【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
タイトな作り、笑いあり&豪華ゲストあり、そして何よりも谢苗(シェー・ミャオ)の素晴らしいアクションを満腹になるまで堪能できる最高の映画。春節映画らしさとアドレナリン全開を見事両立させている今年ベスト級の傑作。

www.youtube.com Fight Against Evil 3 (2026) 东北警察故事3 - Movie Trailer - Far East Films
【スタッフ & キャスト】
2026年 中国 100分 豆瓣評価:7.4/10
監督: 杨秉佳(ヤン・ビンジア)
出演: 谢苗(シェー・ミャオ)、林晓杰(ダイアナ・リン)、崔志佳(チェ・ジージア)、黄米依(ファン・ミーイー)、伍允龙(伍允龍 / フィリップ・ン)、马千壹(マー・チェンイー)
【あらすじ】
主人公・李红旗【谢苗(シェー・ミャオ)】は妻との結婚式を挙げる計画をしていた。簡素にしたいと話していたが義母【林晓杰(ダイアナ・リン)】は豪華な式を希望して、妻に内緒で李红旗はひとり妻の実家へと来ることに。だが、道中で知り合った陽気な高校生・刘昕昕がその後行方不明になった事を知る。豪快な性格の義母と式の準備をしながら、高校生の行方が心配な李红旗は地元警察に連絡を取る。
【感想】
タイトな作り、笑いあり&豪華ゲストあり、そして何よりも谢苗(シェー・ミャオ)の素晴らしいアクションを満腹になるまで堪能できる。ネット映画の人気シリーズが劇場版となった中国アクション最新作。春節映画らしさとアドレナリン全開を見事両立させている今年ベスト級の傑作。
春節の時期は中華圏の映画界にとっての書き入れ時で、毎年多くの大作が公開される。今年も「飞驰人生3 (2026) 」や「驚蟄無声 スケア・アウト(2026)」など、大ヒット作が生まれた中で公開された本作は、期待もそこそこ、興行収入もそこそこな結果になった。
だが、実際の出来は予想を遥かに上回って面白かった。豆瓣で7.4/10と観客の評価も極めて高い。こんな良作が知られずに埋もれて良い筈がないし、特に主演の谢苗(シェー・ミャオ)は、もうすぐあの谷垣健治監督による期待大のアクション映画「火遮眼 / The Furious(2025)」でも主演しているという、まさに「今チェックしておかないでどうする」タイミングだ。是非とも一度見て欲しいおすすめ映画だ。

*知名度は無いが高いクオリティ
春節映画での成績がそこそこなのは、ひとえに知名度の問題だろう。谢苗(シェー・ミャオ)という俳優も、このシリーズ「東北警察物語」も、たぶんまだまだ全然知らない人が多い。このシリーズは中国でも前2作ともに爱奇艺(iQIYI)の独占配信のみとなるオリジナル・ネット映画で、その2作が極めて高い評価を受け、今回劇場版として第3作が作られた。
日本でも、最近の谢苗(シェー・ミャオ)といえばこれまた秀逸な時代劇「盲剣楼(2022)」&「盲剣楼 無明の執行人(2024)」はDVD発売&配信されていて評価も高いが、この「東北警察~」シリーズはまだまだ知られていないだろう。
シリーズ前2作もそのアクション描写で異例の高評価を得ていて、言ってみれば韓国でヒットした「犯罪都市」シリーズの中国版といった存在だろうか。9歳でジェット・リーの子供時代を演じていた谢苗(シェー・ミャオ)ならではの、MMA要素も取り入れた素晴らしいテクニック。そして香港映画を支えていた秦鹏飞(チン・ポンフェイ)監督以下、製作陣の香港アクション直系の映像表現。そして中国黒社会という、映画にぴったりの舞台装置。これら全てを90分のタイトな時間で一気に見せきる、素晴らしい良作だ。

*随所に香港映画らしい味
シリーズ各作品とも、主人公の設定などは継続しているので、本作でも彼が孤児院出身や彼女の存在など、多少は知っている方がより楽しめるが、まあ難しい設定でもないので知らなくてもまったく問題ない。
今回大きく違うのは、春節映画らしく、特に香港の春節映画(賀歳片)を思わせる、ドーンと喜劇として作られているところだ。観客のレビューでもいわゆる「港片味」と言われる香港映画テイストが数多く挙げられている。オープニングからトラブルに巻き込まれ、何故か空港で犯人を追いかける谢苗(シェー・ミャオ)演じる李红旗刑事。今まで以上にポップなノリでベタ~なドタバタコメディが展開されるのも、「港片味」っぽいとも言える。
今回相棒となるのは林晓杰(ダイアナ・リン)が演じる主人公の義母なのだが、まあ良く喋り、豪快で、顔が広い、典型的な田舎のお母さんで、寡黙な主人公との組み合わせも最高だ。彼女は、易烊千玺(イー・ヤンチェンシー / ジャクソン・イー)が驚異的な名演を見せた「小さな私(2024)」でも陽気な祖母を演じていて、明らかにその役を意識した設定だろう。
だがそうやって大笑いしながら見ていると、後半からガラッと変化していき、賀歳片路線から外れていく。是非楽しみにして欲しい。

