また深圳でクルマを観察してきたので、色々と並べてみる。
前回の記事はこちら。
今回はもっと注意深く、そして大量にクルマを拾ってみたが、新しいデザインのクルマが目についた。トレンドがどんどん移り変わっているのを実感する。
中国の自動車業界、なかでも販売の現場は結構混乱しているという話を聞いた。メーカーが新しいブランドをどんどん立ち上げ、新規開発モデルをすべて新ブランドに集中して投入していくためにブランドの陳腐化が大変早いという。仮に今大手メーカーのブランドで新店舗を作っても、しばらくするとそのメーカーが新ブランドを作り、新しいモデルは旧来のブランド店舗には供給されなくなるそうだ。そうすると旧店舗は古いラインナップを我慢して売り続ける事となり、来客は減少し淘汰されていくという。「モデルライフ」ではなく「ブランドライフ」が大幅に短縮してしまっているのだ。
実際に路上を見つめていても、新しいトレンドでデザインされた、特にヨーロッパ車風のモデルが相当目についた。当然古い車は数少ない。
自動車がコモディティ化し、ファッションのように毎年トレンドを変えていく様が、自動車の未来を暗示しているように見えてきた。
- ヴェヌーシア啓辰 T70X
- 東風風行 景逸X3
- 東風風度 风度MX3
- ラクスジェン東風裕隆 納智捷 优6 SUV
- ラクスジェン東風裕隆 納智捷 大7 SUV
- 吉利汽車 遠景SUV
- 吉利汽車 帝豪GS
- 長安汽車 長安CS75
- 广汽 传祺GS3
- 广汽 传祺GS5
- 广汽 传祺GS8
- 長城汽車 哈弗H4
- 長城汽車 哈弗H6
- 長城汽車 哈弗H3
- 長城汽車 WEY VV5
- 長城汽車 WEY P8
- 比亚迪 宋
- 上汽 MG(名爵)GS
ヴェヌーシア啓辰 T70X
ヴェヌーシアこと啓辰(启辰、チーチェン、Qǐ chén)は東風日産の現地ブランドだ。ただラインナップはいささか古いものが多い。今の毎年変わっていくトレンドには追いつけていないように見える。
このT70Xは先代キャシュカイ、つまりデュアリスがベースだ。そう言われればプロポーションはそっくり。2015年登場なのにデザインは圧倒的に古い。1.6/2.0Lガソリン。
※さらに画像を見たい方は以下のリンクを参照してほしい。
東風風行 景逸X3
東風風行(东风风行、FX Auto、ドンフェン・フェンシン、Dōngfēng fēngxíng)もビッグ5メーカー 東風グループの1ブランドでディーゼル車が強く、その流れでSUV、ミニバンを主に販売している。デリカのコピー車「菱智」やグランディスのコピー「景逸」にアルファードに似た「风行CM7」なんかも作っている。
景逸X3は2014年に登場した1.5/1.6Lクラスの5人乗りコンパクトだが、クロスオーバー的な雰囲気に仕立てている。この車も現行型のスタイルだが、深圳ではやや古めかしくなっている。
東風風度 风度MX3
東風風度(东风风度、ドンフェン・フェンヅ、Dōngfēng fēngdù)は、トヨタやホンダなどと同様に東風日産が立ち上げた中国国内向けブランドで、主に日産車をベースに現在3モデルほど販売している。
このMX3は東風の東風風神AX7というSUVをベースにしたもの。2016年にデビューしたが既にラインナップ落ちしているようだ。1.4ターボ/2.0Lガソリン。
ラクスジェン東風裕隆 納智捷 优6 SUV
