1950 水門橋決戦 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画
【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
【スタッフ & キャスト】
2022年 中国
監督: 徐克(ツイ・ハーク)
出演: 吴京(ウー・ジン)、易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)、朱亚文(チュー・ヤーウェン)、李晨(リー・チェン)、韩东君(エルビス・ハン)、张涵予(チャン・ハンユー)
【あらすじ】
長津湖での戦いで国連軍=米軍を退却へと追い込んだ伍千里(ウー・ジン)率いる第七中隊をはじめとした中国軍。彼らは米軍の退却を防ぐために水門橋の爆破を目指してさらに進軍する。強烈な寒さと、強大な兵力で圧倒する米軍を前に、第七中隊の面々は決死の覚悟で突撃する。
【感想】
ど迫力の戦闘シーンが連続するビッグバジェットアクション超大作、というイメージとは違う。逆にスケールの小ささを感じてしまう、そんな映画であった。
前作「1950 鋼の第7中隊(长津湖)」からわずか半年、事前に同時に制作されたとの話もあったので、おおよそ前作と同じ感じだろうなと思いながら見始めたので、その点での裏切りは特に無かった。前作も、3時間弱の後半1時間がほぼ戦闘シーンという、こちらの集中力を無視したような長い長いシーン構成だったが、今回も同じようなもので、同じ場所での2回の戦闘シーンを2時間半もかけて見せるという、聞くだけで疲れる構成となっている。
たしかに戦闘シーンのクオリティは高いし、特にCGのクオリティは圧倒的でディテールにも凝っており楽しめる。そういったシーンでは、前作より爆破での兵士の肉体が飛び散る部分などの描写のディテールが上がっており、グロいシーンが増えているように感じた。もしかしたら戦場のリアリティを前作以上に強調しているのは、後述する点からも本作の狙いだったのかもしれない。
ただしそのせいもあるのかもしれないが、兵士全員の顔の汚しが本当に真っ黒になってしまっていて、見ている途中から誰が誰だかわからなくなってくる。劇中でも、李晨にある事が発生する衝撃シーンがあるのだが、しっかり見ていても李晨か朱亚文か全然判別できず「???今のは誰だ!」といった感じになってくる。
これは戦闘シーン全体でも言えるのだが、そもそも戦闘シーンとは、全体の進捗状況を見せる事が物語進行上とても大事だと思うのだが、本作はここらへんが全然うまくないように感じた。戦闘に入った後の状況とはとどのつまり、そこら中でドンパチやっており混乱している訳で、ようするに撃ち合いの連続を見続けることになるので、それぞれが何故/どこへ/どう進撃していっているのかが見えてこないと、誰を映しても似たようなシーンの連続になってしまうのだが、まさにそういった状態に陥っていたように思う。
役割の違う韩东君(狙撃手)や吴京(隊長)、そして特に何もしない易烊千玺(新人)の3人だけが本作の戦闘シーンで動きが違うため判別しやすく、結果的に韩东君がとても印象に残ることとなった。
これは、結局それぞれのシーンがそもそもドラマチックなものではないのに、無理やり大げさなシーンとして作り上げているからとしか見えない。迫撃砲やバズーカなどで幾つかの部分を突破する程度の小さな戦闘場面を積み重ねているのだが、ちょっとずつ進撃していく形なので心理的にも変化も少なく、むしろ国連軍=米軍の方が心理的にも攻撃法的にも変化があって集中して見てしまうため、あまり中国軍側に意識が続かないのであった。
戦況は中国側の厳しい状況を反映して、徐々に凄惨な様相を呈しだす。だが彼らは国の威信を賭け、献身的に戦いに向かっていく。それがまさに死地へと向かう悲壮な思いを匂わせていく。しかし前作同様にこの映画でも、彼らはいっそ清々しく死んでいく形で描いていて、決して惨たらしく悲惨なものとしては描かれていない。一方で被害を受けた国連軍にしても、圧倒的物量の力で彼らの死をもってしてもすぐさま反撃/復旧してしまい、徐々に彼らの死に意味が無いような気になってくるのだ。先述したグロいシーンの増加も相まって、うっすらと戦闘の現実が伝わってきてしまう。決して真正面に戦争の無意味さを描くことはしていないのだが、しかし見ている側は受け取り始めてしまうのだ。個人的には、まるで特攻隊の映画でも見ているようだと感じた。
それが監督の思いであるかはっきりとはわからない程度ではあるが、政府肝いりで制作された超大作で意図的にその思いを入れたのだとしたら、ある意味これが限界だろうし、1作だけでこれを入れることはできないだろう。その点で2作を合わせて作る意味があったのかもしれない。
【トピック】
○ 2022年2月1日に春節映画として公開された。初動記録は25億元(453億円)を突破し、公開約1ヶ月後の3月13日に興収40億元(約790億円)を達成。6週連続で興収ランキング1位を維持した。
2022年末までの興行収入は40億700万元(約770億円)となり、中国興行収入ランキング1位を記録、全世界ランキングでは7位となった。
○ 前作同様に陈凯歌(チェン・カイコー)と林超贤(ダンテ・ラム)との3人共同監督の体制で制作の予定だったが、全体の9割が徐克(ツイ・ハーク)が監督したものとなり、残り二人はスーパーバイザーの位置づけとなった。
○ 中国共産党中央宣伝部の主導で制作され、撮影は2021年初めから約200日をかけて行われ、一部は浙江省の横店影視城で再撮影が行われた。
○ 2022年11月の中国金鶏奨(金鸡奖)で、本作は作品賞と監督賞を受賞、他6部門ノミネートとこの年最多受賞作品となった。
前作のレビュー