【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
前作ペガサスより圧倒的に面白かった。レース映画として遥かにレベルアップ&見せ場多数で2時間がとても速く進む。笑いもあってこれぞ春節映画なつくり。范丞丞も尹正も良いが、やはり沈腾 がハマっていた。
www.youtube.com 《飞驰人生2》终极预告 | Pegasus 2 Official Trailer FEB 10 IN THEATERS
【スタッフ & キャスト】
2024年 中国 121分
監督: 韩寒(ハン・ハン)
出演: 沈腾(シェン・トン)、范丞丞(ファン・チョンチョン)、尹正(イン・ジェン)、张本煜(チャン・ベンユー)、孙艺洲(スン・イージョウ)、魏翔(ウェイ・シャン)
【あらすじ】
前作での劇的な勝利で栄光を再び掴んだかに見えた张驰【沈腾(シェン・トン)】。だが実は、レギュレーション違反によりあの勝利は無効となっていた。5年が経過し、未だ怪我や後遺症に苦しみ、ラリー・ドライバーの仕事もなくなり、小さな免許の教習所を営むしがない暮らしを送っていた。
だがある日、零細自動車メーカーから、チームをスポンサードするのであのバインブルク・ラリーに再び挑戦してほしいという依頼が来る。更に、そこの若いドライバー・厉小海【范丞丞(ファン・チョンチョン)】は驚異的なドライビング・スキルを持っていた。
参加だけでなく勝利の可能性さえ見え、沸き立つメンバーたちはいざラリーに参戦しようと意気込むのだが…
【感想】
前回「ペガサス/飛馳人生(2019)」より遥かに面白く、心ワクワクするような映画体験ができる最高に面白い青春映画だった。
もちろんラリーの走行シーンは多数登場する。だがそれらの撮影は前作より遥かにこなれていて、スリルとスピードに思わず何度もグッと力が入る。コミカルなテイストもしっかりあって、素晴らしく楽しい映画体験だった。
青春映画とは書いたが、とはいえ登場するのは沈腾(シェン・トン)をはじめ、みんな青春を語れるような若者ではない。それもあってか、むしろ冒頭から春節映画として楽しい映画を期待する観客に冷水をぶっかける。オープニングで前作の素晴らしいダイジェストを見せたと思えば、なんとあの優勝が取り消しとなった事が明かされる。5年も経ったのにあの時の怪我も治っていない。
そうして、自動車教習所での教官という不本意極まりない仕事を地道にこなす沈腾(シェン・トン)演じる张驰なのであった。だが、前作での相棒・尹正(イン・ジェン)演じる孙宇强やメカニック・记星【张本煜(チャン・ベンユー)】もちゃんと揃っているし、そこから2時間、中だるみや紆余曲折も無く、じわじわとひたすらハッピーエンドへグイグイ盛り上がっていくのだ。
とにかく、今回は描き方が上手いなと唸らされた。妙なひっかかりや変な回り道もなくスムーズにクライマックスまでたどり着くので、ほぼ2時間ピッタリの上映時間がまったく長く感じない。エンタメとして余計なものは極力省いているが、例えばありえないけど楽しいマンガみたいな零細自動車工場でのワチャワチャとか、舞台となるラリーの開催地・バインブルクの、クルマ/自転車好きの聖地であるイタリア・ステルヴィオ峠を彷彿とさせる壮大かつ急峻な美しい風景とか、そして実物を本当にぶつけるクラッシュテストをはじめとした準備シーンの数々など、見せ場もしっかりと作ってあって手慣れた感覚が非常に心地よい。
そして、そうやってストーリー運びが上手く感じられたのには、やはりラリーについてのディテールが非常にしっかり作られてあるのが大きい。使用するラリー車両のチューニングレベルも驚異的に再現度が高いし、中小プライベートチームの出場までのプロセス、コミッショナーの話している内容、走行終了後の手続きなどなど、違和感を覚える部分が本当に少ない。ボールを落として相手に受け取らせる、定番の動体視力のチェックみたいなあるあるも入れ込んである。