納智捷(纳智捷、ラクスジェン、Luxgen、ナジジェ、Nà zhì jié)は台湾・裕隆(ユーロン)汽車によるブランドだが、中国内では東風と提携している。
优6は5人乗りの1.8Lターボモデルだが、完全に独自開発しており、ZTEやファーウェイの携帯電話と接続できるThink+システムを搭載している。
ラクスジェン東風裕隆 納智捷 大7 SUV
こちらも纳智捷(ラクスジェン)のSUV。このブランドの第一号モデルである7 MPV(中国名:大7 MPV)が2009年に登場。写真のクルマはそのSUV版で、2011年から登場している。今のフェイスリフト版はマシだが、2012年頃までの初期型はかなり個性的な顔つきをしている。
纳智捷_大7 SUV图片_汽车之家 ※2012年式を参照。
吉利汽車 遠景SUV
吉利汽車(吉利汽车、ジーリー、Geely、Jílì)は20年程度の歴史だが強力なメーカーに成長した。ボルボの親会社でありロータス、ダイムラーAGの筆頭株主で、昔から海外にも積極的に進出しており、海外でよく見る中国メーカーといえば今はGeelyかBYDといえる。
ボルボとのコラボという触れ込みで誕生した新ブランド"Lynk & Co"は、元ボルボのデザイナーがデザイン部門のトップとなった吉利を象徴するように、確かにハイクオリティのデザインで従来の中国車のイメージを変えつつある。
遠景(远景、ユァンジン)SUVは1.5Lの遠景セダンのSUV版として2016年に登場。5人乗で1.8Lか1.4ターボのガソリン車だ。メーターもLEDディスプレイ化していたりスタイルも緻密でイマドキ感を漂わせている。価格も手頃な9万元=150万円ほど。
吉利汽車 帝豪GS
帝豪GS(ディハオGS、Dìháo)は1.5Lセダンである帝豪のクロスオーバーSUV版として2016年に登場した。いわゆる"85後世代"(30代半ば)の若々しい消費者層をターゲットにしたアグレッシブなデザインに仕上げている。名前の”Grand Sport"がそれを表している。トヨタC-HRクラスに見える通り、1.3ターボから現在の1.4Lターボを搭載している小型SUVだ。
長安汽車 長安CS75
長安汽車(长安汽车、Changan Automobile、チャンアンチーチャ、cháng'ān qìchē)はビッグ5の一社で、つい最近までスズキと合弁会社を経営していた。PSAプジョーシトロエンや長らくフォードと合弁事業を行っているが、最近の業績はやや精彩を欠いている。自社ブランドもイメージが低下しているようだ。
そんな長安汽車のCS75は1.5ターボ/1.8ターボの5人乗り中型SUV。写真の2017年式はグリルデザインがランドローバー的ともフォードのピックアップ的とも言える。やっぱりデザインレベルは…という感じか。
广汽 传祺GS3
広州汽車集団(GAC Group、广汽集团、グアンチ ジトゥアン、Guǎngqì jítuán)はホンダ、トヨタ、三菱などと合弁事業を行うメーカーで传祺(伝祺、トランプチ、Trumpchi、チュアンチ、Chuán qí)という中国内向けブランドは、メルセデスの中国人デザイナーが加入するなど、まだ20年程度の歴史ながら成長著しい。
GS3は2017年にデビューした1.3Lターボ/1.5Lターボの小型SUV。まあまあエッジの立った高級感を感じるデザインなので安心感がある。なんかホンダっぽい?
