世界の商売人のやり方

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ユダの福音書を追え ハーバート・クロスニー

ユダの福音書を追え
ユダの福音書を追え
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ハーバート・クロスニー
日経ナショナル ジオグラフィック社/日経BP出版センター
売り上げランキング: 94,909

 

裏切り者のユダについて書かれた古文書を巡る、数奇な運命を描いた本。という感じか。個人的には、発見から鑑定までの20年を司る古美術商達の成り行きに興奮した。

 

商いで扱う品には、新品と古物があって、その2つは一見同じ商品でも扱われ方には大きな違いがある。古物は、新品の頃の価値にプラス、劣化具合、改変具合、現在価値、本物か偽物か等々の「良くわからない」基準が増え、だからこそ海千山千の様々な業者が参入しているのだが、それはつまり人間臭くて面白い、原始的な商いの匂いとなって、魅力的に見えてくる。

 

一番やっかいで胡散臭い古美術を世界で商う人々、と書くともはや想像を越えた異人種のように思うが、やっぱり人間臭い心の通いから動くのだなという思いを新たにしたし、一方でとてつもなく規模でバクチを打って生き残っていく世界だと実感した。自分はある意味この世界で生きなければならない、と言い聞かせながら読んでいたところもある。

 

もちろん世紀の大発見であるチャコス写本復元の努力、初期キリスト教世界の部分も面白かった。けれど最終的には身につまされる本であった。世界は遠い。

 

ユダの福音書: Wikipedia