中国映画レビュー「被光抓走的人 Gone With The Light」

被光抓走的人 Gone With The Light

 

 

被光抓走的人被光抓走的人


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【スタッフ & キャスト】

2019年 中国
監督: 董润年(ドン・ルンニエン)
出演: 黄渤(ホァン・ボー)王珞丹(ワン・ルオダン)谭卓(タン・ジョオ)白客(バイ・カー)黄璐(ホァン・ルー)

 

 

【ストーリー】

中国のある地方の街で、突然街が光に覆われ、同時に何人もの市民が消え去るという現象が発生する。理由はわからないがどうやら「互いに愛しあう相手がいた者のみが消えた」らしい。なぜ自分は消えずに残ったのか。現象を目の当たりにした中年の中学校教師の武文学、離婚手続き中の女性李楠など、残された者はどう受け止めればよいのか戸惑う。

 

 

【感想】

SF的手法を使って、倦怠期カップルなら誰しもが思い当たるような関係の軋みをあぶり出す面白さ、それを郊外の泥臭さも丸ごとリアルな風景の中に写し込んでいく。登場人物たちの気持ちを表すかのように、最初っから晴れ間が見えることのない曇り空で始まり、最後までそれが続く。
風景の描写でも同じで、見栄えに気を配る事もない見すぼらしいアパートや、雑然とした部屋もそのまま見せて、飾る余裕のない人々の物語なのが見えてくる。
そこに突然、何だか訳のわからない現象の発生、つまり光に包まれ人が消えるというトリガーによって、人々がいろいろな日常について改めて考え直しだす、というそんな話だ。
実質的には4人の主要人物のオムニバスに近い形で、それぞれ同じ街だということ以外は交わる事もなく話は進む。それぞれの生活の舞台も家族の形も違い、ただ皆「お前は誰からも愛されていなかったのでは」という問いを突然根拠なく突きつけられてしまう。この設定がとても面白い。ふわっとしていて、でも結論によってはかなり辛く、かといって誰かを責めることもできない。どう展開していくのか想像できない面白さだ。
だが、この映画ではリアルな生活の中で苛立ちだけがじりじりとゆっくりと高まっていくだけだ。
見終わった後に余韻を残す映画だが、深く考えさせるというより、その余韻ごと自分たちの日常生活に拡散していくような、そんな後味だ。SF的な大事件はたしかに起こるのだが、登場人物の生活にはそれほど大きな影響も与えず、身悶えするような「不条理な現実」を突きつけてくる訳でもない。ちょっとしたささくれを引っ掛けてくるような、あくまで「ちょっとした日常」を描いた映画だ。

白客(バイ・カー)が演じるチンピラの家の洗面所での会話シーン、女がパンツを下ろしておしっこをしながら会話を続ける。そういうちょっと生々しいリアルな描写がおもしろかった。

 

 

 

【トピック】

○ 本作は主演の黄渤(ホァン・ボー)が宁浩(ニン・ハオ)監督と共に立ち上げた「『HB+U』新鋭監督支援プロジェクト」の第1弾作品である。この2人が制作した「疯狂的外星人(2019)」の脚本家である董润年(ドン・ルンニエン)が初監督した。彼は「ロクさん 老炮儿(2015)」で中国映画金鶏奨の最優秀脚本賞を受賞している。「心花路放(2014)」などの黄渤(ホァン・ボー)主演・宁浩(ニン・ハオ)監督作で多く脚本を手がけてきた、言わば彼らの秘蔵っ子だ。

○ 主演の中学教師役、黄渤(ホァン・ボー)は今最も売れている俳優の一人だろう。毎年多くの映画に出演している。最近では「愛しの故郷(2020)」「愛しの母国(2019)」初監督の「アイランド/一出好戯(2018)」など。個人的な彼のベストは「最愛の子(2014)」だ。
○ 離婚手続き中に夫が消え去った女性役の王珞丹(ワン・ルオダン)は、2010年頃に大人気になった大女優。青春ドラマ「奋斗(2007)」「杜拉拉升职记(2010)」で知られている。この年にテンセントが選んだ新4大美女(四小花旦)にも杨冪(ヤン・ミー)黄圣依(ホアン・シェンイー)刘亦菲(リウ・イーフェイ)と共に選ばれている。
○ 黄渤(ホァン・ボー)の妻役である谭卓(タン・ジョオ)は実力派で、特に本作の2019年は多くの映画に出ていた。先日日本公開の「共謀家族(2019)」にも出演。
○ チンピラ役の白客(バイ・カー)は、元々大学生の頃に日本のギャグアニメを翻訳してネットに投稿するグループの先駆け「cucn2」の一人として2010年頃に知られるようになる(「ギャグマンガ日和」の中文翻訳は中国アニオタ史の大きなエポックだが、これを投稿していた)。その後俳優として活動を開始、ウェブドラマ「万万没想到(2013)」で人気を博す。順調にキャリアを積み重ね、昨年公開のジャ・ジャンクー監督プロデュースの「不止不休(2020)」などに出演、これから更に多くの出演作が公開予定だ。「大闹天竺(2017)」にも出演している。

○ 舞台は湖北省荊州付近の郊外の街。沙市駅として荊州駅が登場する。ロケも同じエリアの宜昌市で行われた。長江沿岸の港町であり、三峡ダムも近い場所だ。

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