中国映画レビュー「アウトブレイク ~武漢奇跡の物語~ 中国医生 Chinese Doctors」

中国医生 Chinese Doctors

 

 

中国医生 


www.youtube.com 感谢你,为我们拼过命!《中国医生》电影预告合集 上映日期2021年7月9日( 张涵予 / 袁泉 / 朱亚文 / 李晨 / 易烊千玺 )|觅电-中国将映电影预告

 

【スタッフ & キャスト】

2021年 中国
監督: 刘伟强(劉偉強 アンドリュー・ラウ)
出演: 张涵予(ジャン・ハンユー)袁泉(ユエン・チュエン)朱亚文(ジュ・ヤーウェン)李晨(リー・チェン)易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)欧豪(オー・ハオ)周也(ジョウ・イエ)

 

 

 

【ストーリー】

2019年末から20年初頭、新型コロナ発生から感染急拡大へと至る中、医療スタッフたちの懸命の奮闘を、武漢にある当時最も多くの患者に対応した武漢市金銀潭病院を舞台に描く。

 

 

 

【感想】

おそらく世界初の新型コロナを扱った大規模映画だが、1年半前のあの頃を振り返るのに十分以上のクオリティを持つ、概ね冷静な視点で描かれた医療映画だった。本当に見て良かった。
監督の前作「フライト・キャプテン」も、"中国推し"的テーマなのに冷静でいい出来だったので期待していたが、期待に違わぬ抑えた演出で、この歴史的な難行を感情的になりすぎないギリギリでエンタメ映画として作っていると感じた。
歴史的な難行と書いたが、やっぱり新型コロナというテーマを今扱うのはどうやっても極めて難しい。中国以外はもとより、中国国内でも今も感染者が出続けている。まして発生源や初動対応のまずさなど今後も国際問題化する懸念が消えない。監督として、制作会社や政府、結党100周年というタイミングなど、作れという圧力も大きく、一方で間違った時のリスクも極めて大きい仕事だったと想像する。
そういった圧力の中で監督が採った方向性は、エモーショナルにならずにエピソードを冷静に積み重ねて、医療ドラマとしてしっかり作る事だったのだろう。見ていてとても自然に最後まで見ることができた。
描かれた昨年初めの頃は、病気の仕組みもまだ不明瞭、治療方法自体も見つかっていない状況だった。先行例もなく手探りのまま現場が奮闘していたのは間違いなく、映画はその奮闘する様子を丹念に見せていく。ただ、その様子も挿管シーンだったり手術ではない程度のシーンで、「ブラックペアン」「コード・ブルー」「TOKYO MER」のような日本の医療ドラマより陳腐な技術や混乱しているシーンを、あえて抑えめの演出で見せている。それにも関わらずはるかに緊迫して見えてくるのは、その緊迫の理由がまさに自分たちが実際に感じていた未知の病気への恐怖そのものだからだ。何もわからない手探り状態になるとここまで能力が削られるのか、と。しかし、結果的に武漢の場合はわずか4ヶ月後には事態が収束するというゴールに到達できた。だからこそ映画的なカタルシスを作り出せたのだが、当時の中国の医療スタッフにもその喜びや安堵は全く同じ気持ちであっただろう。逆に日本の医療関係者の方々が、延々と今に至ってもまだ大変な苦労をされている、その辛さたるや…という思いが湧いてくる。
この作品は、当然だが出演者のほぼ全員がマスクを着けている。考えてみると、日本に限らず世界中でここまでマスクを徹底して演技した作品も無いんじゃないだろうか。個人的には、コロナ禍以降の古今東西のどんな作品を見てもいつも感じていた小さな違和感はこのマスク問題で、本作品を見て初めてその違和感を感じること無く最後まで見終えた。これが正解だと言うつもりは無いが、事実ではある。
映画のテーマは確かに"中国推し"である。見た後も確かに「中国ってすごいなあ」と感じる。ただ、映画に描かれた部分については、真摯に努力した結果であるように見えるし、映画内でもそこを事さらに強調したようには見えなかった。現場の奮闘は、どこの国であれ評価されるべきである、という程度には評価してもいいんじゃないかと思った。ただ、本作が今後日本で公開されるとは…ちょっと考えにくいかな、残念ながら。

 

 

