中国映画レビュー&解説「無言の激昂 暴裂无声 Wrath of Silence」

暴裂无声 (豆瓣)

無言の激昂 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

 

【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】

2017年作。監督の鮮烈なデビュー作「心迷宮(2014)」をより暴力的、よりファンタジックに突き詰めたような、ダークなクライムサスペンス。内モンゴルの荒涼とした大地、そして宋洋(ソン・ヤン)の台詞ゼロのノワール的・圧倒的な存在感。

 

 

 

無言の激昂 暴裂无声


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【スタッフ & キャスト】

2017年 中国 120分
导演: 忻钰坤(シン・ユークン)
主演: 宋洋(ソン・ヤン)姜武(チアン・ウー / ジャン・ウー)袁文康(ユエン・ウェンカン)谭卓(タン・ジョオ)王梓尘(ワン・ジーチェン)安琥(アン・フー)

 

 

 

【あらすじ】

言葉が話せない障害を持つ鉱山労働者の张保民【宋洋(ソン・ヤン)】。ある日息子が行方不明になり、ビラを貼って歩き、写真を持ち必死に息子を探して回る途中で、街の有力者・昌万年【姜武(チアン・ウー / ジャン・ウー)】が採石場で喧嘩をしている場面に巻き込まれてしまう。
有力者でありながら粗暴な面が見え隠れする昌万年、実は彼には大きな秘密があったのだ。

 

 

 

【感想】

監督の鮮烈なデビュー作「心迷宮(2014)」をより暴力的、よりファンタジックに突き詰めたような、ダークなクライムサスペンス。内モンゴルの荒涼とした大地、そして宋洋(ソン・ヤン)の台詞ゼロのノワール的・圧倒的な存在感。

この映画は日本では一度上映されただけだが、中国ではレビューサイト・豆瓣で8.2点など高く評価され、主演の宋洋(ソン・ヤン)だけでなく、姜武(チアン・ウー / ジャン・ウー)、袁文康(ユエン・ウェンカン)ら出演者たちそれぞれのプロフィールでも代表作のひとつに挙げられる作品として、よく名前を見る映画であった。
たしかに期待に違わぬ中国らしい泥臭いノワール味、そして孤高のヒーローとして強烈なキャラクターを持つ主人公で、高評価も納得の忘れ難い映画として完成していた。

 

無言の激昂

 

とにかく宋洋(ソン・ヤン)が演じる主人公・张保民が印象的だ。真っ黒に日焼けし泥だらけの顔をした、他の作品とは全く違う印象。しかも事故により言葉が話せないという、劇中で一切の台詞が無い役なのだ。そのため、随所でグッと目を剥いて睨み付けるなど、より強い表情でいつもの穏やかで理知的な印象とは全く違う雰囲気を醸し出す。
言葉のせいもあり、周囲の意見も耳に入らず常に1人で行動する事で、理不尽で汚れきった田舎の社会規範とも距離を置く、孤高の存在としてのキャラが成立していて、とても上手い設定だ。
子供を失って激しい怒りを見せる父親というのは、例えば「共謀家族(2019)」のように中国映画ではよく登場するが、本作の主人公はそれ以上に執念まで感じる激しさを持つ。

他のキャラクターもまた濃い味付けでいい。いかにも悪そうな田舎社長を姜武(チアン・ウー / ジャン・ウー)が演っていて、もう見るからにぴったりのハマリ役だし、その会社の顧問弁護士をしている袁文康(ユエン・ウェンカン)もまた、この土地では垢抜けているけど所詮は田舎の…というちょうど良いレベルの高級感があって、土埃が舞うこの土地でもはっきりとキャラクターが勝る、濃いめの味つけになっている。
特に、社長の手下・大金役の顔つきがいい。監督のデビュー作「心迷宮」でも苛められ役で出ているのだが、本作での半グレ的な粗野な風貌が遥かにハマっていて、劇中でのいつまでも主人公を追いかける陰湿で残忍な行動も相まって、とてつもなく印象的だ。

 

無言の激昂

 

ストーリーは「心迷宮」の村社会でのミステリー的な展開から、よりノワールで殺伐としたスリリングなものになっていて、暴力描写もハード、ヒリヒリした緊張感が最後まで続く。
主人公・张保民は失踪した子どものために、怪しい社長をどこまでも追いかけていくのだが、必死さと切実さが台詞も一切なしにビシビシ伝わってきて苦しい。

本作の忻钰坤(シン・ユークン)監督は、デビュー作の「心迷宮(2014)」が非常に上手い脚本による良作で、低予算・無名俳優だけながら口コミで興行成績を伸ばす程の非常に高い評価を得た。そこからの第3作めとなる本作もまた高い評価となったのだが、そもそも構想はデビュー作の前からあったそうだ。それが彼が生まれ育ったこの土地を舞台にしたものという事で、そう思うとやはり、この映画はこの荒涼とした風景あってこそなのだと感じる。
例えば陈凯歌(チェン・カイコー)監督のデビュー作「黄色い大地(1984)」とか「小さき麦の花(2022)」「ブラックドッグ(2024)」と同じような地域の、豊かとは言えない、はっきり言えば人が住まないような場所を舞台にして、それでも例えば贾樟柯(ジャ・ジャンクー)監督「長江哀歌(ちょうこうエレジー)(2006)」のように土地への愛着も伝わってくる。この土地に生きる者の矜持みたいなものを感じさせる、ロマンティックでもある重厚な映画だった。

 

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無言の激昂



 

 

