12月にバンコクを訪れると、多くの電気自動車、中国ブランド、日本では見られないモデルが増えている事を感じた。チャンスがあったので色々それらのクルマを見に行ってみた。
BYD アット3(Atto 3)
中国BYD(比亚迪)も2022年10月からタイでも正規輸入車を販売開始した。大通りを走っているとディーラーが見えたので立ち寄ってみた。
敷地に入ってみると、実際にはまだ建物も内装工事がまだ終わっていない、工事中のような状況で営業していた。
2階のショールームは果たして、このように同社の販売車両であるAtto 3が並べられていた。今のところタイでのBYDはこの一車種のみの販売となる。
Atto 3は日本でも2023年1月から販売を開始するBEV電気自動車で、日本で販売される初めての中国ブランドの乗用車となる。中国国内では三国志なんかで出てくる国の名前、「元」というシリーズ名で、この2代目「元 Plus」は本国でもまだ登場したばかりの、バリバリの新型モデルだ。
デザインも最近の中国ブランドでは多い、元アウディ/メルセデスのデザイン部トップを努めたドイツ人デザイナーを同じくデザイン部トップに迎えており、そのレベルは既に欧州車/日本車レベルに達している。
大きさはトヨタ・ヤリスクロスやホンダ・ヴェゼルと同じくらい。タイでの価格は120万バーツ(約470万円)なので、航続距離400kmオーバーのBEVとしては手頃と言えるだろう。
だが聞いてみると、オーダーが多すぎて基本的には受注ストップとなってしまったらしい。だが、しばらく見ていると「オーダーできますよ」と再度話しかけてきたので、まあ何とかなるようだ。それでも1年程度の納期はかかりそうだ。
BYD Atto 3の日本での販売ページ
Hello, e-Life! |ビーワイディージャパン株式会社
内装のデザインはちょっと奇抜。自動車としては相当個性的。でもクオリティは高い。
ドアポケットにもこういった装飾が施されている。最近の中国デザインっぽいなあと、個人的には思う。必要性にとらわれず、こういうギミック的な小技を足したがる印象がある。
運転席正面にはこのディスプレイだけが鎮座している。シンプル。
リアトランクには"Build Your Dreams"という大きなバッヂが貼られている。まあBYDの社名なんだが、これはなかなか恥ずかしい演出だ。日本もこの手の意味ありげで意味の無い英語が大好きだが、こういうところは真似して欲しくなかったな… 日本で売るときにはBYDのロゴに変更してほしいものだが、どうもそれは無理そうだ。
既に路上でもAtto 3を見かけた。
2018年に深圳に行った時にはワンクラス大型の宋を見かけた。
GWM HAVAL H6
GWMこと長城汽車(长城汽车、Great Wall Motor)もアジアに早くから進出しているメーカーだ。以前からマレーシアなどでも走っているのを見かけたが、2020年にGMからタイの生産工場を買い取り、本格的にASEAN域内に進出した。HAVAL(哈弗)はそこのSUV専門ブランドで本国ではHAVALだけで10車種以上のラインナップを用意している。そして、話題のORAも長城のEVブランドだ。
H6はアッパーミドルクラスで2011年に初代が登場し、写真の現行モデルが2020年に登場した3代目となる。これは中国車だが1.5/2.0Lターボのガソリンエンジンのみのラインナップで電気自動車は無かったが、最近PHEVバージョンの販売も開始した。
高島屋も入っている巨大モール、アイコンサイアムにもショールームがある。
H6はBYDほど攻めていないオーソドックスなデザインだが、それでも運転席前にはディスプレイしか存在しない。
2018年の深圳でも先代のH6を見かけている。
マレーシアでは少し古いHAVAL車を見かける。
ORA Good Cat
これが話題の小型電気自動車、Good Cat。2021年10月末に発売して多数の受注を獲得し一気に人気車となったモデルだ。ORAはGWMの電気自動車用ブランド。100万バーツ(約340万円)を切る価格だが、航続距離は500kmとすごい性能で、デザインも相まって人気が出るのも納得のモデル。町中でもしょっちゅう走っている姿を見かけて、売れているのを実感した。これも行った時には注文ストップになっていた。供給が追いつかないようだ。
