YOLO 百元の恋 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画
【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
安藤サクラ「百円の恋」リメイク作。驚異の50kg減量で話題の映画だが、映画としてホントに良い出来で、みんなが勇気づけられるエンパワーメント映画。正直原作より良い気がする。ぜひ日本公開を！
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www.youtube.com 映画『YOLO 百元の恋:』予告編（7/5公開）
【スタッフ & キャスト】
2024年 中国 129分
監督: 贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）
出演: 贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）、雷佳音（レイ・ジャーイン / ライ・チァイン）、张小斐（チャン・シャオフェイ）、杨紫（ヤン・ズー）、沙溢（シャー・イー）、乔杉（チャオ・シャン）
【あらすじ】
杜乐莹（ドゥ・ローイン）【贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）】は、引きこもりで自堕落の生活をしており家族からも心配されていた。だがある日、そんな生活を妹から責められて大喧嘩。実家を出て一人暮らしをすることになる。
だが気づくと、友人やいとこなども皆、自分を置き去りにして新たな人生へと踏み出していた。そんな事からふと杜乐莹（ドゥ・ローイン）は、昊坤（ハオ・クン）【雷佳音（レイ・ジャーイン / ライ・チァイン）】がいる近所のボクシングジムに通い始めるのだった。
【感想】
非常に素晴らしい出来の、最高にカッコいい感動作になっていた。より多くの観客、特に女性を勇気づけるエンパワーメント映画として作られていて、その目的を見事に達成している。間違いなく日本でも公開するべきド直球感動作だと思った。
この映画は中国での公開直後から、贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）が撮影のために50kgもの驚異の減量を果たした姿で大ニュースとなり、しかも原作が安藤サクラ主演の邦画「百円の恋（2014）」という事で報道もされた。ポスターパクリ疑惑*1というのもあった。これらの報道のせいで、かえって日本の映画ファンはこの映画そのものの評価にはあまり触れられていないかもしれない。
「百円の恋」も公開時は話題になり、日本アカデミー賞主演女優賞受賞をはじめ評価も高かった。あらためて見てみると、映画自体も苦味ばしったリアリズムをベースに、特にボクシングシーンがかなり盛り上がる良作だ。だが正直に言えば、全体のトーンがハードボイルドでブルースな70年代風に設定されており、良くも悪くも邦画らしい、間口が広いとは言い難い作風になっている。
今回の中国版リメイクは、原作の良さであるボクシングシーンとそこに至る盛り上がりは残しつつ、特に前半での、彼女がボクシングに目覚めるまでのシーンを大幅に見やすくし、より現代的な価値観にアップデートしてある。個人的には本作の方がより多くの人に喜ばれる仕上がりになっていると感じた。
「百円の恋」での、主人公の周囲のクセのある人々は、誰もが皆見苦しく卑劣な後味の悪いキャラだ。ところが今作ではその辺りのリメイクが素晴らしく、遥かに印象を違ったものにしている。そして大事な事は、ボクシングへと向かう動機をとても力強く丁寧に積み重ねてあり、原作と同様にきっちりと底辺まで自尊心が叩き潰されていて、深い説得力を持って「彼女はやるしかなかった」と共感させられるのだ。
贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）の映画であれば当然コメディ要素は期待されるし、キャストも縁の深い芸達者なコメディアン達も揃っている。だが、お笑い要素は序盤に大盤振る舞いしてくれ、その後は次第にフェードアウトしていく。とはいえテレビ局のシーン、帰宅してからの場面など、お笑いのシーンでは全くないがコメディベースだからこそ深く理解できる演出がなされていて、まさに彼女だからできる映画になっていると思えた。
見せ場の減量のシーンはスマートに見せたら、もうクライマックスへとなだれ込む。スパーリングなども含めた練習や試合のシーンも、やり込んでいるのがわかる十分に役柄らしい上手さで、メチャクチャ興奮して見てしまった。
