【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
肖战(シャオ・ジャン)が主演、あの兰晓龙(蘭暁龍、ラン・シャオロン)と正午陽光がタッグを組んだという期待に相応しい出来。他とは一線を画す濃密な戦争映画表現を繰り広げる、負け犬たちの泥臭い戦争映画。俳優たちの強烈な演技もあり、深い余韻を残す。

【スタッフ & キャスト】
2025年 中国 121分 豆瓣評価:6.9/10
監督: 孔笙(コン・ション)
出演: 肖战(シャオ・ジャン) 、彭昱畅(ポン・ユーチャン)、周依然(ジョウ・イーラン)、杨新鸣(ヤン・シンミン)、阿如那(アラン・アルナ)、甘昀宸(ガン・ユンチェン)
【あらすじ】
機械工の莫得闲【肖战(シャオ・ジャン)】は、大虐殺の行われた南京から父を連れて避難する。空襲から逃れた果てに山あいの捨てられた集落を見つけ、こちらもまた主力部隊に見捨てられた対空砲隊隊長の肖衍【彭昱畅(ポン・ユーチャン)】たちと共に、「戈止鎮(戦止鎮)」集落に身を寄せた。しかし、彼らの平穏な生活は、日本軍の偵察部隊が予期せず現れたことで一変。集落の人々は、突如日本軍から村を守る闘いに直面する事になっていく。
【感想】
肖战(シャオ・ジャン)が主演、あの兰晓龙(蘭暁龍、ラン・シャオロン)と正午陽光がタッグを組んだという期待に相応しい出来。他とは一線を画す濃密な戦争映画表現を繰り広げる、負け犬たちの泥臭い戦争映画。俳優たちの強烈な演技もあり、深い余韻を残す。
蘭暁龍と正午陽光の持つ強い作家性と信頼感
脚本と監督をこの二者が務めているという事で、他の中国戦争映画とはまるで違う視点、違う表現で作られていて、何も知らずに見るとかなり驚く。
たとえば、一見すると『陳情令(2019)』の肖战(シャオ・ジャン)と『琅琊榜(2015)』の正午陽光という有名ドラマに関わるタッグにも見えるのだが、本作はそこに『士兵突击 (2006)』や『我的团长我的团 (2009)』の兰晓龙(蘭暁龍、ラン・シャオロン)という、強い作家性を持つ一流脚本家の存在が大きな意味を持つ。実際、見始めると初っ端から彼らの世界観が存分に展開されていき、いかにこの二者のテイストが世間にも理解されていて、既にブランドとして信頼されているかがわかる。
日中戦争を描く映画はたくさんあれど、ここまで地に足が着いた作品はそうそう無いし、それを書いたのが最も評価されている脚本家だというのも驚異的だ。南京大虐殺も残酷な日本軍も関わるストーリーだが、是非とも日本で公開し、こんな映画も中国できちんと評価されている事を知ってほしい。

「国のため」ではなく「自分達のため」に生きる庶民の執着
登場する者たちは皆が傷つき、居場所を失った、言わば負け犬である庶民だ。負けの烙印は押されても、それでも人生は続く。そんな男たちのそれぞれに残る、生への執着やちっぽけなプライドまで、余すことなく描こうとする。わかりやすいキャラクターはいないかわり、すごく共感できるキャラはたくさんいる。それは彼らが皆、国のためではなく自分達のために戦うからだ。
根源的に見れば、人は誰も戦いたくない。だからこそ崇高な理念で戦う人物には、ヒーローとして一定の距離を置いた憧れで見る。この映画での戦いは、決して信念や理想のためではない、すごく切実なものとして描かれる。「やらなければやられてしまう」ただそれだけだ。大した武器もないし、心の準備もできていない。知恵を絞り、在るものを使って戦い、サバイブするしかない。
脚本の兰晓龙(蘭暁龍、ラン・シャオロン)は、彼らをそんな状況に放り込む、そのやり方が本当に上手い。安息の地にたどり着き、妻や子との穏やかな日。ようやく過酷な逃避行の記憶から訣別しようとした瞬間、意図せず日本軍をおびき寄せてしまう。戦争が、不意討ちのように襲いかかる。

