中国映画レビュー「星明かりを見上げれば 人生大事 Lighting Up the Stars」

星明かりを見上げれば 人生大事 Lighting Up the Stars

 

 

人生大事


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【スタッフ & キャスト】

2022年 中国
監督: 刘江江(リウ・ジアンジアン)
出演: 朱一龙(チュー・イーロン)杨恩又(ヤン・エンヨウ)王戈(ワン・ゴー)刘陆(リウ・ルー)罗京民(ルオ・ジンミン)吴倩(ウー・チェン)李春嫒(リー・チュンアイ)

 

 

【ストーリー】

仲間2人と納棺業「上天堂」を営む莫三妹【モー・サンメイ】(朱一龙)は、自堕落に暮らしているうちに父親には疎まれ、彼女には浮気の上で逃げられるという行き場のない人生だった。だが、ある老婆の死に立ち会った事から行き場のない少女、武小文【ウー・シャオウェン】(杨恩又)を預かることになってしまう。少女もまた両親と祖母に先立たれ、叔母に疎まれている上に、性格もまた扱い難かったのだが、何故か少女に気に入られてしまい…

 

【感想】

心温まる素敵な映画だった。映画の進行につれて登場人物の印象がどんどん温かいものに変わっていき、何度も落涙させられる。見終わった後すっきりと「良いものを見た」と思わせてくれた、大変良質な作品であった。

なんといっても朱一龙(チュー・イーロン)の素晴らしい仕事に尽きる。今までの清廉で穏やかなイメージを一新する、坊主頭に柄シャツ、半ズボンという風貌で常にガムやら煙草やらを口にしたガラの悪い佇まい。癖の強い武漢方言。しかし確かな演技で少女との心の通い合いがじわじわと伝わってくる。

一方で小文(シャオウェン)のキャラの見せ方もまたとっても良い。最初はエキセントリックで睨み顔ばかり。何をしでかすかわからない、いかにも面倒な子供に見える。でも、お婆ちゃんへの一途な思いから少しずつ本当の気持ちが見えてきて、僕らもまた小文(シャオウェン)と心を通わせた気になってしまうのだ。時々、本当に時々この子が笑顔を見せたとき、僕らも本当に嬉しくなってしまう。巷間言われる「子役の扱いが上手い監督は良い監督」の片鱗を感じてしまう。

ストーリーは様々なトラブルが起こるのだが、全てが綺麗に繋がっていて無駄な部分が無い。影の部分も見せながら、実は誰も悪人ではない。すべての登場人物が、皆何かしらを失っている。映画冒頭は、何もかもが上手くいっておらず、良いことなど起こる気がしない。

随所に納棺師の仕事のシーンを挟み込みながら、この仕事とは様々な死に様の体を修復し、皆いっぱしの姿へと整える事なのだと見せていく。それを見ながら僕らは、ああ、登場人物たちは納棺師さながらに自分たちの関係を修復していっているのだと理解するのだ。

本作のような、"心に傷を持った大人が子供のお陰で己を取り戻す"というストーリーは今までにもあり、最近の中国映画だけでも张子枫(チャン・ズーフォン)主演の「シスター 夏のわかれ道 我的姐姐(2021)」や「選ばれざる路(2018)」などがあるが、どれも良質の映画になっている。ぜひ見れるならばそちらもあわせて見てほしいと思わせる、新しい良質な映画であった。

余談だが、エンディングでのメイキングシーンがまた素敵だ。ああ、楽しそうに撮影してくれていて本当に良かったとグッとくる。

 

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【トピック】

○ 2022年6月24日に公開され、翌週から興収ランキング1位を3週連続でキープし、香港映画「神探大戦」(今秋の東京国際映画祭にて部門上映)に1位の座を譲った。9月24日からNetflixにて配信開始。