キャストも多くが「こんにちは、私のお母さん（2021）」にも登場していたし、雷佳音（レイ・ジャーイン / ライ・チァイン）主演作「交换人生（2023）」に出演していたお馴染みの俳優たちも多数出演していて、見ているだけで楽しい。
他の記事でも書いているが、去年くらいからの中国映画は、昔のハリウッド映画にあったようなストレートな物語を作るのがすごく上手くなってきている。例えば「熱烈（2023）」なんかもそうだ。今作も、まさにその上手さを体現している一作だと感じられた。
シンプルに笑いながら見ていたら、いつしか心の奥深くをしっかりと掬い上げるように、グイグイとこちらの気持ちを盛り上げてくれる。最高にカッコよく、気持ちよく映画館を後にできる素晴らしい映画であった。
【トピック】
◯ 春節に合わせて2024年2月10日に中国で全国公開。张艺谋（チャン・イーモウ）監督作「第二十条（2024）」や「ペガサス／飛馳人生（2019）」の続編「飞驰人生2 (2024) 」などを抑えて2週連続で興収ランキング1位を奪取した。
興行収入は、歴代中国映画14位となる34.6億元（746億円）を達成した。
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◯ 日本では異例の早さとなる2024年7月5日から全国公開予定となった。
◯ 本作は安藤サクラ主演「百円の恋（2014）」のリメイクである。
◯ また贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）は当初90キロ代だった体重を、一度105キロまで増量しそこから50キロの減量を行い、55キロにまで落とすダイエットを行った事で大きな話題となった。
映画が全国で公開される日まで完全に露出を控えていたので、減量後の姿が公開されると大ニュースとなり、驚きとともに大きく変わった彼女を姿を見るために数多くの観客が来場した。
◯ 英題の「YOLO」は"You Only Live Once"（人生は一回きり）の略である。
◯ キャストは贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）の前作「こんにちは、私のお母さん（2021）」と雷佳音（レイ・ジャーイン / ライ・チァイン）主演作「交换人生（2023）」、大鹏（ダーポン）監督「熱烈（2023）」、そして喜劇集団・開心麻花からの関係が色濃くなっている。これはどれもコメディ系俳優が多く出演しているという事もあるが、やはり贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）の過去の出演作からの人脈だ。
「交换人生（2023）」も彼女の盟友と言っていい张小斐（チャン・シャオフェイ）の主演作だし、その2人とも若かりし大鹏（ダーポン）監督の出世作であるコメディドラマ「屌丝男士（2012）」シリーズに出演していた頃からの長い付き合いである。「熱烈（2023）」にもしっかりと二人に謝辞が寄せられている。
とにかく贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）の周辺には沈腾（シェン・トン）、潘斌龙（パン・ビンロン）、沙溢（シャー・イー）、岳云鹏（ユエ・ユンポン、ユエ・ユンパン）、马丽（マー・リー）、小沈阳（シャオ・シェンヤン）…と現在の中国コメディシーンを代表する錚々たる喜劇人たちとの強い人脈がある。
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◯ ラストシーンでかかるのは、贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）自身も何度も勇気づけられ、2021年2月にわずか43歳でこの世を去った歌手・赵英俊による曲「送你一朵小红花」だ。この曲は韩延（ハン・イェン）監督によって映画にもなっている。
贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）
◯ 主人公・杜乐莹（ドゥ・ローイン）。大学は卒業したが引きこもりとなり、実家から出ない生活をしている。
◯ 本作を監督・主演した贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）は1982年生まれ。中国なら誰もが知る超人気芸人であるが、日本ではなんといっても初監督・主演作であり、興収54億元（910億円）のモンスターヒットを記録し、世界で最多興収の女性監督となった「こんにちは、私のお母さん（2021）」で知られている。
