【スタッフ & キャスト】
2021年 中国
監督: 徐展雄(シュー・ジャンシオン)
出演: 张颂文(チャン・ソンウェン)、李易峰(リー・イーフォン)、佟丽娅(トン・リーヤー)、成泰燊(チェン・タイシェン)、彭昱畅(ポン・ユーチャン)
【あらすじ】
中国共産党創設の主要メンバーのひとり、李大釗(り だいしょう、リー・ターチャオ)が1927年(昭和2年)に処刑されるまでを、中国共産党の発祥と共に自伝的に描く。
【感想】
映画の内容としてはゴリゴリの圧倒的な共産主義映画だが、全体で見ればシンプルな伝記映画だった。イデオロギー的なのを無視すれば往時の上海や中国の町並みがとてもリアルに感じ取れ、その空気感の描き方が素晴らしい。
主人公の李大釗がとにかく誰にでも優しく、ブレることなく目標を追求する、あまりにも理想的な人物像として描かれている。映画の進行に合わせて張作霖、蒋介石、陳独秀、毛沢東というそれぞれの歴史上の大物たちとの関わりを、割合シンプルに見せていきながら最後の処刑の場面へのカウントダウンと重ねていく。奇をてらったりドラマ性を過剰に演出したりせず、むしろ古典的な印象を持った。そのせいもあるのかやや退屈というか、登場人物の裏側を想像できずにストーリーをなぞる見方をしてしまうと各場面ごとの意味が薄く感じるのかもしれない。
ストーリーは共産党結党へと向かうのだが、事あるごとに前面に出てくるのは労働者が立ち上がるシーンだ。主人公がマルクス主義でもあるし当然だが、現代の観客がこれを見て違和感を抱かないのか不思議にもなる。もはや単純労働者ではなくなった現代都市の中国の人々は、こういう場面と自分たちをどう折り合いつけるんだろう。そんな事を考えながら映画を見ていた。
ただ、セットはとにかく素晴らしい。上海の租界エリアや北京を見下ろす美しい風景だけでなく、路地のシーンなどもとても現実味もあり、その場にいるかのような臨場感がすごい。昔の写真を現実化したかのようで、そういったディテールに惹かれて見るのが良いかもしれない。
【トピック】
○ 共産党結党100周年記念映画として7月1日に公開され、初週は同じ100周年記念映画「1921」に次ぐ興収2位を記録した。
○ 本作は2021年末の第34回中国金鶏奨で美術賞を受賞。他にも作品賞、脚本賞、音楽賞、編集賞の4部門でノミネートされた。
○ プロデューサーとして管虎(グェン・フー)が携わっている。「エイト・ハンドレッド -戦場の英雄たち-(2020)」や「金刚川(2020)」など歴史戦争もののヒットを量産している大監督で、本作も実質的に彼の主導による作品と言えるだろう。
○ 監督の徐展雄(シュー・ジャンシオン)は、本作が映画監督3作目となる。他にも編集や翻訳といった事もやっており、ジャッキー・チェンの「カンフー・ヨガ(2017)」にも編集スタッフとして参加していた。
张颂文(チャン・ソンウェン)
○ 主人公、李大釗を演じたのは张颂文(チャン・ソンウェン)。本作と同時期に公開された「1921」でも何叔衡役で出演している。ロウ・イエ監督作品の常連で「パリ、ただよう花(2011)」や「シャドウプレイ(2019)」、コロナ禍によって公開中止となっているが、同じロウ・イエ監督の日中独合作「サタデー・フィクション」にも出演。ドラマ「バッド・キッズ 隠秘之罪(2020)」で主人公の父親役で知られるようになった。その他ジャ・ジャンクー監督「不止不休(2020)」や「扫黑·决战(2021)」など多くの作品に主演格で出演している。
李易峰(リー・イーフォン)
○ 李大釗に師事する毛沢東役は李易峰(リー・イーフォン)。2007年のオーディション番組からデビューしたアイドルで、テニスの王子様の中国版ドラマ「加油,网球王子!(2009)」に初出演。「ロクさん(2015)」や「カイジ 動物世界(2018)」などでも主演している。
佟丽娅(トン・リーヤー)
○ 妻を演じた佟丽娅(トン・リーヤー)は、言わずとしれた美人女優。新疆ウイグル自治区出身で、ドラマ「クイーンズ 長安、後宮の乱(2008)」で人気に火がつき、大ヒットドラマ「宮 パレス 〜時をかける宮女〜(2010)」でその人気を不動のものとした。現在「唐人街探偵」シリーズで知られる陈思诚(チェン・スーチェン)が監督/脚本/主演をしたドラマ「北京爱情故事(2012)」で陈思诚(チェン・スーチェン)と知り合い結婚した(今年5月に離婚発表)。最近は「唐人街探偵」などの夫が関わる作品に出演することが多かったが「ルームシェア~時を超えて君と~(2018)」はおもしろかった。
成泰燊(チェン・タイシェン)
○ 張作霖役の成泰燊(チェン・タイシェン)の主な出演作は、ジャ・ジャンクー監督の「世界(2004)」や「我らが愛にゆれる時(2008)」、中国版「ナミヤ雑貨店の奇蹟(2017)」、「容疑者Xの献身(2017)」、ドラマ「琅琊榜<弐>~風雲来る長林軍~(2017)」など。
彭昱畅(ポン・ユーチャン)
○ 張作霖の息子、張学良を演じたのは彭昱畅(ポン・ユーチャン)。若手俳優でもトップクラスの演技派で、詳しくは「小小的愿望(2019)」の項を参照。その後も「中国女子バレー 奪冠(2020)」や「沐浴之王(2020)」などの人気作にも続々出演している。