イメージを覆す肖戦の役作りと、尹正が魅せる怪演
この主人公・莫得闲役の肖战(シャオ・ジャン)が、今までのイメージをまったく感じさせない凄い役作りで、ちょっと驚く程だ。今までの彼を知っている人ほど驚くだろう。
だが、それ以上に振り切った役作りなのが、中国語も話せる日本軍兵士を演じた尹正(イン・ジェン)で、本当に見入ってしまった。意地の悪い狡猾な日本兵として、日本語台詞も多数交えて莫得闲に迫る。つい先日見た『飞驰人生3 (2026) 』のたった3ヶ月前の公開作なのに、かなり太った体型で目つきの悪い役作りは強烈な印象を残す。日本人には決して気持ちのいいシーンでは無いが、彼らの安息の地を奪うに相応しい悪役だ。
彩度を落としていく「トーキー映画」な演出と、高い志
バッドエンドでは無いが後味は決して良くない。だが戦場のリアリズムを追求する狙いはない。
兰晓龙(蘭暁龍、ラン・シャオロン)らしい文学的な深い台詞がポンと入ってきたり、初見で分かりにくい方言や台詞回しもある。その一方で正午陽光らしい、細やかな美術、たとえば長江を渡る船着場、村落での民家の設えなど、生活感を再現した画作りが冴え渡っていて、1度観ただけでは味わいきれない。特に当時のトーキー映画をモチーフにしたような表現が素晴らしい。映像が2時間かけて次第に彩度を落とし、モノクロな世界へとじわりじわりと移っていく。それは彼らの生活の彩りの度合いともシンクロしているかもしれないし、一片の映像詩としても作りたいという作り手の思いにも感じられる。その意味で、単なるリアリズムの追求に終わらない、兰晓龙(蘭暁龍、ラン・シャオロン)と正午陽光の世界観を突き詰めた高い志で作られた作品なのが伝わる。
正直に言えば少し詰め込みすぎていて、2時間で描くにはもう少し余韻で語っても良い気もしたが、凡百の戦争映画とは格が違うのは間違いない。深く記憶に残る存在感がある作品だった。
『飞驰人生3』中国映画レビュー&解説「Pegasus 3(2026)」 - daily diary


【トピック】
予告編
▶ 本国版予告編(クリックで開きます)
www.youtube.com Gezhi Town International Ultimate Trailer | 《得闲谨制》国际终极预告
中国での公開・興収ランキング・興行収入・日本での公開/配信
◯ 2025年12月6日から中国本土で公開され、公開初週の興収ランキングで1位を獲得、その後も『ズートピア2(2025)』、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ(2025)』などに次ぐ好位置をキープした。興行収入は4.12億元(96億円)のヒットとなった。
◯ 現在のところ、日本での公開や配信の予定はない。
監督
◯ 本作は正午陽光にとっての初の映画作品となる。
監督の孔笙(コン・ション)は1960年生まれ、中国最高峰のクリエイター集団である制作会社・正午陽光を率いる巨匠。1990年代初頭からカメラマンとして映像界に入り、数多くのドラマに参加し撮影賞も受賞。監督業も開始し、大ヒットドラマ『闖関東(ちんかんとう、2008)』などで高い評価を得る。
2011年にプロデューサーの侯鴻亮(ホウ・ホンリャン)、弟子である李雪(リー・シュエ)監督らと共に職人チームの制作会社・正午陽光を立ち上げて独立。以来、『琅琊榜(2015)』や『父母愛情(2014)』、『欢乐颂 (2016)』、『大江大河1(2018)』、『山海情(2021)』といった数々の大ヒットドラマを手掛け、そのどれもが高い評価を得てきた。ディテールへの細やかなこだわりを見せる高い技術力、アイドル俳優にも高い演技力の実現させる演出、特に群像劇での高い完成度など、正午陽光制作というだけで一定の信頼を得られるブランドとなっている。
本作の脚本・蘭暁龍とは、彼の"戦隊三部作"のひとつ『生死线 (2009)』以来のタッグとなる。