15年以上、主に中国漫才（相声）や舞台喜劇で活躍している。春節の大晦日の晩、中国中央電視台では「春晩」という紅白歌合戦的な超大型お笑い番組をやるのが恒例だが、ここでの「小品」という新喜劇的コントの毎年の常連だ。
映画には「こんにちは～」の後、コロナ禍の市民を描いた「穿过寒冬拥抱你（2021）」に出演している。
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雷佳音（レイ・ジャーイン / ライ・チァイン）
◯ ボクシングジムのベテラントレーナー・昊坤（ハオ・クン）。ボクシングは強いが人付き合いが上手くなく、顧客をなかなか増やすことができない。
◯ 当初この役は、贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）の前作「こんにちは～」にも出演した沈腾（シェン・トン）に依頼したが、体を鍛える必要がある事から断られ、雷佳音（レイ・ジャーイン / ライ・チァイン）がオファーされたという。
◯ 色んな作品にひっぱりだこの売れっ子の雷佳音（レイ・ジャーイン / ライ・チァイン）。映画では個人的にも大好きな苏伦（スウ・ルン）監督の「ルームシェア（2018）」&张小斐（チャン・シャオフェイ）とW主演で沙溢（シャー・イー）も出演していた「交换人生（2023）」、そして「ゴッドスレイヤー 神殺しの剣（2021）」で主演、ドラマでは「長安二十四時（2019）」や「和平饭店（2018）」、「我的前半生（2017）」などが知られているが、チョイ役なども含めると膨大な作品数に出演している。
张艺谋（チャン・イーモウ）監督の前々作「満江紅（マンジャンホン、2023）」に出演、前作「坚如磐石（2023）」と最近作「第二十条（2024）」では主役を演じる事となった。
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张小斐（チャン・シャオフェイ）
◯ 杜乐莹の妹、杜乐丹。引きこもりの姉を疎ましく思っている。
◯ 当初はコメディを中心とした舞台で主に活躍し、映画ドラマへの出演は少なかったが、スーパー大ヒット映画「こんにちは、私のお母さん（2021）」での主演で一気にその名を知らしめた。
さっそく同年のオムニバス映画「父に捧ぐ物語（2021）」に特別出演。2023年は雷佳音（レイ・ジャーイン / ライ・チァイン）とW主演で沙溢（シャー・イー）も出演していた春節映画「交换人生（2023）」と、韓国映画のリメイク・サスペンス「拯救嫌疑人（2023）」で主演、ドラマ「好事成双（2023）」にも出演している。
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◯ 母親役の赵海燕（ジャオ・ハイヤン）（写真中左）は、任素汐（レン・スーシー）主演のヒット映画「半个喜剧 (2019) 」のほか、農村での生活を描いた人気ドラマ「乡村爱情」シリーズに長年出演していた。同じく「乡村爱情」に出演していた子役も出ていた「交换人生（2023）」関連の人脈といえる。
杨紫（ヤン・ズー）
◯ 杜乐莹のいとこ、豆豆。テレビ局での研修生をしていて、社員になるために杜乐莹に話を持ちかける。
◯ 杨紫（ヤン・ズー）は、そもそも高亚麟（ガオ・ヤーリン）らが出演した大人気ホームコメディドラマ「家有儿女 (2005) 」で人気子役として知られるようになった。その後、90後世代4人娘（90后四小花旦）の一人として更に人気を得る。
「战长沙 (2014) 」、「欢乐颂 (2016) 」、「Go!Go!シンデレラは片想い（2018）」、「霜花の姫（2018）」、「これから先の恋（2021）」という数々の人気ドラマ、そして現在大人気の「長相思 シーズン１（2023）」と、近年更に人気上昇中だ。
映画では、黄晓明（ホアン・シャオミン）主演の「ブレイブ 大都市焼失（2019）」などに出演している。
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沙溢（シャー・イー）
◯ ジムのオーナー・老梁。客を呼べない昊坤を叱咤激励している。
◯ ドラマでは大作「三国志 Three Kingdoms（2010）」への出演が知られている。映画では「項羽と劉邦 鴻門の会（2012）」や張芸謀（チャン・イーモウ）監督「崖上のスパイ（2021）」、昨年の春節コメディ映画「交换人生（2023）」などがあるが、先ごろ日本でも公開された大ヒットSF大作「流転の地球 -太陽系脱出計画-（2023）」での、吴京（ウー・ジン）の師匠役がなにより記憶に新しい。
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乔杉（チャオ・シャン）
