海關戰線 Customs Frontline: Wikipedia
【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
謝霆鋒(ニコラス・ツェー)が大活躍する、邱禮潯(ハーマン・ヤウ)節全開のアクション大作。香港の名所や動いているコンテナ船が舞台になっていて、新鮮な見せ場が豊富な最高に楽しい映画。
www.youtube.com 【《海關戰線》終極預告曝光】
【スタッフ & キャスト】
2024年 香港 117分
監督:邱禮潯(ハーマン・ヤウ)
出演:謝霆鋒(ニコラス・ツェー)、張學友(ジャッキー・チュン)、林嘉欣(カリーナ・ラム)、刘雅瑟(リウ・ヤースー、リウ・シン)、吳鎮宇(フランシス・ン)、關智斌(ケニー・クァン)
【あらすじ】
香港海関に勤務する周正禮【謝霆鋒(ニコラス・ツェー)】は、上司の張允南【張學友(ジャッキー・チュン)】らと共に日々港周辺の取り締まりにあたっていた。そこに大規模な武器密輸事件が発覚。海関とインターポールは協力して捜査にあたり、タイからの捜査員・阿盈(Ying)【刘雅瑟(リウ・ヤースー、リウ・シン)】らと共に周正禮も捜査を開始するのだが、そこでは予想外の事態が待ち受けていた。
【感想】
謝霆鋒(ニコラス・ツェー)が大活躍する、邱禮潯(ハーマン・ヤウ)節全開のアクション大作。香港の名所や動いているコンテナ船が舞台になっていて、新鮮な見せ場が豊富な最高に楽しい映画だった。
最近の邱禮潯(ハーマン・ヤウ)監督作品を見ている人なら大納得の、いかにも彼らしい作りで仕上げられた誰もが楽しめるエンタメ大作だ。「93國際列車大劫案:莫斯科行動(2023)」にしろ「ホワイト・ストーム 世界の涯て(2023)」でもそうだが、つまり物語後半へ向かって徐々にアクション要素がボルテージを上げていき、クライマックスは観客の予想を越えるとんでもないレベルまでエスカレートして度肝を抜かれる、老若男女が楽しめる作りになっている。今作でも前半、よくある銃撃戦が始まった…と思っていたら、まさかのオスプレイが登場したり、果てはとんでもない大物を釣り上げたりして、観客の予想を越える遥かに大規模な見せ場を惜しげもなく放り込んでくる、もう笑ってしまうような豪快さだ。
ちなみに、ほぼ直前に公開された同監督の作品「談判專家」とは、大きくテイストが違っているのでそれぞれに楽しめる。
俳優陣では謝霆鋒(ニコラス・ツェー)と張學友(ジャッキー・チュン)の2人がW主演となってはいるが、主役は完全に謝霆鋒(ニコラス・ツェー)になっていて、彼は今作で初めて自らアクション監督も務めただけでなく、様々な形で彼の能力が発揮されている。なんといってもそのアクションはキレ味も最高で、「レイジング・ファイア(2021)」での目が覚めるような甄子丹(ドニー・イェン)とのファイトに匹敵する格闘を、今作でも改めて堪能できる。狭くて揺れるコンテナ船でのシーンや、特にストーリーと絡めた棒術での殺陣が最高だし、それだけでなく広東語、普通語、英語を駆使して海外まで行き、張學友(ジャッキー・チュン)の有能な部下から部門のトップに相応しい人物へと成長する物語にもなっている。
物語の描き方は「バーニング・ダウン 爆発都市(2020)」を思わせる部分もあり、林嘉欣(カリーナ・ラム)の活躍もあって予想外の展開を見せるのだが、あくまでもそれらは全てクライマックスの怒涛の展開への布石として描かれる。とにかく最後はアドレナリン溢れる最高に楽しいアクションで、観客みんな大満足な大団円だ。
とにかく余計な事は考えず、うぉースゲーヤバいだけ言いながら見ても最高に楽しいし、それこそが邱禮潯(ハーマン・ヤウ)作品の楽しみ方で、正にそれを体感させてくれる大満足な一作だった。
中国映画レビュー&解説「93國際列車大劫案:莫斯科行動 Moscow Mission」 - daily diary
香港映画レビュー&解説「ホワイト・ストーム 世界の涯て 掃毒3: 人在天涯 The White Storm 3 - Heaven or Hell」 - daily diary
香港映画レビュー&解説「談判專家 Crisis Negotiators」 - daily diary
香港映画レビュー&解説「レイジング・ファイア 怒火 Raging Fire」 - daily diary
香港映画レビュー「バーニング・ダウン 爆発都市 拆彈專家2 Shock Wave 2」 - daily diary
【トピック】
