ラブ・ライズ - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画
【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧ください。】
夫との別れから新しい人生を踏み出す、そのきっかけがなんとロマンス詐偽という面白い設定のロマンチックコメディ。札幌ロケ&路面電車のファンタジックな舞台に吳君如(サンドラ・ン)ならでは上品な笑いでじんわりと哀愁とおかしみが湧いてくる作品。
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【スタッフ & キャスト】
2024年 香港 114分
監督:何妙祺(ホー・ミウケイ / ミョウキ)
出演:吳君如(サンドラ・ン)、張天賦(マイケル・チャン)、陳輝虹(チャン・ファイフォン)、鄧麗欣(ステフィー・タン)、張錦程(エモーション・チョン / チャン・カムチン)、鄭中基(ロナルド・チェン)
【あらすじ】
夫と死別した婦人科医ベロニカ【吳君如(サンドラ・ン)】は、25歳と偽ってマッチング・アプリに登録し、55歳のフランス人・アランと出会いSNSで愛を育むが、彼の正体はロマンス詐欺集団の一員だった!
【感想】
夫との別れから新しい人生を踏み出す、そのきっかけがなんとロマンス詐偽という面白い設定のロマンチックコメディ。札幌ロケ&路面電車のファンタジックな舞台に吳君如(サンドラ・ン)ならでは上品な笑いでじんわりと哀愁とおかしみが湧いてくる作品。
詐偽で犯罪組織が関わって…というあらすじではあるが、そういう犯罪方面でのリアリティは気にしないでいいし、ハードなシーンもないので平和に楽しめる作品だ。
吳君如(サンドラ・ン)演じる産婦人科医・余笑琴(ベロニカ)の心境が2時間でガラッと変化する様が、見ていてとても楽しい。その一方で相手役のMC演じる李偉祖の劇中でぐっと成長する様も、現実での今まさに成長しつつある彼の姿にも重なって、とてもいい役を演じている。
後半での北海道・札幌での撮影場所は、夏という事もあっていわゆる札幌らしさとは少し違っていて、とてもこの映画に似合う爽やかな雰囲気で素敵だ。路面電車での2人が寄り添うシーン、そして停留所での向き合うシーンなんかの味わい深い素敵な場面も良かった。
犯罪集団のパートはコミカルで、やたら明るく爽やかな雰囲気に溢れていたり、そしてあの鄧麗欣(ステフィー・タン)が謎にセクシーだったりするのもご愛嬌という感じで、ちょっと最近見ない懐かしいテイストなのも面白い。
大人のロマコメ、そう書いてイメージするドロドロしたものとは対極な物語になっていて、それが何よりも面白かった。とてもプラトニックで、気持ちの動きだけを抽出したような、ピュアなストーリー。小説になってもより一層面白くなりそうな、さすが脚本家が手掛けた映画だと感じる素敵な小品だ。
【トピック】
◯ 本作は2024年3月29日に香港国際映画祭でワールドプレミア。その後北京映画祭を経て9月12日に香港で一般公開が開始された。公開初週は「ビートルジュース ビートルジュース(2024)」や「スピーク・ノー・イーブル 異常な家族(2024)」などを抑えて興収1位。さらに3週間連続で興収1位をキープした。
興行収入は1870万香港ドル(3.47億円)。
◯ 日本では2024年11月1日からの香港映画祭 Making Wavesで上映された。
◯ 今作は台湾金馬奨で新人監督賞に、香港金像奨では脚本賞、助演女優賞など3部門にノミネートされた。
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◯ 本作は香港電影発展局によって行われる、首部劇情電影計画という映画製作援助によって800万香港ドル(1.48億円)の援助を受けて制作された。この制作費支援はたとえば「毒舌弁護人(2023)」、「流水落花(2022)」、「年少日記(2023)」などがある。
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◯ 監督の何妙祺(ホー・ミウケイ / ミョウキ、画像左)は、本作出演の陳輝虹(チャン・ファイフォン)も出演した「內衣少女(2008)」制作の際に、脚本家として参加して映画界入り。以来「人間喜劇(2010)」や「借金取りとマネージャー(2013)」、周星馳(チャウ・シンチー)監督作「人魚姫(2016)」などの脚本を担当してきた。今作が初監督作品となる。
主演の吳君如(サンドラ・ン、画像中)、脚本の陳慶嘉(チャン・ヒンカイ、画像右)と中国金鶏奨にて。
