最近、あらためて古いDJ Mixを聴いている。
といっても、ヒップホップではない。ヒップホップが誕生しつつあった頃、既に流行していた1970~80年代のディスコのDJたちのMixを録音したものだ。
Amazon | Studio 54 | Schrager, Ian, Colacello, Bob | Popular より
古いMixと言えば、個人的にはヒップホップのオールドスクールなMixが好きだったのだが、ハウスの古いものにはあまり興味が湧かなかった。だが今回はハウス、なかでも1970~80年代のクラブ以前、ディスコ時代の頃のものに新しい発見がある。
そもそも、今考えられるDJがミックスするスタイルは、ヒップホップの流儀ではない。もちろんピッチを変えたりモニターできる方が良いのだが、オールドスクールのミックスはカットイン主流の、レゲエにも通じるようなやり方が基本だった。
定番のラリー・レヴァン = パラダイス・ガレージのものもこんな驚異的なプレイリストが作られていたし、
それ以前の、曲を繋いでいくスタイルが始まった頃の伝説的なDJ達の録音もある。
数多くのディスコリミックスを制作したジム・バージェスの1977年、巨大クラブ12 Westでの録音。ディスコ全盛期である。
ハウスミュージック発祥のシカゴ・Warehouseでのフランキー・ナックルズ 1977年録音
リミキサーという仕事を成立させたニッキー・シアーノによる1974年、自らのディスコThe Galleryでの録音
これらは全てParadise Garageも開店する以前の頃のMix。
Larry Levan - Live At The Paradise Garage [1979]
1981年に開始したシカゴでの伝説的ラジオ WBMXの"HOT MIX 5"も聴ける。ニューヨークとはまた違う、テクノよりなプログレッシブでアシッドな雰囲気がグイグイくる感じもまた素晴らしい。
Ralphi 'Rockin' Rosario (HOT MIX 5) - Live @ WBMX Chicago 1984
ヒップホップDJ達と同時期に、レコードの2枚使いで現場で作っていたエクステンデッドリミックスを、クラブ用としてレコード化させる事を成功させた、初期の伝説的DJ、ウォルター・ギボンズの1989年西麻布イエローでの録音
Walter.Gibbons.Live.Yellow.In.Japan.1989
これらを聴いていると、いかにディスコが「ダンスフロアで踊る」事に革命を起こしたのかが身を持って感じられる。
これより前時代にももちろん「ダンスフロアで踊る」文化はあったのだが、それらは例えばロカビリーやジャズクラブ、カントリーや果ては盆踊りに至るまで、生演奏が主体であって、そのため一曲ごとに細切れのグルーブが連なる時間であり、ディスコのように機能性を高めた曲が無限にかかり続ける時間で踊りに没入していく事が、どれだけトリッピーな体験だったのか、まして当時の世相上ドラッグまで使っていけば、そりゃあ世界中に流行するほどに革命的な体験となったのは当然だと、腑に落ちる。
まだ何のルールもなくそれゆえに様々な問題も発生した80年代の間に、エイズの流行が多くの人々の命を含めたディスコカルチャーそのものを飲み込んでいく。そしてクラブカルチャーという更に大衆化した文化へと代替わりを果たして、「ダンスフロアで踊る」文化は今へと繋がっていく。上記のリンクを聴いていると、そんな年代記に思いを馳せるような感慨深い気持ちへと誘われる。今からはや40年も前の喧騒の記録だ。