最近見た中国映画(2019年5月)

 

“大”人物 Big Match

“大”人物 Big Match

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电影预告片 Movie trailer 大人物 中国版老手 / Big Match / Mr. Big / The Hot Head / The Big Shot

 

2019年 中国
監督: 五百(ウーバイ)
出演: 王千源(ワン・チェンユエン)包贝尔(バオ・ベイアル)王迅(ワン・シュン)王砚辉(ワン・イェンホイ)屈菁菁(ツー・ジンジン)

下戸で人情味のある刑事が、ある地上げ事件による自殺に関わるところから土地開発企業社長の息子による横暴に気づく。単なる自殺と思われた事件は意外な展開を見せていく…

シリーズ化できそうな、バランス感のある映画だった。適度な笑いあり、アクションあり、涙あり、社会的なメッセージもあり、またこの主人公に別の事件を解決してもらいたい。全体に丁寧で熱意を持って作られているのが伝わる。アクションの派手さや悪役の酷さを見せる演出など、エグいけれど新しい見せ方をひとつひとつ提示していて想定外の新鮮さであった。特に、包贝尔(バオ・ベイアル)のドラ息子がジムのトレーナーに行う鬱憤晴らしや、被害者の息子への脅しなど、思わず「ウッ」と思わせられる。だが主人公は良い意味で軽く、飄々としたキャラで親しみやすい。悪役のドラ息子と初対面するパーティー会場での、酒が飲めないという演出は「中国人もやはりこれを嫌う面もあるのか」と、さり気なく印象に残った。わざとらしい演出が中国映画を好きになれないポイントだとしたら、中国映画界が次のフェーズへと移行するターニングポイントかもしれないと思う、それくらい質の高いエンターテイメント映画だった。

実話をベースにしたストーリーの刑事モノ映画。2015年の韓国映画「ベテラン」の翻案でもある。監督の五百(ウーバイ)は映画だけでなくウェブドラマなどにも多く携わってきた。
主人公の王千源(ワン・チェンユエン)は最近どんどん知名度を上げつつある。刑事モノの主役として今最も相応しい俳優なのではないだろうか。最近では「龙虾刑警 Lobster Cop」「破・局 Peace Breaker」などか。
素晴らしい演技だった包贝尔(バオ・ベイアル)はつい先日初監督作品「胖子行动队 (胖子行動隊) Fat Buddies」も発表して成長している。
汚れ仕事も引き受ける悪役の右腕の王迅(ワン・シュン)は、数々の主演経験もある実力派だが主に黄渤(ホァン・ボー)のスタジオに加盟した2012年以降は関連作に多数出演している。主な作品は「港囧 ロスト・イン香港」「唐人街探案2」「一出好戏 The Island アイランド/一出好戯」など、ヒット作が多数だ。
刑事の上司である王砚辉(ワン・イェンホイ)は2015「烈日灼心」2015「恶棍天使」など邓超(ダン・チャオ)との作品が多い。昨年のヒット作「我不是药神 Dying to Survive ニセ薬じゃない!私は薬の神ではない」にも出演していた。
同じチームの後輩役である屈菁菁(ツー・ジンジン)はこの春節最大のヒット作「流浪地球 The Wandering Earth 流転の地球」でも女性戦士役を演じていた。

ベテラン(字幕版)
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大路朝天 The Connection

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2018年 中国
監督: 苗月(ミャオ・ユエ)
出演: 李保田(リー・バオティエン)、陈瑾(チェン・ジン)、巴登西绕张政勇(ジャン・ジェンヨン)孙敏(スン・ミン)

