中国映画レビュー「この夏の先には 盛夏未来 Upcoming Summer」

この夏の先には 盛夏未来 Upcoming Summer

 

 

盛夏未来 この夏の先には


www.youtube.com 《盛夏未来》/ Upcoming Summer 终极预告(张子枫 / 吴磊 / 郝蕾)

 

【スタッフ & キャスト】

2021年 中国
監督: 陈正道(レスト・チェン)
出演: 张子枫(チャン・ズーフォン、チャン・ツイフォン)吴磊(ウー・レイ)郝蕾(ハオ・レイ)祖峰(ズウ・フォン)柳小海(リュウ・シャオハイ)

 

【ストーリー】

高校3年のチェン・チェン(陈辰)は、大学入試の直前に母親の浮気を知ってしまったショックで留年することになる。母親に理由を問い詰められ、思いつきで話したのは同学年のイケメン、ジョン・ユーシン(郑宇星)との恋愛だったのだが、悪いことに彼も留年し同級生となってしまう。まったく話したこともなかった二人はしかし、そこからお互いの心の奥を共有し合うようになり…

 

【感想】

サラっと見れる良質な若者映画だった。

美しい画面、テンポの良い手堅い作りで最後まで楽しめる。だが、日本以上に厳しい受験の雰囲気も垣間見せ、そこからこぼれ落ちる若者たちの、日々揺れ動く感覚を真ん中に据えて描いており、あの頃自分が感じていた持って行き場のない不安定さをしっかりと見せてくれる。日々のやり取りの中での、好きじゃなかったのに好意を持ってしまったり、軽薄に振る舞っているのに真剣な思いが湧き出てきたり、思わず身悶えするような感覚を鑑賞中に何度も思い出させてくれる。両親の描き方がまたいい。前半の、親の残酷な程の利己主義を見せつけながらも、まさに浮気相手と会うその瞬間にふと垣間見せる純粋な気持ち。純粋でありたいと思う若者との鮮やかな対比が印象的だった。

個人的には张子枫(チャン・ズーフォン)の演技に見入ってしまった。今年はいろんな映画で彼女を見るが、今作ではまたどの映画とも違う瑞々しさを出していて驚かされる。特に「我的姐姐」の演技との対比で、彼女の底力を見せつけられた印象だ。

 

【トピック】

○ 日本では10月3日からネットフリックスで公開されている。

○ 2021年7月30日に公開されたが、「レイジング・ファイア(怒火·重案)」の大ヒットに1位は阻まれるも、3週間2位をキープするヒット作となった。

○ 監督の陈正道(レスト・チェン)は台湾人。今作は自身の「花蓮の夏(盛夏光年、2006)」以来二作目の青春映画だ。サスペンスものが多く、ドラマ「摩天楼のモンタージュ~Horizon Tower~(摩天大楼)」や张子枫(チャン・ズーフォン)も出演している「秘密访客(2021)」など。「荞麦疯长(2021)」ではプロデューサーとして関わっている。

○ 主演二人の张子枫(チャン・ズーフォン)、吴磊(ウー・レイ)のコンビによる出演は、映画「モフれる愛(宠爱、2019)」以来の2度めの共演である。

○ 主演のチェン・チェン(陈辰)を演じる 张子枫(チャン・ズーフォン)は昨年から今年が大ブレイクの時期となった感がある。主演の「我的姐姐」では陰影のある素晴らしい演技を見せ、同監督の「再见,少年」も8月に公開された。「秘密访客」にも主演し、「唐人街探偵 東京MISSION(2020)」「アウトブレイク ~武漢奇跡の物語~ 中国医生」でもそれぞれ短いが重要な役で出演している。さらに詳しくは「我的姐姐」の項を参照。

○ 相手役のDJ XYZことジョン・ユーシン(郑宇星)役を演じる吴磊(ウー・レイ)は、3歳の頃から子役でも活動していた俳優だ。ドラマ「ときめき♡旋風ガール(旋风少女、2015)」「琅琊榜 ~麒麟の才子、風雲起こす~(琅琊榜、2015)」などに出演し、「蒼穹の剣(斗破苍穹、2017)」では主演。2019年にはフォーブスの中国著名人100人の中にも名を連ねた。今年は時代劇ドラマ「长歌行」でも主演、9月に北京映画学院を卒業している。

○ チェン・チェンの母親役を演じた郝蕾(ハオ・レイ)、どこかで見たなあと考えていたが、あの名作「最愛の子(亲爱的、2014)」に母親役で出演していたのであった。中国版「ナミヤ雑貨店の奇蹟 -再生-(解忧杂货店、2017)」にも出演している。

○ 母親の新しい相手を演じるのは祖峰(ズウ・フォン)。先ごろ公開の映画「1921」にも董必武役で出演している。詳しくはそちらの項を参照。

○ 劇中で主役の二人が歌うのは2006年の監督作「花蓮の夏(盛夏光年)」の主題歌である。