脚本
◯ 脚本は、特に軍事・歴史・戦争ジャンルで中国トップクラスの脚本家・兰晓龙(蘭暁龍、ラン・シャオロン)が担当。兰晓龙は、中国ドラマ史上最高傑作の一つと言われる『士兵突击 (2006)』、『我的团长我的团 (2009)』、『生死线 (2009)』の"戦隊三部作"をはじめとする作品で、極限状態に置かれた個々の兵士の人間ドラマや生と死の本質を泥臭く、かつ詩的に描くスタイルで高く評価されている。
彼についてはFalさんが纏められたこちらの記事に詳しい。

肖战(シャオ・ジャン)
◯ 莫得闲。機械工場で働いていたため対空砲も整備ができ、部隊から頼られるようになる。
◯ 1991年生まれで、オーディション番組『燃烧吧少年(2015)』を経てアイドルグループ「X玖少年团」のメンバーとしてデビュー。俳優としても活動し、王一博(ワン・イーボー)とW主演した大ヒットドラマ『陳情令(2019)』でブレイクし、大人気俳優となる。その後も『玉骨遥(2023)』や『春を待ちわびて(2023)』、『蔵海<ザンハイ>伝(2025)』などのヒット作に出演。映画では、武侠ファンタジー『ジェイド・ダイナスティ 破壊王、降臨。(2019)』や徐克(ツイ・ハーク)による本格武侠の主演作『射鵰英雄伝(2025)』などに出演している。

彭昱畅(ポン・ユーチャン)
◯ 対空砲隊の隊長・肖衍。弱腰で決断力がなく、従軍中には一度も飛行機に向けて発砲する事なく撤退してきた。
◯ 彭昱畅(ポン・ユーチャン)は、日本では胡波(フー・ボー)監督『象は静かに座っている(2018)』での主演が知られている人気俳優。
映画『ヤンチャな兄 どっか行け(2018)』や『閃光少女(2017)』、『中国女子バレー 奪冠(2020)』、ダンス映画『僕らが空を照らしたあの日(2021)』、難病ものの良作『⼈⽣って、素晴らしい/Viva La Vida(2024)』や『She Has No Name(2024)』、『志愿军:浴血和平(2025)』などに出演。
ドラマでは中国版『テニスの王子様(2019)』や『都挺好(2019)』、『一点就到家(2020)』、『风犬少年的天空(2020)』、『異人之下 アウトサイダーズ(2023)』などに出演している。

中国映画レビュー「ヤンチャな兄 どっか行け 快把我哥带走 Go Brother! 兄に付ける薬はない!」 - daily diary
中国映画レビュー「小小的愿望 The Last Wish 小小的願望」 - daily diary
中国映画レビュー「中国女子バレー 奪冠 夺冠 Leap」 - daily diary
中国映画レビュー「革命者 The Pioneer」 - daily diary
中国映画レビュー「僕らが空を照らしたあの日 燃野少年的天空 The Day We Lit Up The Sky」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「⼈⽣って、素晴らしい/Viva La Vida 我们一起摇太阳」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「雲の上の売店 云边有个小卖部 Moments We Shared」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「She Has No Name 酱园弄·悬案 She's Got No Name」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「志愿军:浴血和平」「The Volunteers: Peace at Last (2025)」 - daily diary
周依然(ジョウ・イーラン)
◯ 避難中に知り合い結婚した、莫得闲の妻・夏橙。
◯ 『閃光少女(2017)』のドラマ版(2019)に出演、その後青春ドラマ『风犬少年的天空(2020)』や主演映画『好想去你的世界爱你(2022)』、そしてドラマ『三悦有了新工作(2022)』で主演した。『平凡英雄(2022)』や『无价之宝(2023)』の後に出演したサスペンス映画『涉过愤怒的海(2023)』では、日本でコスプレをする設定になっている。

