中国映画レビュー「中国女子バレー 奪冠 夺冠 Leap」

中国女子バレー 奪冠 夺冠 Leap

中国女子バレー - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

 

 

【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】

 

 

 

中国女子バレー 奪冠 夺冠


www.youtube.com 《中国女排》10分钟最新高清预告片


www.youtube.com OAFF2021『中国女子バレー / Leap / 奪冠』予告編 Trailer

 

【スタッフ & キャスト】

2020年 中国 135分
監督: 陈可辛(陳可辛、ピーター・チャン)
出演: 巩俐(コン・リー)黄渤(ホアン・ボー)吴刚(ウー・ガン)彭昱畅(ポン・ユーチャン)白浪(バイ・ラン)朱婷(シュ・テイ)

 

 

【ストーリー】

1980年代中国、郎平擁する女子バレーボールは、血のにじむような練習の果てに初めて世界一の栄光を掴む。それから20年、郎平はアメリカ代表の監督として北京オリンピックに意気込む中国代表と対戦する。中国代表のヘッドコーチは20年前に練習を共にして以来、長年の友人でもある陈忠和。様々な思いを胸に郎平は試合へと臨む。

 

 

【感想】

脚本、演技、映像、美術…すべてのクオリティが素晴らしい、最高のスポーツ映画だった。

どこから褒めるべきか迷うくらい、どこを取っても素晴らしい。言うならば、日本では現状配信でもソフトでも全く見る術が無い事が本当に惜しい、ぜひ多くの人に見られるべき作品だ。
国威発揚映画という見方もあるが、個人的にはそうは感じなかった。もし事実を捻じ曲げる演出があればその通りだが、史実である自国の良い部分を映画化するのは、たとえ日本であっても自然な事だろう。

 

中国女子バレー 奪冠 夺冠

 

さて、タイトルを見ると中国女子バレーについての映画に思えるが、実際にはレジェンド、郎平についてのストーリーだ。中国女子バレーを初めて世界一に導き、監督としてもアメリカ代表と中国代表2つの代表監督を務め、本作公開当時もなお現役の中国代表チーム監督であった偉人だ。1980年代に日本女子バレーを観ていた人ならば、鉄のカーテンとして彼女らを苦しめた郎平の名を覚えている人も多いに違いない。

ストーリーも、その郎平の選手時代と監督時代を描く。選手だった1981年頃、そして監督になってからは、アメリカ代表監督としての2008年北京オリンピック、そして中国代表監督としての2016年リオ・オリンピックまでだ。
古色蒼然とした80年代いにしえのシーンは、グレーディングも美しく、構図の取り方も鮮やか。古めかしくも夢に向かって活き活きとした熱意が迫ってくる。大阪・府立体育館での1981年ワールドカップのシーンでも、選手たちの動きが驚くほどの圧倒的な自然さで再現されていて、この時点で観ている側は「何かおかしいぞ⁈」と思い始めるのだ。そう、今作でのプレーシーンには多くの現役/OGの元代表選手が実際に参加していて、まさに彼女たちにしかできない臨場感を作り出している。

 

2000年代の監督時代になると画面は一変し、カラッと鮮やかな現代的なルックへ変貌する。郎平も監督になり、まるで新しい映画が始まったようだ。

 

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一方でストーリーはより深みを増していく。選手の闘いと同時に監督の闘いである事もよりはっきりと見えてくる。特に朗平監督の場合、前半は敵国アメリカの代表監督であり、誰よりも孤独な闘いなのだ。一方で、そこには古くからの友人がいる。
本作は三部構成になっていて、第一部とも言える80年代はスポ根的青春ストーリー、第二部のアメリカ代表監督時代は孤独と友人との対話、そして第三部の中国代表時代はまた新たなストーリーと、どんどんテーマも変わっていく事で観客のテンションもその度にまたアガっていく。
とはいえ陈可辛(陳可辛、ピーター・チャン)監督は彼のいつもの作風通り、抑えた演出、台詞は控えめ、ディテールのモンタージュで語る。むしろこういうやり方こそ観客にはより一層効くのだ。

一方で試合のシーンは最高だ。プレーは現役世界トップクラスがやっていて、正に試合を見ているそのまんま。物足りない訳がない。画面もまるで試合中継を再現するかのようにスコアを表示したり、臨場感が高まる仕掛けが豊富に仕込まれている。まさに情報量とライブ感の理想の組み合わせを実現しているようだ。試合を見ている時には物足らない情報量、後から見るドキュメンタリーでは物足らない臨場感という、この実際には両立しない欲求を叶えたような、映画でしかできない素晴らしく贅沢なシーンであった。