◯ 2024年5月2日にウーディネ極東映画祭でクロージング作品としてワールドプレミア。その後6月28日に中国で公開、7月5日より香港でも一般公開。公開初週は「インサイド・ヘッド2(2024)」、「怪盗グルーのミニオン超変身(2024)」に次ぐ3位を記録した。興行収入は1000万香港ドル(1.9億円)。
◯ 監督の邱禮潯(ハーマン・ヤウ)はドニー・イェン主演ではない方の、デニス・トーやアンソニー・ウォンが主演している「イップ・マン」シリーズの監督として知られている。
最近では、劉德華(アンディ・ラウ)主演の爆弾処理班を描いた香港映画「ショックウェイブ(2017)」&「バーニング・ダウン 爆発都市(2020)」を監督しており、それ以外に「洩密者們(2018)」や、アクション以外のジャンルでは「77回、彼氏をゆるす(2017)」や、周星馳(チャン・シンチー)との共同監督となった中国映画「新喜劇王(2019)」などの意外な作品も手掛けている。
2023年は张涵予(チャン・ハンユー)&劉徳華(アンディ・ラウ)共演の「93國際列車大劫案:莫斯科行動(2023)」、同じく古天樂(ルイス・クー)主演の「暗殺風暴」、中国映画の「绝地追击」、そして劉青雲(ラウ・チンワン)&郭富城(アーロン・クォック)&古天樂(ルイス・クー)のトップスター夢の共演的な「ホワイト・ストーム 世界の涯て」と、驚異の4本もの監督作が公開という、尋常ではない年となった。
だが今年も、もうひとつの監督作で劉青雲(ラウ・チンワン)&吳鎮宇(フランシス・ン)主演の「談判專家」が本作のわずか3週間前に公開と、実質監督作が2作同時に上映という考えられない状況となっている。
香港映画レビュー&解説「談判專家 Crisis Negotiators」 - daily diary
香港映画レビュー&解説「ホワイト・ストーム 世界の涯て 掃毒3: 人在天涯 The White Storm 3 - Heaven or Hell」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「93國際列車大劫案:莫斯科行動 Moscow Mission」 - daily diary
香港映画レビュー「ショック ウェイブ 爆弾処理班 拆弹专家 (拆彈專家) Shock Wave」 - daily diary
香港映画レビュー「バーニング・ダウン 爆発都市 拆彈專家2 Shock Wave 2」 - daily diary
香港映画レビュー「洩密者們 The Leakers」 - daily diary
香港映画レビュー「77回、彼氏をゆるす 原諒他77次 77 Heartbreaks」 - daily diary
中国映画レビュー「新喜劇王 新喜剧之王 The New King of Comedy」 - daily diary
◯ 主題歌の「很遠的地方」は謝霆鋒(ニコラス・ツェー)が作曲し、張學友(ジャッキー・チュン)が歌っているものとなっている。
www.youtube.com 很遠的地方 (粵語版) 張學友 Jacky Cheung《海關戰線 Customs Frontline》 主題曲 Theme【Cantonese/Jyutping/English Lyrics】
謝霆鋒(ニコラス・ツェー)
◯ 香港海関の警視補・周正禮。
◯ 今作では初めてアクション監督も務めている。
父が謝賢(パトリック・ツェー)、母が狄波拉(デボラ)という俳優夫婦の子として生まれ、16歳でデビュー。翌年1997年には「壞習慣」という楽曲が大ヒットする。
映画デビュー作「硝子のジェネレーション/香港少年激闘団(1998)」で香港金像奨新人賞を受賞。以来、陳木勝(ベニー・チャン)監督による仲村トオルと共演の「ジェネックス・コップ(1999)」と監督の遺作「レイジング・ファイア(2021)」や、林超賢(ダンテ・ラム)監督「密告・者(2010)」、陈凯歌(チェン・カイコー)監督、真田広之&チャン・ドンゴンとの共演作「PROMISE プロミス(2005)」、豪華メンバーによる大作「孫文の義士団(2009)」など、数多くの話題作に出演している。
今作の邱禮潯(ハーマン・ヤウ)監督とは「恋のQピッド(2001)」以来の出演となる。
香港映画レビュー&解説「レイジング・ファイア 怒火 Raging Fire」 - daily diary
張學友(ジャッキー・チュン)
◯ 周正禮の上司・張允南。
