我经过风暴 The Woman in the Storm: 豆瓣
【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
www.youtube.com 《#我经过风暴》发布终极预告 佟丽娅深陷家暴折磨【预告片先知 | Official Movie Trailer】
【スタッフ & キャスト】
2023年 中国 101分
監督: 秦海燕（チン・ハイイェン）
出演: 佟丽娅（トン・リーヤー）、吴昱翰（ウー・ユーハン）、王影璐（ワン・インルー）、张宥浩（ジャン・ヨウハオ）、黄璐（ホァン・ルー）、艾丽娅（アイ・リーヤー）
【あらすじ】
2014年の中国。徐敏【佟丽娅（トン・リーヤー）】は陈均【吴昱翰（ウー・ユーハン）】と離婚しようとしたが、認められなかった。理由はDV。当時の中国では決定的な証拠を提出しない限り、DVでの離婚はまず認められなかった。弁護士のインターンである李小萌【王影璐（ワン・インルー）】も、最初は冷淡な対応をしていたが、徐々に陈均のDVがいかに酷いものかを知り、徐敏を救い出そうと動き出すのだが…
【感想】
夫の苛烈な暴力と、そこからの離婚手続きがいかに酷く、いかに女性の権利が守られていないかをこれでもかと見せつける、まさに女性による女性のための告発映画だ。
ただし劇中での設定は2014年であり、劇中でも2016年に法改正によって改善されたことがアナウンスされるので、女性たちが現在もなお全く同じ状況にあるわけではない。とはいえそれでドメスティック・バイオレンス（家庭内暴力）の問題が100%クリアになったとは到底思えないし、似たような事件は今も発生しているだろう。だからこそ結構な高評価も得ているし、今もなおこの映画を作って公開する意味はあると思う。
とはいえ、この映画を見るのはまあまあ過酷だ。しかもハッピーエンドでもない。
後半に大きなクライマックスが用意されていて、商業映画として成立させる事を狙っているのは明らかだが、カタルシスが得られる種類のものでもないし、これを手放しで称賛できる人は限られるかもしれないなと思ってしまった。
オープニングは佟丽娅（トン・リーヤー）演じる徐敏が、離婚調停が認められなかったところから始まる。それでも再度申し立てしようと食い下がる徐敏に、手続きを請け負っていた弁護士とインターンの李小萌【王影璐（ワン・インルー）】も、とにかくはっきりと暴力を振るっている事がわかる証拠が無ければ、基本的に認められないと諦めモードでの説得だ。夫、陈均【吴昱翰（ウー・ユーハン）】も事務的に受け止め、仕方ないかと家へと戻ることになる。
ここまでは他のドラマでもありそうなシーンだ。だが今作は、ここから一気に映画のアクセルが踏み込まれていく。外では落ち着いて対応していた夫、陈均が、家庭内では豹変する。特に言い合いから口論になり、ヒートアップしていくと、途端にタガが外れ歯止めが効かなくなっていく。
しかも質が悪いことに、彼はひとしきりブチ切れた後に泣きながら謝罪を始めるのだ。二人の幼い子ども隣室も寝ている深夜の部屋で…まさに地獄という他ない事態が、劇中で形を変えて繰り返される。
だが、本作はまさにこの地獄こそを知らしめる為に作られている。だから、こういった描写が容赦なく繰り出され、エスカレートしていく。周囲の人々の無理解、昼の忙しい仕事、子供たちとのやり取り…リアルだし、見ているだけで息が詰まり叫びだしたくなるような状況に追い詰められている事を、観客に見せつけてくる。
秦海燕（チン・ハイイェン）監督は、友人に起こったDV被害をきっかけに本作の制作を決意し、数多くの取材から脚本を書き上げていて、たとえば離婚がようやく成立したのにまたDV夫の元へと戻ってしまうような、周囲からは一見理解しがたい妻の行動原理なんかも、とても自然に脚本に落とし込んである。101分とタイトにまとめてもあって、脚本家の手腕はさすがと思わせてくれる。
妻・徐敏を演じた佟丽娅（トン・リーヤー）がまさに熱演していて、この映画を背負って立つ気迫が立ち上がってくるようであった。特に昼間の仕事での姿が、セレブである佟丽娅（トン・リーヤー）らしい、溌剌として高収入でポジティブなイメージに作られていて、より一層"家庭という地獄"へと帰ってからの落差を際立たせていた。
夫・陈均役の吴昱翰（ウー・ユーハン）も、一見上品で穏やかそうだが神経質で、怒らせるとヤバそうなサイコ感を漂わせた雰囲気が、非常に上手い。画面に映るだけでピリッとさせる存在感があった。
王影璐（ワン・インルー）演じるインターン・李小萌は非常に良い役割で、絶対に必要な存在なのだが、少々インターン的すぎるというか、様々な失態を繰り返していて、見ていてイライラしてしまうのが残念だった。これは脚本=監督の問題でもあるし、当時の弁護士の無理解ぶりも反映されているのかもしれないのだが、孤軍奮闘する主人公をしてこの新人弁護士は、さすがに可愛そうであった。
驚くのは夫の母を艾丽娅（アイ・リーヤー）が演じている点だ。筆者にとってはあの「宇宙探索編集部（2021）」以来なので、こんなところで見るとはという新鮮な発見であった。
映画としては、特殊詐欺の「孤注一掷（2023）」や孤児問題の「ネバーギブアップ（2023）」などに近い、ワンテーマのエンタメ映画として最後まで突っ走る、ちょっと古典的な作風だ。だが監督と制作チームの強い意志がビンビン伝わってくる、見ない訳にはいかない熱い映画だった。
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【トピック】
◯ 2023年8月17日に中国で一般公開。公開初週の興収ランキングは5位。特殊詐欺を描いてスーパー大ヒットしていた「孤注一掷」や「封神～嵐のキングダム～」、黄渤（ホァン・ボー）の「学爸」、「MEG ザ・モンスターズ2」などに抑えられていたが、翌週には「MEG2」を超えて4位を記録した。興行収入は1.8億元（39億円）。