【トピック】

◯ 本作は2017年7月27日のFIRST青年映画祭でワールドプレミア。2018年3月8日から日本で開催された中国映画祭「電影2018」で上映された後、同年4月4日から中国で一般公開された。興行収入は5426万元(11.1億円)。

screenonline.jp

 

 

 

◯ 忻钰坤(シン・ユークン)監督は、デビュー作の東京国際映画祭中国現代映画特集2016でも上映されたサスペンス「心迷宮(2014)」が高い評価を得て、台湾金馬奨でも新人映画監督にノミネートされた。第2作「再见,在也不见 (2015) 」を経た3作目の本作も高評価となり、周冬雨(チョウ・ドンユイ)主演のネットメディアを題材にした第4作目「热搜(2023)」が2023年に公開された。

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◯ 撮影は内モンゴル自治区包頭(包头)市。監督の出身地でもある。
巨大な鉄鉱山であり、同時に価値の高いレアアースの世界最大の鉱脈でもあるバヤンオボー鉱区があり、中国第10位の国有製鉄企業・包頭鋼鉄もこの地を本拠としている。

skyticket.jp

4travel.jp

 

 

 

宋洋(ソン・ヤン)

◯ 主人公・张保民。鉄鋼工場で働いているが言葉を話せない。

◯ ピーター・ホー、エディ・ポンらが主演の歴史ドラマ「楊家将伝記 兄弟たちの乱世(2006)」で知られるようになり、「ソード・アイデンティティー(2011)」「ソード・アーチャー 瞬殺の射法(2012)」「ファイナル・マスター(2015)」などの武侠アクション映画への出演などで知られる。
「ジョンQ(2002)」のリメイク「误杀2(2021)」、ヴェネツィア国際映画祭出品作「不止不休(2020)」にも出演。
本作・忻钰坤(シン・ユークン)監督の次作「热搜(2023)」にも出演している。

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姜武(チアン・ウー / ジャン・ウー)

◯ 街の有力者・昌万年。

◯ 1967年生まれ。俳優でもある「太陽の少年(1994)」などの映画監督・姜文(チアン・ウェン)は実兄である。
駆け出しの頃に張芸謀(チャン・イーモウ)監督の名作「活きる(1994)」に出演しているが、知られるようになったのは風呂屋を描いた良作「こころの湯(1999)」で多くの映画賞を受賞してからだ。
この時期に香川照之も出演したカンヌ映画祭・審査員特別グランプリを受賞した兄・姜文(チアン・ウェン)監督の戦争映画「鬼が来た!(2000)」にも出演している。その後ドラマ「空镜子 (2001) 」「别了,温哥华 (2003) 」「小姨多鹤 (2009) 」などに出演。
その後は映画出演が増加、「我的唐朝兄弟 (2009) 」や姜文(チアン・ウェン)監督作「さらば復讐の狼たちよ(2010)」「罪の手ざわり(2013)」、劉德華(アンディ・ラウ)主演作「ショック ウェイブ 爆弾処理班(2017)」「エイト・ハンドレッド(2020)」「修羅の街、飢えた狼たち(2021)」、ヒットしたフェミニズム映画でDV夫を演じた「家出の決意(2024)」などに出演している。

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袁文康(ユエン・ウェンカン)

◯ 昌万年の顧問弁護士・徐文杰。

◯ 1999年にデビュー。映画「戦場のレクイエム(2007)」での演技が高く評価される。「ジョン・ラーベ 南京のシンドラー(2009)」に出演後、「北京爱情故事 (2012) 」「女医明妃伝(2014)」「解憂(かいゆう、2016)」「胭脂 (2016) 」、そして「繁花 (2023) 」などの数々のヒットドラマに出演している。
映画では「戦場の~」以外には「修羅:黒衣の反逆(2017)」や、韓国映画「女は冷たい嘘をつく(2016)」のリメイク「失踪、発見(2018)」、张子枫(チャン・ズーフォン / チャン・ツイフォン)、胡先煦(フー・シエンシュウ)主演のコメディ「穿过月亮的旅行(2024)」、张艺兴(レイ / チャン・イーシン)が主演の感動作「MUMU/不説活的愛(2025)」などに出演している。

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谭卓(タン・ジョオ)

○ 张保民の妻・翠霞

◯ 谭卓(タン・ジョオ)も多くの映画に出ている実力派。「ブレイブ 大都市焼失 / 烈火英雄(2019)」「薬の神じゃない! 我不是药神(2018)」が有名だろうか。本作と同時期に公開された「被光抓走的人(2019)」にも出演している。
最近の代表作は陈思诚(チェン・スーチェン)がプロデュースした東南アジアが舞台の良作サスペンスシリーズの第1作「共謀家族(2019)」

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王梓尘(ワン・ジーチェン)

◯ 昌万年の手下・大金。

◯ 本作監督の第1作「心迷宮(2014)」にも出演している。本作での印象的な演技で知られるようになり、本作の袁文康(ユエン・ウェンカン)も出演している「失踪、発見(2018)」「ワイルドグラス(2020)」、李子俊(ジョナサン・リ)監督の良作サスペンス「第八个嫌疑人(2023)」、現在ヒット中の映画「长安的荔枝 (2025) 」、ドラマではヒット作「棋士 (2025) 」や犯罪ドラマ「扫毒风暴 (2025) 」と、昨今徐々に出演作が増加してきている。

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安琥(アン・フー)

◯ 昌万年が買収した工場の工場長・李水泉。

◯ 主として歌手として活動している。本作以外にも俳優としても活動しており、迪丽热巴(ディリラバ)主演の犯罪ミステリードラマ「公诉 (2023) 」などに出演している。

 

 

 

 

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