特に素晴らしいのが、ライバルチーム・光刻(Light Time)を率いる叶经理のキャラ造形だ。彼は前作にも出演していたがあまり目立たなかったの比べ、今回は考え方、新人・厉小海に対する対応、そしてコスチュームなどなど…魏翔(ウェイ・シャン)の抑えた演技もあり、いかにもトップチームのリーダーにいそうな人物に仕上がっていた。ライバルだが決してシンプルな悪役ではなく、シビアさと情熱とのぶつかり合いである今作のテーマのひとつを浮かび上がらせるのに、本当に上手く作り上げられている。
とはいえ、全編で感じるのは「監督、ほんとにクルマが撮りたいのねえ」というビンビンの熱意だ。もうクルマが出る映画何本目かなと思うほど、韩寒(ハン・ハン)監督は常に乗り物やレース、スピードが関わる映画を撮っているが、その熱い想いは今作でもまったく変わらない。
後半のラリーのシーンでは、前作より遥かに盛り上がる走行シーンがバンバン登場する。ここ最近の実際のラリーでも、ヘリやドローンを駆使して200km/hで追走するような素晴らしく迫力のある映像が毎試合見れるようになっているので、今作でもそれらと同様に最高にアガるカッコいい映像でアドレナリンを誘発する。CGも大規模に使っているのは間違いないが、違和感も大幅に減っていて技術と予算の使い方も前作とは比べ物にならないほどこなれている印象だ。
俳優陣では特に沈腾(シェン・トン)の印象が素晴らしく良かった。今作では実年齢とのギャップがなくなって、乾いた笑いのような陰りのある演技、コミカルなのに切なくなる、彼の持ち味が存分に発揮されている。
あと、脇役たちの堅い演技も最高だった。叶经理役の魏翔(ウェイ・シャン)はもとより、コミッショナーの郑恺(カイ・チェン)あたりの適度な含みと重みのある演技も素晴らしく堂に入っていて最高だ。
今作はプロのクレバーな仕事とアマチュアの燃えるような情熱の対比を綺麗に見せてくれるのが良かったが、もうひとつ「公平さ」が主人公の規範になっていて、それが興味深い。前回は許されたように見えた優勝が実は失格となったり、スポンサーの零細自動車メーカーも同様にルールを破った事から窮地に陥ったりと、"フェアに戦う事が大切"だとスポーツの映画で語っていて、ちょっと以前の中国映画には見なかった視点が入ってきたのも新鮮だ。
レースを描いた映画だと古典「栄光のル・マン(1971)」や、最近では「フォードvsフェラーリ(2019)」、「グランツーリスモ(2023)」など面白い映画があるが、ラリーを描いたもので良作は本当に少ない。しかも実話や伝記ものではなくオリジナルストーリーなので、それらの世界的な良作たちが監督の視野にあったかはともかく、出来はアジア映画最良と言えるレベルなのは間違いない。
とにかく、そんな事は何も考えなくと大変楽しく、気持ちよく見終われる最高に楽しい映画なので、是非とも日本でも公開してほしい、そんな良作であった。
【トピック】
◯ 春節に合わせて2024年2月10日に中国で全国公開。公開初週は贾玲(ジア・リン)主演の「YOLO 百元の恋」に次ぐ2位を記録。その後張芸謀(チャン・イーモウ)監督作「第二十条」に抜かれるも、4週間2位をキープする大ヒット作となった。
興行収入は34億元(734億円)を記録した。
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◯ 中国金鶏奨では5部門ノミネート、美術賞、録音賞の2冠受賞した。
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◯ チームが出場を目指すバインブルク(巴音布鲁克)・ラリーというのは存在しないが、バインブルクという場所は中国内に実在する。
新疆ウイグル自治区・バインゴリン・モンゴル自治州にある広大な美しい草原地帯がバインブルク草原と呼ばれている。野生白鳥保護区や森林公園も存在する。
この草原はキルギス・カザフスタンとの国境でもある天山山脈という、7000m級の高峰も存在する山地のそばに位置し、実際のラリーステージはこの天山山脈の方という設定が合理的な想像だ。
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2009/2010年に開催された東帰ラリー(中国ロプノールオートクロス)という、中国からカザフスタン-ロシアへと走る、ラリーレイドというWRCよりパリダカ的な、更にオフロードを舞台にしたラリーイベントが開催され、監督らはそれをイメージしているようだ。
