盲剣楼 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画
【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
次世代の中国を代表するアクション俳優・谢苗（シェー・ミャオ）による時代劇。シリーズ2作ともカンフーテイスト全開の素晴らしい殺陣が最高だし、上映時間90分以内というストイックな作りも素晴らしい、もっともっと知られるべき良作。
www.youtube.com Eye for an Eye (2022) 目中无人 - Movie Trailer - Far East Films
www.youtube.com Eye for an Eye 2 (2024) 目中无人2 - Movie Trailer - Far East Films
【スタッフ & キャスト】
「盲剣楼 目中无人 Eye for an Eye: The Blind Swordsman」
2022年 中国 74分
監督: 杨秉佳（ヤン・ビンジア）
出演: 谢苗（シェー・ミャオ）、高维蔓（ガオ・ウェイマン）、向皓（シャン・ハオ）、刘奔（リウ・ベン）、张荻（ジャン・ディー）、张皓森（チャン・ハオセン）
「目中无人2 Eye for an Eye 2」
2024年 中国 90分
导演: 杨秉佳（ヤン・ビンジア）
主演: 谢苗（シェー・ミャオ） 、杨恩又（ヤン・エンヨウ）、黄涛（ホアン・タオ）、裴魁山（ペイ・クイシャン）、班玛加（ペマ・ジャ）、刘峰超（リウ・フォンチャオ）
【あらすじ】
（第1話）
唐の時代、安史の乱によって荒れ果てた世で、盲目の武人・成瞎子（イー）【谢苗（シェー・ミャオ）】は犯罪者を捕まえる賞金稼ぎをして孤独に放浪していた。モンゴルに近い涼城で立ち寄った店では、婚礼を控えた酒家の娘・倪燕（イェン）【高维蔓（ガオ・ウェイマン）】に出会う。
しかし、婚礼中に倪燕（イェン）の兄を追って現れた極道の宇文（ユーウェン）家の手先・秋风（チウファン）【刘奔（リウ・ベン）】が兄や婚約者を無残に殺害し、更に倪燕（イェン）は宇文（ユーウェン）家の次男・英（イン）【向皓（シャン・ハオ）】に凌辱されてしまう。
普段は誰にも干渉しない成瞎子（イー）だったが、倪燕（イェン）を放っておけず、復讐を手助けすることに。
（第2話）
成瞎子（イー）【谢苗（シェー・ミャオ）】はある日、偶然幼い姉弟を助ける事となる。だが、その後幼い姉・张小渔【杨恩又（ヤン・エンヨウ）】は、再び極道の男たちに襲われ、眼の前で弟を惨殺されてしまう。
行き場もなく復讐に燃える张小渔は、成瞎子（イー）に住まわせてもらえるように何度も執拗にお願いをする。世間との関わりを断って生きていた成瞎子（イー）だったのだが…
【感想】
次世代の中国を代表するアクション俳優・谢苗（シェー・ミャオ）による時代劇。シリーズ2作ともカンフーテイスト全開の素晴らしい殺陣が最高だし、上映時間90分以内というストイックな作りも素晴らしい、もっともっと知られるべき良作。
少し前に見た谢苗（シェー・ミャオ）による、こちらもキレキレの警察アクション映画「東北警察物語Ⅰ&Ⅱ （2021、2022）」と同様に、まだまだ日本では映画自体も彼の存在も知られていないところだろう。だが、来年には公開の日本が誇るアクション監督・谷垣健治による次回作「火遮眼 The Furious（2025）」では、この谢苗（シェー・ミャオ）が主演とあって、是非今のうちに彼の存在を押さえておいて欲しいところだ。
「火遮眼 The Furious」は予告編だけ見ても心臓が高鳴る、期待大の作品だし、本シリーズ2作目で素晴らしい相手役を務めた子役・杨恩又（ヤン・エンヨウ）も出ている。関連作として「ザ・レイド（2011）」と共に真っ先に挙げられるべき作品なので、ぜひこの2も「火遮眼 The Furious」の日本公開までに日本で公開して欲しい。
本作は中国ではどちらも配信限定で公開だが、1作目は日本でも「盲剣楼」のタイトルでDVDと配信でリリースされている。2024年配信の2作目は、日本ではまだ爱奇艺iQIYIから「目には目を2」というタイトルでのAI日本語字幕版の配信しかリリースされておらず、その日本語がまだかなり怪しいので何とかきちんとした日本語字幕付きが広く見れるようになって欲しいところだ。
