【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
黃子華(ダヨ・ウォン)不在!でも、いかにも春節映画な賑やかパーティー作品だし、大量の明星(香港スター)たちの登場でひとまず楽しい映画に仕上がっている。
www.youtube.com 饭戏攻心2| Table For Six 2|Official Trailer|正式预告片
【スタッフ & キャスト】
2024年 香港 132分
監督:陳詠燊(サニー・チャン)
出演:鄧麗欣(ステフィー・タン)、張繼聰(ルイス・チョン)、王菀之(イヴァナ・ウォン)、林明禎(リン・ミンチェン)、陳湛文(ピーター・チャン、チャン・チャームマン)、謝君豪(ツェー・クワンホウ)、魏浚笙(ジェフリー・ガイ)、何啟華(ホ・カイ・ワ)
【あらすじ】
いつもの6人は相変わらず仲良くしていたが、陳熹(ルン)【陳湛文(ピーター・チャン、チャン・チャームマン)】と何嘉男(ジョゼフィーン)【王菀之(イヴァナ・ウォン)】、そして陳禮(ベルナルド)【張繼聰(ルイス・チョン)】と馮靜(モニカ)【鄧麗欣(ステフィー・タン)】がそれぞれ結婚し、盛大な式を挙げることになった。ところが、準備の時からまたもやてんやわんやの大騒ぎ。更に様々な個性溢れる親戚たちもやって来て…
【感想】
前作に比べて大変大きな損失はあるが、とにかくあの5人に再び会える喜び、細かい事は気にしない賑やかさ、いかにも春節らしい華やかで楽しい映画だった。
なにはともあれ黃子華(ダヨ・ウォン)こと陳鴻(スティーブ)がいない!筆者は何も知らずに見始めたのだが、前作「6人の食卓 飯戲攻心(2022)」は何はなくとも彼の魅力で楽しませる映画だったので、中盤くらいまで今か今かと登場を待ちながら見ていたが、会話の端に少し出るだけで結局最後まで一切登場する事は無い。
今作は当初は6人での脚本から制作はスタートしたようだが、5人のストーリーとしてアンバランスな人数もカバーする展開になってるし、なんとなれば、だからこそ大量の豪華メンバー出演へと繋がっているのだろう。
ふたつの結婚式を描いているので、とにかく豪華な出演陣が次から次へと大量に登場してくるのが楽しい。細かなキャラクターも実は大物俳優だったり、よく見ていないと見落とす位なので、隅々まで目を配りながら見ると新たな大物を発見できるだろう。
ストーリーも盛りだくさん。場面の整合性もなんのそので、次から次へとアトラクションのようにどんどん見せ場がやってくる。張繼聰(ルイス・チョン)によるバリバリ80年代な張國榮(レスリー・チャン)"Monica"MVパロディ、謝君豪(ツェー・クワンホウ)と鄧麗欣(ステフィー・タン)の魚翅(フカヒレ)大王衣装でのお色直し、魏浚笙(ジェフリー・ガイ)のアイドル/ヲタクの見事なチェンジ…もはやなんでこんな展開になってるのか訳がわからなくなるハイペースでガンガン見せ場がやって来る。そんな映画なのでいまさら辻褄が…とかリアリティが…とかしょうもない事なんて言わずに楽しんだほうが勝ちだ。
前作は6人の会話を見せるというはっきりしたターゲットがあって、香港以外の世界から見るとやや閉じた作りでもあったが、翻って今回は結婚式という見た目にも楽しめる舞台が用意され、登場人物も一気に増えたので、楽しみやすさはこちらの方がハードルが低いかもしれない。細かいローカルでディープなネタがわからなくとも、勢いで笑っていればこれぞ春節映画の楽しみ方!ができる、そういう楽しい映画であった。
【トピック】
◯ 春節に合わせて2024年2月9日に香港で公開。2週連続興収ランキングトップを維持した。興行収入は3600万香港ドル(6.8億円)。
◯ 監督の陳詠燊(サニー・チャン)は、当初は脚本家として「モンスター・ハント 王の末裔(2018)」などの映画に参加。
初監督したドラゴンボートに参加する中年男を描いた「逆流大叔(2018)」がヒット。2作目となる前作「6人の食卓 飯戲攻心(2022)」がモンスターヒットとなった。
