香港映画レビュー&解説「浅浅歳月 淺淺歲月 True Love, for Once in My Life 」

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【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】

長い歳月を経た関係だからこそ湧いてくる感情を描き出す、原作者であり自ら制作にも関わった謝淑芬の思いが詰まった私小説のような映画。全編iPhoneでの撮影も展開していくほどに意味が増していく。

 

 

浅浅歳月


www.youtube.com 《淺淺歲月》TRUE LOVE, FOR ONCE IN MY LIFE|正式預告|3月7日獻映



 

【スタッフ & キャスト】

2025年 香港 109分
監督:蕭冠豪(ドロン・シウ)
出演:葉童(セシリア・イップ / イップ・トン)謝君豪(ツェー・クワンホウ)許月湘(ヴァノラ・ホイ)黃定謙(ヒミー・ウォン)

 

 

 

【あらすじ】

幼馴染で結婚した麒振(アンドリュー)【謝君豪(ツェー・クワンホウ)】と靜芬(サブリナ)【葉童(セシリア・イップ / イップ・トン)】。一生添い遂げようと過ごしてきたが、麒振(アンドリュー)の浮気に耐えきれず靜芬(サブリナ)は離婚を切り出す。数年後麒振(アンドリュー)の病気が発覚、二人だけの愛が再び、懐かしく結ばれてゆく。

大阪アジアン映画祭より

 

 

 

【感想】

長い歳月を経た関係だからこそ湧いてくる感情を描き出す、原作者であり自ら制作にも関わった謝淑芬の思いが詰まった私小説のような映画。全編iPhoneでの撮影も展開していくほどに意味が増していく。

本作の描く価値観は、ひょっとすると多くの人には共感されないかもしれない。筆者も、主人公である葉童(セシリア・イップ / イップ・トン)が演じる妻の感覚はすこし驚きでもあった。ただ、恐らくそれは作者も理解しているだろう。
定年も近い世代の夫婦を描いた、家族の物語だが、家族の関係は崩壊に近い。夫は広州で会社を経営しており、なかなか香港の自宅に帰ってこない。妻も仕事をしているが、夫への信頼を失ってからも関係を放置したまま、日常を送っている。そんな2人を見守る2人の子。特に妹は、そんな状況に見て見ぬふりをしている両親どちらにもイライラを募らせている。

 

淺淺歲月

 

物語は気をてらわず、順当に時系列をなぞっていく。春節直前の慌ただしい時期。物語が進むごとに謝君豪(ツェー・クワンホウ)演じる夫への悪印象が積み上がっていく。「香港ファミリー(2022)」での父親役も彷彿とさせる好演だ。
やおら3年ぶりに香港に戻り、親類縁者の集まる場へと顔を出すシーンでも、妻はポツンと親類の中で孤立しているのに、一人だけ広州のやり方で酒を勧めて顰蹙を買う。懸念通りに女もいた。
妻はようやく踏ん切りをつける事ができ、離婚を切り出す。

そこからの彼女の怒りと悲しみ、そして混乱が物語の本番だ。情緒がおかしくなっているのがよくわかるエピソードが面白い。エキセントリックでもあり、コミカルにも描かれていて笑わせられるが、やがて悲しき…という余韻がじわりじわりと高まっていく。

 

淺淺歲月

 

本作は、実質的に脚本も書いた謝淑芬が最初の構想から作り上げたものだ。同じような経験をしてから、これを映画にしたいと思い立ち、その為に脚本スクールに通い、まず小説を完成させ、出資もして脚本も書いて、映画の完成に漕ぎ着けたという、ものすごいストーリーを持つ。正直とてつもない偉業を成し遂げている。こんな事、素人ができるなんて、普通考えもしないよ。

だから、これは正しく謝淑芬自身の映画であり、観客が共感しなかったとしても、それほどの意味は無いのかもしれない。
確かに私小説的な印象も受けるし、テーマ曲も含めてやや昭和的な香りが漂うテイストなのも、それを知ると納得だ。プロデューサーの陳果(フルーツ・チャン)のアイデアかと思われる全編iPhoneによる撮影なのも、本作のプライベート感をより増す狙いだろうし、後半になればなるほどアップでの寄りを多用したカットが増え、2人の物語へと収斂していく。

 

淺淺歲月

 

そうした事も含めて、この物語はおそらく謝淑芬にとって体験記録の様なものなのだろう。たぶん、彼女にとっても夫の死が目前に迫った時にこんな気持ちの揺れ動きがあるなんて予想もしなかったに違いない。
だからこそ、この「事故」のような体験が強烈に彼女を駆り立て、映画にしたいと思ったのかと、そう思わされた。

陳果(フルーツ・チャン)がバックアップしているとはいえ、監督も初監督作品だし、小品といえる作りではあるが、作者の謝淑芬を想像すると、人生にこんな贈り物が出来た事自体、本当に素晴らしい出来事だし、辛い経験をして、それをこんなふうに昇華させられるバイタリティを祝福したい、そんな気持ちになる作品だった。

 

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【トピック】

◯ 本作は2024年9月に平遙国際映画祭でワールドプレミア。翌年3月7日に香港で公開された。公開3週目に興収ランキング10位にランクイン。その時点での興行収入は93.3万香港ドル(1860万円)。