このシリーズはとにかく主人公・成瞎子（イー）のキャラ造形が最高だ。盲目でかつ賞金稼ぎをしている寡黙で孤独な武人という、キーアイテムをダブルで持ったような盛りだくさん設定。盲目といえばの「座頭市」も実際にはなかなか荒唐無稽な設定だが、更にその上に賞金稼ぎという要素まで乗っけてきている。そこだけ聞けばあり得ないキャラに感じるのだが、実際に見てみるとまるで違和感を感じることなく見れる。
なにせ殺陣シーンが、そうした雑念をさらっと忘れさせる程キレキレでカッコいい。武人だけに刀を携えて闘うのだが、カンフー要素が大幅に取り入れられ刀以外でも様々な形で闘いを見せる。谢苗（シェー・ミャオ）自身がドニー・イェン的な総合格闘技要素のあるアクションができる現在進行形のアクション俳優、そしてアクション監督の秦鹏飞（チン・ポンフェイ）は「カンフースタントマン 龍虎武師（2021）」にも出演していた香港アクション直系の人物なだけに、邦画時代劇とはまったく作法の違う、現代の超ハイスピードな展開でガンガンに跳び回る殺陣が繰り広げられるのだ。また同じ盲目でも「ジョン・ウィック：コンセクエンス（2023）」での甄子丹（ドニー・イェン）が見せた闘い方とも違う。
映画のコンセプト自体は特にジョン・ウィックシリーズの1作目（2014）とも似て、この凄まじいアクションを見せるために全振りした作り方になっている。ストーリーもシンプル、時間も2作とも90分以下に収めて、テンションを切らせず一気に見れる。これは警察～シリーズの方がより強く感じたが、本シリーズでも通底している方向性だ。
撮影もかなり力が入っていて、殺陣シーンでも様々な撮り方で工夫を凝らしているし、アクション以外では何度もアメリカ西部劇を感じさせる自然の中での美しい撮影が登場して引き込まれる。草原で馬を走らせるシーンや、旅の途中に野営をするシーンなど、今までの中国映画とはまた違った見せ方での美しさがある。
特に撮影が素晴らしいのは1作目でのクライマックスシーンだ。屋敷での殺陣が始まる前、雪が降り積もり、しんとしたまるで忠臣蔵の討ち入り前のような、日本の時代劇的なモノトーンの静寂の世界が広がる。そこから一気に始まる大立ち回りという、とてつもなく美しく興奮させる展開だ。まさに成瞎子（イー）というストイックな主人公に相応しいクライマックスシーンになっている。
2作目は杨恩又（ヤン・エンヨウ）という素晴らしい子役が活躍してまた違った意味で泣ける話になっている。誰にも心を許さず孤独に生きてきた成瞎子（イー）と、子供・张小渔との距離の近づき方、その過程の描き方が上手いのだ。師弟とも親子ともまた違った関係性が胸をうつ。アクションに振り切った作りの映画にも関わらず、この子供とのストーリーには思わず涙せざるをえない。
この子の演技はデビュー作の「星明かりを見上げれば（2022）」の頃から既に素晴らしい存在感だし、今夏は南京大虐殺を描いた「南京照相馆（南京写真館、2025）」にも出演するなどもはや有名子役になっていて、本作での演技の良さも当然といえば当然だし、「火遮眼 The Furious」でもきっと忘れられない存在感を示す筈だ。
孤高でストイックな主人公と、それを映画全体に体現する潔い作り。見終わると藤沢周平や池波正太郎の短編の時代小説を読み終えたような清涼な余韻が漂う。しかし、本分はその圧倒的な殺陣とアクションになっていて、本当に良くできた最高に面白い映画だ。ぜひ早くこの映画と谢苗（シェー・ミャオ）の存在を知って、「火遮眼 The Furious」の公開に備えておこう、そう言って回りたくなるような良作だった。
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【トピック】
◯ 第1話「盲剣楼（目中无人）」は2022年6月3日から爱奇艺（iQIYI）で配信開始。第2話「目中无人2」は2024年2月10日から同じく爱奇艺（iQIYI）で配信開始された。
◯ 日本版「盲剣楼（目中无人）」のDVDは2023年8月3日に発売された。
