FPU 〜若き勇者たち〜 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画
【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
海外で活躍する中国軍の精鋭たちを紹介するアクション映画…といった雰囲気で始まる作品だが、香港映画界で長年アクション指導をしてた監督なので気づいたら爆破と銃撃戦のてんこ盛りという、完全に典型的香港アクション映画へと変貌していく痛快ミリタリーアクション作。王一博は「ボーン・トゥ・フライ」での役柄を思わせ、黄景瑜の厳しい表情も良い。
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www.youtube.com ワン・イーボー、狙撃手として決死の覚悟で激しい銃撃戦に/映画『FPU~若き勇者たち~』予告編
【スタッフ & キャスト】
2024年 中国 101分
監督: 李达超(リー・タッチウ / リー・ダーチャオ)
出演: 黄景瑜(ホアン・ジンユー)、王一博(ワン・イーボー)、钟楚曦(チョン・チューシー)、欧豪(オウ・ハオ)、朱亚文(チュー・ヤーウェン)、谷嘉诚(グー・ジアチェン)
【あらすじ】
2000年、アフリカ・桑塔里昂(サンタレオネ)で政変が発生し内戦状態となった。中国も他国と連携して国連平和維持(PKO)活動に参加する。ユー(余卫东)【黄景瑜(ホアン・ジンユー)】が率いる部隊が結成され、若手のヤン(杨震)【王一博(ワン・イーボー)】などが参加する。不安定な現地に赴き、戦乱を抑え治安維持の活動を開始するのだが、そこでは様々な予期せぬ事態が発生するのだった。
【感想】
海外で活躍する中国軍の精鋭たちを紹介するアクション映画…といった雰囲気で始まる作品だが、気づいたら爆破と銃撃戦のてんこ盛りという、典型的香港アクション映画へと変貌していってびっくりする、痛快な出来のミリタリーアクション作だった。
舞台はシエラレオネと思しき西アフリカの小国だ。元ネタと同じく内戦により、2000年に国連平和維持活動(PKO)が展開される事となり、中国人民解放軍も戦力を派遣する事になった。このPKOとは、紛争を平和的に解決する為に、紛争相手同士を監視したり接触させない活動で、日本の自衛隊も1992年以来参加している。平和維持の為なので、武器は持つものの小規模で、世界各国と連携して活動する、より国際的な雰囲気のものだ。
なので登場人物たちも、国を代表する意識は高いけれど、主旋律映画にありがちな中国最優先な意識より、世界平和に貢献する意識が強く描かれていて、日本人の観客も心穏やかに見ていられる。
物語はほぼ全編アフリカが舞台となるが、とにかく大規模なセットで、すべて中国国内で撮られたのが信じられないほどの圧倒的なクオリティだ。大使館職員を描いた「万里归途(2022)」も同じく戦火に燃えるアフリカ・リビアの街を素晴らしいクオリティで再現していたが、それに勝るとも劣らないレベルで、国連軍の装甲車なども多数登場してきて壮観だ。
登場人物のキャラクターはわかりやすく造形されていて、中国を代表する気概とリーダーシップに溢れた黄景瑜(ホアン・ジンユー)演じるユー(余卫东)隊長と、新人で有能だが正義感が強すぎて突っ走ってしまう、まるで「ボーン・トゥ・フライ(2023)」での役柄・雷宇(レイ・ユー)を再現したような、王一博(ワン・イーボー)演じるヤン(杨震)の2人が主なキャラだ。「ボーン〜」では、経験達者な師匠といえる胡军(フー・ジュン)が穏やかな人格で彼を受け止めるが、現在進行形で任務が遂行されている今作の黄景瑜(ホアン・ジンユー)隊長は、むしろ国際部隊の隊長という立場の厳しさがより際立って、厳しく叱りつつ、むしろ高潔な人格がカッコいい。
現地の人々との暖かい交流を交えた、むしろリアルな平和維持活動のシーンも適度にありつつ、でもやっぱり期待していたアクションシーンは、現地に到着して早々から次々に勃発する。カメラワークもテンポ良いが、なにしろ派遣された6人以外は、敵も味方もほぼすべて現地の人々なので、敵は常に群衆に紛れ、いつも多勢に無勢、いつどこに相手がいるのかわからない緊迫感が強烈だ。
そしてこのアクションシーン、後半につれてどんどんヒートアップしていく。爆破もドカドカ増加していき、雨も強くなりテンポ感もガンガンスピードアップ。まるで邱禮潯(ハーマン・ヤウ)監督の香港映画みたいだ…と思えてくる。そうして見ていると、隊長の黄景瑜(ホアン・ジンユー)は謝霆鋒(ニコラス・ツェー)にも通じる雰囲気だし、もうクライマックスシーンなど、もしや大ボスに劉青雲(ラウ・チンワン)が出てきて…というのも不思議じゃない雰囲気にまでヒートアップして、グイグイ面白くなっていく。