中国映画レビュー&解説「平凡英雄 Ordinary Hero」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「涉过愤怒的海 Across the Furious Sea」 - daily diary
中国映画レビュー&解説『无价之宝』「Be My Family (2023)」 - daily diary
杨新鸣(ヤン・シンミン)
◯ 莫得闲の父・老太爷。南京での従軍経験のトラウマから精神に不調を来している。
◯ やはり映画『薬の神じゃない!(2018)』やドラマ『明蘭~才媛の春~(2017)』で知られていると言えるだろう。正午陽光作品では常連メンバーのひとりでもある。
1980年代から俳優として活動。映画『阿妹的诺言 (2007) 』で中国金鶏奨にノミネート。ドラマ『小镇大法官 (2016) 』などにも出演しているが、「薬の~」のプロデューサー、宁浩(ニン・ハオ)による監督作『无人区 (2013) 』での出演が、「薬の~」へと繋がっていった形となる。「薬の~」の続編的な映画『素晴らしき眺め(2022)』でも顔を出していたり、『愛しの故郷(2020)』、良作『三大队(2023)』にも出演している。

中国映画レビュー&解説「薬の神じゃない! 我不是药神 Dying to Survive ニセ薬じゃない!私は薬の神ではない」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「素晴らしき眺め 奇跡の眺め 奇迹·笨小孩 Nice View」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「愛しの故郷 我和我的家乡(我和我的家郷) My People My Homeland」 - daily diary
中国映画レビュー&解説『三大队(三大隊)』「三大队 Endless Journey (2023)」 - daily diary
阿如那(アラン・アルナ)
◯ 対空砲隊の一員、麻郭富。
◯ 内モンゴル自治区出身のモンゴル族俳優。
大ヒットドラマ『狂飆 (2023) 』に出演。映画では『驴得水 (2016) 』、『古董局中局(2021)』、王一博主演の『熱烈(2023)』、邱禮潯(ハーマン・ヤウ)監督の『绝地追击(2023)』&『93國際列車大劫案:莫斯科行動(2023)』、そして『中国卓球~窮地からの反撃~(2023)』など、昨年急速に知られるようになってきた。
2024年は张艺谋(チャン・イーモウ)監督の最新作『第二十条(2024)』や大ヒットサスペンス『黙する者が生きし場所(2024)』に出演した。

中国映画レビュー&解説「熱烈 热烈 One and Only」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「中国卓球~窮地からの反撃~ 中国乒乓之绝地反击 Ping Pong: The Triumph」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「93國際列車大劫案:莫斯科行動 Moscow Mission」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「第二十条 Article 20」 - daily diary
中国映画レビュー&解説『黙する者が生きし場所 / 黙殺~沈黙が始まったあの日~』「默杀 A Place Called Silence (2024)」 - daily diary
甘昀宸(ガン・ユンチェン)
◯ 対空砲隊の一員、梅德福。
◯ コメディ俳優として知られていて『我为喜剧狂(2014)』で知られるようになる。映画の出演も多く、『薬の神じゃない! (2018)』、『素晴らしき眺め(2022)』、『ボーン・トゥ・フライ(2023)』、今作主演の胡歌(フー・ゴー)が主演した『来し方 行く末 / 耳をかたむけて(2023)』 などがある。2024年はヒットドラマ『边水往事 (2024) 』、そして高い評価のアート系映画である『最高でも、最低でもない俺のグッドライフ(2024)』に出演している。