◯ 本シリーズ2作の監督・杨秉佳（ヤン・ビンジア）は、本シリーズ1作目が初の長編監督となる。「奇門遁甲（2017）」や「奇门遁甲 (2020) 」などで脚本を担当してきたが、谢苗（シェー・ミャオ）が警察官を演じた「東北警察物語Ⅰ&Ⅱ （2021、2022）」で脚本を担当し、本作の好評からか、こちらの2作目でも共同監督も務めた。
◯ アクション監督の秦鹏飞（チン・ポンフェイ）は1985年生まれ。幼い頃から武術に親しみ、15歳から河北省武術チームに加入。中国友好訪問団の代表として何度も海外公演に参加した。2005年から映画界に入り、劉徳華（アンディ・ラウ）の中港日韓合作映画「墨攻（2006）」で代役として映画初出演。「画皮 あやかしの恋（2008）」や谢苗（シェー・ミャオ）主演の「奪標（2008）」、呉宇森（ジョン・ウー）監督「レッドクリフ Part II（2009）」などの、主として香港との合作映画に俳優やアクション・スタントとして参加した。
喜劇俳優・包贝尔（バオ・ベイアル）が監督したコメディ映画「ミッション・デブポッシブル！ （2018）」でアクション指導を担当、本作主演の谢苗（シェー・ミャオ）が私服刑事を演じた高評価作「東北警察物語Ⅰ&Ⅱ （2021、2022）」では監督を務め、既に6本の監督作がある。香港アクションの世界を様々な証言から描き出したドキュメンタリー「カンフースタントマン 龍虎武師（2021）」にも出演しており、香港アクション界への貢献が伝わってくる。
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谢苗（シェー・ミャオ）
◯ 盲目の武人・成瞎子（イー）。指名手配犯を探して捕らえる賞金稼ぎを生業としている。
◯ 1984年生まれだが、既にアクション俳優として30年のキャリアを持つ本格派。9歳の時、既にアクションをする子役として李連杰（ジェット・リー）主演の「新・少林寺伝説（1994）」に出演、翌年にも「D&D／完全黙秘（1995）」で彼の子供役を演じて、頭角を現す。この年、既に主演映画「小飛俠 (1995) 」が作られたほか、周潤發（チョウ・ユンファ）主演「ゴッド・ギャンブラー 完結編（1994）」にも出演している。
監督の王晶（ウォン・ジン / バリー・ウォン）は長期契約を用意したが、両親の希望により辞退して学業に専念。中国制作の大ヒット古装劇「大明宮詞（2000）」や「宰相小甘罗 (2001) 」に出演した程度で、大学も首都体育学院に進学した。
大学卒業後、本格的にアクション俳優としてのキャリアを開始、鮑国安（バオ・グオアン）&黄秋生（アンソニー・ウォン）主演の「少林寺传奇 (2007) 」シリーズ、徐克（ツイ・ハーク）監督の「タイガー・マウンテン 雪原の死闘（2014）」、大鹏（ダーポン）主演の「奇門遁甲（2017）」などに出演。2010年代後半からは「西遊記 孫悟空vs7人の蜘蛛女（2018）」、「少林寺 十八の羅漢（2019）」、「武神（2020）」、「イップ・マン 立志（2021）」などなど、多くの中国製アクション映画で主演を張れる俳優として確立した。
先日レビューした、こちらも最高のアクションが見れる警察もの「東北警察物語Ⅰ&Ⅱ （2021、2022）」以外にも、「捉刀人 (2024) 」など多くの作品に主演で撮影し、2024年は5本の主演作が公開されるという大人気俳優となっている。
そしてつい先日、釜山国際映画祭でも上映された谷垣健治監督による香港アクション映画「火遮眼 The Furious（2025）」の主演を務めていて、大ブレイクの期待が高まっている。
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高维蔓（ガオ・ウェイマン）
◯ 1話に出演。兄と婚約者を英（イン）たちに殺され、ただひとり生き残った娘・倪燕（イェン）。
◯ 1995年重慶生まれで、大学時代からタレントとして活動し、卒業後に芸能界入り。2018年頃から俳優としても活動していたが、本作1話目のヒロインとしての出演で知られるようになる。本作のアクション監督・秦鹏飞（チン・ポンフェイ）が監督した「打黑 (2024) 」などに出演している。