◯ 監督の韩寒(ハン・ハン)は、元々80后世代の作家として、忖度せずに発言する点などから若者に大人気となる。その後レース&ラリー活動などと並行して映画の制作も開始。「いつか、また(2014)」を始めとして、「乗風破浪〜あの頃のあなたを今想う(2017)」、「ペガサス/飛馳人生(2019)」、「四海(2022)」とヒット作を監督し続けている。
さらにプロデューサーとしても、尹正(イン・ジェン)主演作「扬名立万(2021)」、王一博(ワン・イーボー)主演作「ボーン・トゥ・フライ(2023)」の制作に携わっている。
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沈腾(シェン・トン)
◯ 年間チャンピオン5回の伝説的ドライバー、张驰。だがあの頃の栄光は遠い過去となり、今はしがない教習所の教官で糊口を凌いでいる。だが有力なスポンサーを獲得して再びラリー参戦を決意する。
◯ 前作からの続投。喜劇集団「開心麻花」出身の超人気喜劇役者で、本当に数多くの映画に主演している。また「父に捧ぐ物語(2021)」内の一遍では初監督した。最近は「満江紅(マンジャンホン、2023)」での易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)や、「四海(2022)」の刘昊然(リウ・ハオラン)のように、話題の若手との組み合わせが徐々に増え始めている印象だ。
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范丞丞(ファン・チョンチョン)
◯ 辛地の工場でのテスト・ドライバーだった厉小海。類まれなるテクニックから张驰のチームでエースドライバーとなる。長年ラリー出場を夢見ていた。
◯ オーディション番組「偶像練習生(2018)」で勝ち残り、番組から結成されたアイドルグループNINE PERCENTのメンバーとして芸能界のキャリアをスタート。1年の期間限定活動後は、ソロとして楽曲の発表や映画・ドラマへ出演している。姉はなんとあの女優・范冰冰(ファン・ビンビン)である。
主な出演作はドラマ「ウィッシャー 致命的な願い(2021)」や「The World of Fantasy 灵域 (2021) 」、映画では「门锁 (2021) 」、「了不起的夜晚 (2023) 」、そして乔杉(チャオ・シャン)主演の大ヒット・コメディ「人生路不熟 (2023) 」などがある。
尹正(イン・ジェン)
◯ 张驰のコ・ドライバー、孙宇强。前作に引き続き、辛いときも常に张驰の相棒であり続ける。
◯ 韩寒(ハン・ハン)監督作の常連で、前作「四海 (2022)」でも主人公の兄貴分役で出演、監督がプロデュースしたミステリー「扬名立万(2021)」では主演、「ペガサス/飛馳人生(2019)」でも出演していた。歌手でもある。
喜劇集団「開心麻花」関連作にもよく出演しており、「夏洛特烦恼(2015)」や「恥知らずの鉄拳(2017)」にも出演。ダンス映画「僕らが空を照らしたあの日(2021)」では、かなりクセのあるコミカルな役作りをしている。
ドラマではヒット作「麻雀(2016)」に出演、京劇を描いた美しい名作ドラマ「君、花海棠の紅にあらず(2020)」で主演している。
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张本煜(チャン・ベンユー)
◯ 张驰のチーム「散装车队」のメカニック・记星。
◯ 2013年からのドラマ「报告老板!」シリーズや大人気コメディ「万万没想到(2013)」など、刘循子墨(リウ・シュンズーモオ)監督のコメディでの常連で、その縁で尹正(イン・ジョン)主演のヒット作「扬名立万(2021)」に出演した。昨年には张涵予(チャン・ハンユー)&劉徳華(アンディ・ラウ)がW主演したクライム・サスペンス映画「93國際列車大劫案:莫斯科行動(2023)」に出演。