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◯ 前回主演の黃子華(ダヨ・ウォン)は、今作では「個人的な理由で」出演しない事となった。一方でもうすぐ公開予定の主演映画「破·地獄」で、「マジック・タッチ(1992)」以来、許冠文(マイケル・ホイ)と32年ぶりに共演している。
鄧麗欣(ステフィー・タン)
◯ 陳禮の彼女、馮靜(モニカ)は、一方で長男・陳鴻の元カノでもある。香港文化のリサーチをしている傍らで副業として広告会社に勤務する。骨董・アンティークをこよなく愛する。
◯ 鄧麗欣(ステフィー・タン)はボーカルグループCookiesのメンバーとしてデビュー。2005年の解散後はソロ歌手として活動する一方、俳優業も本格化する。
主な出演作は「十分愛(2007)」、「紀念日(2015)」、「空手道(2017)」、「どこか霧の向こう(2018)」、そして「私のプリンス・エドワード(2019)」と、年を経る毎にどんどん本格的な作品に出演する実力派になってきている。
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張繼聰(ルイス・チョン)
◯ 陳禮(ベルナルド、ライ)。弟の陳熹とは母が同じだが、長兄の陳鴻とは父も母も違い血縁ではない。
◯ 子役から俳優のキャリアを始めた張繼聰(ルイス・チョン)も多くの作品に出演している。パトリック・タムと同じく「イップ・マン 継承(2015)」、「L風暴(2018)」や「P風暴(2019)」などの風暴シリーズ、「逃獄兄弟(2020)」からの投獄兄弟シリーズ、郭富城(アーロン・クォック)、梁朝偉(トニー・レオン)主演の「風再起時 (2023)」にも出演している。
コロナ禍での香港社会の苦しみを描いた昨年日本公開の「星くずの片隅で (2022)」では、台湾金馬奨の主演男優賞にノミネート。また歌手としても広く知られている。
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林明禎(リン・ミンチェン)
◯ 王寶兒(阿Meow)。台湾人のモデルで広東語が上手くない。日本好きという設定。
◯ 1990年マレーシア・ペナン生まれでジョホール育ちのアイドル・歌手。2015年に台湾でデビュー。人気も高かったがコロナ禍中の2020年にレコード会社との契約を終了し、台湾を中心に演技・芸能活動をしている。20年の契約終了時、日本に行って芸能以外のビジネスを始める事を検討していたそうだ。
映画も、「霊幻道士 こちらキョンシー退治局(2017)」や「ザ・フェイタル・レイド(2019)」、「ワン セカンド チャンピオン(2020)」などほぼ毎年出演している。
陳湛文(ピーター・チャン、チャン・チャームマン)
◯ 陳熹(ルン、ヘイ)。長兄の陳鴻とは父が同じ、真ん中の陳禮とは母が同じという関係。プロゲーマーをしており、何嘉男(ジョゼフィーン)と付き合っている。
◯ 香港演芸学院を優秀な成績で卒業し、以降は舞台劇で活躍。2020年頃から映画へも出演を始める。映画初出演のフルーツ・チャン監督「三人の夫(2018)」でも高い評価を得たが、特に今シリーズの前作出演以降「香港怪奇物語(2021)」、「白日の下(2023)」、「年少日記(2023)」、「全世界どこでも電話(2023)」と続々と話題作に出演している。
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王菀之(イヴァナ・ウォン)
◯ 何嘉男(ジョゼフィーン)。一番下の陳熹と付き合っている。料理の才能があり、三兄弟の食事を作っていた。
◯ 今作で香港金像奨・助演女優賞を受賞し、歌曲賞にノミネートされた。
2005年の正式デビュー前から楽曲制作の才能を認められ、張學友(ジャッキー・チュン)に提供した名曲「我真的受傷了(2001)」などを書く。デビュー後も「巴黎没有摩天轮(2006)」、「月亮說(2009)」、個人的にも感動した素晴らしいピアノイントロから始まる張敬軒(ヒンス・チャン)とのデュエット曲「手望(2005)」などなど、数々の名曲を書く歌手。前作に続き本作でも主題歌を制作している。
