香港映画レビュー&解説「把幸福拉近一點 Wish Comes True」

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【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】

「6人の食卓(飯戲攻心、2022)」の林明禎(リン・ミンチェン)が主演、古天樂(ルイス・クー)の天下一電影が製作、と惹かれる要素はあるが、予算も厳しいのが画面からも伝わってくる。恋愛より友愛、暖かさや絆にフォーカスした穏やかな小品。

 

 

 

把幸福拉近一點


www.youtube.com 《把幸福拉近一點》終極預告 10月24日 活出精彩

 

 

 

【スタッフ & キャスト】

2024年 香港 94分
監督:凌志民(リン・チーマン)
出演:凌文龍(リン・マンロン)林明禎(リン・ミンチェン)林芊妤(コーヒー・ラム)梁雍婷(レイチェル・リョン) 羅浩銘(ケン・ロウ)黃浚銘(ボリス・ウォン)

 

 

 

【あらすじ】

かつて将来を嘱望された天才金融マンだった張子威【凌文龍(リン・マンロン)】は、恋人の李羨文【林芊妤(コーヒー・ラム)】と幸せで安定した生活を送っていた。だが彼は筋萎縮症(ALS)を発症。車椅子生活の上、将来を見失い絶望へと突き落とされる。
5年後、マッサージ師として仕事を始めたばかりのマレーシア人女性・梁小菲【林明禎(リン・ミンチェン)】は、張子威のマッサージ師として彼の所へやって来る。単なるリハビリとは違う、気持ちの療養によって彼は生きる希望を取り戻すのだが。

 

 

 

【感想】

「6人の食卓(飯戲攻心、2022)」の林明禎(リン・ミンチェン)が主演、古天樂(ルイス・クー)の天下一電影が製作、と惹かれる要素はあるが、予算も厳しいのが画面からも伝わってくる。恋愛より友愛、暖かさや絆にフォーカスした穏やかな小品。

昨秋の公開当時に本作の情報は見たが、結局その後に話を聞くことは無くなってしまっていた。だが、現代の香港らしさ、香港人らしさをとっても楽しいコメディで見せきり、現在歴代香港映画で3位の記録を樹立している名作「6人の食卓(飯戲攻心、2022)」で、最も印象的なキャラクターを演じていた林明禎(リン・ミンチェン)が主演した映画だし、製作は古天樂(ルイス・クー)の天下一電影だ。これは期待できそうだと、見てみることにした。

 

把幸福拉近一點


だが、映画として見せたかったのはそうでは無かったかもしれない。予告を見てもわかるが、ポスタービジュアルと違ってメインの何人かを割合均等に描いた群像劇に近い作りになっている。
天下一電影は確かにメジャー寄りの製作会社だが、少し前に見た「バイタル・サイン(2024)」などと同様に、小規模な若手俳優が主演する映画もきちんと手がけて、映画業界全体をバックアップしようという意図も垣間見える志の高い会社で、今回はむしろそうした意図から手がけている様に感じる。
本作は撮影から一般公開まで3年もかかっていて、難産だったと言えるので、むしろこうして見れた事だけでも喜ぶべきかもしれない。

確かに有名な俳優は、他に梁雍婷(レイチェル・リョン)くらいで、今や「白日の下(2023)」での知的障害患者役や「ラスト・ダンス(2024)」での記憶に残る遺族など、名バイプレイヤーとして人気俳優になった彼女も、3年前の撮影ならまだまだ知られ始めた頃だし、他には殆ど初めて見る俳優ばかりだが、皆それぞれに心暖まる良い演技をしている。
林明禎(リン・ミンチェン)演じる梁小菲の友人たちの無邪気に楽しい雰囲気も、学園ドラマ的な楽しさがあるし、豪勢な生活をしていた凌文龍(リン・マンロン)演じる張子威の周囲にいる人々も、筋萎縮症(ALS)というショッキングな事があってもなお穏やかに彼を支えていて、生きる事の価値を信じている素敵な関係だ。当初は少々鼻につくキャラだった張子威だが、そうした人々に慕われている事もまた、彼の印象をより良く感じさせてくれるようになっている。

 

