【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
www.youtube.com 《#学爸》曝终极预告 黄渤闫妮张钧甯为孩子全力以赴【预告片先知 | Official Movie Trailer】
【スタッフ & キャスト】
2023年 中国 118分
監督: 苏亮（スウ・リャン）
出演: 黄渤（ホァン・ボー）、单禹豪（シャン・ユイハオ）、闫妮（イェン・ニー）、张钧甯（張鈞甯、チャン・チュンニン）、张子贤（ジャン・ズーシェン） 、万茜（ワン・シュン）
【ストーリー】
スパ（銭湯）を経営している雷大力【黄渤（ホァン・ボー）】の一人息子、小米【单禹豪（シャン・ユイハオ）】が小学校に入る年齢になってきた。ところがいざ学校について調べてみると、どうやら多くの家庭は良い学校に入れるために大変な努力をしているようだ。
同じく娘のために奮闘している弟夫婦、知り合ったシングルマザーの刘真真【闫妮（イェン・ニー）】たちからアドバイスを受け、いざお受験戦争に立ち向かうのだが…
【感想】
今の中国のお受験事情がよくわかる、昔の邦画でもよく見た感じの現代社会事情コメディ。お気楽に見れるがテンポも良いので最後まで楽しめる。
見る前から、海报（ポスター）での黄渤（ホァン・ボー）のはしゃいだ顔でイメージは掴めるし、実際観てみての印象もこの通りだ。6億元の興行成績はかなりのヒットと言えるので、出演者たちの人気もさる事ながら、このお受験トピックが今の観客には刺さったのだと想像される。
本作のような現代のライフスタイルをコメディ仕立てで紹介するストーリーは、日本でも昔からある。つまり、黄渤（ホァン・ボー）演じるシングルファーザーの雷大力が、何も知らないところから受験について学んでいき、その過程をドタバタコメディで笑いつつ観客も一緒になぞって知っていけるという形式だ。
例えば山口智子主演のまさにお受験についてのドラマ「SWEET HOME（1994）」等をはじめ、ドラマでは今もたくさんあるし、それ以外でも「お葬式（1984）」などの伊丹十三作品群や、「就職戦線異状なし（1991）」的なバブル期に作られたコメディなんかも彷彿とさせる。最近はこういうスタイルの上に更に捻りを加えて複雑さを足すのがむしろ普通だが、今作はシンプル&ど直球にエンディングまで行く。純粋とすら言えるくらい王道まっしぐらな作り方だ。そういう意味でちょっと懐かしい、昔の邦画/邦ドラマっぽいテイストを感じた。
彼をはじめ、弟夫婦たちも皆七転八倒して何とか良い学校に入れようとし、時にはしんみりホロリとする場面もあり、それでも最後には政府の対応を紹介する事で、この件を「現代社会の問題点」とか言うつもりは無いですよ、とエクスキューズしておいて無事大団円となる。
今回の黄渤（ホァン・ボー）は、「クレイジーストーン（2006）」や「封神 嵐のキングダム（2023）」、「疯狂的外星人（2019）」でやっていたようなコメディタイプの方の演技で、安定感もあるし何も言う事はない。安心して見ていられる。
なによりも周りの役者陣の力量が際立っていた。子役の单禹豪（シャン・ユイハオ）も素晴らしい演技力だし、いっぽうで弟役の张子贤（ジャン・ズーシェン）も佇まいから醸し出す頼りなさが非常に上手くて、彼のイメージとはかけ離れているのに良い意味で抜けた存在感が最高だ。
義妹の张钧甯（張鈞甯、チャン・チュンニン）も多くはない出演シーンだがぴったりハマっていて、彼女より更にチョイ役で吴磊（ウー・レイ、レオ・ウー）が出てきたりと、細かいところにも配慮の行き届いたキャスティングであった。
特筆すべきは万茜（ワン・シュン） だ。本作は四川訛りで話されている感じなのだが、それも含めて母親として激昂する場面、かたや疲れ切って肩を落とす場面、どれも活き活きと素晴らしい存在感があって忘れられない。彼女は間違いなく更に成功するであろう実力者だ。
といった感じで、肩肘張らずに見ることができるすっきり作られた小品という感じの映画であった。計4組の親子が登場するのだが、両親ともに生活しているか、きちんと登場する家族はわずか一組だけになっている。これはちょっと意外というか、ある種の配慮に好感が持てる設定であった。