【トピック】

「1921」「革命者」などと同じく共産党結党100周年記念映画として2021年7月9日に(献映)公開された。「怒火·重案」の公開でトップを奪われるまで、初週から3週連続興収ランキング1位を維持。9月末時点での興行収入は13億元(220億円)に達した。

○ 撮影は上海から内陸に入った江蘇省にある无锡(無錫)影都のほか、武漢、上海、広州で行われた。无锡影都のセットには病院としての設備、機能をすべて整え、医療スタッフも参加して撮影した。準備からクランクアップまで8ヶ月を要した。

「フライト・キャプテン(中国机长、2019)」と同じ監督・スタッフ・主演によるシリーズものの2作目となる。監督の刘伟强(劉偉強 アンドリュー・ラウ)についてもそちらの記事内で記した。

武漢市金銀潭病院は2016年に設立された感染症対策の最重要拠点である。コロナが広がってからは肺炎治療専門となり多くの重症患者を受け入れてきた。蔓延初期の2020年2月には院長が朝日新聞の取材も受けている。

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○ 病院院長を演じた张涵予(チャン・ハンユー)、ICUの主任役の袁泉(ユエン・チュアン)、Uberドライバー役の欧豪(オウ・ハオ)という主演3人も同じく前作「フライト・キャプテン(2019)」からの続投である。彼らについても同記事で記している。

○ 広州から応援に来た医師役の朱亚文(ジュ・ヤーウェン)は、「建国大業(2009)」や中国版「見えない目撃者(2015)」で知られるようになる。ドラマ「大明皇妃(2019)」でも主役を務めた。昨年9月から放映した同じくコロナを扱ったドラマ「在一起」にも出演していた。

○ 上海からの応援でやってきた医師役は李晨(リー・チェン)は、「唐人街探偵」シリーズで知られる陈思诚(チェン・スーチェン)が監督/脚本/主演をしたドラマ「北京爱情故事(2012)」で知られるようになる。韓国のバラエティ番組「ランニングマン」の中国版「奔跑吧兄弟」に出演。范冰冰(ファン・ビンビン)と婚約までしていたが2019年に別れている。本作と同時期に公開された「1921」にも出演している。

○ 自らもコロナに感染する新人医師を演じたのは易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)。TFBOYSのメンバーとして長年活動してきたが、映画出演を始めた途端に高い演技力、良質な作品選びで急速に評価を高めた。映画初出演の「少年の君(2019)」、前回出演作「送你一朵小红花(2020)」、どちらも素晴らしかった。

○ 妊娠中にコロナに感染してしまう妻役は周也(ジョウ・イエ)が友情出演として演じた。彼女は「少年の君(2019)」でのいじめっ子役ではじめて知られるようになった。時代劇ドラマ「山河令(2021)」にも主役級で出演している。

○ 多くの有名俳優が出演している。友情出演も多い。前作「フライト・キャプテン(2019)」に出演していた俳優もいる。麻酔科の女医:冯文娟(フェン・ウェンジェン)、産婦人科の女医:宋佳(ソン・ジア)、医師:耿乐、帰りたいという看護師を叱る医療スタッフ:梁大维、他にも医療スタッフで余皑磊(ユー・アイレイ)印小天 / 周笔畅 / 释小龙 / 小爱、看護師で雅玫杨祺如 / 李沁(リー・チン) / 张天爱(チャン・ティエンアイ)、政府の対策本部次官:梅婷 / 王挺 / 张颂文(ジャン・ソンウェン)、研究所の女性:张嘉倪、张涵予(チャン・ハンユー)院長の妻:倪虹洁、両親をコロナで亡くした娘:张子枫(チャン・ズーフォン)、李晨(リー・チェン)の妻:佟丽娅(トン・リーヤー) / 父親:刘威 / 母親:刘佳(リウ・ジャ) 、患者:刘琳、ICU主任袁泉(ユエン・チュアン)宅の近所の店主でコロナ患者となった男:来喜、欧豪(オウ・ハオ)に食品等を配達してもらった女性:俞飞鸿、コロナ研究のための病理解剖を説得された遺族:谷嘉诚、易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)に感染させてしまう女性役:黄璐(ホァン・ルー)など。

 

 

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2021東京・中国映画週間で上映決定。

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