「乗風破浪(2017)」、「ペガサス/飛馳人生(2019)」と、今作の韩寒(ハン・ハン)監督の過去2作にも出演、そして今作と、もはや常連といえる存在だ。
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孙艺洲(スン・イージョウ)
◯ 自動車学校の生徒として张驰のもとに通っていたが、いつしかチームの一員となった、刘显德。メンバーになってからも授業料を払って通っている。
◯ 1983年生まれ。2009年のドラマ「爱情公寓」シリーズで芸能界入り。主な出演作はドラマ「爱情是从告白开始的(2012)」、「僕たちのプリンセス(2013)」、呉奇隆(ニッキー・ウー)&刘诗诗(リウ・シーシー)の「続・宮廷女官 若曦(2013)」、(鍾漢良)ウォレス・チョン&アンジェラベイビーの古装劇「孤高の花(2016)」。
映画では金城武&周冬雨(チョウ・ドンユィ)の「恋するシェフの最強レシピ(2017)」、张艺谋(チャン・イーモウ)監督のサスペンス映画「坚如磐石(2023)」、そして今年のお正月映画「年会不能停! (2023) 」 などがある。
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贾冰(ジア・ビン)
◯ 伝説的ドライバー・张驰に、是非自社チーム「散装车队」を率いてラリーに参戦してほしいと依頼する、零細自動車メーカーの社長・辛地。
◯ 贾冰(ジア・ビン)は喜劇、特に小品などのコメディで大変知られた俳優である。
映画では「小小的愿望(2019)」や「父に捧ぐ物語(2021)」《鸭先知》編、昨年はコメディ映画「哥,你好(2022)」やジャッキー・チェン主演「ライド・オン(2023)」、良作「いいひと 保你平安(2023)」、陈凯歌(チェン・カイコー)監督の主旋律映画「志愿军:雄兵出击(2023)」などに出演。ドラマでは大ヒットサスペンス「狂飙(2023)」にも出演している。
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魏翔(ウェイ・シャン)
◯ このラリーで最有力候補のチーム・光刻(Light Time)を率いる叶经理。前作ではチームを解雇された後、更に経験を積むためにヨーロッパへ向かった。张驰とは旧知の仲。
◯ 魏翔(ウェイ・シャン)は大人気喜劇集団・開心麻花のスター俳優。「こんにちは、私のお母さん(2021)」でも合唱部のメンバーとして出演している。
初主演作だった三谷幸喜「ザ・マジックアワー(2008)」のリメイク作「トゥ・クール・トゥ・キル(2022)」以外にも、「哥,你好(2022)」や「好像也没那么热血沸腾 (2023) 」の開心麻花作品で主演。開心麻花が関わった雷佳音(レイ・ジャーイン)主演の张艺谋(チャン・イーモウ)監督作「満江紅(マンジャンホン、2023)」にも出演している。
今作と同時期に公開され大ヒットした贾玲(ジア・リン)主演の日本映画「百円の恋」のリメイク映画「YOLO 百元の恋 (2024) 」にも出演している。
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郑恺(カイ・チェン)
◯ バインブルク・ラリーを主催する競技団体のコミッショナー・马宗亮。
◯ 多数の映画に出ている売れっ子だが、キャリアとしては良作の青春映画「So Young〜過ぎ去りし青春に捧ぐ〜(2013)」への出演あたりから多くの人に知られるようになる。そして邓超(ダン・チャオ)や王宝强(ワン・バオチャン)のスター達が出演した人気バラエティ番組「奔跑吧兄弟(2014)」での活躍で一気に知名度を得た。
この年の「前任攻略 (2014) 」から「恋の神様許してよ(2019)」や「前任4:英年早婚 (2023) 」に続くラブコメ映画「前任」シリーズも、都合5作が作られた人気シリーズとなった。
その他、張芸謀(チャン・イーモウ)監督作「SHADOW/影武者(2018)」、戦争大作「エイト・ハンドレッド(2020)」、そしてウォン・カーウァイが監督し非常に高く評価されているドラマ「繁花 (2023) 」などに出演している。