上記アイコンサイアムにあるGWMのショールーム内にORAも展示されている。
フロントはフィアット500なんかを彷彿とさせるが、リアはもっと独特だ。リアウィンドウ下のブラックアウト部分にストップランプのLEDが隠れている。こういうアグレッシブな姿勢は素晴らしいと思う。
一方でインテリアは、独自性も保ちつつ、クラシックでシンプル。非常にスッキリとしているのでどんな服で乗っても雰囲気を壊さない。素晴らしいデザインだと思う。
中国らしい遊びの部分はせいぜいこういったトグルスイッチ程度。初めてだと使い方に迷いそうだ。
2022年7月にリリースしたスポーティバージョン、GTも展示してあった。12月なのでクリスマスのデコレーションである。
WULING MINI EV
BYDのショールームでたまたま見かけたのだが、これはまだタイで正式発売されていない。左ハンドル車のように見える。
上汽通用五菱(WULING)は中国でよく知られたブランドで、「五菱(WULING)」ブランドは小型車・商用車で中国では最もポピュラーだし、乗用車ブランドの「宝駿(バオジュン)」も同じく中国では一般的だ。本国で五菱・宏光ミニEVと呼ばれる電気自動車がMINI EV。
このモデルは中国での価格が50~60万円と衝撃的な安価で、2020年に発売以来爆発的に売れた。航続距離は120~170kmと日産・サクラ/三菱・eKクロス EVと同等なので、近距離用としてスペックも悪くない。何より上記2台の価格が補助金を含めても200万円弱なのを考えると圧倒的な価格差だ。
デザインもコンサバだが綺麗にまとまっている。まるで12インチか13インチかと思うような非常に小さいホイールが印象的だ。
WULINGブランドはインドネシアでシェアを伸ばしつつあり、町中でも結構見かけた。
深圳でも五菱のクルマはよく見かけた。
ヒョンデ・スターリア
韓国・現代(ヒュンダイ)こと、ヒョンデの新しいワンボックスは非常にカッコいい。写真で見た時に衝撃を受けて、ぜひ一度現車を見てみたいと思っていた。
ヒョンデの各モデルはアジア各国で販売されていて、マレーシア、ベトナム、インドネシアなど、どこでもそれなりの数を見かける定番のメーカーになっている。ただシェアとしてはどこの国も見かける頻度はベンツ・BMWなどと同じ程度な印象なので、およそ10%あるかないかという感じだろうか。
バンコクにあるディーラーにも止まっていた。これは廉価版グレードの方だ。宇宙船的な未来的デザインがカッコいい。ヘッドライトはバンパーに埋め込まれている。
室内に展示されていたのは豪華版グレード。なんと10人乗りまでラインナップされている。
実際に室内を見てみると、大きなボディだが豪華さより機能性を優先したようなデザインで、例えばトヨタ・アルファードのような"豪華ミニバン"を狙っていない事がわかる。価格もアルファードより安価で、ベンツのトランスポーターのような大型送迎バンと考えたほうが良さそうだ。であればこのデザインはヒョンデ版アルファードがもし出るなら、それに取っておいて欲しかったかな…というのが、正直な思いではある。
キア・カーニバル
もうひとつ気になっていた韓国車が、起亜のカーニバルというモデル。カーニバルは元々トヨタ・ウィッシュのような少し背の低い7人乗りワゴンだったのだが、現行モデルはSUVっぽいデザインを加えた上に、非常にスタイリッシュになった。パッと見、両側スライドドアのあるSUVという、世界でも見ることのない全く新しいジャンルのクルマに見える。
人気なようで町中でも良く見かけたが、ショールームに置いてあったカーニバルはより大きく見える。トヨタ・ランクル・プラドやアルファードクラスだ。
リアもシンプルにまとまっていて好ましい。
デザインも韓国車らしく、洗練された手堅さとディスプレイメーターの先進性が同居している。トヨタだったら間違いなく売れるだろう。
前モデルのグランドカーニバルはマレーシアで見かけた。