日本好きでもあり頻繁に訪日しているが、新型コロナの渦中であった2020年4月には全編日本語詞でコロナについての歌「Mission for Everyone」を発表したりしている。
映画出演も割合多く、TVBドラマ「老表,你好嘢!(2013)」で好評となり、映画「金雞SSS(2014)」では香港金像奨助演女優賞&新人賞を受賞。その他「100回目の別れ(2014)」、「一生の宝物(如珠如寶、2019)」、主演作「人生の運転手(ドライバー)(2020)」などがある。
謝君豪(ツェー・クワンホウ)
◯ 新郎の親族である六叔、またの名を魚翅(フカヒレ)大王で、演じたのは謝君豪(ツェー・クワンホウ、画像右)。
◯ 数多くのドラマ、映画に出演している。「南海十三郎(1997)」で金馬奨主演男優賞受賞。映画では「天作之盒(2004)」や「バーニング・ダウン 爆発都市(2020)」での犯人役や、大ヒット作「未来戦記(2022)」に「風再起時(2022)」、「毒舌弁護人(2023)」、「ホワイト・ストーム 世界の涯て(2023)」など昨今更に大作出演が増加中の一方で、「香港の流れ者たち(2021)」や「香港ファミリー(2022)」などの深いテーマの作品にも出演している。
ドラマでは古装劇「月に咲く花の如く(2017)」や「三国志 Secret of Three Kingdoms(2018)」など。
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親族を演じた俳優たち
◯ 七叔役は蔣志光(ラム・チェン、上の画像左)
六叔役の謝君豪(ツェー・クワンホウ、上の画像右/下の画像左)
いとこ役の胡子彤(トニー・ウー、画像中左)
大叔父役の胡楓(ウー・フォン、画像中右)
三叔役の黎彼得(ピーター・ライ、画像右)
◯ 蔣志光(ラム・チェン)は、「相逢何必曾相識」などの名曲を歌った歌手としてもよく知られている。俳優としての主な出演作は、TVBドラマで黃子華(ダヨ・ウォン)をはじめ今作にも登場する多くの俳優が出演していた「男親女愛(2000)」、「真情(1995)」、「老表,你好hea!(2014)」、映画「コールド・ウォー 香港警察 堕ちた正義(2016)」などの他、数多くの作品がある。
◯ 胡子彤(トニー・ウー)は、古天樂(ルイス・クー)の事務所に所属する俳優。香港野球チームを描いた「最初の半歩(2016)」で映画デビューし、金像奨新人賞を受賞。陳詠燊(サニー・チャン)監督の前々作「逆流大叔(2018)」にも出演している。
◯ 胡楓(ウー・フォン)は、1932年生まれで1950年代から映画界で活躍し、現在92歳になんなんとする名脇役。ドラマではTVB「義不容情(1988)」、「妙手仁心(1998)」、「男人之苦(2006)」など。
映画では「忌廉溝鮮奶(1981)」、「上海ブルース(1984)」、「ポリス・ストーリー 香港国際警察(1985)」、「上海エクスプレス(1986)」、「プロジェクトA2(1987)」、「狼たちの絆(1991)」などなど膨大な出演作がある。
◯ 黎彼得(ピーター・ライ) は非常に知られた作詞家で、俳優でもあるという独特なキャリアを持つ。作詞家として許冠傑(サミュエル・ホイ)の「加價熱潮」、譚詠麟(アラン・タム)の「愛人‧女神」、梅艷芳(アニタ・ムイ)の「將冰山劈開」、そして今作で大フィーチャーされている張國榮(レスリー・チャン)の「Monica(原曲は吉川晃司)」などを作詞した。
俳優としての主な出演作は、映画「小男人周記(1989)」やドラマ「愛·回家之開心速遞(2017~)」、ジャッキー・チェン主演の「シティーハンター(1993)」、「金玉満堂(1995)」、そして声優としてピクサー映画「カーズ(反斗車王)」シリーズのラモーン役などに出演している。
羅蘭(ロー・ラン)