向皓（シャン・ハオ）
◯ 1話に出演。涼城を牛耳る有力者・宇文（ユーウェン）家の次男、英（イン）。
◯ 1990年生まれ。その顔立ちから「大陸の呉彦祖（ダニエル・ウー）」と呼ばれることもある。古装劇「花と将軍（2017）」や「将军在上之芙蓉密案 (2017) 」、「天坑鹰猎 (2018) 」、「小风暴之时间的玫瑰 (2020) 」などに出演している。
刘奔（リウ・ベン）
◯ 1話に出演。英（イン）の手下で賭博場を仕切っている贺秋风（チウファン）。
◯ 1986年生まれ。ドラマでは「将夜 戦乱の帝国（2018）」や「破氷行動（2019）」、「冰雨火（2022）」、映画では主演作「东北往事我叫黄中华 (2022) 」や黄轩（ホァン・シュエン）&柳岩（リウ・イエン）主演の「来福大酒店（2024）」などがある。
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张荻（ジャン・ディー）
◯ 1話に出演。成瞎子（イー）とは昔からの知り合いで武人でもある琴娘。
◯ 1994年生まれ。「風起花抄（2021）」や「流転の花嫁（2022）」、「光・淵（2023）」などに出演している。
张皓森（チャン・ハオセン）
◯ 1話に出演。宇文英たちに嵌められた倪燕の兄・倪君。
◯ 1987年生まれで、中国で最も歴史ある話劇=新劇の国立劇団・中国国家話劇院に所属する俳優。大人気喜劇集団・開心麻花の舞台にも数多く参加し、映像でも「激战 (2015) 」や「オリジナル・シン（2018）」などのドラマにも出演。本作主演の谢苗（シェー・ミャオ）が刑事を演じた高評価作「東北警察物語Ⅰ&Ⅱ （2021、2022）」のどちらにも主人公と仲の良い警察官役で出演している。
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杨恩又（ヤン・エンヨウ）
◯ 2話に出演。孤児だったが、李九郎らの一味に弟を惨殺され、復讐を誓う张小渔。
◯ 感動的な良作「星明かりを見上げれば（2022）」での素晴らしい演技が鮮烈な印象だった。同年のマイベスト中国映画「妈妈！（2022）」でも少し出演、他にも映画「交换人生（2023）」、ドラマ「異人之下 アウトサイダーズ（2023）」、そしてジブリ映画「ハウルの動く城（2004）」の中国版ではマルクル役の声優を務める。来年1月公開の「愛がきこえる（2024）」では、原案となった短編作品で恵英紅（カラ・ワイ / クララ・ワイ）の相手役としてコーダ（聾者を親に持つ聴者）の役を演じた。今年は南京大虐殺を描いたことで話題となった「南京照相馆（南京写真館、2025）」で主要キャストを務めるなど、人気子役のひとりだ。
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黄涛（ホアン・タオ）
◯ 2話に出演。元は高貴な位にあったが、父によって勘当された李九郎。
◯ 1992年生まれ。映画「火锅英雄（2016）」や「大赢家 (2020) 」、「封神・妖姫とキングダムの動乱（2023）」、そしてショートドラマ「妻子的秘密世界 (2022) 」などに出演している。
刘峰超（リウ・フォンチャオ）
◯ 2話に出演。何猪子
◯ 1986年生まれで、小学生の頃から剣術、槍術などの武道において卓越した才能を見せ、地元の河北省大会で5年連続1位を獲得。全国大会での優勝経験も何度もある。
2008年に芸能界入りし、周潤發（チョウ・ユンファ）主演の映画「孔子の教え（2009）」で百花奨新人賞にノミネート。以来「ドラゴン・フォー2 秘密の特殊捜査官 陰謀（2013）」や「The Crossing -ザ・クロッシング- PartⅡ（2015）」、「修羅：黒衣の反逆（2017）」などの映画に出演。
谢苗（シェー・ミャオ）とは「血战虎门 (2021) 」や高評価の警察もの「東北警察物語Ⅰ&Ⅱ （2021、2022）」や本作アクション監督の秦鹏飞（チン・ポンフェイ）が監督した「捉刀人 (2024) 」でも共演している。
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