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【トピック】
◯ 当初2022年7月8日に公開予定だったが新型コロナにより延期となり、1年後の夏休み後半にあたる2023年8月18日に公開。公開初週は大ヒット作「孤注一掷」&「封神 嵐のキングダム」に次ぐ3位を獲得。翌週は2位に上がるなど健闘して、最終的な興行収入は6.1億元（124.5億円）を記録してヒット作となった。
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◯ 2023年中国金鶏奨では黄渤（ホァン・ボー）と万茜（ワン・シュン） がそれぞれ主演男優/助演女優賞にノミネートされている。
◯ 本作は主演の黄渤（ホァン・ボー）が宁浩（ニン・ハオ）監督と共に立ち上げた「『HB+U』新鋭監督支援プロジェクト」の作品である。第一弾は黄渤（ホァン・ボー）主演・宁浩（ニン・ハオ）監督作で多く脚本を手がけてきた董润年（ドン・ルンニエン）が初監督した「被光抓走的人（2019）」である。
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◯ 監督の苏亮（スウ・リャン）は、主に脚本家として「港囧（2015）」や「モンスター・ハント 王の末裔（2018）」などに参加（出演もしている）、監督としても短編などは手掛けているが大型商業作品は今作が初監督だ。
その他のスタッフや俳優も「港囧（2015）」や「薬の神じゃない!（2018）」からの人脈が垣間見える。
黄渤（ホァン・ボー）
◯ 主人公でシングルファーザー、スパ（銭湯）を経営している雷大力。
◯ 黄渤（ホアン・ボー）は現在中国でのトップ俳優のひとり。
宁浩（ニン・ハオ）監督の「クレイジーストーン（2006）」がヒットしシリーズ化。シリーズ3作めの「疯狂的外星人（2019）」は「三体」で知られるSF作家・劉慈欣の原作である。
さらに徐铮（徐崢、シュー・ジェン）、王宝强（ワン・バオチャン）と主演した「ロスト・イン・タイランド（2012）」も大ヒット。3人を一気にスターダムにのしあげた。
監督として「アイランド／一出好戯（2018）」を制作した他、陈可辛（陳可辛、ピーター・チャン）監督の良作2作品「最愛の子（2014）」&「中国女子バレー 奪冠（2020）」でも主演、スター勢ぞろいのシリーズ「愛しの母国（2019）」&「愛しの故郷（2020）」などにも出演している。
さらに今年は、本作に加えて王一博（ワン・イーボー）主演のダンス映画「熱烈」、大型歴史もの「封神～嵐のキングダム～」と一気に3本もの出演作が公開されている。
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单禹豪（シャン・ユイハオ）
◯ 息子・雷小米役を演じた单禹豪（シャン・ユイハオ）
◯ 2015年生まれなので現在8歳。2018年の陈学冬（チーニー・チェン）、黄景瑜（ホアン・ジンユー）が子供たちと遊ぶバラエティ番組「放开我北鼻」シーズン3でテレビ初出演し人気になる。宋佳（ソン・ジア）、佟大为（トン・ダーウェイ）らが主演のドラマ「小舍得（2021）」に出演している。
万茜（ワン・シュン）
◯ 弟・火哥の妻、火嫂を演じた万茜（ワン・シュン）
◯ 台湾映画「軍中楽園（2014）」などに出演の後、饶晓志（ラオ・シャオジー）監督の常連になり、初監督作「你好，疯子！（2016）」から、劉徳華（アンディ・ラウ）主演の第3作「人潮汹涌（2021）」、そして昨年公開したリビアから自国民を脱出させる外交官を描いた大ヒット第4作「万里归途（2022）」に出演している。胡歌（フー・ゴー）&桂纶镁（グイ・ルンメイ）のノワール・サスペンス「鵞鳥湖の夜（2019）」にも出演。30歳以上の女性たちによるオーディション番組「乘风破浪的姐姐（2020）」ではX-Sisterというグループに選ばれた。
