香港映画レビュー&解説「バイタル・サイン 送院途中 Vital Signs」

送院途中 - 維基百科,自由的百科全書

バイタル・サイン - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

 

【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】

救急救命士の物語でもあり、移民制度などの香港が抱える生きづらさを描いた社会派のドラマにもなっている。今最も旬な若手俳優、游學修(ネオ・ヤウ)と袁澧林(アンジェラ・ユン)が胸に残る素敵な演技を見せていて、世代交代を感じさせる佳作。

 

 

 

送院途中送院途中


www.youtube.com 《送院途中》電影預告 定檔5月1日上映 尋回心跳 古天樂 游學修 潘燦良 飾演救護員 探索生死課題

 

 

 

【スタッフ & キャスト】

2023年 香港 97分
監督:卓韻芝(ヴィンシー・チェク)
出演:古天樂(ルイス・クー)游學修(ネオ・ヤウ)袁澧林(アンジェラ・ユン)潘燦良(プーン・チャンリョン / パン・ツァンリョン)、蘇悅弦(アリエル・ソー)

 

 

 

【あらすじ】

出世を望まない現場主義の救命士のマー【古天樂(ルイス・クー)】は、幼い娘をもつシングルファーザー。義父母の勧めもありカナダへの移住を考えているが、持病がある彼には申請がおりていない。それでも粛々と仕事に向き合い、マニュアルを無視してでも人命を救おうするマーの姿は、出世至上主義の後輩【游學修(ネオ・ヤウ)】の心を動かしていく――。

香港映画祭 Making Waves 2024より

 

 

 

【感想】

救急救命士の物語でもあり、移民制度などの香港が抱える生きづらさを描いた社会派のドラマにもなっている。今最も旬な若手俳優、游學修(ネオ・ヤウ)と袁澧林(アンジェラ・ユン)が胸に残る素敵な演技を見せていて、世代交代を感じさせる佳作。

古天樂(ルイス・クー)が主演とはいえ、決して大作ではない。製作から映画祭に持ち込むのに2年、一般公開まで更に2年もかかった難産といえる作品だし、彼は自身の会社・天下一電影が製作した作品という事で出演した感もあり、準主役の游學修(ネオ・ヤウ)も同じ事務所所属だし、彼を出演させる意図もあったかもしれない。
だが見終わると、ほんのりと切なく穏やかな気持ちになれる、例えばドラマ「あぶない刑事」みたいな少し懐かしいハードボイルドさを感じる、いい映画だった。

 

バイタル・サイン 送院途中

 

なによりも王維役の游學修(ネオ・ヤウ)だ。ほんの少し前に「私たちの話し方(2025)」という素晴らしい映画で、手話によるとても情熱的な演技を見せた彼だが、本作でもとても印象に残る存在感を見せてくれた。撮影は「私たちの~」の方が2年程後のようで、その間の更なる成長は感じるものの、若手の中でもトップクラスにいい役者だと感じる。
そしてもう1人のいい役者が看護師・Miffyを演じた袁澧林(アンジェラ・ユン)。今までも「香港ファミリー(2022)」や良作「星くずの片隅で(2022)」などの映画で、華もある上に実力もある事は知られていたが、本作でも荒っぽい台詞とか強さを感じさせながら、とてもこなれた演技が素晴らしい。
個人的に今最も応援している2人のカップリングが、本当に心暖まる素敵なムードを作り上げていて、2人でいるシーンでの和やかな空気感なんかもとても自然で、見ているだけでほっこりさせられる。彼らと娘・馬悅弦との心の通いあいが、息苦しい物語での癒しになっていた。

 

バイタル・サイン 送院途中

 

そうなのだ。主人公・馬志業の周囲では、生死が身近な救急の仕事なだけでなく、私生活でも世知辛い現実を反映した社会派な問題が起こる。冒頭に救急で対応した患者はパキスタン移民。一方で馬志業の両親はカナダに住んでおり、弟はオーストラリアにいるという、日本では考えられない距離感のリアル。救急の仕事も薄給な上に長く続けるのも簡単ではないタフな仕事だ。前向きな希望を持ちにくい今の香港の空気感が伝わってくる。

そうした香港のリアルを見せつつ、それでも自分たちの生き方、大事なものを探していく、香港に住んでいる人ならばより切実な、いつもの香港映画とは少し角度の違うストーリー。醸し出すテイストでいえば映画「4拍4家族(2023)」とかも想起させる、素敵な佳作であった。

