中国映画レビュー&解説「拯救嫌疑人 Last Suspect」

拯救嫌疑人 Last Suspect: 豆瓣

 

 

【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧くださ

い。】

韓国映画「セブンデイズ」リメイクだが、より整理されて面白くなっていた。名匠チャン・イーモウ監督の娘が監督している。恵英紅(カラ・ワイ)は去年本当に大活躍し、今作でも流石と唸るようなすごい役。マカオっぽい街で多国籍感あってそこも面白い。

 

 

 

拯救嫌疑人


www.youtube.com Who's the Suspect (拯救嫌疑人, 2023) || Trailer || New Chinese Movie

 

 

【スタッフ & キャスト】

2023年 中国 119分
監督: 张末(チャン・モー) 
出演: 张小斐(チャン・シャオフェイ)李鸿其(リ・ホンチ)惠英红(恵英紅、カラ・ワイ、クララ・ワイ) 王子异(ワン・ズーイー、ブギ・ワン)洪浚嘉(ホン・ジュンジャー)尹子维(テレンス・イン)

 

 

【あらすじ】

次々と難しい裁判で無罪を勝ち取り、勝訴率99%と言われる敏腕有能弁護士、陈智琪【张小斐(チャン・シャオフェイ)】は、一人娘の運動会で娘を誘拐される。必死で娘を探す陈智琪に犯人が突きつけた要求は身代金ではなく、なんとある難事件の裁判で容疑者の無罪を勝ち取れというものであった。判決までわずか一週間、容疑者はどう見てもクロ。それでも彼女は絶対に勝訴するしかなくなった。

 

 

【感想】

テンポ良く、色んな形のサスペンス要素が盛りだくさんで韓国映画原作の良い部分を受け継いだ、最後まで突っ走る良作だった。

 

拯救嫌疑人

 

韓国映画「セブンデイズ(2007)」をリメイクした作品だ。勝訴率99%という有能な女弁護士(キム・ユンジン)が娘を誘拐され、身代金代わりにある事件の無罪を勝ち取ることを要求される。バディとなる刑事、彫刻家志望の若い女性が殺されるという事件の様態や、映画の展開も基本的にはリメイクにふさわしく同じ作りになっている。
今作は、オリジナルをよりわかりやすく、動機やロジックもしっかりと描いて、より万人に受け入れやすく修正している。個人的にはオリジナルよりも本作のほうが更に楽しめた。特に、最後のどんでん返しは本作のほうが遥かに驚きと共に納得のいく展開で、スッキリと見終われる出来の良さだ。

 

拯救嫌疑人

 

主人公役の张小斐(チャン・シャオフェイ)は、オリジナルでのキム・ユンジンと雰囲気がよく似ていて、それによって映画全体の性格が同じ方向性を持てているように思える。つまり、いかにも有能な弁護士っぽく、娘の為ならどんな事でもやりそうな意志の強さを持っていそうなキャラだ。
だが、なんと言ってもそれ以上に印象的で素晴らしいキャスティングだったのは、彼女が勝訴しろと言われた事件で殺された娘の母親役・恵英紅(カラ・ワイ) だ。原作より更に役柄にフィットしたキャスティングだと思えたし、映画自体、彼女のシーンが更に増えており、その点でも彼女の存在感が殊更に際立っていた。昨今の彼女は大活躍と言うにふさわしい超多忙な出演量で、それでもなおこの存在感で驚異的だ。今後もより一層活躍が期待されるだろう。
また、张小斐(チャン・シャオフェイ)&李鸿其(リ・ホンチ)のバディ愛が素敵だ。ここも原作より更に自然に息のあった関係性に描かれていて、印象に残る。

 

拯救嫌疑人

 

もうひとつ面白いのが、今作の舞台がマカオと思わせる外国に設定されている点だ。捜査機関の腐敗についての描写がある為であろうが、冒頭から欧米系の人物が登場し、英語が飛び交い国際的な雰囲気だが、普通語で話され、雰囲気からも明らかに香港ではない。裁判の様子やパトカーのカラーリングから、マカオをイメージしているのだとは感じたが、何故にマカオ風なのか、ちょっと珍しく興味深い。

原作との見比べも面白いが、本作は残酷描写も抑えてあり、脚本も整理され、ややダイナミックに過ぎる手持ち映像の多用も抑えられ、とても見やすい。原作から存在する、少々こねくり回しすぎの展開という部分もあるとはいえ、サスペンス映画好きであればあるほど楽しめる、良質の映画だと思う。

 

 

 

 

【トピック】

◯ 2023年11月1日に全国公開。公開初週より3週連続で興収ランキング1位を維持。興行収入は5.69億元(114.6億円)に達した。

 

◯ 本作はキム・ユンジン主演「セブンデイズ(2007)」のリメイクである。ストーリーや展開自体は本作でもほぼ同じであるが、こちらのオリジナルの方がよりハードで攻めたカメラワークのスリリングな仕上がり。

filmarks.com

 

 

◯ 张末(チャン・モー)監督は1983年生まれ、巨匠・张艺谋(チャン・イーモウ)監督の娘。父の監督した「サンザシの樹の下で(2010)」での助監督・編集などでキャリアをスタート。
倪妮(ニー・ニー) 主演のラブコメ「28岁未成年(2016)」で初監督、2022年には父子共同監督で良作「狙击手(狙撃手)」を制作。本作が監督3作めとなる。