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◯ 監督・脚本の秦海燕（チン・ハイイェン）は、「最後の晩餐（2013）」、「ソウルメイト／七月と安生（2016）」、「失踪、発見（2018）」、「ゴッドスレイヤー 神殺しの剣（2021）」、「万里归途（2022）」など、数々のヒット作で脚本を担当。一方で出資するなどの形で制作に携わっていた。
今作が初の長編監督作となる。
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佟丽娅（トン・リーヤー）
◯ 二児の母である徐敏。夫のDVに耐えかねて離婚を計画するが、制度の壁に阻まれて大変な苦労をする。
◯ 佟丽娅（トン・リーヤー）は、新疆ウイグル自治区出身。大ヒットドラマ「宮 パレス 〜時をかける宮女〜（2010）」や「クィーンズ 長安、後宮の乱（2009）」などで知られる。ヒットドラマ「北京爱情故事 (2012) 」や映画「唐人街探偵」シリーズで知られる陈思诚（チェン・スーチェン）と結婚したが離婚。それまでは「唐人街探偵 NEW YORK MISSION（2018）」などの夫が関わる作品に出演することが多かった。
主な作品は、雷佳音（レイ・ジャーイン）とW主演のタイムスリップコメディ映画「ルームシェア～時を超えて君と～（2018）」、主旋律映画「革命者（2021）」、大ヒットSF「流転の地球 -太陽系脱出計画-（2023）」など。
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吴昱翰（ウー・ユーハン）
◯ 夫・陈均。普段は穏やかだが、典型的なDV夫だった。
◯ 吴昱翰（ウー・ユーハン）は俳優だが監督もやっていて、主に喜劇集団・開心麻花で舞台監督を務めている。開心麻花の舞台「李茶的姑妈（2018）」を監督し、映画化の際も監督した。「父に捧ぐ物語（2021）」《少年行》編では大人になった主人公を演じた。
任素汐（レン・スーシー）主演の喜劇「半个喜剧 (2019) 」では中国金鶏奨・主演男優賞にノミネートされた。
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王影璐（ワン・インルー）
◯ 弁護士のインターンで徐敏の離婚調停を担当する李小萌。
◯ 上海を舞台にした洒落た良作な映画「白さんは取り込み中（2021）」でのカフェで働く息子の彼女役や、ドラマ「最后的真相（2022）」や「天才基本法 (2022) 」、「异人之下 (2023) 」に出演。
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艾丽娅（アイ・リーヤー）
◯ 陈均の母。暴力的な躾をしてきた。
◯ 1980年代から活躍するモンゴル族の俳優で、周曉文（チョウ・シャオウェン）監督「麻花売りの女（二嫫、1994）」で華表奨/金鶏奨を受賞する高評価を得る。王小帅（ワン・シャオシュアイ）監督「在りし日の歌（2019）」にも出演。最近の高評価のドラマ、「去有风的地方（2023）」や「平凡之路（2023）」などにも出演している。
なんといっても昨年の話題作「宇宙探索編集部（2021）」での口やかましい事務員役が記憶に新しい。
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傅迦（フー・ジア）
◯ 李小萌のインターン先となる弁護士。離婚調停を専門にする。
◯ 1980年代から俳優として活動し、人気ホームコメディドラマ「家有儿女 (2005) 」や「咱们结婚吧 (2013) 」などに出演しているが、大ヒットドラマ「慶余年（2019）」に出演した事であらためて活躍の場所が広がってきた。k-popグループf(x)のビクトリアが主演する「働く女子流ワタシ探し（2020）」や刘亦菲（リウ・イーフェイ）主演「去有风的地方 (2023) 」などに出演している。
黄璐（ホァン・ルー）
◯ 徐敏の友人である柳楠。
◯ 友情出演である黄璐（ホァン・ルー）は、ヴェネチア国際映画祭コンペティション出品のスリランカ映画「Ahasin Wetei（2009）」やロカルノ国際映画祭グランプリ作品「She, a Chinese（2009）」、ロッテルダム国際映画祭出品のオランダ映画「How to Describe a Cloud (2013) 」、中国の人身売買を描いた「盲山 (2007) 」、大阪アジアン映画祭で上映され、香港金像奨・助演女優賞ノミネートの香港映画「Ｇ殺（2018）」などなど、世界各国の映画出演経験がある。
また、今作監督の秦海燕（チン・ハイイェン）とは、監督の初脚本作品「结果 (2006) 」以来の関係である。
张宥浩（ジャン・ヨウハオ）
◯ 李小萌の彼氏。
◯ 张一白（チャン・イーバイ）がプロデューサーを務めた古装劇「永遠の桃花（2017）」で知られるようになる。その流れで彼によるドラマ「风犬少年的天空（2020）」とその映画版「僕らが空を照らしたあの日（2021）」に出演。
その他、映画「1921（2020）」や「了不起的老爸（2021）」、「再见，少年（2021）」などに出演している。最近では刘昊然（リウ・ハオラン）主演「四海（2022）」や、雷佳音（レイ・ジャーイン）主演「交换人生（2023）」、昨年末にはBLEACHのコスプレや日本ロケで話題の「涉过愤怒的海（2023）」に出演と、特に映画で活躍を始めている期待の若手だ。
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