*伍允龍(フィリップ・ン)という最高のゲスト
ゲストとして登場するのは香港側からの次世代のトップ、伍允龙(伍允龍 / フィリップ・ン)。香港直系で次世代のアクションスターである谢苗(シェー・ミャオ)の相手役に相応しいのだが、ここでもまた漁師の頭目という役のキャラ作りがもう、まんま「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦(2024)」での役・王九を意識しまくってて、もうニヤニヤしっぱなしで楽しめる。
そんな座組なので、本作のアクションが間違いないレベルなのは見る前から想像できるだろう。実際、出演者各人の技術だけでなく、シーン毎に全体を見渡せる広角映像を使って、リアルアクションである事をきちんと見せてくる。無駄にアップを多用せず、カットを割らず、シンプルに誰が何をしたのかをはっきりと見せる事で、技術の高さをはっきりと伝えてくれる。この見せ方は、なんなら甄子丹(ドニー・イェン)の迫力を強調したアクションよりわかりやすくて間口が広く、むしろ好みと感じる人もいると思う。
とにかく、書ききれないほどの魅力に溢れた作品で、あっという間に1時間半が過ぎるだろう。前2作は一応、爱奇艺(iQIYI)の日本版サイトで配信されているのだが、残念ながら字幕のクオリティなどでなかなか勧めにくい。もし本作も同じ運命を辿るのだとしたら、誠に忍びない。もし本作が日本公開されないのだとしたら、それはアクション映画ファンにとってかなりの損失だろう。90年代香港アクションの血統を今も受け継ぐ映画として、ぜひ多くの人に見てほしいし、この最高のタイミングで日本公開をして欲しい傑作だ。
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【トピック】
◯ 春節より少し早めのタイミングとなる2026年1月30日に中国本土で公開。公開初週の興収ランキングは、大ヒットの「ズートピア2(2025)」や彭于晏(エディ・ポン)主演のコメディ「爆水管 (2026) 」などに次ぐ10位を2週間維持した。興行収入は2249万元(5.2億円)。
◯ 現在のところ日本公開の予定はない。
◯ 監督の杨秉佳(ヤン・ビンジア、画像左)は、 「奇門遁甲(2017)」や同名作品「奇门遁甲 (2020) 」などで脚本を担当してきたが、本シリーズ「東北警察物語Ⅰ&Ⅱ (2021、2022)」で脚本を担当し、同じく谢苗(シェー・ミャオ)主演の時代劇「盲剣楼(2022)」で初監督。「東北警察~」の2作目でも共同監督も務め、本作が3作目の監督作となる。
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谢苗(シェー・ミャオ)
◯ 李红旗(九哥)。山東省浜州の警官をしている。幼少期に養護施設で育った。
◯ 1984年生まれだが、既にアクション俳優として30年のキャリアを持つ本格派。9歳の時、既にアクションをする子役として李連杰(ジェット・リー)主演の「新・少林寺伝説(1994)」に出演、翌年にも「D&D/完全黙秘(1995)」で彼の子供役を演じて、頭角を現す。この年、既に主演映画「小飛俠 (1995) 」が作られたほか、周潤發(チョウ・ユンファ)主演「ゴッド・ギャンブラー 完結編(1994)」にも出演している。
監督の王晶(ウォン・ジン / バリー・ウォン)は長期契約を用意したが、両親の希望により辞退して学業に専念。中国制作の大ヒット古装劇「大明宮詞(2000)」や「宰相小甘罗 (2001) 」に出演した程度で、大学も首都体育学院に進学した。
大学卒業後、本格的にアクション俳優としてのキャリアを開始、鮑国安(バオ・グオアン)&黄秋生(アンソニー・ウォン)主演の「少林寺传奇 (2007) 」シリーズ、徐克(ツイ・ハーク)監督の「タイガー・マウンテン 雪原の死闘(2014)」、大鹏(ダーポン)主演の「奇門遁甲(2017)」などに出演。2010年代後半からは「西遊記 孫悟空vs7人の蜘蛛女(2018)」、「少林寺 十八の羅漢(2019)」、「武神(2020)」、「イップ・マン 立志(2021)」などなど、多くの中国製アクション映画で主演を張れる俳優として確立した。
本シリーズ以外にも、盲目の剣士を演じた時代劇映画で、本作の秦鹏飞(チン・ポンフェイ)がアクション監督を務めた「盲剣楼(2022)」が高く評価され、続編「盲剣楼 無明の執行人(2024)」も公開。それ以外にも「捉刀人 (2024) 」など多くの作品に主演で撮影し、2024年は5本の主演作が公開される。そして今年は、「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦(2024)」でアクション監督を務めた谷垣健治の監督による主演作「火遮眼 / The Furious(2025)」の公開が予定されている。