後から調べるとこの監督、香港映画で数多くのアクション監督を務め、なんとあの「マトリックス(1999)」ではキアヌ・リーブスにアクション指導もしたという、バリバリの香港アクションの系譜の人物であった。製作総指揮の劉偉強(アンドリュー・ラウ)もあの「インファナル・アフェア(2002)」だし、つまり製作陣は正統派香港アクションの血筋なのである。そうやって見ると邱禮潯(ハーマン・ヤウ)の「バーニング・ダウン 爆発都市(2020)」や「ホワイト・ストーム 世界の涯て(2023)」と同じような作風だし、最近の香港アクションを中国キャストで作った「93國際列車大劫案:莫斯科行動(2023)」と同じジャンルだと言えるだろう。
そういう事か!と、その視点で見る事にスイッチすると、リアリティより迫力優先、大げさでやりたい放題なのも俄然キラキラ輝いて見え始める。クライマックスも最高に楽しめるだろう。エンディングも、ちゃんとジャッキー・チェン以来お約束のメイキング集になっているので、是非香港映画ファンも忘れずチェックして欲しい、楽しい作品だ。
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★★★☆☆ 星3
【トピック】
◯ メーデーの5連休に合わせて2024年5月1日から中国で一般公開。公開初週は同日に公開され、その後3週連続1位となるコメディ映画「末路狂花钱 (2024) 」を抑えて、興収ランキング1位を獲得した。興行収入は5.11億元(113億円)というヒット作となった。
◯ 2024年10月22日からの2024東京・中国映画週間で上映予定。その後2025年1月10日から全国ロードショー公開予定。
◯ 製作総指揮は劉偉強(アンドリュー・ラウ)。香港ノワールの名作「インファナル・アフェア(2002)」シリーズの監督であり、その後も「頭文字D THE MOVIE(2005)」や「レジェンド・オブ・フィスト/怒りの鉄拳(2010)」などを監督した後、最近は中国映画を監督・プロデュースする事が多い。
主な中国映画の作品では監督作として航空パニックものの「フライト・キャプテン(2019)」とコロナ禍の医療現場を描いた「アウトブレイク(2021)」の2作、プロデュースでは消防士もの「ブレイブ 大都市焼失(2019)」など。
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◯ 監督の李达超(リー・タッチウ / リー・ダーチャオ)は、長らく香港映画界でアクション監督として活動。香港アクションを取り入れた記念碑的名作「マトリックス(1999)」では、袁和平(ユエン・ウーピン)の下で8ヶ月間キアヌ・リーブスにアクション指導を行った。
その後、主に監督として中国映画やドラマに関わる一方、俳優としては、本作のプロデューサー・劉偉強(アンドリュー・ラウ)と麥兆輝(アラン・マック)が監督した香港映画「傷だらけの男たち(2006)」などに出演。同じく劉偉強(アンドリュー・ラウ)の「フライング・ギロチン(2012)」では出演の傍らアクション指導も行った。
甄子丹(ドニー・イェン)、黎明(レオン・ライ)、謝霆鋒(ニコラス・ツェー)の中港合作「孫文の義士団(2009)」では、アクション監督として台湾金馬奨・最優秀動作設計(アクション)賞を受賞、その他「インファナル・アフェアII 無間序曲(2003)」、「ムービング・ターゲット(2004)」など、特に劉偉強(アンドリュー・ラウ)人脈の数多くの作品でアクション監督を務めている。
主な中国での監督作は、ドラマ「水月洞天 (2004) 」、「神雕侠侶(2014)」、「コウラン伝(2019)」、赤西仁も出演の「凌云志 (2023) 」などがある。
◯ 撮影は2021年5月までに全て中国南部に特設のセットを建設して行われ、海外での撮影は行っていない。
◯ 今回の題材となる国連平和維持活動(PKO)は、紛争を平和裏に解決するために行われる国連による活動である。過去、パレスチナ紛争や、スエズ動乱、ルワンダ虐殺、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争などに派遣された。日本も、湾岸戦争後の1992年にPKO法が制定され、活動に参加してカンボジアや南スーダンに派遣されている。筆者もウガンダを訪れた際に空港でPKO部隊を見たことがある。
本作ストーリーの元となったのは1991年から始まったシエラレオネ内戦である。政情不安から同国のダイヤモンド鉱山利権を巡る内戦となり、2000年から国連平和維持活動(PKO)が派遣され、中国を含む60カ国ほどが活動に参加した。
黄景瑜(ホアン・ジンユー)
◯ 治安維持警察の第一分隊隊長・余卫东。
