【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
www.youtube.com 《二手杰作》World's Greatest Dad | 北美定档预告 Official Trailer
【スタッフ & キャスト】
2023年 中国 114分
監督: 王子昭（ワン・ズージャオ）
出演: 于和伟（ユー・ハーウェイ）、郭麒麟（グオ・チーリン）、倪虹洁（ニー・ホンジエ）、许恩怡（シュー・エンイー）、张子贤（ジャン・ズーシェン）、冯雷（フォン・レイ）
【ストーリー】
50歳になった高校教師の马寅波【于和伟（ユー・ハーウェイ）】は地味な毎日の傍ら、小説を書いては出版してもらおうと投稿するのが日課になっていた。息子の马墨【郭麒麟（グオ・チーリン）】はぼんやりした性格ながら穏やかな毎日だった。だが、その息子が好きな同級生の部屋を覗きに行き、挙句の果てに転落して意識不明となってしまう。
恥ずかしいやら情けないやら医療費の心配やら、大パニックになった夫婦は、息子が実は自殺をしようとしていたと遺書を捏造して発表する。なぜかまさかの大反響となり、メディアにも取り上げられ、今までバカにしていた同級生はもとより、世間から大注目を浴びるのだが、遺書を捏造した父親もそれにつられて熱狂の渦へと巻き込まれていくのであった。
【感想】
寓話的なストーリーをコメディタッチで描く、ちょっと90年代邦画っぽいリズム感の気楽に見れる映画だった。
こういう感じの、ある日突然一人の若者がバズって有名人になる展開は、中国ならありそうだし、実際納得感のある展開だったので楽しんで見ていられる。特に息子役の郭麒麟（グオ・チーリン）の演技が良く、中盤はほとんど出ないのがもったいない位だったし、なによりツッコミ役となる母親の倪虹洁（ニー・ホンジエ）のキレが良くて痛快だ。
エンディングに至る展開もすべてが綺麗に収まっていき、ハッピーエンドに収束するのですっきり見終われる。
ただ、于和伟（ユー・ハーウェイ）は主人公にはちょっと弱い印象だ。キャラクター自体も、オリジナルがそもそもそういう設定なのだが、色々と面倒くさい性格で、50代あたりの男性にいそうな説教臭く意固地なところが前面に出ている。その拗らせた性格がすべての元凶となっているので、あまり共感できないし、彼に悪い事態が起こっても性格のせいだから自業自得というか、却って納得してしまう部分もある。オリジナルのロビン・ウィリアムズはやはり名優であったという結論になってしまう印象だ。
生徒たちも、あれだけ息子がいた時にはバカにしていたのに、いなくなると彼女を含めてコロリと評価が変わっていて腑に落ちない部分ではある。もう少し彼女と生徒たちの描写に深みが欲しい印象だ。
とはいえ、テンポも良いので飽きずに最後まで見られる小品だ。
【トピック】
◯ 2023年10月27日に公開。公開初週は朱一龙（チュー・イーロン）主演の「川辺の過ち」や张艺谋（チャン・イーモウ）監督「坚如磐石」、张小斐（チャン・シャオフェイ）主演の「拯救嫌疑人」、陈凯歌（チェン・カイコー）監督「志愿军：雄兵出击」に次ぐ興収ランキング5位。11月10日に興行収入が1億元（20億円）を突破し、年末の12月26日までの延長上映が決定した。
中国映画レビュー「坚如磐石 Under the Light」 - daily diary
中国映画レビュー「拯救嫌疑人 Last Suspect」 - daily diary
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◯ ロビン・ウィリアムズ主演の2009年作品「ディア・ダディ 嘘つき父さんの秘密（原題：WORLD'S GREATEST DAD）」が原作である。本作英題も原作と同じになっている。
◯ ヒットメーカー、宁浩（ニン・ハオ）による若手育成計画「坏猴子72变电影计划」によって制作された作品である。なお宁浩（ニン・ハオ）本人（画像中）もオープニングで徐铮（徐崢、シュー・ジェン、画像右）と共に出演している。
この計画は2016年からスタートしていて、今までに「薬の神じゃない！（2018）」や「修羅：黒衣の反逆（2017）」、「受益人（2019）」などの作品が世に出ており、今作がその計画の最新作となる。
中国映画レビュー「薬の神じゃない！ 我不是药神 Dying to Survive ニセ薬じゃない！私は薬の神ではない」 - daily diary
※宁浩（ニン・ハオ）については、「孤注一掷（2023）」のトピック欄を参照のこと。
中国映画レビュー「孤注一掷 No More Bets」 - daily diary
◯ 上記のような経緯で制作された作品なので、今作の王子昭（ワン・ズージャオ）監督（画像右）もまた今作が商業映画の初監督作品となる。
北京映画学院卒業時の2010年に監督・脚本・主演で制作した短編「大无畏」と「不良」が映画祭新人賞を受賞した。
于和伟（ユー・ハーウェイ）