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冯绍峰(ウィリアム・フォン)
◯ バインブルク・ラリーに出場する他チームのマネージャー・邹经理。光刻(Light Time)の叶经理からある依頼を受ける。
◯ ドラマ「宮 パレス 〜時をかける宮女〜(2011)」や映画「項羽と劉邦/White Vengeance(2011)」で知られるようになる。2015年に韩寒(ハン・ハン)監督の処女作「いつか、また(2015)」に主演。監督の最新作「四海(2022)」でもチラッと出演している。
ディズニー映画「ムーラン(2020)」主演の刘亦菲 (リウ・イーフェイ)と共に「二代妖精之今生有幸(2017)」にも主演。他にも映画では「黄金時代(2014)」、「西遊記 孫悟空vs白骨夫人(2016)」、ドラマでは「明蘭~才媛の春~(2017)」など。
昨年は「封神~嵐のキングダム~(2023)」で天上人的な存在である太乙真人を演じた。
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使用車両
◯ 张驰のチーム「散装车队」のラリー出場車:アウディA3
2020年以降となる現行4代目モデル。アウディは1980年代に最高峰のWRC(世界ラリー選手権)で伝説的なマシンを登場させ競技レベルを飛躍させたメーカー。監督のラリーの歴史への目線が透けて見える選択だ。
※映画公開後、アウディ・ショールームで撮影車両が展示された。サスペンション取付部や後部座席位置に設置された安全タンクなど、完全にラリーカーとして出場可能なレベルまで仕上げているように見える。映画撮影としてはあり得ないレベルで、コスト度外視と感じる作り込みだ。
◯ ライバル・光刻(Light Time)のラリー出場車:ヒョンデ(ヒュンダイ、現代)悦纳RV
韓国メーカーの車両だが、ヒョンデは現在もWRCに出場しているトップチームなので、登場はむしろ自然な選択だ。
ベース車はヒョンデ(ヒュンダイ)・アクセントで、中国で生産しているモデルがヴェルナ(悦纳)という名称で、悦纳RVはそのハッチバック版。
詳細画像:【图】悦纳RV_现代_悦纳RV报价_悦纳RV图片_汽车之家
ただし、おそらく2017~2021年までWRCに出場していたWRカー規則でのラリーカー・i20クーペWRCに似せたいとの考えから、フロントフェイスを修正してある。このモデルは、ヒュンダイが2019/2020年とWRC連覇を成し遂げた歴史的なモデルだ。
◯ 邹经理チームのラリー出場車:フォルクスワーゲン・ゴルフ7(画像左)
特定の車種と判別しにくいようフロントフェイスが変えられている。
◯ 教習車:捷达(ジェッタ)VA3
フォルクスワーゲン・ジェッタ - Wikipedia
捷达(ジェッタ)とは、2019年にできたドイツ・フォルクスワーゲンと中国・第一汽車の合弁会社、一汽大衆によるブランド。フォルクスワーゲンの中国限定モデルを手頃な価格で販売していて、エンブレムもVWマークではなくジェッタ専用のものが付き、外車にしては大衆的というイメージでラインナップしている。
ベースはフォルクスワーゲン・ジェッタである。世界で販売している現行ジェッタは2018年に7代目にスイッチして北米・ヨーロッパで発売したが、ボディサイズが大きくなりすぎたため、中国では6代目のままデザインを変更し、捷达VA3というモデル名に変更して継続販売している。登場したのは、中国専用のこのモデルである。
最初の教習中などは前期モデルが登場する。厉小海が乗ってドライビング・スキルを見せるのはこの後期型であるVA3の方である。
詳細画像:【捷达VA3】捷达_捷达VA3报价_捷达VA3图片_汽车之家
◯ 光刻(Light Time)のチーム車両:マクラーレン・GT
マクラーレンは、元々はF1に参戦するレーシングチームが自動車メーカーとなり、F1直結のテクノロジーを市販車にしたスーパーカーを販売するようになった企業。
マクラーレン・GTは、2019年から発売した乗りやすくデザインされた、パワーも豪華さも兼ね備えたモデル。