ちなみに本作の公開1ヶ月前には父・张艺谋(チャン・イーモウ)監督の新作「坚如磐石(2023)」が公開され、大ヒットしている。

拯救嫌疑人

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出演者は香港人が多い。劇中の言語はすべて普通語であった。

 

张小斐(チャン・シャオフェイ)

◯ 娘を誘拐される敏腕弁護士、陈智琪。 

◯ 当初はコメディを中心とした舞台で主に活躍し、映画ドラマへの出演は少なかったが、スーパー大ヒット映画「こんにちは、私のお母さん(2021)」での主演で一気にその名を知らしめた。さっそく同年のオムニバス映画「父に捧ぐ物語 我和我的父辈(2021)」に特別出演。2023年は本作での主演以外にも、春節映画「交换人生(交換人生、2023)」で主演、ドラマ「好事成双(2023)」にも出演している。

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李鸿其(リ・ホンチ)

◯ 陈智琪の幼なじみで刑事をしている金志雄。いつも型破りな捜査をしているせいで上部から睨まれている。

◯ 1990年生まれの台湾人俳優。映画「醉·生梦死(2015)」で台湾金馬奨新人俳優賞を受賞。
中国版になる「ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-(2017)」や毕赣(ビー・ガン)監督「ロングデイズ・ジャーニー(2018)」、台湾系アメリカ人によるNetflix映画「タイガーテール (2020)」、ドラマでは杨紫(ヤン・ズー)&李现(リー・シエン)主演の「Go!Go!シンデレラは片想い(2018)」などに出演している。
杨幂(ヤン・ミー)主演の映画「宝贝儿(2018)」ではろう者の友人役を演じていた。

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惠英红(恵英紅、カラ・ワイ、クララ・ワイ) 

◯ 陈智琪が勝訴しろと要求された事件で、娘・梁昕苑を殺害された母、林淑娥。犯人を人一倍憎んでいる。

◯ 当初はアクションができる女優として「ワンス・アポン・ア・タイム 英雄少林拳(1981)」「レディクンフー 激闘拳(1980)」で活躍し香港金像奨主演女優賞を受賞。ドニー・イェン&金城武の「捜査官X(2011)」でもアクションを披露し「キョンシー/リゴル・モルティス(2013)」では再度香港金像奨の助演女優賞を受賞。
近年は「心魔(2009)」、そして「幸福な私(2016)」で香港金像奨で主演女優を再び受賞し、張曼玉(マギー・チャン)の5回に次ぐ2位タイとなる4回の金像奨受賞女優となった。
それ以来、台湾映画「血観音(2017)」で金馬奨主演女優賞受賞、「サンシャイン・オブ・マイ・ライフ(2022)」、中国ドラマ「上陽賦(2021)」、今年公開の素晴らしい中国映画「愛してる!(2023)」「瞒天过海(2023)」などで実力派俳優として大活躍している。

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洪浚嘉(ホン・ジュンジャー)

◯ 勝訴を要求された事件での容疑者である丹温·特查(ダンウィン・テチャ)。犬好きなペットショップの店員。

◯ 香港人俳優だが、北京映画学院卒で中国系の作品に出演する事も多い。主な出演作は映画は「めぐり逢いの予感/北京ロマンinシアトル(2013)」、王千源(ワン・チェンユエン)主演の「除暴(2020)」、ドラマでは黄景瑜(ホアン・ジンユー)主演の「破氷行動(2019)」や雷佳音(レイ・ジャーイン)主演の「人世间(2022)」など。

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王子异(ワン・ズーイー、ブギ・ワン)

◯ 殺された娘・梁昕苑と交際していた纳吉·艾哈迈德(ナジ・アーメド)。精神障害を患っている。

◯ アイドルグループNINE PERCENTのメンバー。ボーイズグループオーディション番組「偶像練習生(2018)」に参加し、上位に選出され正式メンバーとなった。
演技のキャリアは、ドラマ「爱情公寓5(2020)」「怪你过分美丽(2020)」に出演。映画では、本作の1ヶ月前に公開された開心麻花制作による魏翔(ウェイ・シャン)主演作「好像也没那么热血沸腾(2023)」にも出演した。

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湯鎮業(ケン・トン)

◯ 検察の上級幹部、安华·阿都拉曼(アンワル・アブドゥル・ラーマン)。

湯鎮業(ケン・トン)は1980年代から活躍する香港人俳優。当初はチョウ・ユンファ主演「上海灘(1980)」「天龍八部(1982)」「神雕侠侣(1983)」などの無綫電視(TVB)ドラマに数多く出演。映画ではレスリー・チャンの「烈火青春(1982)」や言わずとしれた名作「ポリス・ストーリー(1985)」などに出演した。
だがその後、1985年にスキャンダルとなっていた女優・翁美玲(バーバラ・ヨン)が自殺したことで湯鎮業(ケン・トン)の評判が急降下。無綫電視(TVB)との契約も終了する。その後は映画「チャウ・シンチーのロイヤル・トランプ2(1992)」などに出演するも、主な活動を中国へと移し、ドラマ「宮 パレス(2010)」などに出演している。
劉德華(アンディ・ラウ)&甄子丹(ドニー・イェン)主演の映画「追龍(2017)」にも出演している。

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