この本を読んだ。
ワンちゃん (文春文庫)
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楊 逸
文藝春秋 (2010-07-09)
売り上げランキング: 550,915
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2007年の文學界新人賞受賞作、後に芥川賞も受賞する楊逸のデビュー作だ。
とてもよくありそうな中国女性の生き様が、わかりやすく描かれている。つまり、「日本に逃げ出した」というスタンス。自分もそうだったが、多くの日本人は中国人が「日本に憧れて」日本にやって来ていると思っていると思う。そんな事はない。やっぱり多くの中国人は中国で幸せに生きられるのなら中国にいたいと思っている。生まれ故郷や家族が大好きだし、離れずに済むのなら皆一緒に過ごしたいんだ。
ま、当たり前だよな。
特に、ここ数年の間の進歩で、中国人はもっと落ち着いて「自分たちの将来」というものに目を向けている感じがする。切羽詰まって動いたりせず、本当の幸せとは何か、それなりの生活を送れる中でじっくり考えながら動く時期に移行してきているのだろう。
ワンちゃんは本当に真面目に生き、真剣に仕事に取り組んでいて心から応援したくなる。でも、もうこんな風景は消えていくだろう。わずか9年前の小説だが、懐かしいという種類になりつつある気がする。
中国人が書く、日本語の小説。こういうものも、これが最初で最後なのかもしれないし、その意味で芥川賞受賞の意義はあったのかもしれない。日本語小説が袋小路へと向かっていることをむしろ明らかにしているように感じた。