 

香港映画レビュー&解説「私たちの話し方 看我今天怎麼說 The Way We Talk」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「香港ファミリー 過時·過節 Hong Kong Family」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「星くずの片隅で 窄路微塵(きょうろみじん)The Narrow Road」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「4拍4家族 Band Four」 - daily diary

 

 

 

【トピック】

◯ 2023年4月9日に香港国際映画祭でワールドプレミア。2023年10月23日からの東京国際映画祭で「バイタル・サイン」という邦題で上映、さらに2024年11月4日に日本での香港映画祭 Making Waves 2024で上映された後、翌年2025年5月1日より香港で一般公開された。
公開初週の興収ランキングは「サンダーボルツ*(2025)」、興行収入は900万香港ドル(1.67億円)。

 

2023.tiff-jp.net

makingwaves.oaff.jp

 

 

◯ 監督の卓韻芝(ヴィンシー・チェク)は1979年生まれで、そもそもは高校生の頃から商業電台のラジオにパーソナリティとして出演し人気になる。卒業後もラジオで活躍し、ラジオドラマの制作・出演なども手掛けるようになる。
2011年以降はスタンダップコメディを始め、こちらも人気となる。その他、書籍、作詞(填詞)や映像制作も開始。長編映画の監督は本作が3作目となるなど、様々な分野で活躍している。
俳優としても「ツインローズ(2004)」「西遊記 リローデッド(2005)」「ミッドナイト・アフター(2014)」「暗色天堂(2016)」などに出演している。

バイタル・サイン 送院途中

 

 

◯ 本作は香港電影発展局によって行われる、首部劇情電影計画という映画製作援助によって900万香港ドル(1.67億円)の援助を受けて制作された。この制作費支援はたとえば「毒舌弁護人(2023)」「流水落花(2022)」「年少日記(2023)」など、最近の良質な新世代による作品を多数世に送り出していて、信頼度の高いプロジェクトになっている。

香港映画レビュー&解説「毒舌弁護人~正義への戦い~ 毒舌大狀 A Guilty Conscience」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「流水落花 Lost Love」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「年少日記 Time Still Turns The Pages」 - daily diary

 

 

 

古天樂(ルイス・クー)

◯ 馬志業。救急救命士であり、シングルファーザーでもある。

◯ 1990年代から数多くのドラマ・アクション映画などで活躍してきた香港を代表する俳優・歌手。1990年代後半からドラマ「神鵰俠侶 (1995)」「刑事偵緝檔案IV(1999)」「創世紀(1999)」「尋秦記 タイム・コップB.C250(2001)」などで人気となる。
映画は更に無数の作品に出演しているが、杜琪峯(ジョニー・トー)監督「エレクション 死の報復(2006)」「ドラッグ・ウォー 毒戦(2012)」「Zの嵐(2014)」からの風暴シリーズ、「ドラゴン×マッハ!(2015)」「SPL 狼たちの処刑台(2017)」の殺破狼シリーズ、「未来戦記(2022)」などのアクション映画で知られる。アニタ・ムイの伝記映画「アニタ 梅艷芳(2021)」にも出演。

2013年には「天下一電影」という制作会社を設立。本作の制作の他、映画「6人の食卓(2022)」「逆流大叔(2018)」「闔家辣(2022)」「四十四にして死屍死す(2023)」などの数多くの映画に出資、更に数多くの映画に機材をレンタルしたり、多くの俳優をマネージメントするなど、香港映画界に大きな存在感を示している。

昨年は今もなお日本で公開中の大ヒット作「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦(2024)」で主役・龍捲風(ロンギュンフォン)を演じ、今年の春節映画「臨時決鬥(2025)」にも主演した。

バイタル・サイン 送院途中

香港映画レビュー「SPL 狼たちの処刑台 殺破狼:貪狼 Paradox」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「アニタ 梅艷芳 Anita」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「6人の食卓 飯戲攻心 Table For Six」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「闔家辣 Chili laugh story」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「四十四にして死屍死す 死屍死時四十四 Over My Dead Body」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「ホワイト・ストーム 世界の涯て 掃毒3: 人在天涯 The White Storm 3 - Heaven or Hell」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦 九龍城寨之圍城 Twilight of the Warriors: Walled In」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「臨時決鬥 Hit N Fun」 - daily diary