吳君如(サンドラ・ン)
◯ 余笑琴(ベロニカ)。人気の産婦人科医師として多忙を極めていたが、夫と離婚した直後に夫が急死してしまう。
◯ 1980年代後半から数多くの黄金期香港映画に出演してきた名女優。特にコメディエンヌとして知られている。「ポートランド・ストリート・ブルース(1998)」と「金雞(2002)」で香港金像奨・主演女優賞を受賞。
主な出演作は「ゴッド・ギャンブラー/賭聖外伝(1991)」や「ハッピー・ブラザー(1992)」、「チャウ・シンチーのロイヤル・トランプ(1992)」、「ジュリエット・イン・ラブ(2000)」、「歳月神偸(2010)」などなど。
最近ではプロデュース&主演で香港金像奨・主演女優賞にもノミネートされた「ゼロからのヒーロー(2021)」やプロデュースした「闔家辣(2022)」など。
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MC 張天賦(マイケル・チャン)
◯ ロマンス詐欺集団のメンバーとしてターゲット・余笑琴に近づく李偉祖。
◯ MCという名で活動する歌手で、今作では主題歌も歌っている。2019年オーディション番組「全民造星」シーズン2に参加。参加中に父親が死去するという苦境の中で準優勝を勝ち取り、歌手として芸能界入りした。当初フリーで活動を開始したがワーナー香港に加入した2021年以降、多くのヒット曲をリリース、人気歌手としての地位を不動のものとした。
俳優としても、初出演・初主演映画「夜校(2023)」のほか、甄子丹(ドニー・イェン)監督最新作「プロセキューター(2024)」に出演している。
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陳輝虹(チャン・ファイフォン)
◯ ロマンス詐欺集団のリーダー、白。
◯ 1964年生まれ。80年代に人気ラジオ・パーソナリティとして「月光光四人幫」などの人気番組に出演していた。所属していた商業電台では副社長にまでなった後、退社。香港EMI社長を務め、EMIのアジア太平洋新メディア部門副社長になるなど、香港音楽業界の重要人物となっている。
一方で80年代から映画出演も多く「買兇拍人(2001)」や「心想事成(2007)」、「破事兒(2007)」、「內衣少女(2008)」などがあるが、本作と同時期公開の「お父さん(2024)」にも出演している。
出演以外にも、台湾金馬奨&香港金像奨・脚本賞ノミネート作「ミッドナイト・アフター(2014)」など、幾つかの脚本も担当している。
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鄧麗欣(ステフィー・タン)
◯ ロマンス詐欺集団のメンバーで、騙しのストーリーを作っていく瓊。
◯ 鄧麗欣(ステフィー・タン)はボーカルグループCookiesのメンバーとしてデビュー。2005年の解散後はソロ歌手として活動する一方、俳優業も本格化する。
主な出演作は「獨家試愛(Marriage With A Fool、2006)」、「十分愛(2007)」、「我的最愛(L for Love, L for Lies、2008)」、「紀念日(2015)」、「空手道(The Empty Hands 2017)」、「どこか霧の向こう(2018)」、そして良作「私のプリンス・エドワード(2019)」に主演。黃子華(ダヨ・ウォン / ウォン・ジーワー)主演の大ヒット作「6人の食卓(2022)」と続編「飯戲攻心2(2024)」でも主演し、遂に一流の女優の一人に数えられる存在となった。
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張錦程(エモーション・チョン / チャン・カムチン)
◯ 余笑琴の夫・許禮信。突然の心臓発作で他界する。
◯ 1965年生まれ。複数の演劇賞を受賞するなど舞台で活躍していたが、後にドラマ・映画にも進出。映画「ゴッド・ギャンブラー/賭侠復活(1999)」や「八仙飯店之人肉饅頭2(1998)」、古天樂(ルイス・クー)&張栢芝(セシリア・チャン)の時代劇コメディ「我家有一隻河東獅(2002)」、梁朝偉(トニー・レオン)&金城武主演「傷だらけの男たち(2006)」などがあり、最近では「七人樂隊(2021)」にも出演した。
2010年代からは中国にも進出。ドラマ「余罪 (2016) 」や映画「龙虾刑警(2018)」などの中国作品に出演している。妻も中国の俳優・张延(ジャン・ヤン)。
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