◯ 何嘉男(ジョゼフィーン)の祖母。
◯ 羅蘭(ロー・ラン)はインド系の香港人俳優で、1960年代から「陰陽路(1997)」シリーズや「七月十四(1993)」などのホラー映画、「狂潮(1976)」、「家變(1977)」、「網中人(1979)」、「親情(1980)」などのドラマで神経質な母親やくなどを数多く演じてきた。「オーバーサマー爆裂刑警(1999)」で金像奨主演女優賞を受賞。
2002年には長年の慈善活動に香港政府から栄誉勲章を授与された。
何嘉男(ジョゼフィーン)役・王菀之(イヴァナ・ウォン)が主演した春節映画「你咪理,我爱你!(2019)」にも出演している。
米雪(ミシェル・イム)
◯ 何嘉男(ジョゼフィーン)の母親。
◯ 米雪(ミシェル・イム)は1970年代から活躍する俳優。大ヒットしたドラマ「射鵰英雄傳(1976)」で主演しアジア各国で大人気となった。その後も「大內群英(1980)」や「萍蹤俠影錄(1985)」などの時代劇で主演。さらに2008年には、大変評価も高かった大人気家族ドラマ「溏心風暴之家好月圓(2008)」で、各国で数多くの賞を受賞した。
魏浚笙(ジェフリー・ガイ)
◯ 阿Meowの友人として式場にやって来たアイドル・Mark Gor。
◯ 魏浚笙(ジェフリー・ガイ)は俳優だが、Viu TVのリアリティショー「調教你男友(2020)」から人気に火がついた。俳優としては甄子丹(ドニー・イェン)の「スーパーティーチャー 熱血格闘(2018)」や、下の凌文龍(リン・マンロン)が主演したViuTVのヒットドラマ「IT狗(2022)」にも出演しており、そこで三男陳熹役の陳湛文(ピーター・チャン、チャン・チャームマン)と共演している。
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何啟華(ホ・カイ・ワ)
◯ 陳禮のいとこ・Hugh役に何啟華(ホ・カイ・ワ)。「毒舌弁護人(2023)」で共演していた楊偲泳(レンシ・ヨン)も式場弁護士の役で出演している。
◯ 阿Deeというニックネームで、オーディション番組から結成されたグループ「ERROR」のメンバーでもある。上記黃子華(ダヨ・ウォン)主演の「毒舌弁護人(2023)」の他にも、「香港ウェスト・サイド・ストーリー(2018)」や「ファストフード店の住人たち(2019)」、「散った後(2020)」、 鄭中基(ロナルド・チェン)主演の「闔家辣(2022)」、この年末に梁朝偉(トニー・レオン)&劉德華(アンディ・ラウ)が共演した「金手指(2023)」などに出演している。
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◯ 記者として高佬役・凌文龍(リン・マンロン、画像左)、金毛玲役・伍詠詩(ン・ウィンシー、画像右)
◯ 凌文龍(リン・マンロン)は2000年代後半から舞台で活躍。映画では毛舜筠(テレサ・モウ)主演「黃金花(2018)」で香港金像奨新人賞を受賞。「バーニング・ダウン 爆発都市(2020)」出演などの他、ViuTVのヒットドラマ「IT狗(2022)」でも主演しており、そこで三男陳熹役の陳湛文(ピーター・チャン、チャン・チャームマン)、アイドルMark役の魏浚笙(ジェフリー・ガイ)と共演している。
◯ 伍詠詩(ン・ウィンシー)は1997年生まれで、インディ映画「逆さま(對倒、2018)」の主演で映画デビュー。こちらもインディ映画「レモン、牛乳(檸檬,牛奶、2020)」の他、「バーニング・ダウン 爆発都市(2020)」、「七人樂隊(2021)」、「神探大戦(2022)」などにも出演している。
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◯ 劇中では張國榮(レスリー・チャン)「Monica」のこのMVの踊りが再現されて登場する。
www.youtube.com 張國榮 Leslie Cheung - Monica (Official Music Video)