 

 

 

游學修(ネオ・ヤウ)

◯ 馬志業の同僚の救急救命士・王維。

◯ 1990年生まれ。元々は現ERRORのメンバーで俳優としても売れっ子になった阿Deeこと何啟華(ホ・カイ・ワ)と共に、雨傘革命(2014)と関連した劉德華(アンディ・ラウ)のパロディ曲「日日去鳩嗚 落場版」をバズらせたユニット・學舌鳥 Mocking Jerのメンバーであった。

同時に、この年にはもう本作の黃修平(アダム・ウォン)が監督した映画「私たちが飛べる日(2015)」に出演し、映画デビューする。
その後も映画「十年(2015)」などのドラマ・映画に出演を重ね、ViuTVで監督主演ドラマ「仇老爺爺(2019)」を制作するなど順風満帆であったが、コロナ禍によって休業状態に陥りYoutube配信を開始。岑珈其(カーキ・サム/シャム)や林家熙(ロッカー・ラム)もメンバーの有名YouTubeグループ試當真Trial & Errorの番組に参加したり、彼らの映画「公開試當真(2024)」のプロデュース、「作詞家志望(2023)」にも出演した試當真のメンバー潘宗孝(ERN9、アーネスト・プン)とユニットを組んだりと、人気を博している。
そして、今年公開の名作「私たちの話し方(2025)」で、聾者の主演3人のひとりで素晴らしい演技を見せ、台湾金馬奨・主演男優賞ノミネート。
古天樂(ルイス・クー)がオーナーのマネージメント会社・天高娛樂に所属。

香港映画レビュー&解説「私たちの話し方 看我今天怎麼說 The Way We Talk」 - daily diary

バイタル・サイン 送院途中

 

 

 

袁澧林(アンジェラ・ユン)

◯ ER(救急外来)の看護師・Miffy。馬志業の従姉妹でもある。

◯ 1993年生のモデル、俳優。
アーティストMVでは銀杏BOYZの2017年の3枚のシングル「エンジェルベイビー」「骨」「恋は永遠」、そしてアルバム「ねえみんな大好きだよ(2020)」のジャケット、Vaundy「Tokimeki(2023)」などに出演。

映画の主な出演作は、呂爵安(イーダン・ルイ)の映画デビュー作「闔家辣(2022)」と2作目「香港ファミリー(2022)」、良作「星くずの片隅で(2022)」「離れていても(2023)」など、今や人気俳優としても確固たる地位を築いた。

バイタル・サイン 送院途中

香港映画レビュー&解説「闔家辣 Chili laugh story」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「香港ファミリー 過時·過節 Hong Kong Family」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「星くずの片隅で 窄路微塵(きょうろみじん)The Narrow Road」 - daily diary

香港映画レビュー&解説「離れていても 但願人長久 Fly Me to the Moon」 - daily diary

 

 

 

潘燦良(プーン・チャンリョン / パン・ツァンリョン)

◯ 同僚の救急救命士・余濟龔。

◯ 演劇で長らく活躍する有名俳優で、香港で最も知られる劇団・香港話劇團に二十一年出演し、演劇賞も数多く受賞、劇団のプリンスとも呼ばれる。妻も謝君豪(ツェー・クワンホウ)主演の「南海十三郎(1997)」「正義迴廊(2022)」に出演した俳優・蘇玉華(ルイーザ・ソー)である。
「南海十三郎(1997)」で台湾金馬奨と香港金像奨で助演男優賞ノミネート。ドラゴンボートを描いた映画「逆流大叔(2019)」でも香港金像奨・助演男優賞にノミネートされた。

バイタル・サイン 送院途中

 

 

 

蘇悅弦(アリエル・ソー)

◯ 馬志業の娘・馬悅弦。

◯ 古天樂(ルイス・クー)主演作「未来戦記(2022)」にも出演しており、2度目の共演となる。

バイタル・サイン 送院途中

 

 

 

www.teppayalfa.com

www.teppayalfa.com

www.teppayalfa.com

www.teppayalfa.com

www.teppayalfa.com

www.teppayalfa.com

www.teppayalfa.com

www.teppayalfa.com

www.teppayalfa.com

www.teppayalfa.com

www.teppayalfa.com

www.teppayalfa.com

www.teppayalfa.com

www.teppayalfa.com