【スタッフ & キャスト】
2019年 中国 100分
監督: 张猛(チャン・メン)
出演: 周冬雨(チョウ・ドンユイ)、王锵(ワン・チャン)、曹瑞、王雅琴、姚培德
【あらすじ】
上海で、今までニートのように生活していた若者。家の立ち退きを巡る騒動の中、父の突然の死によって彼は原因の男への復讐を決意する。だがバイトや友人たちとの日々に追われて迷う中、あろうことか復讐する男の知的障害である娘に想いを寄せ始めて…
【感想】
最初、昔の設定かと思ってしまうような雑然とした街なかの風景、訛りの強い上海語のやり取り、フィルム撮影の効果などもあって、一体どんな映画なのかと混乱してしまうほどだった。しかし、その感覚は映画全体に続いていく。街なかのショット、あえて汚れたような地区を散文的に押さえていくところなど、70年代のドラマを感じさせる。演出手法もその頃の雰囲気を感じる。妙にカッコつけたシーンが多かったり、例えばバイト先で剥がれたシールの隙間から外を覗くショットなどにそれが顕著だ。冒頭はやや難解な部分もあるのだが、主人公が仕事を始め、周囲との関係性が明確になってくると徐々に面白くなっていく。特にバイト仲間で先輩役の曹瑞がいい。ピンク色のモヒカンに、やる気のない仕事っぷり、バイク乗りとかヤンキー感は漂わせつつも、素朴な主人公と自然に仲の良い雰囲気が、日本でも郊外にたくさんいそう。むしろ自分の20年前の風景を思い出すような存在感が良かった。周冬雨(チョウ・ドンユイ)がなぜこの作品にそれほど惚れ込んだのかは、映画を見た限りでは判然としなかったが、都市の若者の思いが溢れ出す佳作だと思う。
【トピック】
○ 本作は2010年に出版された任晓雯による同名小説が原作となる。また特別出演として主演している周冬雨(チョウ・ドンユイ)が、自らの会社から出資をして制作された初の映画でもある。彼女は制作に影響が出るのを避けるため、映画が完成するまで出資している事を明らかにせずに参加したそうだ。
○ 张猛(チャン・メン)監督は2011年の「钢的琴 The piano in a Factory 鋼のピアノ」で第23回東京国際映画祭最優秀男優賞受賞、第48回台湾金馬奨でも7部門ノミネートの高い評価を受けた。今作も「鋼のピアノ」同様に全編フィルムで撮影している。
○ 周冬雨(チョウ・ドンユイ)については言わずもがなの大人気女優。最近も「动物世界(動物世界) Animal World カイジ 動物世界」にも出演していた。
○ 王锵(ワン・チャン)はこの映画が初出演であり、ドラマなどにもほぼ全く出演経験のない新人であるが、张猛や周冬雨にも演技力が認められての抜擢となったようだ。
主題歌がなかなか良い。ラップなのである。この映画の舞台にぴったりだ。「罗马尼亚姑娘(ルーマニア娘)」というタイトルらしい音色も聴こえる。
www.bilibili.com 【MV】周冬雨《阳台上》“春梦版”主题曲《罗马尼亚姑娘》