◯ 杜乐莹の友人・杉子
◯ 今や有名喜劇役者の乔杉（チャオ・シャン）は、大鹏（ダーポン）の監督デビュー作「煎饼侠 (2015) 」に主演した頃から知られるようになった。贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）の前作「こんにちは、私のお母さん（2021）」にも出演、「沐浴之王 (2020) 」や「人生路不熟（2023）」では主演もしている。大鹏（ダーポン）の監督作品には「缝纫机乐队（2017）」と「保你平安（2023）」にも出演と常連となっている。
本作と同時期公開し、興収ランキングを競った张艺谋（チャン・イーモウ）監督のヒット作「第二十条（2024）」にも出演している。
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李雪琴（リー・シュエチン）
◯ 杜乐莹の友人・莉莉（画像中）
◯ 2020年頃からピン芸人として活躍している。最近映画などにも出演を始めていて、大鹏（董成鹏、ダーポン）監督・主演の「保你平安（2023）」でコミカルな準主役を演じていた。
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许君聪（シュイ・チュンツォン）
◯ 杜乐莹がバイトをする焼肉店の店長。
◯ 「こんにちは、私のお母さん（2021）」でも出演していたほか、易烊千玺（イー・ヤンチェンシー）の「素晴らしき眺め（2022）」でも仲間の一人として主要キャストを演じていた。「宇宙から来たモーツァルト（2022）」にも出演している。
贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）とは、上記の「こんにちは～」以前から彼女の小品（コント）の舞台に長年出演している。
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沈春阳（シェン・チュンヤン）
◯ バイト先の店長の妻・曦子
◯ 王一博（ワン・イーボー）主演の「熱烈（2023）」にも出演した大人気小品（コント）芸人・小沈阳（シャオ・シェンヤン）の妻。夫と同じく古典芸能である二人転の役者でもある。「樱桃 (2012) 」などの主演ドラマなどもあるが、基本的には芸人としての活動が主である。
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朱天福（ジュー・ティエンフー）
◯ 芸名のままの役名：朱天福で出演している。ジムでの人気トレーナー。
◯ 朱天福（ジュー・ティエンフー）も「こんにちは、私のお母さん（2021）」にも出演していた。
许君聪（シュイ・チュンツォン）と同じく、贾玲（ジャー・リン / ジア・リン）の小品（コント）の舞台に長年出演している。
魏翔（ウェイ・シャン）
◯ 評論家・魏东风
◯ 魏翔（ウェイ・シャン）は大人気喜劇集団・開心麻花のスター俳優。「こんにちは、私のお母さん（2021）」でも合唱部のメンバーとして出演している。
初主演作だった三谷幸喜「ザ・マジックアワー（2008）」のリメイク作「トゥ・クール・トゥ・キル（2022）」以外にも、「哥，你好（2022）」や「好像也没那么热血沸腾 (2023) 」の開心麻花作品で主演。開心麻花が関わった雷佳音（レイ・ジャーイン / ライ・チァイン）主演の张艺谋（チャン・イーモウ）監督作「満江紅（マンジャンホン、2023）」にも出演している。
今作と同時期に公開されヒットした沈腾（シェン・トン）主演の映画「飞驰人生2 (2024) 」にも重要な役で出演している。
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马丽（マー・リー）
◯ 心理学者・马春丽
◯ 大人気喜劇集団で今や映画製作でも毎期ごとに大ヒット作を手掛ける「開心麻花」。沈腾（シェン・トン）と並び、そこからの出世頭の一人であり大忙しの人気俳優が马丽（マー・リー）。コメディが抜群に上手く安定の演技を誇る。
李雪琴（リー・シュエチン）や乔杉（チャオ・シャン）も出演していた「保你平安（2023）」にも出演、本作と同時期公開の张艺谋（チャン・イーモウ）監督作「第二十条（2024）」にも準主役として出演している。
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◯ 香港の時代劇「天龍八部（1997）」の鳩摩智役などで知られる李國麟（リー・クォックルン）が公演のイベントゲストである香港スターとして登場する。
