素晴らしき眺め 奇跡の眺め 奇迹·笨小孩 Nice View: 豆瓣
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【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】「素晴らしき眺め 奇跡の眺め 奇迹·笨小孩」の感想や解説(データ、あらすじ、出演者プロフィール)などを記載しています。
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【スタッフ & キャスト】
2022年 中国
監督: 文牧野(ウェン・ムーイエ)
出演: 易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)、田雨(ティアン・ユー),陈哈琳(チェン・ハーリン)、齐溪(チー・シー)、公磊(ゴン・レイ)、许君聪(シュイ・チュンツォン)、王宁(ワン・ニン)、黄尧(黄堯、ホアン・ヤオ)、巩金国(ゴン・ジングォ)
【あらすじ】
20歳の景浩(易烊千玺)は、6歳と幼い妹の景彤(陈哈琳)と共に深圳で暮らしている。スマホ修理屋をやっているが競争が激しく売上は上がらず、家賃まで滞納を繰り返す有様だ。先天性の心臓病を持つ景彤は8歳までに手術を受けないといけないが、その為には35万元(700万円)が必要になる。そこで景浩は、不良品となった新品スマホを大量に買い付けて修理し、携帯電話会社に売ることにする。80万元(1600万円)の売上になるが、その為には良品率85%以上、納品まで手付金支払いも無しという厳しい条件をクリアしなければならないのだが…
【感想】
文牧野(ウェン・ムーイエ)監督の前作同様、最後まで気持ちよく見れる爽快な作品。基本的には前作と同じ展開、構造の映画なので、それを知っていて見るのであれば違和感なく楽しめるだろう。
監督の前作「薬の神じゃない!(2018)」は、生活のためにと未認可薬を密輸した男が図らずも患者たちの救世主となっていくストーリーのエンタメ映画だが、本作同様にチームで密輸計画に取り組む部分や、中国社会の現実を反映したリアリティのあるバックグラウンドからスタートする展開などで中国政府も反応する程のヒット作となった。今回もそれを踏襲したエンタメ作になっているので、楽しみながら中国の現在を理解できるバランスのいい映画になっている。
ただ深圳を舞台に移した今作は、前作に比べて少々影の部分が増しており、前回ほどの爽快感のある後味にはならない。中国のシリコンバレーとも言われて成長著しい大都市深圳の、隠れているダークサイドが冒頭から主人公を苦しめており、チームの面々もそれぞれ別の社会的な問題で苦しんだ挙げ句、チームへと参加することを決意する。劇中でも何度かそびえ立つ高層ビル群を映した遠景が挟まれ、巨大都市の狭間でもがく人々の存在を意識させられる。华强北商业街に売り込みに行くシーンは少し登場するが、地元で無ければ意識しないエリアだけが舞台となる。同じような深圳の影の部分を描いた作品として、杨子姗(ヤン・ズーシャン)が主演した「路過未来(2018)」を思い出させた。あちらでは治験のアルバイトを通してより辛い深圳のダークサイドを描いていた。
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ストーリーとしてはシンプルでわかりやすいのでそれを楽しみつつ、王宁演じる刘恒志の結婚式やネットカフェの様子、スマホ修理業のリアルな様子を見るのが楽しいんじゃないだろうか。
【トピック】
○ 2022年の春節に合わせて2月1日公開。大ヒット作「1950 水門橋決戦 长津湖之水门桥」と開心麻花のコメディ「トゥ・クール・トゥ・キル 这个杀手不太冷静」に阻まれつつ1ヶ月以上3位をキープ。(期間中、バレンタインデーに合わせて「花束みたいな恋をした(花束般的恋爱)」が中国でも公開され、4位まで追い上げていた。)6月1日よりNetflixで配信開始。興収は13億元(260億円)を突破。2022年末までの興行収入で中国興行収入ランキング6位を記録した。
○ 2022東京・中国映画週間で日本公開。
○ 2022年11月の第35回中国金鶏奨で、齐溪(チー・シー)が助演女優賞を受賞、他6部門でのノミネートと、全作品中4位タイのノミネート数を記録した。