中国改革開放実施40年にちなんで、成雅高速、雅西高速、雅康高速に代表される四川省道路建設に携わる人々の活躍を描く

中国大陸部映画興行週間ランキング(2019.1.7–2019.1.13)_中国国際放送局 より

非常に評価しづらい。語弊があるが、他の東南アジアの国の映画を見ているみたいだった。なんというか、様々な意向が詰め込まれているのが画面からも伝わってくる。技術者たちの奮闘の歴史を見せるという「プロジェクトX」的な映画だろうと思っていたが、ストーリーの様相が途中から変わってくる。音質がアフレコ的だったり、作為的な場面が多かったり、編集の粗がすごい。絵面も平板でドキュメンタリー番組ぽく、かつ創作されている感じも強いので、見続けているとどこへ連れて行かれるのだろうという不安が増していくのであった。本当、なぜこの映画がヒットしたのだろうか。とりあえずノスタルジックな映画ポスターは素晴らしい。

公開3週目で興収トップ10入りしてきた映画だが、あまり情報が無い。改革開放40周年を記念して四川省の橋梁建設を時代の移り変わりと共に描いた…という事らしい。一体どうしてこの映画がランクインしたのかも不明。制作会社もあまり見ない社名ばかりがずらずらと並んでいる。
監督の苗月(ミャオ・ユエ)は「十八洞村 Hold Your Hands」などで知られる国家一級導演のひとりだそうだ。役者陣も、李保田(リー・バオティエン)、孙敏(スン・ミン)、巴登西绕など国家一級演員たちが揃えられている。この国家一級~というのは国家により認定された優秀技術者という意味の指定らしく、人気や国民的な評価とも少し別種の意味があるように見える。メンバーからも国家主義的な方向性が垣間見える…かどうか?


悲伤逆流成河 Cry Me A Sad River 悲傷逆流成河 悲しみは逆流して河になる

悲伤逆流成河 Cry Me A Sad River 悲傷逆流成河 悲しみは逆流して河になる


电影 《悲伤逆流成河》CRY ME A SAD RIVER (2018) 温暖版预告片

2018年 中国
監督: 落落(ルオルオ=趙佳蓉)
出演: 任敏(レン・ミン)赵英博(チャオ・インボー)辛云来(シン・ユンライ)章若楠(ジャン・ルオナン)朱丹妮(ジュー・ダンニー)

ハンサムで成績トップの男子学生と幼なじみである貧しい家庭の女子高生イーヤオ(易遥)。ある日ひとりの女子転校生が来たことでイジメが始まる。噂が広まる中で幼馴染や友人たちとの関係も変化する中、ついに悲劇が…

オープニングのドローン撮影からのワンカット長回しが魅力的だ。詩的な風景を多く使っているように、全体的に叙情的な語り口で進めていく。日本と違ってイジメを扱った映画はまだ少ないようで、この題材をいかに訴えかけるかという熱意も強く感じられる。エンディングでも、この事件の顛末や若者たちの声を映し出す。一方でイジメの手口はしっかりと見せてくれるのでサスペンス要素もあり、飽きさせない。主人公たちはPHSだろうか、リモコンみたいなシンプルな携帯を使っていて「なぜに設定が2007年?」と不思議だったが、原作の設定を踏襲したようだ。ただ、ストーリーは改変しているらしく、特に主人公のイーヤオ(易遥)がイジメられ始める経緯が自然で、違和感なく入り込める。さらに、彼女がかかった病気の原因がわかるシークエンスなど、驚きと共にやるせなさが激しく沸き起こってしまう。多少叙情的すぎるかもしれないが、主人公役の任敏(レン・ミン)の素晴らしさだけでも十分に見る価値があると思う。辛云来(シン・ユンライ)の演技も素敵だ。