監督の前作「最愛の子(2014)」が心に深く突き刺さった筆者にとっては、やはり本作も最高に満足できる映画だったし、落ち着いて考えても中国金鶏奨受賞は納得の出来だと思う。そして現在のところ、香港人監督が制作した中国映画として最高峰の作品のひとつと感じる素晴らしい作品だった。

 

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【トピック】

◯ 当初2020年1月25日の春節に合わせて「中国女排」というタイトルで公開を予定していたが、新型コロナの感染拡大により新作が一斉に公開中止となり、全国の映画館も相次いで緊急休業を発表。本作も同様に公開延期し、「夺冠」へと改題の上、半年後の国慶節に合わせた9月25日に公開となった。
公開初週での興収ランキングで1位を奪取。公開1ヶ月後の10月24日時点で興収は8億元(163億円)を達成した。

 

◯ 2020年11月の中国金鶏奨で、「少年の君(2019)」などを抑えての最優秀作品賞のほか、脚本賞、撮影賞の3冠受賞、8部門ノミネートを達成した。

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◯ 2021年3月の大阪アジアン映画祭で「中国女子バレー」というタイトルで上映された。

中国女子バレー|OAFF2021|Special Focus on Hong Kong 2021

 

 

◯ 筆者の2020-21年中国映画ベスト5に本作を選んだ。

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◯ 監督の陈可辛(陳可辛、ピーター・チャン)は香港人。
名門ゴールデン・ハーベストで助監督などをした後、初監督作品「愛という名のもとに(1991)」を制作。「君さえいれば/金枝玉葉(1994)」監督の後、名作「ラブソング(甜蜜蜜、1996)」で香港金像奨で驚異の9部門受賞を果たした。
筆者は、中国での子供誘拐についての監督の前作「最愛の子(2014)」の素晴らしい出来に大変感動した。

遂に公開「亲爱的(最愛の子)」 - daily diary

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巩俐(コン・リー)

◯ 中国バレーを変えた伝説的人物、郎平(ろうへい/ラン・ピン)を演じた。郎平は本作公開時には現役の中国代表監督であったが、2021年の東京オリンピックを予選敗退で終え代表監督を退任した。

◯ 巩俐(コン・リー)は言わずとしれた名優だ。
张艺谋(チャン・イーモウ)監督の初期代表作「紅いコーリャン(1988)」「紅夢(1991)」「秋菊の物語(1992)」で主演し、数々の映画賞を受賞。
陈凯歌(チェン・カイコー)監督の名作「さらば、わが愛/覇王別姫(1993)」「きれいなおかあさん(1999)」、さらにハリウッドでの章子怡(チャン・ツィイー)主演「SAYURI(2005)」にも出演した。
今年11月ようやく日本公開の、娄烨(ロウ・イエ)監督作品でオダギリジョーなども出演する「サタデー・フィクション(2019)」でも、女優でありながらスパイという役で主演している。

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中国女子バレー 奪冠 夺冠

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黄渤(ホアン・ボー)

◯ 2001~2009年まで代表ヘッドコーチを務めた陈忠和を演じた黄渤(ホアン・ボー)。郎平の選手時代からの友人でもある。

◯ 黄渤(ホアン・ボー)は現在中国でのトップ俳優のひとり。宁浩(ニン・ハオ)監督の「クレイジーストーン(2006)」がヒットしシリーズ化。シリーズ3作めの「疯狂的外星人(2019)」は「三体」で知られるSF作家・劉慈欣の原作である。
さらに徐铮(徐崢、シュー・ジェン)王宝强(ワン・バオチャン)と主演した「ロスト・イン・タイランド(2012)」も大ヒット。3人を一気にスターダムにのしあげた。
監督として「アイランド/一出好戯(2018)」を制作した他、スター勢ぞろいのシリーズ「愛しの母国(2019)」&「愛しの故郷(2020)」などにも出演している。
さらに今年は王一博(ワン・イーボー)主演のダンス映画「熱烈」、大型歴史もの「封神~嵐のキングダム~」、学歴社会に翻弄される父親を描いた「学爸」と一気に3本もの出演作が公開されている。
陈可辛(陳可辛、ピーター・チャン)監督の前作「最愛の子(2014)」でも主演している。

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彭昱畅(ポン・ユーチャン)

◯ 若かりし頃の陈忠和は彭昱畅(ポン・ユーチャン)が演じた。

◯ 彭昱畅(ポン・ユーチャン)は1994年生まれ。日本では「象は静かに座っている(2018)」での主演が知られているが、それ以外には兄弟あるあるが面白い映画「ヤンチャな兄 どっか行け(2018)」「閃光少女(2017)」、バスケがネタの青春映画「小小的愿望(2019)」、張学良を演じた「革命者(2021)」など。
ドラマでは中国版「テニスの王子様(2019)」「都挺好(2019)」「一点就到家(2020)」「风犬少年的天空(2020)」など。