 

◯ 日本では同年8月29日からの大阪アジアン映画祭で同名タイトルにて上映された。

oaff.jp

 

 

 

◯ 監督の蕭冠豪(ドロン・シウ)は今作が初の長編映画監督となる。長年アートディレクター、プロダクションデザイナー、脚本家として活動。今作プロデュースの陳果(フルーツ・チャン)とは彼の監督作「香港怪奇物語 歪んだ三つの空間(2021)」で、美術・コスチューム監督を務めている。

 

◯ 原作は脚本にも参加している謝淑芬の小説。年齢は明らかでないものの主人公ほどの世代として、自身の経験を映画化したいと決意。まず2016年に大学の脚本コースに入学し、そこで今作で共同脚本を務めた呂筱華と出会い、2018年に小説「完了,就是緣」を完成。そこから更に映画化へと活動し、本作の出資者にもなっている。
(本のタイトルは陳慧嫻(プリシラ・チャン)の楽曲「緣了, 就是完(1996)」を思わせる)。

 

◯ 今回の撮影は全編をiPhone14のスマートフォンのみで行っている。香港映画ではまだまだ珍しいアプローチの撮影だが、今作プロデュースの陳果(フルーツ・チャン)は、未公開だが別途スマートフォン撮影の作品を既に撮影済のようだ。

 

◯ エンディング曲は關正傑(マイケル・クワン)が1979年に発表した「雪中情」。台湾で流行した校園民歌の一曲「如果(1977)」をアレンジしたもので、アルバム「天蠶變」に収められている。原作・謝淑芬の思い入れからこの曲が選ばれている。


www.youtube.com 關正傑-雪中情(珍藏版MV)

 

 

◯ プロデューサーは陳果(フルーツ・チャン)。ゴールデンハーベスト出身で後に独立して監督となる。「メイド・イン・ホンコン(1997)」「花火降る夏(1998)」「リトル・チュン(1999)」の"香港返還三部作"や、「ドリアン ドリアン(2000)」「ハリウッド★ホンコン(2001)」「三人の夫(2018)」の"娼婦三部作"などの監督作で知られる上、香港金像奨・三部門受賞作「淪落の人(2018)」などのプロデュース作も最近は多い。昨年はCOLLARの邱彥筒(Marf / マリフェ・ヤウ)が主演した「寄了一整個春天(2024)」をプロデュースしている。

浅浅歳月

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葉童(セシリア・イップ、イップ・トン)

◯ 妻・靜芬(サブリナ)。夫に愛想をつかしていたが、離婚の決断を下した。

◯ 香港人。「表錯7日情(1983)」「婚姻勿語(1991)」で香港金像奨主演女優賞を受賞。「黄昏のかなたに(1989)」で助演女優賞を受賞している。ドラマでは台湾の「新白娘子伝奇(1992)」「倚天屠龍記(1993)」「香港愛情故事(2021)」などで知られている。黄秋生(アンソニー・ウォン)主演の良作「淪落の人(2018)」にも出演している。「愛してる!(2023)」
本作での夫役・梁家辉(梁家輝、レオン・カーフェイ)とは「婚姻勿語(1991)」でも夫婦役として共演、さらに「ロアン・リンユィ/阮玲玉(1991)」でも共演している。

浅浅歳月

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謝君豪(ツェー・クワンホウ)

◯ 夫・麒振(アンドリュー)。仕事で広州に入り浸っている内に浮気もしていた。

◯ 数多くのドラマ、映画に出演している。「南海十三郎(1997)」で金馬奨主演男優賞受賞。映画では「天作之盒(2004)」「バーニング・ダウン 爆発都市(2020)」での犯人役や、大ヒット作「未来戦記(2022)」「風再起時(2022)」「毒舌弁護人(2023)」「ホワイト・ストーム 世界の涯て(2023)」「カウントダウン(2024)」など昨今更に大作出演が増加中の一方で、「香港の流れ者たち(2021)」「香港ファミリー(2022)」などの深いテーマの作品にも出演している。
ドラマでは古装劇「月に咲く花の如く(2017)」「三国志 Secret of Three Kingdoms(2018)」など。

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許月湘(ヴァノラ・ホイ)

◯ 娘・凱琳。家の嫌な雰囲気に反発し、両親どちらにも不機嫌に対応している。

◯ 1998年生まれ。Supper Moment「用呼吸栽種最豔美的花(2020)」や方皓玟(シャーメイン・フォン)「你好嗎(2021)」など、数多くのアーティストMVに出演し、その後2022年頃からドラマ・映画にも出演を始める。映画出演3作目となる「白日の下(2023)」で、香港金像奨・新人賞にノミネート。今年の春節映画「祥賭必贏(2025)」にも出演している。

浅浅歳月

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黃定謙(ヒミー・ウォン)

◯ 息子・顯榮。冷静に対応はしているものの、父親の行動には共感できない。

◯ 大学在学中から演技の活動を開始し、映画「最初の半歩(2016)」でデビュー。その後本作プロデュースの陳果(フルーツ・チャン)がプロデュースした「淪落の人(2018)」「ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件(2023)」などに出演している。

浅浅歳月

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