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○ 監督の文牧野(ウェン・ムーイエ)は上記の前作「薬の神じゃない!(2018)」以外にも、岩井俊二が共同監修し中国で制作された「恋する都市 5つの物語(2015)」でも短編1作の監督をしている。
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易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)
○ 主演の易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)にも景彤役の陈哈琳と同世代の弟がいるそうで、撮影中も仲良くしていたようだ。
陈哈琳(チェン・ハーリン)
○ 易烊千玺と2度めの共演となる陈哈琳(チェン・ハーリン)は素晴らしい演技だった。印象的だったシーンといえば、マンションの管理人の詰め所で管理人のお爺さんと雨の中お兄ちゃんの帰りを健気に待っている場面だ。それほど台詞も多くないシーンだが、兄弟の関係性やここの住人が二人の事をちゃんと知っており気にかけている事がすっと理解でき、これぞ中国社会の良さだなあと実感できる。
田雨(ティアン・ユー)
○ 高齢者施設で働いていた梁永诚を演じたのは田雨(ティアン・ユー)。彼は色んな映画によく出ている。映画では「1921(2021)」や「完璧な他人 ~スマホが暴く秘密たち~ 来电狂响(2018)」、「恥知らずの鉄拳 羞羞的铁拳 (2017)」、ドラマでは「身份的证明(2009)」や「恋愛先生 MR・RIGHT(2018)」などで知られている。
齐溪(チー・シー)
○ 前の工場での仕事で耳が聞こえなくなったシングルマザーの汪春梅役は齐溪(チー・シー)。最近では「在りし日の歌(2019)」にも出演していた。
公磊(ゴン・レイ)
○ 公磊(ゴン・レイ)は悪役での出演作が多い。陳暁・王一博主演の优酷による警察ドラマ「冰雨火(2022)」でも悪役で登場する。
王宁(ワン・ニン)
○ ネットカフェにいたゲーマーのひとりで吴晓丽と結婚する刘恒志:王宁(ワン・ニン)は喜劇集団・開心麻花の元メンバーだが、彼らの映画作品には出演してはいないようだ。
许君聪(シュイ・チュンツォン)
○ 同じくネットカフェの仲間だった张超を演じるのは许君聪(シュイ・チュンツォン)。「ミッション・デブポッシブル!(2018)」などの包贝尔(バオ・ベイアル)作品に出演した後、「こんにちは、私のお母さん(2021)」にも工場の上司役で出演している。
巩金国(ゴン・ジングォ)
○ 巩金国(ゴン・ジングォ)
黄尧(ホアン・ヤオ)
○ 刘恒志と結婚する吴晓丽を演じるのは黄尧(ホアン・ヤオ)「THE CROSSING〜香港と大陸をまたぐ少女〜(2018)」で主演している。
その他キャスト
チームのメンバー以外で印象的なのは、やはりこの张志坚演じる携帯電話会社の社長だろう。短く刈り上げた髪にゴルフルック崩れ的な、いかにも中国人経営者らしい風貌もそうだが、交渉のやり取りがいかにもで、大変説得力のある演技だった。実績の無い若者に損失の可能性を含んだ契約は絶対できないのだが、自身の若かりし頃を思い出しても決して無碍にはするつもりはない。そんな思いが易烊千玺が押しかけて来た数分の交渉に込められていた。この心の機微を理解しているかどうかで取引が決まる、その空気がしっかりと伝わる印象的なシーンだった。
○ 監督の前作「薬の神じゃない」での5人組の一人を演じた章宇も、ビルの外壁掃除のシーンできちんと登場する。彼は同時期に公開された张艺谋(チャン・イーモウ)監督の「狙击手(狙撃手)」では主役として、抑制的な素晴らしい演技を見せていた。
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徐铮も結婚式の場面で。
王传君は携帯電話会社の秘書として。
杨新鸣もチラリとだが医者として登場する。
主題歌
○ 主題歌は劉德華(アンディ・ラウ)の1998年の曲「笨小孩」を易烊千玺と二人でカバーしている。
これが原曲となる「笨小孩」だ。