中国映画レビュー&解説「薬の神じゃない! 我不是药神 Dying to Survive ニセ薬じゃない!私は薬の神ではない」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「素晴らしき眺め 奇跡の眺め 奇迹·笨小孩 Nice View」 - daily diary
中国映画レビュー&解説 「ボーン・トゥ・フライ 长空之王(長空之王)Born to Fly」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「来し方 行く末 / 耳をかたむけて 不虚此行 All Ears」 - daily diary
中国映画レビュー&解説『最高でも、最低でもない俺のグッドライフ』「走走停停 Gold or Shit / G for Gap(2024)」 - daily diary
尹正(イン・ジェン)
◯ 日本軍兵士・大河原。中国語が話せる。
◯ 「開心麻花」および沈腾(シェン・トン)とは彼らの映画デビュー作『夏洛特烦恼(2015)』への出演以来、『恥知らずの鉄拳(2017)』や『ペガサス/飛馳人生(2019)』シリーズと『四海 (2022)』への出演するなど、深いつきあいである。
その他、主演作『夜鶯 ―ある洋館での殺人事件―(2021)』のほか、『僕らが空を照らしたあの日(2021)』や『唐人街探偵1900(2025)』などにも出演している。
ドラマではヒット作『麻雀(2016)』に出演、京劇を描いた美しい名作ドラマ『君、花海棠の紅にあらず(2020)』で主演している。
昨年は良作『シータイ・戯台~笑劇の霸王別姫~ (2025)』で、京劇俳優を再び演じたほか、『得闲谨制 (2025) 』や主演作『点到为止 (2025) 』の他、731部隊を描いた本格派ドラマ『反人类暴行 (2025) 』にも出演。今年の春節ではシリーズ最新作『飞驰人生3 (2026) 』に出演した。

中国映画レビュー&解説『夏洛特烦恼』「Goodbye Mr.Loser(2015)」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「僕らが空を照らしたあの日 燃野少年的天空 The Day We Lit Up The Sky」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「四海 Only Fools Rush In」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「夜鶯 ―ある洋館での殺人事件― 扬名立万 Be Somebody」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「ペガサス/飛馳人生 飞驰人生 Pegasus」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「いいひと 保你平安 Post Truth」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「飞驰人生2 Pegasus 2」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「唐人街探偵1900 唐探1900 Detective Chinatown 1900」 - daily diary
中国映画レビュー&解説「シータイ・戯台~笑劇の霸王別姫~ 戏台 The Stage (2025)」 - daily diary
中国映画レビュー&解説『飞驰人生3』「Pegasus 3(2026)」 - daily diary
【映画タイトルと主人公の名】
タイトル『得闲谨制』とは脚本の蘭暁龍による造語で、一見すると「得闲=余裕ができたら、謹製=制作する品」といった、ありそうで無い不思議な意味に読める。
一方で、主人公の名も莫"得闲"となっていて、「得闲が制作した品」と読めると同時に、名前自体が四川や重慶での方言「莫得(モウダ、無い)」+「闲」で「闲(閑)が無い」と読めるようになっている。劇中では、ようやく落ち着く場所を得た莫得闲が、竹の竿にこの「得闲谨制」を焼き付けている。
【村の名前:戈止鎮】
主人公・莫得闲達が居付くことにする廃村の名は戈止鎮という。戈(武器)を止める鎮(村)という意味で、これは孔子編纂伝の歴史書『春秋』の代表的注釈書『左伝』での名言に由来する。
潘党曰:‘臣闻克敌必示子孙,以无忘武功。
(部下の潘党が言いました。「王よ、私は聞いております。敵に勝ったときは、必ずその武功を記念する塚(京観)を建てて子孫に見せ、我が国の偉大な武功を永遠に忘れさせてはならない、と」)
楚子曰:‘非尔所知也。 夫文,止戈为武。
(楚の王は言いました。「お前の知るところではない(お前は本当の武というものを分かっていない)。およそ文字というものは、『戈(ほこ)』を『止』めると書いて『武』と為すのだ」)
戈止鎮とは『左伝』の精神での「真の“武”とは、戦争を終わらせること」に則った「戦争を終わらせる町」という意味になっている。
あわせて読みたい関連記事