◯ なによりも中華圏では絶大な支持を誇る歌手であり、許冠傑(サミュエル・ホイ)、陳奕迅(イーソン・チャン)と並ぶ「歌神」である。1990年代には劉徳華(アンディ・ラウ)、郭富城(アーロン・クオック)、黎明(レオン・ライ)と共に「四大天王」と呼ばれて絶大な人気となった。
映画出演も数多く、王家衛(ウォン・カーウァイ)監督「いますぐ抱きしめたい(1988)」で香港金像奨・助演男優賞受賞、「スウォーズマン/剣士列伝(1990)」では台湾金馬奨・助演男優賞を受賞している他、「欲望の翼(1990)」、「大英雄(1993)」、「楽園の瑕 終極版(2008)」などの王家衛(ウォン・カーウァイ)関連作や「男人四十(2002)」などが代表作となる。
今作の邱禮潯(ハーマン・ヤウ)監督作品だと「新・愛と復讐の挽歌/ラヴ&デス(1992)」、「太子傳說(1993)」に出演している。
刘雅瑟(リウ・ヤースー、リウ・シン)
◯ タイ警察からの応援でやって来た阿盈(Ying)。
◯ 1989年湖南省生まれの刘雅瑟(リウ・ヤースー、リウ・シン)は地元テレビ局のオーディション番組から芸能界入り。本名から今の芸名に改名後、赵薇(ヴィッキー・チャオ)の初監督作「So Young 過ぎ去りし青春に捧ぐ(2013)」に出演。彭于晏(エディ・ポン)主演の「君といた日々(2014)」やドラマ「仙剑云之凡(2016)」、恵英紅(カラ・ワイ、クララ・ワイ)や陳家楽(カルロス・チャン)が知られる事となった感動作「幸福な私(2016)」にも出演の後、香港映画「ファストフード店の住人たち(2019)」で香港金像奨助演女優賞ノミネート。
昨年中国公開の「前任4:英年早婚(2023)」や日本でも公開された甄子丹(ドニー・イエン)監督主演作「シャクラ」にも出演している。
香港映画レビュー&解説「幸福な私 幸運是我 Happiness」 - daily diary
林嘉欣(カリーナ・ラム)
◯ 海関の情報・調査担当部長である邵雅瑩。
◯ 台湾生まれ、カナダ育ちで日本人の血筋も持つ林嘉欣(カリーナ・ラム)は、2000年代から香港映画を中心に活躍。張學友(ジャッキー・チュン)と共演した「男人四十(2002)」で香港金像奨で新人賞と助演女優賞をダブル受賞。本作のキャスティングもこの映画を意識させる。「百日告別(2015)」では台湾金馬奨・主演女優賞受賞。
その他「恋の風景(2003)」、「インテグリティ/煙幕(2019)」、「ホワイト・ストーム(2019)」、台湾映画「アメリカン・ガール(アメリカから来た少女、2021)」などに出演している。
吳鎮宇(フランシス・ン)
◯ 海関国境・港担当部長の郭子強。
◯ 1982年に無綫電視(TVB)の訓練生としてデビュー以来、数多くの映画・ドラマに出演している名優。
主な作品はTVBドラマ「難兄難弟(1997)」や「恋するパイロット(2003)」、映画では杜琪峯(ジョニー・トー)監督「ザ・ミッション 非情の掟(1999)」や「エグザイル/絆(2006)」、名作「インファナル・アフェアII 無間序曲(2003)」などがある。
本作と同じ邱禮潯(ハーマン・ヤウ)監督作では「77回、彼氏をゆるす(2017)」や「洩密者們(2018)」、「眺望良好(2019)」、「暗殺風暴(2023)」などと多くの作品に出演。さらに同監督作で本作とほぼ同時期に公開の「談判專家」では主役を演じている。
香港映画レビュー「洩密者們 The Leakers」 - daily diary
香港映画レビュー&解説「談判專家 Crisis Negotiators」 - daily diary
關智斌(ケニー・クァン)
◯ 海関の警視補・李學斌を演じたのは關智斌(ケニー・クァン、画像右)。凱蒂(Katie)役の衛詩雅(ミシェール・ワイ、画像中)、黎峻(ケネス・ライ、画像左)と共に。
◯ は人気ドラマ「Y2K+01(2001)」の出演で知られる事となった。その後張致恆(スティーブン・チョン)と共にユニットBoy'zを結成。映画「6AM(2004)」や「香港国際警察/NEW POLICE STORY(2004)」、「花都大戦 ツインズ・エフェクトII(2004)」、「西遊記リローデッド(2005)」、「三国志 関羽 青龍偃月刀 最後の一閃(2021)」などに出演している。同世代で同じドラマY2Kシリーズ出身でもある蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)やツインズとの共演が多い印象だ。