○ 監督の刘江江(リウ・ジアンジアン)は、河北省の制作会社で脚本やディレクターをしており、本作が映画初監督作品となる。2019年に平遥国際映画祭での新人発掘の投資プロジェクトで華北の葬儀文化を基にした「上天堂」という作品で選考に残り、これが本作へと発展した(上天堂は本作で主人公の葬儀屋の名前になっている)。

○ 新人監督をサポートするプロデューサーとして、本作同様にNetflix配信となった「カイジ 動物世界(2018)」や、易烊千玺(イー・ヤンチェンシー) 主演の「送你一朵小红花(2021)」を監督して中国金鶏奨監督賞にノミネートされた韩延(ハン・イェン)が就いている。

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○ 2022年11月の第35回中国金鶏奨で主演男優賞、新人監督賞の2部門を受賞、他7部門でのノミネートと、全作品中2位のノミネート数を記録した。

 

○ 主人公、莫三妹【モー・サンメイ】の朱一龙(チュー・イーロン)。美麗な好青年からこの役まで非常に幅広い演技を見せる。本作の舞台である武漢出身。
映画では「クラウディ・マウンテン 峰爆(2022)」やコロナ禍を描いた「穿过寒冬拥抱你(2021)」、ドラマではスパイもの「叛逆者(2021)」や古装劇「明蘭~才媛の春~(2018)」などで知られる。

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星明かりを見上げれば

 

○ 武小文【ウー・シャオウェン】役の杨恩又(ヤン・エンヨウ)は、2013年成都生まれなので執筆時点で8歳。お葬式に乱入して莫三妹に怒られるシーンの撮影後に泣いているメイキングシーンが公開されており、頑張っていた様子がわかる。

なお前半でずっと杖を持ち歩いているのは、道教の闘神、哪吒(ナタ)の真似をしているから。中華系作品やゲーム等で登場する哪吒太子やナタクも同じである。

星明かりを見上げれば星明かりを見上げれば

 

○ 仕事のパートナー、王建仁【ワン・ジエンレン】役は王戈(ワン・ゴー)。本作をプロデュースした韩延(ハン・イェン)監督の「カイジ 動物世界(2018)」や、朱一龙が主演した「クラウディ・マウンテン 峰爆(2022)」など、同じ人脈か?という出演歴を持つ。他にも「銀河学習塾(2019)」やアンディ・ラウ主演の「人潮汹湧(2021)」など。

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星明かりを見上げれば

 

○ 同じく仕事のパートナーである银白雪【イン・バイシュエ】は刘陆(リウ・ルー)が演じた。ドラマ「伪装者(2015)」や映画「スーパー・ミー(2021)」などにも出演しているが、なんといっても贾樟柯(ジャ・ジャンクー)監督「山河ノスタルジア(2015)」への出演がよく知られている。主人公女性の昔の恋人の妻役を演じるなど、合計3本の監督作品へ出演している。

星明かりを見上げれば

 

○ 主人公の父親老莫【ラオモー】役は罗京民(ルオ・ジンミン)。

星明かりを見上げれば

 

○ 莫三妹の元彼女、熙熙【シーシー】役は吴倩(ウー・チェン)。古装劇のドラマ「擇天記 〜宿命の美少年〜(2017)」「如懿伝 〜紫禁城に散る宿命の王妃〜(2018)」や現代ドラマ「私の妖怪彼氏(2016)」などで知られている。彼女も武漢出身である。

星明かりを見上げれば

 

 

○ 後半に登場する海菲【ハイ・フェイ】役は、李春嫒(リー・チュンアイ)。ドラマ「三国志〜趙雲伝〜(2015)」などで知られるが、韩寒(ハン・ハン)監督の映画2作「乗風破浪〜あの頃のあなたを今想う(2017)」「ペガサス/飛馳人生(2019)」にも出演していた。

星明かりを見上げれば

 

 

○ エンディング曲は主演の二人がデュエットする「種星星的人」。素敵な歌である。


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