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吴刚(ウー・ガン)

◯ 1976~1984年まで中国代表監督を務め、厳しい練習で郎平らを世界一に導いた袁偉民。

「铁人(2009)」「全家福(2013)」「人民的名义(2017)」「破氷行動(2019)」「慶余年(2019)」、そして今年の「狂飙(2023)」と数多くのドラマに主演/出演してきた。
映画では「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー(2017)」「スーパー・ミー(2019)」など。

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李现(リー・シエン)

◯ 体育総局員として李现(リー・シエン)が出演している。

◯ 1991年生まれ。ドラマ「ダイイング・アンサー(2016)」「河神(2017)」「Go!Go!シンデレラは片想い(2018)」などで人気になる。今年は「去有风的地方(2023)」に出演。
映画では「フライト・キャプテン(2019)」「アンティークゲーム(古董局中局、2021)」などに出演している。

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白浪(バイ・ラン)

◯ 選手時代の郎平を演じたのは白浪(バイ・ラン)。郎平の実娘である。

◯ 1992年アメリカ生まれで身長189cm。アメリカで大学在学中にバレーをやっていたが、現在は投資アナリストだそうである。

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女子バレー中国代表チーム

◯ 2016年リオ五輪当時の実際の出場メンバーである現役代表選手達が出演、泣くシーンを含む本格的な演技も見せている。

◯ 出演した代表選手たち:
朱婷徐云丽(徐雲麗)张常宁(張常寧)姚迪(姚笛)林莉刘晓彤(劉暁彤)颜妮惠若琪(恵若琪)丁霞袁心玥龚翔宇

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左から林莉、惠若琪、朱婷、袁心玥、龚翔宇、惠若琪

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◯ アメリカ代表には2008年北京オリンピック当時の代表メンバー・ローガン・トムが出演。

 

 

 

◯ 2016年リオ五輪シーンでのブラジル代表も、マリアーネ・ステインブレシェルジャケリネ・カルバリョパウラ・ペケーノら元ブラジル代表のトッププレイヤー達が出演している。3人とも北京五輪の際の代表であり、リオ五輪でも代表として出場したのはジャケリネ・カルバリョのみである。
なお、中国-ブラジル戦は実際には決勝トーナメント初戦であり、中国はブラジル戦に勝利の後、オランダ、セルビアに勝って金メダルを獲得している。

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日本代表チーム

◯ 名古屋での1981年ワールドカップ日本戦のシーンでは、全日本チームも登場。東レOGの元全日本メンバーが出演している。

◯ 彭昱畅(ポン・ユーチャン)が演じる若き日の陳忠和は、小柄で技巧派である全日本の江上由美と体格が似ているということで球出しコーチに選ばれた設定となっている。

 

◯ 当時の実際の試合でのメンバーは以下の通り。

1. 三屋裕子
2. 横山樹里
3. 水原理枝子
4. 佐藤裕子
5. 小川かず子
6. 若生美喜子
7. 江上由美
8. 広瀬美代子
9. 木下淑子
10. 西川美代子
11. 荻原則子
12. 杉山加代子

 

◯ 監督役は「超人バロム・1(1972)」で主人公を演じた高野浩幸である。

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東レOGの元全日本メンバー
中道瞳選手(小川かず子選手役)
和田麻里江選手 (三屋裕子選手役)
小平花織選手(広瀬美代子選手役)

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www.youtube.com 全球国家队球员《夺冠》/ Leap 集结 重演女排排坛巅峰对决(巩俐/黄渤/吴刚/彭昱畅/白浪)【预告片先知| Movie Trailer】

 

 

映画用楽曲

楽曲も豪華なメンバーによるものが提供されている。特に易烊千璽(イー・ヤンチェンシー)の曲は、この年流行したデュア・リパっぽい80年代"フューチャー・ノスタルジア"な感覚で、この時期にこのテイストは流行の最先端といえる早さの感がある。

 

王菲(フェイ・ウォン)那英 "生命之河"


www.youtube.com 王菲那英合体致敬女排 《夺冠》/ Leap 发布片尾曲《生命之河》(巩俐 / 黄渤 / 吴刚 / 彭昱畅 / 白浪 )【预告片先知| Movie Trailer】

 

易烊千璽(イー・ヤンチェンシー) "不分晝夜"


www.youtube.com 易烊千玺演唱《中国女排》推广曲《不分昼夜》(巩俐 / 黄渤 / 吴刚 / 彭昱畅 / 白浪 )【预告片先知|20200109】

 

 

 

 

 

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