本作は郭敬明(かく けいめい / グオ・ジンミン)による2007年発表の同名小説の映画化である。郭敬明は「小时代 Tiny Times」シリーズの執筆/監督を始め、多くの若者に支持されている「80後(バーリンホウ)」を代表する作家。
一方、監督の落落(ルオルオ=趙佳蓉)も有名人だ。彼女も作家であり多くの小説を出版しながら雑誌の編集長でもあった。映画監督としては本作が2作目となる。
主人公役の任敏(レン・ミン)はまだ19歳の演劇学校の学生で、この映画が初出演になる。幼なじみ役の赵英博(チャオ・インボー)はオーディション番組から登場した歌手/俳優で、彼もまだ21歳で初出演映画であった。他の主演級の俳優たちも、ほぼこれが初出演や初のヒット作品となった。ちなみに先日見た「胖子行动队 (胖子行動隊) Fat Buddies」に出演していた辣目洋子もいじめっ子同級生役で出ている。

※こちらは原作についての評価だが、映画とはストーリーが色々変わっているようだ。

『悲しみは逆流して河になる』 ― “時代の気分” 写し取る | しゃおりんの何でもウオッチ

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阳台上(陽台上) On the Balcony

阳台上(陽台上) On the Balcony


电影《阳台上》“复仇”版剧情预告

2019年 中国
監督: 张猛(チャン・メン)
出演: 周冬雨(チョウ・ドンユイ)王锵(ワン・チャン)曹瑞、王雅琴、姚培德

上海で、今までニートのように生活していた若者。家の立ち退きを巡る騒動の中、父の突然の死によって彼は原因の男への復習を決意する。だがバイトや友人たちとの日々に追われて迷う中、あろうことか復習する男の知的障害である娘に想いを寄せ始めて…

最初、昔の設定かと思ってしまうような雑然とした街なかの風景、訛りの強い上海語のやり取り、フィルム撮影の効果などもあって、一体どんな映画なのかと混乱してしまうほどだった。しかし、その感覚は映画全体に続いていく。街なかのショット、あえて汚れたような地区を散文的に押さえていくところなど、70年代のドラマを感じさせる。演出手法もその頃の雰囲気を感じる。妙にカッコつけたシーンが多かったり、例えばバイト先で剥がれたシールの隙間から外を覗くショットなどにそれが顕著だ。冒頭はやや難解な部分もあるのだが、主人公が仕事を始め、周囲との関係性が明確になってくると徐々に面白くなっていく。特にバイト仲間で先輩役の曹瑞がいい。ピンク色のモヒカンに、やる気のない仕事っぷり、バイク乗りとかヤンキー感は漂わせつつも、素朴な主人公と自然に仲の良い雰囲気が、日本でも郊外にたくさんいそう。むしろ自分の20年前の風景を思い出すような存在感が良かった。周冬雨(チョウ・ドンユイ)がなぜこの作品にそれほど惚れ込んだのかは、映画を見た限りでは判然としなかったが、都市の若者の思いが溢れ出す佳作だと思う。

本作は2010年に出版された任晓雯による同名小説が原作となる。また特別出演として主演している周冬雨(チョウ・ドンユイ)が、自らの会社から出資をして制作された初の映画でもある。彼女は制作に影響が出るのを避けるため、映画が完成するまで出資している事を明らかにせずに参加したそうだ。
张猛(チャン・メン)監督は2011年の「钢的琴 The piano in a Factory 鋼のピアノ」で第23回東京国際映画祭最優秀男優賞受賞、第48回台湾金馬奨でも7部門ノミネートの高い評価を受けた。今作も「鋼のピアノ」同様に全編フィルムで撮影している。周冬雨(チョウ・ドンユイ)については言わずもがなの大人気女優。最近も「动物世界(動物世界) Animal World カイジ 動物世界」にも出演していた。王锵(ワン・チャン)はこの映画が初出演であり、ドラマなどにもほぼ全く出演経験のない新人であるが、张猛や周冬雨にも演技力が認められての抜擢となったようだ。

 

主題歌がなかなか良い。ラップなのである。この映画の舞台にぴったりだ。「罗马尼亚姑娘(ルーマニア娘)」というタイトルらしい音色も聴こえる。

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《阳台上》 “春梦版”主题曲《罗马尼亚姑娘》MV