女子監獄 Prison Flowers: Wikipedia
【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧くださ い。】
これぞ香港B級映画!2023年作なのにVシネかな?と思うほどのコテコテな女子刑務所もの。久々に見る鍾欣潼(ジリアン・チョン)&周秀娜(クリッシー・チャウ)は
華がありすぎて、むしろリアリティがどこかへ置いてきぼりに。
www.youtube.com 《女子監獄》香港版預告 9月7日 浴火重生
【スタッフ & キャスト】
2023年 香港 88分
監督:呂美鳳
出演:鍾欣潼(ジリアン・チョン)、周秀娜(クリッシー・チャウ)、吳千語(カリーナ・ン)、吳家麗(キャリー・ン / ン・カーライ)、陳瀅(ジャニー・チャン)
【あらすじ】
実業家だった戴艷群【周秀娜(クリッシー・チャウ)】は、詐欺事件に関わったとして有罪となり、刑務所に収監される事になった。だが、実際に入った刑務所は想像以上に酷い場所であった。いじめ、暴力が蔓延し、所内を二分する派閥のどちらかに属さなければまともに過ごすことすら難しい。
果たして戴艷群はこのハードな地獄で生き延びることができるのか。
【感想】
ひさびさに見るB級香港映画といった趣の、良くも悪くも典型的な刑務所ものというジャンル映画。ひさびさに見る鍾欣潼(ジリアン・チョン)、周秀娜(クリッシー・チャウ)の頑張ってる姿が見れる点でも楽しめる映画だった。
この映画は飛行機の中で見た。筆者はいつも飛行機に乗ると、まっさきにどんな映画が見れるかチェックし、搭乗中は可能な限り映画を見るようにしているのだが、以前から今作がなぜか飛行機の機内映画としてピックアップされているのを時々見ていたので、1時間28分とお手軽な上映時間なのもあって、遂に見てみたという訳だ。
まあポスターを見ても伝わる通り、今までも色んな映画で描かれたような刑務所内の暴力の中で主人公がどうやって生き延びるかを描いた、「暴力脱獄(1967)」以来の古典的なストーリーだ。香港映画だと譚耀文(パトリック・タム)主演の「逃獄兄弟(2020)」シリーズなんかもあるが、最近の女子刑務所ものだと「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック(2013)」みたいな面白いドラマを思い出す。だが、あれみたいに現代的刑務所リアルが描かれているという感じでもない。
どちらかというと、それなりにデフォルメされた世界観で刑務所の無法地帯な状況と、それでも温かい人情的な交流の存在を描く、まあ良く言えばクラシック、悪く言えば何番煎じ的な今更な価値観が描かれていて、ひょっとすると昔懐かしのVシネマでも見ているような感覚になってくる。うっすらとしたサービスカットなんかもあったりする。
という感じなので劇中のすべての展開に驚きは無く、初めての刑務所に緊張する主人公が手荒い出迎えを受けつつ、ギスギスした人間関係に驚き、賭博や物々交換での刑務所経済に手を染め、次第に仲間を作っていくというストーリーだ。登場人物がすべて女性なのは新鮮だが、俳優たちにはそこまでの気合や緊迫感は求められていないのか、やり慣れていない感じが見える迫力だし、特に主人公の周秀娜(クリッシー・チャウ)や鍾欣潼(ジリアン・チョン)は華がありすぎて、むしろ彼らこそが一番リアリティが無い存在になっている。
とはいえ、二人とも演技に全く手を抜いてはいない。特に鍾欣潼(ジリアン・チョン)は近年なかなか見ることも難しくなっただけに、今も強い存在感を維持しているその姿を見れただけでも嬉しい。
真の悪役が出るという訳ではなく、生きるため、愛する人のため(ここら辺も少々古臭いのだが)に悪に手を染めた人々を描いているので、見ていると徐々に全員に親近感が湧いてくる。気楽に楽しめば十分満足できる、良い意味で昭和の2時間ドラマ的な雰囲気の映画だった。この企画はいったいどこで上映するために制作が決定されたのか、そこだけが気になる作品だ。
【トピック】
◯ 2023年9月7日に香港で一般公開。
◯ 1988年に公開された同名の映画が存在する。「サンダーストーム 特殊捜査班(2018)」などの"風暴"シリーズで知られる林德祿(デイビッド・ラム)が監督し、夏文汐(パット・ハー)、鄭裕玲(ドゥドゥ・チェン)、任達華(サイモン・ヤム)らが出演している。
◯ 監督の呂美鳳は、ほとんど情報が出てこないので本作がデビュー作となるかと思われる。