广汽 传祺GS5
GS5は2012~2014年に販売されていた小型SUVだが、前の世代らしく大きめの1.8ターボ/2.0L/2.0ターボが搭載されていた。BMWのX6的な? スカイライン・クロスオーバー的な? クーペSUVっぽいデザイン。
广汽 传祺GS8
GS8は昨年の登場時に話題となった高級SUVの1台だ。2.0ターボながら7人乗りの大型サイズ。2か月で8,000台を受注した。これで300万円程度なので十二分に破格の値段だ(つまりそれ以上の価格帯は今もなお外国車が担っているという事でもある)。
長城汽車 哈弗H4
長城汽車(长城汽车、Great Wall Motor、チャンチェン、Chángchéng)はSUVを中心に販売するメーカー。約30年前からの創業で、国営企業以外の自動車メーカーでは初の上場企業となった。輸出も積極的なので海外でも長城のクルマは見かけることが多い。
哈弗(Haval、ハバル、ハフ、Hāfú)はSUV専門ブランドで、現在12車種ものラインナップをSUVだけで実現している。このH4は今年登場した1.3/1.5ターボに7速DCTを組み合わせた小型SUV。Havalのモデル、豪華版は今年以降このデザインに統一していくようだ。
長城汽車 哈弗H6
H6は2011年に登場した5人乗り中型SUV。写真は2017年まで生産された初代モデルで2013/14年にはSUVベストセラーにも輝いた。前時代的、日本車的なデザイン。
哈弗H6外观图片-图片-网易车型库-网易汽车 ※2013年式
長城汽車 哈弗H3
こちらは2005~2012年まで生産されていた2.0/2.5ターボの5人乗り中型SUV。ランクル・プラドやパジェロを見据えたデザイン。ちなみに2.0Lエンジンはランエボにも搭載された三菱4G63型だ。
長城汽車 WEY VV5
今回見かけて最も驚いたのはこのブランドだ。WEYは長城汽車が2016年に立ち上げた新ブランド。トヨタ=レクサスのようなプレミアムブランドとして非常にレベルの高いデザインのモデルをリリースしている。とにかくデザインのレベルが高く、有無を言わせず振り向かされるほどだ。価格も考えると完全にデザインではトヨタと勝負できる。
CMではなんとクリスティアーノ・ロナウドが出演している。
VV5は昨年登場した2.0Lターボの5人乗りSUV。ベースは上のハバル・H6だ。この直前にマセラティ・レヴァンテが通っていった事もあって思わず「あれ?またマセラティ?」と思ってしまったほどだ。ジャガー・Fペースにも似ているが、こちらのプライスはわずか250万円ほど。しかも問題は「パクリではない」という点だ。トレンドはリアルタイムで追っているが、そのレベルがとても高い。これは普通に日本で乗れる、と思う。
長城汽車 WEY P8
このP8はバリバリの新モデル。今年登場した"新能源"(新型パワートレーン=エコカー)プラグイン・ハイブリッド車で、ベースはVV5と同じHavalのH6。VV5とデザインは似ているがきちんと変化をつけてきて、ブランドイメージの統一感を持たせたハイグレードなデザインだ。価格も、上記の传祺GS8を遥かに凌ぐ30万元=500万円となり、完全に海外ブランド達に食い込む気マンマンである。
比亚迪 宋
比亚迪(BYD Auto、Bǐyǎdí)は言わずとしれたEVで中国自動車界を牽引するメーカーだ。深圳が本拠であり、先進都市"深圳"を象徴する企業はテンセント(Tenscent、腾讯)やファーウェイ(Huawei、華為技術、华为技术)、DJIと同時にこのBYDも含んでいいだろう。
宋というモデルは、元々S3というSUVモデルをEV化したモデルに付与されたモデル名だが、現在は全モデル宋の名前になっている。写真は2015年に登場したS3からの初代モデル。1.5ターボ/2.0Lのハイブリッド車。
上汽 MG(名爵)GS
名爵(ミンジュ、Míngjué)という名前を見てもピンとこないが、いにしえのイギリスメーカー、MGである。2006年からビッグ5のひとつ、上海汽车集团=上汽集团(SAIC Motor)に買収され中国ブランドとして生まれ変わっている。セダンを皮切りにヨーロッパ的デザインのモデルを現在7モデル発売している。
GSは2015年に上汽グループ荣威(ロエベ、ROEWE)のRX5をベースに発売された。1.5ターボ/2.0ターボ搭載の5人乗モデル。クロスオーバーSUV的なモデルだが、ここまでのクーペルックはやや古いかもしれない。
続きはセダン編へ