◯ 主人公の马寅波は高校教師。息子が同じ高校に在学しており、長年売れない小説を書き続けている。
◯ 古装劇「三国（2010）」で知られ、映画では冯小刚（フォン・シャオガン）監督作「わたしは潘金蓮じゃない（2016）」、「ゴッドスレイヤー 神殺しの剣（2021）」など。ドラマ「三体（2023、Netflix版ではなく中国版）」にも出演している。
张艺谋（チャン・イーモウ）監督「崖上のスパイ（2021）」で张译（チャン・イー）と同時に中国金鶏奨主演男優賞にノミネートされ、監督の次作であり本作と同時期に公開された「坚如磐石（2023）」でも主演している。
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倪虹洁（ニー・ホンジエ）
◯ 妻の潘冬妮。
◯ 1990年代後半から2000年代にかけて数多くの広告にモデルとして出演していた。大ヒットした時代劇コメディ「武林外传（2006）」に出演し、全国的な女優として知られるようになる。映画「蓝色骨头（2013）」やアンジェラベイビー主演のサスペンスドラマ「摩天楼のモンタージュ（2020）」、SATC的ドラマで映画にもなった2021年放映の「美味しいロマンス」、今年10月に中国映画週間で日本上映された「白さんは取り込み中（2021）」などに出演している。
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郭麒麟（グオ・チーリン）
◯ 息子の马墨。少々ぼんやりした性格で、両親を心配させている。
◯ 相声芸人で俳優。父親は大人気相声（漫才）団体の德云社（徳雲社）の創設者で、本人も超有名漫才師の郭德纲（グオ・ダーガン）（ちなみに所属する秦霄贤は映画「扬名立万（2021）」の主要キャストとして出演した）。
1996年生まれ。15歳で学校を退学して父と同じ漫才師の道に進む。芸人としても成功し2019年のフォーブス誌での30歳以下精鋭の一人に選ばれる。
映像作品では映画「モフれる愛（2019）」、大ヒット古装劇ドラマ「慶余年（2019）」、主演作「贅婿（2021）」、ジャッキー・チェン主演映画「龙马精神（2023）」などに出演している。
许恩怡（シュー・エンイー）
◯ 马墨の同級生・许思思。马墨が想いを寄せている。
◯ 2004年香港生まれ。母親は「チャウ・シンチー マイヒーロー（1990）」や「超アブない激辛刑事 カリー&ペッパー（1990）」に出演した俳優で歌手の柏安妮（アン・ブリッジウォーター）。
ミュージカル的映画「僕らが空を照らしたあの日（2021）」でデビュー。本作が映画2作めとなる。12月8日から出演3作めとなる林超贤（ダンテ・ラム）監督によるニック・チョン、陳偉霆主演のアクション映画「爆裂點」が公開されている。
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张子贤（ジャン・ズーシェン）
◯ 马寅波の同僚教師・纪老师。日和見的な性格だ。
◯ 最近特に多くの作品に出演している人気の脇役といった位置づけの俳優だ。昨年秋の大ヒット作「万里归途（2022）」、冯绍峰（ウィリアム・フォン）、黄晓明（ホアン・シャオミン）らが主演の「平凡英雄」、今年は 黄渤（ホァン・ボー）主演の「学爸」、王一博（ワン・イーボー）主演のブレイキン映画「熱烈」、ヒットドラマ「平凡之路」、そして年末公開の「三大队」など、ここ1年ほどでも多数の作品に出演している。
主な出演作はドラマ「受益人（2019）」や「大赢家（2020）」、「平凡的荣耀（2020）」や映画「二代妖精之今生有幸（2017）」、「薬の神じゃない！ （2018）」など。
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刘美含（リウ・メイハン）
◯ クラブでホステスをしている小美。
◯ 2008年に放映された「巴啦啦小魔仙」という実写版プリキュアやセーラームーン的な特撮変身ヒロインもので、严莉莉といういじめっ子役で知られるようになった（ちょっとびっくりするビジュアルで面白い。日本でもタイトルは知られているが、2期以降のアニメ版のようで、刘美含（リウ・メイハン）が出演している特撮の1期の日本での知名度はあまりないようである）。
その他作品ではドラマ「童话二分之一（2012）」、「北上广不相信眼泪（2015）」、「あの日のI Love You（2016）」、「单恋大作战（2018）」、「暗恋·橘生淮南（2022）」などに出演している。
冯雷（フォン・レイ）
◯ 马寅波が長年小説を持ち込んでいた出版社の社長。この本が大ヒットする。
◯ 中国鉄路文工団という、中国鉄道部に所属し演劇以外にも雑技団や舞踊団もある芸術団体に所属する俳優。
大ヒットドラマ「人民的名義（2017）」で知られている。他には「小姨多鹤（2009）」、「一马换三羊（2016）」、「姐妹兄弟（2016）」など。
主演の于和伟（ユー・ハーウェイ）とは「巡回检察组（2020）」での共演以来となる。