◯ ネット小説原作のボーイズラブ・ドラマ「ハイロイン(2016)」でデビュー。スーパーヒットした戦争アクション映画「オペレーション:レッド・シー(2018)」の主演でトップ俳優としての地位を確立する。
ドラマ「千年のシンデレラ(2018)」や「破氷行動~ドラッグ・ウォーズ~(2019)」などで主演のほか、映画「ペガサス/飛馳人生(2019)」や「检察风云 (2023) 」にも出演している。本作で共演の钟楚曦(チョン・チューシー)とは「ワイルドグラス(2020)」以来の再共演となる。
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王一博(ワン・イーボー)
◯ 治安維持警察での狙撃手・杨震。
◯ 中韓合同グループ『UNIQ』のメンバーで、大ヒットドラマ「陳情令(2019)」で主演しブレイクした、現在の中国を代表するトップアイドル。
「陪你到世界之巅(2019)」や「有翡 (2020)」、「風起洛陽(2021)」、「冰雨火(2022)」など多くの人気ドラマに出演している。
2023年は春節公開で映画初出演&主演となった「無名(2023)」に続き、戦闘機もの「ボーン・トゥ・フライ(2023)」、「熱烈(2023)」と、一気に主演作3本が公開という快挙の年となった。
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钟楚曦(チョン・チューシー)
◯ 治安維持警察連絡官・丁慧。フランス語も話せるという設定。
◯ 冯小刚(フォン・シャオガン)監督の映画「芳華-Youth-(2017)」で知られるようになる。
他にも「脱单告急(2018)」や「モフれる愛(2019)」、ジャッキー・チェンの「ナイト・オブ・シャドー 魔法拳(2019)」、今作同様に黄景瑜(ホアン・ジンユー)と共演となる「ワイルドグラス(2020)」、中国共産党の誕生を描いたオールスター映画「1921(2021)」などに出演。
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欧豪(オウ・ハオ)
◯ 治安維持警察の小隊長・周家轩。英語も話し、現地の人々と対話する事で理解を広めていった。
◯ 今や中堅俳優として確固たる地位にある欧豪(オウ・ハオ)だが、そもそもは歌手としてオーディション番組「快乐男声(2013)」から芸能界入りしている。
さらに素晴らしい出来のヒット映画「ひだりみみ(2015)」で、俳優としても数多くの賞を受賞した。映画「ブレイブ 大都市焼失(2019)」や「愛しの祖国(2019)」、日本では公開延期となったままの「エイト・ハンドレッド(2020)」などに出演。
そして、今作プロデューサー・劉偉強(アンドリュー・ラウ)が監督した「フライト・キャプテン(2019)」と「アウトブレイク(2021)」という2つのヒット作で、共に主演を努めている。
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朱亚文(チュー・ヤーウェン)
◯ 警察官で、杨震の父親の同僚であった杨琛。彼の死に隊長・余卫东が関わっているとの疑惑がある。
◯ 「建国大業(2009)」や中国版「見えない目撃者(2015)」で知られるようになる。ドラマ「大明皇妃(2019)」でも主役を務めた。
最近の出演作は相対的に主旋律的なテーマの映画が多く、コロナ禍を描いた「アウトブレイク(2021)」、3人の名監督による「1950 鋼の第7中隊(2021)」&「1950 水門橋決戦(2022)」、张艺谋(チャン・イーモウ)監督「崖上のスパイ(2021)」、陈凯歌(チェン・カイコー)監督の「志愿军:雄兵出击(2023)」などがある。
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谷嘉诚(グー・ジアチェン)
◯ 治安維持警察の退院・江小洋。杨震と同じく正義感に溢れているが、作戦中に怪我を負う。
◯ 肖战(シャオ・ジャン)も所属するボーイズグループ・X玖少年团(X NINE)のメンバー。オーディション番組「燃烧吧少年(2015)」への出場者で結成された。その後俳優としてドラマ「華麗なる皇帝陛下(2018)」や主演作「玲瓏姫(2020)」、「驪妃(2020)」など、映画では梁朝偉(トニー・レオン)主演「モンスター・ハント 王の末裔(2018)」や「93國際列車大劫案:莫斯科行動(2023)」の他、今作プロデュースの劉偉強(アンドリュー・ラウ)による「ブレイブ 大都市焼失(2019)」や「アウトブレイク(2021)」に出演した。
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