現在公開中の「兎たちの暴走（2020）」でも主演している。
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张子贤（ジャン・ズーシェン）
◯ 弟・火哥役は张子贤（ジャン・ズーシェン）
◯ 夫婦役の万茜（ワン・シュン）と同じく大ヒット作「万里归途（2022）」に、共演ではないが重要な役で出演している。それと同時期公開の冯绍峰（ウィリアム・フォン）、黄晓明（ホアン・シャオミン）らが主演の「平凡英雄」にも出演。
主な出演作はドラマ「受益人（2019）」や「大赢家（2020）」、「平凡的荣耀（2020）」などだが、冯绍峰（ウィリアム・フォン）が主演の映画「二代妖精之今生有幸（2017）」にも出演している。
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闫妮（イェン・ニー）
◯ シングルマザーで同じく小学校受験を控えた刘真真は闫妮（イェン・ニー）
◯ 闫妮（ヤン・ニー）は邓超（ダン・チャオ）夫妻が主演の「チャイニーズ・フェアリー・ストーリー (2011)」に出演し、その縁で「愛しの故郷（2020）」《回乡之路 / 故郷への旅》編でも共演している。
その他、曹保平監督「追凶者也 (2016)」、肖央主演のオフィスコメディ「ウーマン・イン・レッド (2016)」、「閃光少女（2017）」などに出演。今夏に公開された黄晓明（ホアン・シャオミン）主演の「最后的真相」で現在、中国金鶏奨主演女優賞にノミネートされている。
ドラマでは「一仆二主（2014）」、「生活启示录（2014）」、「少年派（2019）」シリーズ、「装台（2020）」などが知られている。
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张钧甯（張鈞甯、チャン・チュンニン）
◯ 妻の妹、高亚琳を演じた张钧甯（張鈞甯、チャン・チュンニン）
◯ ドラマでは「武則天（2014）」、「三国志（2017）」、「海上牧雲記（2017）」、「如懿伝（2018）」などで人気になる。他には台湾版「ハチミツとクローバー（2008）」、ドラマ版の「唐人街探偵（2020）」などにも出演。
映画では香川照之主演の「闘茶 tea fight（2008）」、倍賞千恵子主演の日中合作映画「東京に来たばかり（2012）」、「ハーバー・クライシス（2014）」などに出演している。
王迅（ワン・シュン）
◯ 仕事の知り合いである陆总
◯ 最近はより一層出演作が増えつつある演技派俳優。一癖あるワルそうな役が多く、「唐人街探偵 NEW YORK MISSION（2018）」や、「ビッグ・ショット（2019）」、「愛しの故郷（2020）」、そして昨年秋の大ヒット映画「万里归途（2022）」、「保你平安（2023）」にも出演。現在中国映画週間で公開されている王宝强（ワン・バオチャン）監督・主演の「ネバーギブアップ（2023）」にも出演。
人気バラエティ番組「极限挑战」のシーズン7と8でも様々な体験をしている。
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吴磊（ウー・レイ、レオ・ウー）
◯ 学区内の物件を探す不動産会社の社員・小王
◯ 3歳の頃から子役でも活動していた俳優だ。ドラマ「琅琊榜（2015）」に出演し、その後「蒼穹の剣（2018）」、「覇剣（2020）」、「クロスファイア（2020）」、「長歌行（2021）」、「星漢燦爛（2022）」と多くの人気ドラマで主演を務める。2019年にはフォーブスの中国著名人100人の中にも名を連ねた。
映画では张子枫（チャン・ズーフォン）と「モフれる愛（2019）」、「この夏の先には（2021）」の2作で共演している。「父に捧ぐ物語（2021）」《乘风》編では吴京（ウー・ジン）と共演、今月開催されている東京国際映画祭で上映された「耳をかたむけて」でも主演し、挨拶のために来日した。
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