周秀娜(クリッシー・チャウ)
◯ 頂姐こと戴艷群。新しく入獄する事になった"新囚人"。
◯ 広東省潮州で生まれ育ち、10歳の頃に香港へと移民した。20歳にスカウトから芸能界入りし、映画出演も開始。特に2010年頃はモデルとしても絶大に人気を誇り、東京ガールズコレクションにも出演した。
映画では周星馳(チャウ・シンチー)監督「西遊記 はじまりのはじまり(2013)」や「100回目の別れ(2014)」、「大楽師(2017)」などに出演。「29歳問題(2017)」と「馬達・蓮娜(2021)」で香港金像奨・助演女優賞にノミネートされている。
香港映画レビュー「大楽師 大樂師 為愛配樂 Concerto of the Bully」 - daily diary
鍾欣潼(ジリアン・チョン)
◯ 波嫂こと梁鳳鳴。獄中で覇権を争うボス的存在。
◯ 鍾欣潼(ジリアン・チョン)は当初モデルとしてデビュー。2001年から蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)との大人気アイドルユニット、ツインズを結成した。
映画出演はツインズとして「ツインズ・エフェクト(2003)」を始めとする主演シリーズがあり、さらに単独では、邱禮濤(ハーマン・ヤウ)監督「イップ・マン 最終章(2013)」や、主演作「白狐(2013)」や、「無名(2023)」で知られる程耳(チェン・アル)が監督し浅野忠信も出演の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海(2016)」、ドラマ「古剣奇譚~久遠の愛~(2013)」といった中国作品にも出演が多い。蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)の主演作「77回、彼氏をゆるす(2017)」にもゲスト出演している。
香港映画レビュー「77回、彼氏をゆるす 原諒他77次 77 Heartbreaks」 - daily diary
吳家麗(キャリー・ン / ン・カーライ)
◯ Bo媽こと馮麗媚。梁鳳鳴と覇権を争うもう一方のボス。戴艷群を仲間に引き入れる。
◯ 1980年に無綫電視(TVB)の養成所で芸能界入り。周潤發(チョウ・ユンファ)主演で香港ノワールの先駆けとなる「友は風の彼方に(1986)」や「大丈夫日記(1988)」、大ヒットコメディ「チャウ・シンチーの熱血弁護士(1992)」、楊德昌(エドワード・ヤン)監督作「カップルズ(1996)」、劉青雲(ラウ・チンワン)の名作「つきせぬ想い(1993)」などなど、1980年代から活躍し数多くの作品に出演している。
「香港人肉竹輪(1993)」で台湾金馬奨・主演女優賞、張國榮(レスリー・チャン)主演「流星(1999)」で香港金像奨・助演女優賞を受賞している。
陳瀅(ジャニー・チャン)
◯ Boboこと陳寶玲。馮麗媚の娘だが母を嫌悪していた。
◯ 1989年生のモデル・俳優。日本でもリメイクが作られた韓国映画「サニー 永遠の仲間たち(2011)」の香港リメイクドラマ「ネバー・ダンス・アローン(2014)」の出演で知られるようになる。その後も「四個女仔三個BAR(2014)」、「跳躍生命線(2018)」、「福爾摩師奶(2019)」などの人気ドラマに出演した。
映画では「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義(2012)」、「コールド・ウォー 香港警察 堕ちた正義(2016)」などに出演している。
吳千語(カリーナ・ン)
◯ Kellyこと陳旻言。馮麗媚チームのメンバー。
◯ 1993年生まれのモデル・俳優。中国・香港合作「开心魔法 (2011) 」で香港金像奨・新人賞にノミネート。その後大阪アジアン映画祭でも公開された「王家欣 ウォン・カーヤン(2016)」に主演。「イップ・マン 継承(2015)」などにも出演している。
李彩華(レイン・リー)
◯ 朱綺雯。後から入獄してきたが、以前獄中にいた時から非常に凶悪で恐れられていた。入獄以来一気に覇権を奪ってしまう。
◯ 李彩華(レイン・リー)は歌手として2000年ころから活動している。俳優としても「回家的诱惑 (2011) 」をはじめ、数多くの中国ドラマに出演している。
映画では「九龍冰室(2001)」や「行運超人(2002)」などの香港映画に出演している。