こちらはラリーではなくGT3というレースに出場するための車両として登場する。様々なカテゴリーに出場している大規模チームであることを示すシーン。通常、たとえメーカー直轄クラスの大規模なラリー/レーシングチームであっても、コストの問題からレースとラリーに同時に参戦できる体力は無い。
◯ 光刻(Light Time)叶经理の使用車:BMW・M3(E93)
M3はBMW3シリーズをベースとしたスポーツモデル。これはその中でもオープンになるカブリオレモデル。4代目となるE90系M3は2008~2014年まで生産されていたモデル。
◯ 出張教習の使用車:坦克300
坦克=Tank(タンク)というブランドは2021年からスタートした中国の大手メーカー・長城汽車(GWM)のブランドのひとつ。ジープっぽいデザインのSUVを主に販売している。300はラインナップ中、トヨタ・ハリアーに近い、最も小さいサイズのモデルとなる。
詳細画像:【坦克300】坦克_坦克300报价_坦克300图片_汽车之家
◯ 出張教習の使用車:理想L8(室内のみ登場)
この車両を製造している理想汽車は2015年に発足した中国の新興企業。元々は汽车之家という人気自動車情報サイトを運営していて、デリバリーの美団やTiktokのバイトダンスなどの出資を受け、自動車メーカーを発足させた。
大きめのSUVが主なラインナップで、理想L8はその中でも真ん中に位置するハイブリッド車両。2022年から発売され、トヨタ・ランドクルーザーほどの大きなボディを持つ。
詳細画像:【理想L8】理想汽车_理想L8报价_理想L8图片_汽车之家
◯ 出張教習の使用車:阿维塔12
阿维塔(AVATR)というブランドは、大手自動車メーカー長安汽車とスマートフォンのファーウェイ、バッテリー大手メーカーのCATLの三社が共同で立ち上げた中国のジョイントベンチャー。
現在は11と12の2モデルをラインナップ。12は昨年登場した電気自動車で、トヨタ・クラウンと同じようなサイズの大型高級車である。
詳細画像:【阿维塔12】阿维塔_阿维塔12报价_阿维塔12图片_汽车之家
◯ 辛地社長の送迎車:别克(ビュイック)GL8
アメリカGM社との合弁企業・上汽通用汽车が製造するミニバン。ポンティアック・モンタナがベース。昨今はトヨタ・アルファードが人気だが、それでも長い間中国での高級乗用ワゴンといえば、このGL8であった。今も更にグレードアップして、高級ワゴンとして確固たるブランドになっている。中国専用車種。
◯ アウディがスポンサーとして車両を提供している事もあり、その他にも3代目RS6 Avant、e-tron GTなどのアウディ車が登場する。
◯ 世界の名車をパクった小さなクルマたちも登場する。これらの車両までこのクオリティで作ってしまうのが素晴らしい。
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ラリーの表現について気になる点
◯ ラリーについて素晴らしく丁寧に描かれた本作だが、まだ幾つかの大げさ/現実ではありえない表現も残っているのも事実だ。
・ラリー開催前のクラッシュテストは実際には行われない。実際に行っているのは市販車と、F1やフォーミュラEなどのフォーミュラレースの車両のみだ。
・ラリー出場車の整備や保管のためのスペースとして、劇中のような豪華な建物が用意される事はほとんど無い。スペースの事をサービスエリアと呼ぶが、通常は露天にテントなどを設営する。これは、ラリーがサーキットではなく公道を移動しながら走っていくため、スタート地点に近いエリアに簡便な拠点を設置する方が都合が良いため。
・前走車との問題は、ラリーの場合はもし発生し、更に劇中のような行為が発覚した場合、とても目立つしすぐに大問題になる。ラリーでは基本的にステージのコースを一台ずつ走行したタイムで競うため、レースのように同時にコース内に複数車両が存在する事はあまり発生しないため。
・ステージのコースを劇中のように長時間、まして気候が変化するほどの距離を走ることは通常ない。全開で走るコースをSS(スペシャル・ステージ)と呼ぶが、通常は集中して全開で走りきれる10分以内程度の短距離にして細切れに設定されている。