野獣刑警(1998)」などだが、ここ最近は「オペレーション・メコン(2016)」と続編の「オペレーション:レッド・シー(2018)」、中国でのスーパー大ヒット作「1950 鋼の第7中隊(2021)」など、中国作品や中港合作での大作を手掛けることが多い。

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◯ 監督の唐唯瀚(トン・ワイホン)は本作が初監督作。陳木勝(ベニー・チャン)に師事し、「オペレーション:レッド・シー(2018)」や「レスキュー(2020)」といった林超賢(ダンテ・ラム)作品で助監督を務めていた。この作品の後、古天樂(ルイス・クー)・彭于晏(エディ・ポン)主演で「守闕者」という作品を撮っているようだが、公開予定はまだ明らかになっていない。

張家輝(ニック・チョン)
◯ 麻薬捜査課の課長・李振邦。
◯ 数多くの香港アクションに出演してきたスター。20代後半でATVに入り多くのドラマに出演したがTVBに移籍。「妙手仁心(1998)」などのヒットドラマへの出演から映画へと進出する。王晶(ウォン・ジン / バリー・ウォン)に目をつけられ、監督作「ゴッド・ギャンブラー/賭侠復活(1999)」で香港金像奨・助演男優賞ノミネート。以来、
「ビースト・ストーカー/証人(2008)」で金像奨・主演男優賞を受賞、「密告・者(2010)」や再び金像奨を受賞した「激戦 ハート・オブ・ファイト(2013)」などの、本作で総監督を務めた林超賢(ダンテ・ラム)監督作品に数多く出演。ほかにも杜琪峯(ジョニー・トー)監督「エレクション 死の報復(2006)」や「ダブル・サスペクト(2016)」や「インビジブル・スパイ(2019)」の文偉鴻(ジャズ・ブーン)監督のアクション作品、陳木勝(ベニー・チャン)監督「レクイエム 最後の銃弾(2013)」などで広く知られている。
今年3月には4作目の監督作となる劉俊謙(テレンス・ラウ)主演のサイコサスペンス「贖夢(2025)」が公開された。

陳偉霆(ウィリアム・チャン)
◯ 麻薬捜査課の刑事だが、李振邦の指示により韓洋の組織に潜入捜査を行っている。
◯ 1985年生まれの歌手。2006年に2人組グループSun Boy'zに新加入して芸能界デビュー。2年後にグループを脱退しソロとして活動を開始した。俳優としての活動も増加し、2013年頃から中国にも活動の機会を広げている。
主な出演作は、香港映画では鍾欣潼(ジリアン・チョン)と共演した「前度(2010)」やシリーズとなった黒社会もの「紮職(2012)」や、謝霆鋒(ニコラス・ツェー)主演の「ファイアー・レスキュー(2013)」、中国ドラマでは「古剣奇譚(2013)」、「酔麗花(2017)」、「斛珠<コクジュ>夫人(2021)」、「10年先も君に恋して(2022)」など。


梁洛施(イザベラ・リョン)
◯ シングルマザーで生活のために麻薬製造を続けていた膺秀
◯ 1988年マカオ生まれ。高校時代から芸能活動を始め数多くのCMに出演、その後歌手として4枚のアルバムを発表している。映画には「イザベラ(2006)」や台湾のクィア映画「Tattoo-刺青(2007)」、ハリウッド作品「ハムナプトラ3(2008)」、「あなたを、想う。(2015)」などに出演している。

譚俊彥(ショウン・タム)
◯ 香港でのドラッグディーラーのボス・韓洋(画像右)。
◯ 1980年生まれ。「天命(2018)」や「十八年後的終極告白(2020)」、「換命真相(2021)」、「新聞女王(2023)」などのTVBドラマで知られている。映画では梁朝偉(トニー・レオン)と金城武W主演の「傷だらけの男たち(2006)」や古天樂(ルイス・クー)主演「生日快樂(2007)」、「カンフー・ダンク!(2008)」などに出演している。

姜皓文(フィリップ・キョン)
◯ ドラッグディーラーのリーダー格・林九。
◯ 杜琪峯(ジョニー・トー)監督「奪命金(2011)」で映画賞受賞以来、数多くの映画に出演している。主な作品は「大樹は風を招く(2016)」、LGBT映画「トレイシー(2018)」、「ショックウェイブ(2017)」&「バーニング・ダウン 爆発都市(2020)」、中国映画だが無国籍的な設定のサスペンス「共謀家族(2019)」&「误杀2(2021)」、「未来戦記(2022)」などがある。

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周秀娜(クリッシー・チャウ)
◯ 韓洋の愛人であり組織にも関与している司徒葦を演じたのは周秀娜(クリッシー・チャウ)。
◯ 広東省潮州で生まれ育ち、10歳の頃に香港へと移民した。20歳にスカウトから芸能界入りし、映画出演も開始。特に2010年頃はモデルとしても絶大に人気を誇り、東京ガールズコレクションにも出演した。
映画では周星馳(チャウ・シンチー)監督「西遊記 はじまりのはじまり(2013)」や「100回目の別れ(2014)」、「大楽師(2017)」、「女子監獄(2023)」などに出演。「29歳問題(2017)」と「馬達・蓮娜(2021)」で香港金像奨・助演女優賞にノミネートされている。今年の春節映画「臨時決鬥(2025)」ではボクサー役で出演している。

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張文傑(ジャーマン・チョン / キット・チャン)
◯ 「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦(2024)」での四仔(セイジャイ)役で知られる張文傑(ジャーマン・チョン / キット・チャン)も、ドラッグディーラーのリーダー格・阿虎として出演している。

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