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正直に言えばクオリティはあまり高くなくて、ストーリーの粗もあるし、主演クラスまで含めで演技のわざとらしさが目立つ。画質やロケにも低予算感がにじみ出ている、その割にイタリア・ベネチアでのロケ映像が入ってきて腰を抜かしそうになったり、突っ込みどころには事欠かない。小劇場でかかるインディー邦画みたいな感覚だろうか。そして、残念ながら日本で公開される事はまず無いだろう。
それを含めても、こうした作品や「女子監獄(2023)」みたいな昔ながらのB級バイオレンスなど、香港映画といってもまだまだ幅広い映画は作られているし、掘ろうと思えばまだまだ掘れる。たまにはこういうのを気楽に見るのもいいなと思わせられる、いい映画だった。

 

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【トピック】

◯ 当初は「願望扭蛋機」(願望ガチャ)というタイトルで、2023年9月16日からシカゴで開催された映画祭Asian Pop-Up Cinemaでワールドプレミア。翌週の9月23日から中国で開催されたシルクロード国際映画祭で上映された。1年後の2024年10月24日から香港で一般公開された。

 

 

 

◯ 監督の凌志民(リン・チーマン、画像左。出演者の羅浩銘(ケン・ロウ)と)は1976年生まれで、鄭保瑞(ソイ・チェン)監督のホラー映画「カルマ2(2002)」「香港国際警察/NEW POLICE STORY(2004)」などに参加した後、脚本家として「インビジブル・ターゲット(2007)」「レクイエム 最後の銃弾(2013)」「インテグリティ/煙幕(2019)」などに参加。
本作が初の監督作品となる。

 

 

 

 

凌文龍(リン・マンロン)

◯ 張子威。金融業界で成功し豊かな生活をしていたが、突然の筋萎縮症(ALS)発症によって大きく変化する。

◯ 1986年生まれ。香港を代表する劇団「香港話劇団」のメンバーとして、舞台で活動していたが、映画デビューとなる毛舜筠(テレサ・モウ)主演作「黃金花(2018)」で自閉症の息子を演じて香港金像奨・新人賞を受賞した。
その後「バーニング・ダウン 爆発都市(2020)」「夜校(2023)」、そして林明禎(リン・ミンチェン)が出演の「飯戲攻心2(2024)」などに出演している。

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林明禎(リン・ミンチェン)

◯ マッサージ体験から気に入られ、張子威の元へと定期的に通う事になった梁小菲。

◯ 1990年マレーシア・ペナン生まれでジョホール育ちのアイドル・歌手。2015年に台湾でデビュー。人気も高かったがコロナ禍中の2020年にレコード会社との契約を終了し、台湾を中心に演技・芸能活動をしている。20年の契約終了時、日本に行って芸能以外のビジネスを始める事を検討していたそうだ。
映画も、「霊幻道士 こちらキョンシー退治局(2017)」「ザ・フェイタル・レイド(2019)」「ワン セカンド チャンピオン(2020)」などほぼ毎年出演していたが、黃子華(ダヨ・ウォン / ウォン・ジーワー)主演の大ヒット作「6人の食卓(飯戲攻心、2022)」と続編「飯戲攻心2(2024)」での印象的なキャラで一気に知られる事となった。

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林芊妤(コーヒー・ラム)

◯ 張子威と以前付き合っていたが、筋萎縮症(ALS)発症に際して別れた李羨文。

◯ 1989年生まれで、無綫電視(TVB)でバラエティ・タレントや俳優として、後に映画化もされたヒットドラマ「恋するパイロット2(2012)」 や、「談情說案(2010)」「護花危情(2012)」などの数多くのドラマ出演をしていたが、現在はフリーで活動する他、自身のYoutubeチャンネルでも多くの視聴者を持っている。

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梁雍婷(レイチェル・リョン)

◯ 梁小菲の友人で、みんなでビジネスをしようと計画する華女。

「どこか霧の向こう(2017)」での猟奇的な少女を演じて香港金像奨新人賞ノミネート。
名匠陳木勝(ベニー・チャン)の遺作アクション「レイジング・ファイア(2021)」などにも出演しているが、特に香港新世代映画の良作「縁路はるばる(2022)」でさらに知られる事となる。
以降「流水落花(2022)」「燈火(ネオン)は消えず(2022)」「正義迴廊(2022)」「年少日記(2023)」 と立て続けに新世代の映画に出演。「白日の下(2023)」での素晴らしい演技で香港金像奨・助演女優賞を受賞した。
昨年も高齢LGBTQがテーマの映画「從今以後(2024)」とスーパー大ヒット作「ラスト・ダンス(2024)」「スタントマン 武替道(2024)」に出演し、名脇役としての地位も確率しつつある。

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