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林晓杰(ダイアナ・リン)
◯ 妻の母親・王秀琴。結婚式の準備をして欲しいと李红旗を呼ぶ。
◯ 非常に面白いキャリアを持つ俳優だ。1962年ハルビン生まれ。映画「人生没有单行道 (1984) 」で俳優デビューするし、「女人的故事 (1988) 」での演技などが評価されるも、1996年で一旦俳優業を休業。
20年後の2016年、オーストラリアでのドラマ「The Family Law(罗家、1996)」への出演で俳優業を再開。2シーズンに出演した後、今度はオークワフィナ主演でゴールデングローブ賞受賞のアメリカ映画「フェアウェル(2019)」に出演した。
その後、今度は中国の大ヒットドラマ「ロング・シーズン(2023)」、そして「見習い弁護士パン・イエン(2023)」に出演し、中国でも再び知られるようになった。中国映画への出演は本作が実に34年ぶりとなる、易烊千玺(イー・ヤンチェンシー / ジャクソン・イー)が脳性まひ患者を演じた傑作「小さな私(2024)」で、印象的な祖母の役を演じた。

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崔志佳(チェ・ジージア)
◯ 地元警察の刑事である孙彪。
◯ 1989年生まれで、コメディで活躍する俳優だ。2010年に今や有名俳優でもある乔杉(チャオ・シャン)、潘斌龙(パン・ビンロン)らと共にコント番組「爱笑会议室(2010)」に出演。贾玲(ジア・リン)が司会し、沈腾(シェン・トン)や岳云鹏(ユエ・ユンポン / ユエ・ユンパン)が出演のお笑い番組「欢乐喜剧人」に出演するなど、芸人として知られている。映画には大鹏(ダーポン)の初監督作「煎饼侠 (2015) 」や「火锅艺术家 (2025) 」などに出演している。

黄米依(ファン・ミーイー)
◯ タイからの移民で、市場で魚を売っている秦叶蓉。
◯ 1994年生まれ。オーディション番組「演员的品格(2018)」に出場した事で知られるようになる。ヒットドラマ「バッド・キッズ 隠秘之罪(2020)」、映画「エイト・ハンドレッド(2020)」などへの出演を経て「永安鎮の物語集(2021)」で中国金鶏奨・助演女優賞を受賞した。
その後「ブラックドッグ(2024)」、ドラマ「山花烂漫时 (2024) 」などに出演している。

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伍允龙(伍允龍 / フィリップ・ン)
◯ 漁師たちのボス・卖鱼佬
◯ 1977年アメリカ生まれ。父親がアメリカ・シカゴで伍家國術會という道場を開いている武術家であるアメリカ系中国人で、幼い頃から中国武術に親しみ、蔡李佛拳の6代目弟子となる。13歳より詠春拳を習いはじめ、16歳の時に単身香港へと戻り、葉問の弟子でありブルース・リーが師事した黃淳樑の元で更に鍛錬を重ねるという、カンフーの世界でも王道中の王道を極めたエリートといえるキャリアを重ねてきた。
2000年頃からスタントやアクション俳優、武術指導として芸能界に参画。映画では「悪戦(2014)」や、ブルース・リーを演じた「バース・オブ・ザ・ドラゴン(2016)」、「追龍(2017)」、「ダブルフェイス 潜入者(2019)」などに出演している。
彼もまた、大ヒット映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦(2024)」で敵役・王九(ウォンガウ)役として素晴らしい存在感を見せつけた。以降も「スタントマン(2024)」、「ヒット・エンド・ファン!臨時決闘(2025)」などに出演している。

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马千壹(マー・チェンイー)
◯ 行きの飛行機内で知り合った高校生・刘昕昕。
◯ 2011年生まれで、既に1歳の時から范冰冰(ファン・ビンビン)主演「一夜惊喜 (2013) 」に出演するなど、子役として活動を始める。「薬の神じゃない!(2018)」や「三大队(2023)」、ドラマ「无尽的尽头 (2025) 」などのヒット作にも出演している。

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